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一瞬の隙を突いた早業。ローランによって殴り抜かれたネルは勢いよく部室の壁に叩きつけられ、勢いを殺すことなく壁を貫き廊下へと吹き飛ばされた。
"代理人! 何をやって――"
「先生。今回、俺はこっちに付かせて貰う」
手袋から取り出したシャーレの制服を先生へと投げ渡し、リオを庇うように立ちながらデュランダルを構えるローラン。
「確か、調月って言ったか?」
「……リオで構わないわ」
「んじゃリオ。今回の件については、俺は全面的にリオが正しいと思ってる。……だから先生、悪いが俺はリオの味方をさせて貰う」
「な、なんで……代理人さん。アリスちゃんは悪くなんか……魔王なんかじゃ……」
「そ、そう……です。アリスちゃんは……みんなと仲良く……」
「……確かに、アリスは悪くないかもしれないな」
「だ、だったら――」
「だがな、ミドリ。アリスの中に居る奴は、悪い奴だろ?」
「それは……」
「アリスの中に居る奴……別人格とでも言おうか。そいつのせいで、モモイは大怪我をしたんだ。……治療が間に合わなければ、死んでいたかもしれない」
「……」
「だから……アリスがもう一度暴走する前に、手を打たせてもらう。……アリス」
「……」
「お前だって、こいつ等を傷つけたくはないだろ?」
デュランダルを構えつつ、空いた手をアリスへと差し出すローラン。
「ま、待って……! アリスちゃんの中に居るのが悪さをしてるのかもしれないけれど――」
「だからって、あ、アリスちゃんを殺す……だなんて……」
ローランの言ってること自体は間違っていないし、理解もできる。……だけど、納得できるかどうかはまた別の話だ。確かに、アリスがもう一度暴走したら、今度は怪我では済まないかもしれない。
――だけど、その為にアリスを殺して解決すると言うのは
「……ミドリ、ユズ。……もう、大丈夫です」
「アリスちゃん……?」
「だ、大丈夫じゃ……」
「大丈夫、です。アリスは……大……丈夫です」
"待って! アリスちゃ……"
「先生。アリスと遊んでくれて、一緒に冒険してくれて……ありがとう、ございました。アリスは……今まで本当に、幸せ……でした」
涙を流しながら先生へと微笑み、スーパーノヴァを手放したアリスは、ローランの手を取る。
……アリスを殺すと伝えればもう一度暴走すると思っていたローランにとって、この反応は予想外ではあったものの……手間が省けたことに違いはない為、そのままアリスを肩に担ぎスーパーノヴァを手袋へと収納するのであった。
「……そう。シャーレの代理人。あなたは私の味方をしてくれるのね」
「あぁ。……そう言う訳だから、アリスは連れて行くぞ」
"代理に…………ローラン"
「……なんだ」
"――これは、そう言う事でいいんだよね?"
投げ渡されたシャーレの制服を両手に持ち、ローランへと問いかける先生。
「今の俺はシャーレとして動いていないからな。……好きにしろ」
そう一言告げたローランは、リオと共にゲーム開発部の部室を後にした。
……
「あ、アリスちゃん……」
「せ、先生……」
"…………よし。……取り合えず、モモイちゃんを治しに行こうか"
「「……え?」」
ローランから投げ渡されたシャーレの制服。そのポケットの膨らみに気づいた先生は、ポケットへと手を入れ黄金銃を取り出した。
"モモイちゃんの傷を治して、アリスちゃんを取り返そう"
★★★★★
「リオ様、そちらの男性は?」
ミレニアムサイエンススクールを後にし、リオの持つ拠点へと足を進めていたローランは、メイド服に身を包む1人の生徒に話しかけられた。
「シャーレの代理人よ。私達の協力者と言えばいいかしら」
「シャーレが、ですか?」
「えぇ。……とは言え、先生とは敵対してしまったけれど」
「俺個人としてリオに協力しようと思ってな。……あー」
「失礼、挨拶が遅れました。C&C所属、コールサイン04。飛鳥馬トキです。気軽にトキちゃんとお呼びください」
自己紹介共にローランへと近づいたトキ。特徴的なメイド服とC&Cと言う言葉に一瞬、言葉が詰まったローランだったが、
「……そう言えば、C&Cはリオ直属のエージェントって言っていたな」
「……貴方が一体、何処から聞いてたのか分からないけれど……その通りよ」
美甘ネルというリーダーを伸したことに反応されないことから、C&Cも一枚岩ではないんだと認識するのであった。
「それで? 拠点まではまだかかりそうか?」
「いいえ、もうすぐよ」
「……」
「随分と大人しいですね」
「ヘイローも付いてないし、ショックで気を失ったんだろうな」
ローランに担がれてから一切言葉を発しないアリスだったが……いくら機械とはいえ、突然ぶつけられた情報の暴力と殺害宣言には耐えられなかったようだ。
「……着いたわ。ここが私たちの拠点……あらゆる厄災に備えた最後の箱舟――」
――要塞都市エリドゥよ
「……」
拠点と聞いていたローランは、セーフハウスにでも向かっているのかと思っていたが……目の前に広がる広大な都市の光景に言葉を発せなかった。
「……マジかよ。俺としてはセーフハウスにでも向かってるのかと思ったが、まさか都市そのものを作ってるとはな」
「悪いけれど、もう少しだけ歩いてもらうわ。あのビルの最上階で、私の協力者が待っているから」
「協力者……?」
「えぇ。私に協力してくれるのは、トキを含めて二人しかいなかったのだけれど……貴方が協力してくれて良かった」
「そりゃ何よりで。……って、たった三人でこの都市を作り上げたのか」
「いえ、正確にはリオ様がお一人で作り上げたものです。私たちはあくまで、完成した都市の運営と管理を行っているにすぎません」
「この規模を、一人でだと?」
到底一人で作れるとは思えないほど広大な都市の光景に驚きつつ、指定されたビルへと足を進めるローラン。
これだけの規模の都市でありながら、住人は一人も居ないらしく……生き物の気配を全く感じない都市の様子を目に収めたローランは、
――視界に入ったT社のロゴに関しても、見落とさなかった
……
「……今戻ったわ」
エレベーターで最上階へと昇り、電子ロックを解除する。足を踏み入れた先では、一人の男性がコンソールを触りながらモニターを眺めていた。
「お帰りなさい、リオさん、トキさん。頼まれていたポテトチップスでしたら、買っておきましたよ」
「トキ……?」
「ありがとうございます」
机の上に置かれた袋菓子へと速足で近づき、目の前の人物へとお礼を言うトキ。普段あまり見ることのない彼女の様子に呆れつつも、
「……はぁ。まぁ、いいのだけれど……」
楽しそうにしているトキの様子に笑顔を浮かべるのであった。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
……
「……ごほん。トキのせいで話がそれたけれど、代理人。もう一人の協力者というのが――」
ローランへと目の前の協力者を紹介しようと振り返ったリオ……だったが、
「貴方は、図書館の……」
「お前は、人差し指の……ヤンだったか?」
咄嗟にデュランダルを取り出しかけたローランだったが……目の前にいる人差し指の伝令が、都市では比較的まともな方の人間であった事を思い出し、一先ず様子を伺う事にした。
「……やめた。他の奴なら兎も角、お前は裏路地でも話の通じる奴だからな」
「……僕も、貴方と争うつもりはありませんよ。殺されたことに関して何も思わない訳ではありませんが、おかげであの都市とは無縁の世界に来られましたから」
「……まぁ、お前が気にしていないなら俺としても助かるが――」
「それはそれで、これはこれ……ですよね。……都市にいた頃の僕が、貴方のように考えられればよかったのですが」
「……」
「貴方にも事情があったと分かっていますから。……まぁ、黒い沈黙だとは思いませんでしたが」
「……はぁ。…………俺もお前の様子を盗み見てたからお互い様か」
「……はい。……それでは改めて、ヤンです。人差し指とは一切関係のない、リオさんの協力者です」
「……ローランだ。図書館……とはまだ関係があるが、取り敢えずはリオに協力するつもりだ」
一触即発
今にも殺し合いが起きそうな雰囲気に警戒心をあらわにするトキとリオだったが、二人の雰囲気が和らいだのを察してか安堵の溜息を吐くのであった。
「あっ……すみません、リオさん。この人とは少し……と言いますか、かなり複雑な関係でして」
「図書館や都市については話してるのか?」
「はい。ある程度……になりますが……」
図書館での死後、本として図書館の行く末を観察していたヤンは……気が付くとこのエリドゥで目覚めたと言う。突然の侵入者に驚いたリオに事情を説明する際に、都市と図書館、それから――
「人差し指についても、話してあります。貴方についてはこの世界に居ると思っていなかったので、話していませんでしたが……」
「……って事は、キヴォトスの現状についても把握していないのか?」
「キヴォトスの現状……? ……すみません。僕はリオさんに拾われてからこのエリドゥの管理に努めて居ましたので……」
「ずっとこの都市にいたのか?」
「はい。この世界の地理や情報についてはリオさんやトキさんからある程度伺っているので把握していますが――」
「――翼と五本指がキヴォトスに存在することは知っているか?」
「…………それ、本当ですか?」
「……残念ながら本当だ」
「……翼が居ることは把握してましたが、まさか五本指までいるとは」
「人差し指についてはまだ確認してないが、少なくとも薬指がこの世界に居たのは間違いない」
「……」
嫌そうな顔を浮かべるヤンの様子に、少なくとも嘘はついておらず、本当に知らなかったのだと認識するのであった。
「……色々と聞きたいことがでてきたけれど、とにかく今はアリスへの対応を優先させてもらうわ。代理人、アリスをそこに寝かせて頂戴」
「ん、あぁ。ここでいいか?」
「えぇ。そしたら、そこの機械をアリスにつなげて貰えるかしら」
「分かった」
沢山のケーブルが伸びた椅子の様な機械にアリスを寝かせ、周りの装置を装着させていく。リオの指示通り、アリスの腕や足に機械を着けていたローランは……
――機械に刻印された
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