今後も不定期にはなると思いますが、更新は続けていこうと思いますので、
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
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「……まだ掛かりそうか?」
「いいえ、準備は整ったわ。意識が覚醒次第――」
――彼女の時間を止めるわ
「……なるほど。確かに、T社の製品を使えば完全な時間停止ぐらい可能だろうな」
「……問題は無いはずだけれど、確実に機能したことを確認する為に、彼女の意識が戻った後……装置を起動するわ」
「……これ、俺必要か?」
「貴方は万が一の際の保険よ。……何かしらの要因によって、彼女の時間が止まらなかった時は――貴方に破壊してもらうわ」
アリスに繋がれた機械を一つ一つ確認するリオ。時間停止に必要なエネルギーは、彼女自身の時間をエネルギーに変換する事で供給……結果として、彼女の時間が無くなるまで、彼女の時間を止め続ける半永久機関が完成した。
「……ヤンは、止められなかったみたいね」
「さすがに分が悪かったな。L社のE.G.Oに組織の特異点まで持ち出されたら、対応できる奴なんていないだろう」
「貴方は組織について知っているようね」
「……あぁ。……知ってはいるが、教えることは出来ないぞ。――知らない方が、良い事もあるんだよ」
「そう……」
などと話していると、ローランとリオの背後にあるエレベーターが動き出す。一瞬、ゲーム開発部が乗り込んできたのかと身構えたリオだったが、一切構えようとしないローランの様子を見て、
――彼女が戻ってきたのだと、理解した
「リオ……様。……申し訳、ございません。C&Cを止めることが、出来ませんでした……」
ボロボロになったアビ・エシュフの残骸を抱え、血を流しながら帰還したトキ。彼女の様子に目を見開いたリオは、アリスに繋いでいた機械の操作を辞め、トキの元へと駆け寄っていた。
「……トキの様子を心配できるなら、まだ大丈夫だな」
「トキ……。……貴女のおかげで、必要な時間は稼げたわ」
「リオ様……それなら、良かったです」
「……あー、トキ。……とりあえず、お前は傷の手当をした方が良いんじゃないか?」
「……そう、ですね。代理人さん、リオ様のことよろしくお願いします」
会話もそこそこに、破損したアビ・エシュフのパーツを置き、自身の治療を始めたトキ。治療……いや、正確には巻き戻しとでも言った方が正しいだろうか?
T社から買い集めた製品の中から、ローランの持つ黄金銃のように、対象の時間を巻き戻すものを探し……自身へと使用する。
「準備がいいな」
「買えるだけの物は買っておいたわ。今の私達では手の届かない技術だもの、その効力と価値は大枚を叩くに値するわ」
「……さようで。……ちなみに、俺の予想では黒崎の借金の中に商品代が含まれていると思うんだが」
「えぇ、含まれているわ」
「……やけにあっさりと認めるんだな」
「彼女の借金を立て替えた貴方を、誤魔化せるとは思わないもの。私も人の事は言えないけれど、セミナー名義で債権を偽造するのは看過できないわ」
「……」
黒崎の借金に紛れて、セミナーの金を億単位で横領したお前が言うのか……? とは思いつつも、口にはしないローランだったが……セミナーという言葉が思い浮かんだと同時に、嫌な想像が脳裏をよぎった。
「…………ちょっと待て。あの白髪の……ノアって言ったか? アイツって表向きはセミナー所属なんだよな?」
「裏向きの組織は分からないけれど、そうね。セミナーに所属しているわ」
「……黒崎も、債権を偽造したとはいえセミナー所属だったよな?」
「そうだけれど……それがどうかし――」
「だとしたらマズイぞ。自分の借金にリオの横領額も含まれてるって教え込まれたら――」
――
★★★★★
要塞都市エリドゥの中央にそびえ立つ管制塔。ヤンを撃退した一同は、先生の持つ黄金銃で全員の時間を巻き戻し……管制塔へと乗り込もうとした瞬間、
「ちょーーーっと待ったー! 私も仲間に入れてください!」
――常識外の速度で走ってきた一人の生徒に、足を止められた
"コユキちゃん!? ……な、なんでここに?"
「ノア先輩から聞いたんですよ! 私の借金、リオ会長が横領した金額も含まれてたみたいじゃないですか! 許せないですよ!!」
"……なる、ほど? えっと、コユキちゃんはリオちゃんを倒しに来たってことでいいのかな?"
「はい! リオ会長を倒して、私の借金を返済させるんです!!」
"……"
コユキの借金にリオの横領額が含まれていることは知っていた。……というか、そうでもしないとこの規模の都市を建設するための資金を、ミレニアムから横領することなんて不可能だろう。
……知っていたが、まさか都市まで乗り込んでくるとは思っていなかった。……いや、そもそも――
"よ、よくここが分かったね"
「ノア先輩からある程度の場所は聞いていましたから! 走ってきました!」
"……うん。……めちゃくちゃ速かったね"
「でしょー! 今日の私は絶好調ですからね! いつもより体が軽いです!」
そう言い、軽く飛び跳ねて見せるコユキだったが……優に数メートルは跳躍しているその姿に、一同は言葉を失った。
「……何、今の速度」
「サッちゃん、今の追えた?」
「いや……見えなかった」
「な、仲間……なのでしょうか……?」
R社の孵化を終えたアリウススクワッドであっても、絶好調かつE.G.Oを発現しているコユキの速度を捉えるには至らない。R社の中でも最速であったミョに対して、反応できたサオリの目を持ってしても……コユキの残像を追うのが精一杯だった。
「あれ、コユキじゃん! そんなに足、速かったの!?」
「にはははは! 今日の私は絶好調なんです!」
「……いや、絶好調で説明できる速度じゃなかったと思うけど」
「そういえば、C&Cの怖い先輩方はいないんですね! 良かったー!」
「ネ、ネル先輩達も、後で来ると思う……」
……理由はどうであれ、味方をしてくれるというのであれば、心強い。コユキのE.G.O、その能力についてエデン条約の締結後にローランから聞いていた先生は……絶好調のコユキの強さについても把握していた。
"……よし! とりあえず、先を急ごうか"
新たにコユキを加え、ゲーム開発部及びアリウススクワッドと共に、管制塔へと足を進めるのであった。
★★★★★
「嫌な想像が当たったな」
「……」
監視カメラに映し出された管制塔前の映像。そこに映る、先程まで居なかったトランプ模様の白いタキシードに身を包んだ一人の生徒に、ローランは頭を抱えていた。
「しかも絶好調か……まとめて相手にするのは骨が折れるな」
「……そんなに危惧するほど、彼女は強いのかしら?」
「……あぁ。普段は大した事ないが、こと絶好調においては別だ。俺でも抑えるのが関の山だと思ってくれ」
確率の絡む事象を全て、自身が望む結果へと捻じ曲げる事ができるコユキに対し……順当に正面から攻撃した所でまず当たらない。無論、E.G.Oの能力にも限度がある為、数時間以上絶やすことなく攻撃し続ければいつかは当たるだろうが……
「……まぁ、反則には反則をぶつけるか」
「反則……?」
「あぁ。……リオ、戦闘が始まったら――」
……
「――それなら問題ないわ。この通信機には……」
……
「……なら良い。後は、出来るだけ俺から離れてくれ」
作戦会議を済ませたローランは、手袋から本を取りだし……ページを2枚破りとる。
「……それが、貴方の言う反則なのね」
破られた2枚のページが光り輝き、ローランの姿を包み込んでいく。
(チンッ)
ローランが姿を変化させた直後、エレベーターが到着した事を示す音が鳴り響き……
"……間に合ったみたいだね"
ゲーム開発部一行が姿を現した。
「……そう。ヤンは負けたのね」
「アイツが倒されるとは思わなかったな」
管制塔へと乗り込んだ一行は、すぐに辺りを見渡し……様々な機械に接続されたアリスを見つけた。
「アリス!」
「アリスちゃん……!」
「ま、間に合った……み、みたい」
急いで彼女の元へと向かおうとした一行に対し、その道を塞ぐかのようにローランが立ちはだかる。右手に握った斧を構えたローランに気づいた先生は……
"……みんな一旦下がって!"
咄嗟に全員を下がらせた。
「……斧? ……いやでも、あの防具はクラス5幻想体の――」
"……アマノちゃん?"
「げっ、代理人! いつものスーツじゃないってことは、チートの奴じゃん!!」
「アリスちゃんはまだ無事みたいだけど……」
「け、警戒しないと……」
ローランが使う、
「久しぶりだな、先生。まさかヤンを倒してここまで来るとは、思わなかったよ」
"……嘘ばっかり。監視カメラで私達のこと見てたでしょ?"
「……代理人。私たちの芝居は無駄だったみたいね」
「……まぁ、流石に気づくか」
"ノアちゃんから聞いていたからね"
「……引くなら今のうちだぞ。監視していたことが分かっているなら……戦闘において情報一つでどれだけ優位が取れるかも、分かるだろ?」
"……まさか、私が生徒を見捨てて引くと思う?"
「……まぁ、引かないだろうな」
"絶対引かないよ。……それに代理人こそ、この人数相手に勝てると思ってるの?"
ゲーム開発部の三人に加え、アリウススクワッドの4人、それからE.G.Oを発現し手にしたトランプを代理人へと向けるコユキ。
9対1
人数差で見れば、圧倒的に先生達が有利と言えるだろう。加えて、
――三人共が、問題なくE.G.Oを使えればの話だが……
「にはははは! 久しぶりですね! 保証人!」
「黒崎……お前の借金を立て替えたのが誰か、もう忘れたのか?」
「おっと、脅そうとしてもそうは行きませんよ! 私の借金にリオ会長が横領したお金も含まれていたって、知ってるんですから!」
「……」
「そ、れ、に! 今日の私は絶好調なんです! いくら代理人でも、私を止めることなんて出来ないですよ!」
「あまり慢心はしない方がいいぞ、黒崎」
ローランの忠告が聞こえなかったのか、余裕そうな笑みを浮かべるコユキ。……そんな彼女とは対照的に、警戒心を高めていたアリウススクワッドの4人は――
――ローランが着ている服を目にし、言葉を失っていた
「あ、あの姿は……トリニティの……っ」
「嘘…………なんで、代理人がアレを持って……」
「まね……きん……」
「なんで……っ、なんで今になってお前が――ッ」
トラウマは簡単には克服できない
いくらR社で非人道的な孵化を終えたアリウススクワッドだとしても、幼いころの心的外傷までは拭えない。ましてやソレが、自分達が地獄のような日々を送るきっかけになったものであり……ソレのせいで何人もの隣人が殺されたとなれば――
――思い出した時の負荷は、相当なものだろう
"み、みんな……!? い、一体どうしたの!?"
シスターフッドの前身組織、ユスティナ聖徒会。第1回公会議の後、反発するアリウス分派を粛清するために用いられた教義の人工天使。敵対するゲヘナの悪魔を殲滅するために、ゲマトリアのマエストロから買い取ったソレは、本来の目的には使われず……アリウス分派を潰すために用いられ――
――アリウス分派に所属していた生徒の9割が、行方不明となった
その影響は当時の生徒のみに限らず、旧L社と人身売買を行っていたユスティナ聖徒会は……トリニティを離れ、アリウス自治区として再建し始めた生徒達へと追撃。幼い子供から力を持たない大人まで無差別に攻撃し、まだ幼かったアリウススクワッドの彼女たちにトラウマを植え付けていた。
特徴的な白いマネキン。鳴り響く不協和音。思い出すだけでも気分が悪くなるソレを……思い出してしまった。無数の鎖によって吊るされた白い服を着るローラン。その特徴的な白い服装、右手の斧とは別に……左手に握られた指揮棒。
耳鳴りのように響く、不協和音
脳裏に浮かぶ惨劇
当時の光景を思い出したアリウススクワッドは、戦意を失ったかのように持っていた武器を手放し震えていた。
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