黒い沈黙の行先   作:シロネム

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仕事の都合により投稿が遅くなり、申し訳ございません。
引き続きお楽しみいただければ幸いです!

評価、感想ありがとうございました!




~始動~ 勇者奪還計画

 

 

 

「T社の社章が気になりますか?」

 

「……まぁな」

 

「心配しなくとも、彼らはここを知りません。あくまで製品を買い取ったに過ぎませんし……彼らを信頼出来ないのは僕もよく分かっていますので」

 

 

 

機械に刻まれたT社の社章を凝視するローランへと話しかけたヤン。裏路地に住むほとんどの者が把握している事実。

 

 

 

――特異点の異常性、翼という会社の厄介さ

 

 

 

客として製品を使う分には問題ないが、それ以上の関係を持とうとすれば破滅する。……そんな事は、人差し指として翼戦争の後処理を引き受けていたヤンにとっては常識であり、翼には警戒するようにとリオ達にも伝えていた。

 

 

 

「……まぁ、特異点と翼の危険性は、お前も十分把握しているか」

 

「……」

 

 

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるヤン。伝令として自身が齎した悲劇を――

 

 

――人差し指の盲信する特異点(都市の人々の意思)が与えた、指令の残酷さを知るヤンにとって、その危険性は誰よりも知っている事だろう。

 

 

 

「T社に関しては貴方も知っているみたいね」

 

「あー、まぁな。都市出身で翼を知らない奴は居ないと思うぞ」

 

「……」

 

「……で? これはどういった製品なんだ?」

 

「これは――」

 

 

 

 

 

 

――装着者の時間を回収する装置よ

 

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

 

(パンッ)

 

 

 

 

 

 

医務室に響き渡る1発の銃声。先生の構える黄金銃によって撃ち抜かれたモモイの時間が――巻き戻る。大きな傷跡から小さな擦り傷まで、まるで最初からなかったかのように消えていく。

 

 

 

「んぅ…………あれ? ……ここ、何処?」

 

「も、モモイ……!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「んぎゃ!? ……ゆ、ユズ? ミドリ?」

 

「ぐすっ……! ……先生……ありがとうございますっ!」

 

"……お礼なら代理人に言ってあげて。これを貸してくれたのは代理人だから"

 

「……っ、代理人さん……」

 

「代理人……」

 

 

 

……

 

 

暫くして、みんなの様子が落ち着いたのを確認した先生は、目が覚めたモモイへと状況の説明を行った。あの後何が起きて、アリスがどうなったのかを説明し――

 

 

 

「なるほどね~……って、だったらここでゆっくりしてる場合じゃないじゃん! 早くアリスを取り返しに行かないと!」

 

「「……」」

 

 

 

医務室に響き渡るほどの反応に呆気に取られた3人。怪我の具合や、アリスが攻撃した事について、モモイ本人は気にしていないようだが……

 

 

 

 

 

 

「なんだァ? 様子を見に来てみれば、随分と元気そうじゃねぇか」

 

 

 

 

 

 

扉を開け、医務室へと足を踏み入れる5人の生徒達。リーダーであるネルから事情を聞いたのか、C&Cの皆それぞれがやる気に満ちた表情を浮かべていた。

 

 

 

「あ! ネル先輩じゃん! お見舞いに来てくれたの?」

 

「見舞い……そうだな。ちょっくらリオの奴と代理人にお見舞いしに行くんだが、そんだけ元気ならお前らもツラ貸せよ」

 

「つ、ツラ……?」

 

「うわぁ、絵に書いたようなヤクザの言い回しじゃん! リアルで聞けるとは思わなかったよ~」

 

「アァン!? 誰がヤクザだって!?」

 

「ひぅ……」

 

「お、お姉ちゃん、早く謝って……!」

 

 

 

怯えるミドリとユズを後目に、モモイは傍にあった愛銃を構え、ベッドから飛び降りる。

 

 

 

「御礼参りだね! いつ出発する? 私も同行するよ!」

 

"や、やけに好戦的だね、モモイちゃん。ネルちゃんの方は怪我は……大丈夫そうだね"

 

「っへ、あの程度、傷のうちにも入らねぇよ。…………だけど」

 

"だけど……?"

 

「代理人……ありゃやべぇな。一筋縄では行かないって言うか、本当に人間か疑うレベルの身体能力だ。……アイツがリオの味方をするってなると、正直……かなり厳しい」

 

"……"

 

「リーダー……」

 

「確かに! この間共闘した時も、すっごい強かったよね!」

 

「あの魔法のような力も加わるとなると、奪還はかなりの難易度かと」

 

 

……

 

 

「うーん、代理人かぁ~。寄りにもよってあの人力TASが敵に寝返るなんて~~~!」

 

「で、でも……代理人さんはお姉ちゃんの怪我を治してくれましたから、完全に敵になった訳では……」

 

「えっ、そうなの?」

 

"……正直、私にも分からないんだ。モモイちゃんの怪我を治すだけなら、代理人が自分で撃てば良かった訳で……この銃を私に渡す必要は無い……と思う"

 

 

 

そう言って、シャーレの制服から取り出した黄金銃を机の上に置く先生。

 

 

 

「ん~~~! 考えても分かんないし、とりあえずアリスを取り返しに行こうよ! 代理人が出てきたら、その時に考えよう!」

 

「「……」」

 

 

 

あっけらかんと言い放つモモイに言葉を失うユズとミドリ。楽観的な思考に呆然としつつも、モモイちゃんらしいなぁと、穏やかな表情を浮かべる先生であった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「……来たわ。侵入者よ」

 

 

 

エリドゥの管理室に響く警報音。街中に設置された監視カメラから送られてくる映像には、どうやって特定したのか、エリドゥへと乗り込んできたゲーム開発部とC&C、エンジニア部の面々が映し出されていた。

 

 

 

「エンジニア部までついてきたのか」

 

「……大方、ゲーム開発部に絆されたのでしょうね」

 

「……どうする? 迎撃するか?」

 

「……そうね。彼女たちの相手はトキとAMASで行うから、貴方は遊撃に回って頂戴」

 

「分かった」

 

「ヤン、貴方はここでAL-1Sを監視しておいて頂戴」

 

「分かりました」

 

 

 

リオから渡された通信機を耳に付けたローランは、管理室を後にする。エレベーターで1階へと降り、広大なエリドゥの街中へと足を進めたローランは、この街を作りあげるだけの予算をどうやって用意したのかを考えて――

 

 

 

「……黒崎の借金がやけに多かったのは、リオの横領も含まれていたからか」

 

 

 

――莫大な借金を抱えた生徒(黒崎コユキ)がミレニアムに居た事を思い出し、顔をしかめた

 

 

 

「前にアンジェラが言っていたT社の特異点がこの都市に使われているなら、この街の規模にも納得ができるな」

 

 

 

リオが一人で作り上げたとトキは言っていたが……莫大な金と時間があるとすれば、これだけの都市を作ることも不可能ではないだろう。

 

T社の製品をどう使ったのかは分からないが、人の気配を感じない様子から察するに……少なくとも、羽の生き残りがこの都市にいることはなさそうだ。

 

 

 

TT2プロトコル……。……確かR社を覗き見した時も、そんな製品が使われているって言っていたか?」

 

 

 

街を見て回り、T社の特異点やこの街の様子について考えていたローランは、

 

 

 

「……始まったみたいだな」

 

 

 

遠くから鳴り響く銃声の元へ、足を速めるのであった。

 

 

 

★★★★

 

 

 

――同時刻・ミレニアム郊外

 

 

 

先生からモモトークを通じて送られてきた座標。要塞都市エリドゥへと続く入り口。ヴェリタス及びセミナー協力の元、特定することに成功した地点に……3人の生徒が集まっていた。

 

 

 

「まだ来ないの?」

 

「……もうすぐ着くと思うよ?」

 

「き、既読もついていますし、確認はしていると思いますが……」

 

 

 

そう話している3人の生徒達だったが……遠方から近づいてくる気配に気が付き、銃口を向ける。

 

 

 

「っと……噂をすれば、来たみたいだよ」

 

「……随分遅かったね」

 

 

……

 

 

「……す、すまない。これでも急いで来たのだが……」

 

「……何? 言い訳?」

 

「い、いや、そう言う訳では……」

 

「ま、まぁまぁ……突然の連絡でしたから……」

 

「これでも飲んで落ち着いて」

 

 

 

息を切らしながら走ってきた1人の生徒。彼女に水を差しだし、状況の説明を行っていく。

 

 

 

「……それで、先生はどこに?」

 

「先生なら先に行ったよ?」

 

「……なに?」

 

「私たちとは別行動だよ。……先に騒ぎを起こすから、見つからないように来てだって」

 

「か、監視カメラをハッキングしておくって、言ってましたね」

 

 

……

 

 

「……そうか」

 

「うん。……それじゃあ、指揮をよろしくね。リーダー」

 

「準備は出来てるよ、リーダー」

 

「い、いつでも行けます。……あ、あとこれ。リーダーの分の通信機です」

 

 

 

手渡された通信機を耳につけ、慣れ親しんだハーフフェイスマスクを身に着ける。

 

 

 

 

 

 

「……よし。…………アリウススクワッド各員――」

 

 

 

 

 

 

――状況開始

 

 

 

 





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