大変長らくお待たせしました!
今話もお楽しみ頂ければ幸いです。
評価・感想ありがとうございました!
ローランとゲーム開発部が戦闘を開始した頃、二手に分かれてアリス奪還を目論む先生、C&Cのメンバーに別ルートから管理室を目指すよう告げたのだが――
「先輩方。ここから先は通行止めです」
――5人目のC&C、飛鳥馬トキが彼女達の前に立ち塞がって居た
「あァ? ……てめぇ、その服は」
「C&C?」
「うっそ、5人目?」
「噂では聞いておりましたが……」
驚くC&Cのメンバー。5人目について噂程度には聞いた事があったものの、今まで出会った事はなく……あまつさえ自分達の敵として目の前に立ちはだかるとは、思ってもいなかった。
「……? ……あぁ、そうでした。自己紹介がまだでしたね。私はリオ様専属のC&C、飛鳥馬トキです」
セミナーの為のエージェントでは無く、リオの為だけに用意されたエージェント。
「ご挨拶早々申し訳ございませんが、先輩方にはここで退場して頂きます」
「……あァ? 随分と威勢が良いじゃねぇか」
「自信過剰」
「うーん……」
「……どうかしましたか? アスナ」
「いやぁ、さっきから凄く嫌な予感がするんだよねー。トキちゃんの威勢もあながちハッタリって訳じゃ無いのかも」
1歩下がり、銃を構えるアスナ。普段の彼女からは考えられない行動と、彼女の持つ第六感とも言えるレベルの直感を知っているメンバーは、アスナの発言に警戒心を高めた。
「手加減はしません。初めから全力です。……アビ・エシュフ、起動」
トキの背後に設置されていた巨大なパワードスーツが、設定された音声を鍵として……起動する。咄嗟に背後へと飛び退いたトキは、展開されたパワードスーツを身に纏い――
「……戦闘、開始します」
――C&Cへと襲いかかった
★★★★★
「……身体能力の補助、及び認識能力の増強ってところか? 便利な物を作ったな」
「伊達に予算をかけている訳ではないもの。行動を予測し最適解を導き出す演算能力も備わっているわ」
C&Cの4人を相手に一歩も引けを取らず、互角に……いや、優位に立っているトキ。神秘を用いた身体能力の強化とは比にならないほどの強大な補助は、接近戦を得意とするネルを相手にゼロ距離での戦闘を可能とし、4人の体力を削り取る。
――
最小限の身のこなしでカリンの狙いを外し、アカネが投げた爆弾の爆風を躱し、アスナの驚異的な直観を上回る機体性能で翻弄し――
一人ずつ、順番に倒していく
「……残すは先輩だけですか」
「……ッハ。こいつらを倒した程度で良い気になってんじゃねぇよ」
「……
「あぁ?」
「……ですがここまでです。その身体も、もう満身創痍でしょう?」
「誰が満身創痍だって!? ……こんなもん、準備運動にもならねぇよ」
高速戦闘による負荷。アビ・エシュフと正面から戦い、大小無数の傷を負ったネルだったが……気合いだけで痛みを無視し銃口を構える。
誰が見ても無理をしてるのは一目瞭然だったが、それでもネルは倒れることなく臨戦態勢を取り続け――
――背後から感じる気配に笑みを浮かべた
「……ッ! どうやら、時間切れみたいだぜ!」
(パンッ!)
ネルの背後から放たれた一発の銃弾。聞き覚えのある足音達を聞いたネルは、放たれた銃弾を無防備な背中で受け止め……
「相変わらず便利だよなぁ! その拳銃はよぉ!」
自身の獲物をトキへと構えた。
(パンッ!) (パンッ!) (パンッ!)
"みんな大丈夫!?"
傷を負い跪くC&Cへと走り寄り、手にした黄金銃を発砲する先生。その後を追うようにやってきたゲーム開発部は眼前にいるトキへと銃を構え、エンジニア部も状況を察したのか銃口を向ける。
「うわぉ何アレ!? めちゃくちゃかっこいいじゃん!」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん。今は興奮している場合じゃ……」
「ゲームに出てくる機械みたい……」
まるでゲームのロボットみたいなアビ・エシュフの見た目に目を輝かせるゲーム開発部一行。両手に備え付けられた機関銃、左右対称になるよう刻まれたミレニアムの校章とT社の社章が、彼女達の興奮をより引き付けていた。
「おや? あの見覚えのあるデザインは……」
「あれは、私たちに依頼してきた会社の……」
「……先生。……警戒した方が良いだろう」
"……うん。分かってる"
興味を示すゲーム開発部と打って変わって、警戒心を高めるエンジニア部。その様子を見つつ、チラリと手元の黄金銃へと視線を向けた先生は、全く同じT社の社章が、トキが乗り込んでいるパワードスーツに刻まれている事に気が付き、顔を顰めた。
「……やはり、ダメでしたか。どれだけ戦闘時間を短縮しようとも、貴女は必ず間に合ってしまう。まるで結果が収束しているかのように……私が短縮した分、貴女も短縮してくるとは」
"えっ……?"
「……失礼、何でもありません。
"……C&C?"
「はい。リオ様専属のC&Cです」
そのパワードスーツは何!? とか、C&Cなのにどうしてネルちゃん達と戦ってるの? とか……聞きたいことは山程あったが、疑問を口にするよりも先にネルが口を開いた。
「随分と余裕そうじゃねぇか! えぇ!?」
「余裕そうではなく、余裕なのです。傷や体力が回復した……いえ、巻き戻したのでしょう。 ……確かにその拳銃は万能に見えますが、それ1つが加わっただけでアビ・エシュフを前に勝てると、本気で思っているのですか?」
「……ッ」
(ピピッ)
戦場に鳴り響く電子音。アビ・エシュフから聞こえた音は、どうやら通信音であったらしく……
「トキ。特異点の使用も許可するわ」
「……畏まりました」
"特異点……? それってまさか、翼の……"
……その先の言葉を続けるよりも速く、トキはアビ・エシュフに刻まれた砂時計へと触れ……
――反転させた
「――TT2プロトコル、起動。体感時間、及びアビ・エシュフの干渉時間を変更」
「……ッ、てめぇ、一体何を――」
「――エネルギーも限られていますので、この辺りで
計4回。
リオから特異点の使用を許可された瞬間、過去へと時間を遡行し、シャーレの先生達がこの場所に辿り着かないルートを見つけようと試行した。
1度目はアビ・エシュフの力を発揮してもC&Cを相手に勝つことはできなかった。――だから時間を遡行した。
2度目は1度目の戦闘行動を記憶したアビ・エシュフによるバックアップを頼りに、何とか勝利を収めることに成功した。……だが、銃弾を全て使い切り戦闘を継続できるとは思えなかった。――だから時間を遡行した。
3度目は体力と弾丸の消費を最小限に抑えつつ戦闘を行った。C&Cには勝利したが、後からやってきた先生達一行に敗北した。――だから時間を遡行した。
――そして4度目
アビ・エシュフのエネルギー、及び弾丸の貯蔵に問題はなく……今の体力であれば彼女たちにも勝てるだろう。……もしまた敗北するようなことがあれば――
――何度でも幾度でも……リオ様の為に、彼女達に勝てるまで時間を遡行するだけだ
★★★★★
ミレニアム自治区で力を持ち始めたT社。彼らの販売する製品が現代科学では説明の出来ない異常性を持っている事にいち早く気がついたリオは、その製品が齎す恩恵とミレニアムの生徒に齎す災いを予期し買い占めていた。
未来の技術と言っても過言では無いほど発展した製品が出回れば、想定外の大事故も起きかねない。
そう考えたリオは、セミナーの会長と言う立場を使い、彼らの製品を購入……それら全てをエリドゥ建設の為に役立てたのだ。
――TT2プロトコルもその1つ
正確にはTT2プロトコルと言うシステムが組み込まれたガジェットを購入したリオは、その規格外の能力と馬鹿みたいな燃費の悪さに頭を抱えたものの……万が一の際、それこそキヴォトスが終焉を迎えるような事があった際に、自身の唯一の理解者を救うだろうと考え、このガジェットをアビ・エシュフに組み込んだのだ。
この事は、アビ・エシュフの共同開発者であるヒマリにすら伝えておらず、万が一の際には利用する様にとトキにだけ言い伝えていた。
「――状況終了。4回目にしてやっとですか」
戦闘時間、僅か20秒。
まさしく蹂躙としか言えない惨状。ゲーム開発部とエンジニア部など視界にすら入れず、最速でC&Cを潰すトキ。TT2プロトコルの影響を受けたアビ・エシュフによって、戦闘行動を加速。
先ほどの倍の速度で動くトキに咄嗟の対応をとれず、C&C全員の意識が刈り取られた。
「は、速すぎなんだけど!?」
「C&Cのみんなが……」
「……? …………そんなに速かったかな」
"みんな大丈夫!?"
「ウタハ先輩、あれは……」
「純粋な加速……にしては反動が無さすぎます! 幾ら姿勢制御に優れていたとしても、あのような動きができるとは思えません!」
「……恐らく、時間を操作しているのだろう。加速、というよりも……」
――私達の行動が、遅くされている
「と言った方が、正しいはずだ」
「えっ……そうなの!?」
「私たちが、遅く……?」
「…………! で、電光掲示板の表示が……」
ウタハに続き、ユズも気が付いたのだろう。彼女達の反応を頼りに、同じく辺りを見渡してみても違和感はなかった。……なかったが、自分達から離れた位置にあるビルの電光掲示板の文字が、異常な速さで流れていることに全員が目を見開いた。
「もう気づいたのですか……。……さすがの推察力と関心はしますが――」
――気づいたところで、何か対策は出来ますか?
"……っ"
「……先生。構えている黄金銃を降ろしてください。貴女が引き金を引くよりも早く、私は彼女達を射線上から外すことができます」
"……やってみないと、分からないんじゃないかな"
「いいえ。やらなくても分かります。……まぁ、どうしてもというのであれば――」
――生徒の時間を無駄にしてみても、良いんじゃないでしょうか?
"……え? ……生徒の……時間?"
「……まさか、気づいていなかったのですか? T社の製品が何処から時間を回収しているのか」
"時間を……回収……?"
「……その様子だと、本当に知らないみたいですね。……先生。先生は疑問に思わなかったのですか? 時間を巻き戻すなんて言う万能の力が、何の代償もなく使えると思っていたのですか?」
"代……償……? ……いや、そんな筈……だって、この拳銃で撃たれても失うものはないって調べたから……"
ローランの持つ黄金銃は本当に安全なのか、疑問に思わなかった訳ではない。一度シッテムの箱を通じてアロナに検査してもらったが、この拳銃に撃たれた相手に異常は見られなかった。この事はローランも知っていたし、実施試験も行って安全性は確認している。
「確かに、撃たれた相手に代償はありません。T社の製品は使用者から何かを奪うものではありませんから」
"……じゃあ、代償って何!?"
「……」
――ハイランダー鉄道学園
"えっ……?"
「……私が使っているこの装置も含め、T社の製品は――」
――ハイランダー鉄道学園の生徒が運営する列車から、奪い取った時間で動いています
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