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戦闘が始まってから30分程経過しただろうか。
アバンギャルド君が前線を張り、ローランがカバーする。重厚な装甲によって、モモイ達の銃弾の殆どを弾き、アサルトライフルを乱射。
――1秒、また1秒と時間だけが過ぎていく
多少の傷は付いたものの、どういう訳か数秒もしないうちに……まるで
「~~~! 硬すぎでしょ!」
「どうしよう、時間が……!」
「な、なんとか攻略法を考えないと……」
"みんな! 一度下がって補給を!"
(パンッ! パンッ! パンッ!)
3度響く銃声。シッテムの箱を通じて戦況を把握していた先生は、みんなの疲労が溜まる瞬間を狙い、黄金銃で3人の身体を撃ち抜いて行く。
――時間の巻き戻し
体力の回復と共に、消費した銃弾をも補充する。
「……どうする? その銃があれば幾らでも戦い続けられるだろうし、俺の方も準備運動が終わった程度の疲労だが――」
――悠長に時間をかける暇があるのか?
「うるさいなぁ! 分かってるよ!」
「頑張ってつけた傷が、なくなってる……」
「……」
"これ以上時間をかける訳には………………時間?"
以前、説明を受けた黄金銃の用途。弾丸を撃ち込んだ対象の時間を、予め設定した時間に巻き戻すと言う能力。
ヘイローを持つ生徒の時間を巻き戻し、殺す為に作られた武器。
――だが、この銃には幾つか不可解な事がある
1つ目は、撃ち込んだ生徒が使っている武器、及び着ている服などの損傷も巻き戻る事だ。黄金銃の性能が、対象の時間を巻き戻すだけなら……対象が持っている銃の弾丸が戻ってくるのはおかしい。
2つ目は、この銃弾は無機物にも作用するという事だ。生徒の銃弾もそうだが、ミレニアムでの戦闘後……ローランは校舎に銃弾を撃ち込んで壁などの時間を巻き戻していた。これはつまり、無機物にも時間と言う概念が存在する事に他ならない。
3つ目は、この銃には巻き戻す時間に制限がない事だ。銃の装飾である砂時計を調節する事で任意の時間まで巻き戻す。数時間から数日……やろうと思えば数年単位で巻き戻す事も可能だろう。
本来の用途として、あまり考えたくは無いが……ローランがT社から奪ってきた設計書通りなら、この銃はヘイローを持つ生徒を殺すために作られた銃であり……この銃で生徒を殺すと言うのはつまり、戦う術を持たない時間まで……生まれる前の時間まで巻き戻す事を意味するのだろう。
――だとすれば、この銃を使って……
"……できる、かも"
「先生?」
"……みんな! もうちょっとだけ時間を稼いで!"
そう言うと先生は、ローラン達へと背を向け……黄金銃の砂時計を操作し……巻き戻る時間を数十年前へと――
――アバンギャルド君が存在しなかった時間へと、設定する
「……気づいたみたいだな。……まぁ、リオには分からないだろうし、わざわざ止める必要もないか」
無論、黄金銃を渡したローランが先生の策略に気づかない筈が無く……かと言って、アバンギャルド君に撃ち込まれるのを止めるつもりも無い。
ローランの目的を達成する為には、
「それならば、私たちも前線を張りましょう!」
「もしも怪我したら治してくれるよね?」
「私たちの灯篭ちゃんを返してもらおうか」
(ダダダダダッ)
ゲーム開発部とエンジニア部。総勢6人による波状攻撃はアバンギャルド君の討滅を目的としておらず、策を持つであろう先生の為の時間稼ぎに過ぎない。アバンギャルド君の注意を引き――
――その場から、1歩たりとも動かさせない
「「「「「「……先生!!」」」」」」
"――これで……終わりッ!"
(パンッ)
黄金銃から放たれた1発の銃弾が、アバンギャルド君を貫く。数十年単位で時間巻き戻されたアバンギャルド君が、パーツへと分解されて行き――
――パーツになる前の素材へと巻き戻された
「やった! さっすが先生!」
「時間を、巻き戻したんですね」
「……こ、こんな攻略法が」
「ふむ……やはり、あの拳銃はもう1丁作りたいな」
「……ウタハ先輩、まだ言ってるの?」
「そもそもあの拳銃は、出資者の装置があってこそ実現できたものです!」
アバンギャルド君を倒した6人は、長時間に渡る戦闘と言うこともあってか勝利の余韻に浸っていた。
(ピッ)
「……リオ。アバンギャルド君が倒された」
「――っ、……見ていたから分かるわ」
「流石に俺1人で6人の相手は無理がある。……トキの援護に回るか?」
「……いいえ、貴方は私の元に戻ってきて頂戴。トキの援護にはヤンが向かったわ」
「アイツが……? ……分かった、直ぐにそっちに戻る」
「えぇ、お願いするわ。……出来るだけ速く、戻って来てもらえると――」
「あぁ、直ぐに戻る」
(ビリッ)
勝利の余韻に浸るのは気持ちの面で見ても重要だ。
――たがそれは、目の前に倒すべき相手がいる状態で行う行為ではない
そんな隙だらけな様子をローランが見逃すはずもなく、手袋から音もなく取り出した1冊の本を開き、ページを1枚破り取る。
"――ッ! み、みんな! 代理人を止めて!"
「もう遅い。次は敵を倒してから余韻に浸るんだな」
破り取られたページが光り輝き、ローランの姿を包み込む。先生の警告と、目の前のローランの姿に気が付いた皆それぞれが、銃口をローランへと向ける。警戒が続く中、光が収まるとそこには――
――黄金色に輝くマントと篭手を身に着け、魔法陣を自身の背後に広げたローランが立っていた
「そ、その籠手は……!」
「ウタハ先輩が作りたがってたやつ?」
「おぉ! 噂に聞く瞬間移動ができる装置ですね!」
「……しゅ、瞬間移動?」
「……ってことは」
「あーーーーー! 代理人、逃げるつもりでしょ!」
慌ててトリガーを引こうとした一同だったが、トリガーを引き切るよりも速く動いたローランは――
「じゃあな、お前ら」
――黄金色の魔法陣へと、身を投げた
★★★★★
「っと、戻ったぞ」
「……随分と速かったわね。その服も、外の世界の技術なのかしら」
「……まぁな。で、首尾はどうだ?」
「AL-1Sが目覚める兆候はないわ。……ただ」
「ただ?」
「……トキが想定以上に苦戦しているわ。アビ・エシュフも使用したけれど――」
――正体不明な他校の生徒に、太刀打ちできないのよ
「他校の生徒……? ……なるほど、先生が呼んだのか」
「代理人。貴方の知っている生徒かしら? 私の記録では、あのような生徒たちはどこの学園にも所属していないのだけれど」
「だろうな。あいつらはアリウス分校の生徒だ。今はシャーレの庇護下にいるんだよ」
「アリウス分校……。……まさか、アビ・エシュフに対抗できるだけの戦力があるなんて」
「……サオリもE.G.Oに目覚めたか」
モニター越しにトキの戦闘を見ていたローランは、事前に説明を受けていたアビ・エシュフという機械に乗り込んで戦うトキと、十字架と大鎌を持ってトキに襲い掛かるアツコとサオリの様子に目を見開いた。
「あの様子だと、中途半端って訳でも無さそうだな……。……多方、アツコに使い方でも聞いたのか」
「トキ……」
「……どうする? 俺も援護に回ったほうがいいんじゃないか?」
「……それも考えたけれど、私一人では万が一の際にAL-1Sを止められないわ。T社の装置の起動には、もう暫く時間がかかるのよ」
「……そうか。それじゃ、俺はここで待機しておくよ」
本を手袋にしまったローランは、未だに意識を戻さないアリスの様子を伺いつつ、モニター越しに先生達の行動を観測するのであった。
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