黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~起動~ 造られた天使

 

 

「これは……特異点による干渉ですか。……無駄なことを。アインが人工物である私に子供という解釈を与え、神秘の象徴たるヘイローを付与した理由を――」

 

 

 

――考えなかったのですか?

 

 

 

「あ、アリス……? 一体何を……」

 

「お姉ちゃん、これ……アリスじゃないよ……!」

 

 

 

「翼が総力を挙げて神秘への干渉を研究していたというのに……特異点を用いた道具程度で私をどうにかできると、本当に思っていたのですか?」

 

 

 

 

 

 

――時間が、止まらない

 

 

 

 

 

 

アリスに繋がれた装置……要塞都市エリドゥから、初期起動用のエネルギーを充填していたことが仇となった。今やエネルギー補充システムは、エリドゥへのセキュリティホールと化し……アリスからのハッキングを受けてしまっていた。

 

部屋の照明からエレベーターまで、ありとあらゆるものがハッキングされ……モニターにDivi:Sionの文字を映し出す。

 

 

 

「そんな……リソースを……利用された? それ以前に、彼女の時間が止まらないなんて……」

 

「リオ様、命令を。今すぐ彼女を――」

 

「止めておけ。翼に対抗できる何かをアイツが持っている以上、俺たちではどうにもできない。……流石にこれは想定外だ」

 

 

 

尋常ではない慌て方に、流石に危機感を感じたのか……リオへと投げつけようとしていたトランプをアリスへと構えなおすコユキ。

 

 

 

「な、なんなんですかぁー!? 翼って……その言葉を聞くだけで、手足を斬り落とされた記憶が思い出されるから、やめてほしいんですけどー!?」

 

 

 

コユキが騒いでいる間にも、エリドゥへのハッキングは止まらない。要塞都市の管理者権限が、刻一刻と書き換えられていく。

 

 

 

……と、その時、

 

 

 

 

 

 

「手遅れでしたか……。……遅くなり申し訳ございません、リオさん」

 

「セイアさんの予知通りに、なってしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

エレベータが到着し、中からヤンとノアが深刻そうな表情をしながら、現れた。

 

 

 

「なんだ、生きていたのか」

 

「……えぇ、何とか見逃して貰えましたよ」

 

「そうか。……こっちの状況は見ての通りだ。リオが用意したT社の製品は、アレに通用しなかった」

 

「そのようですね……。……であれば、僕のE.G.Oで行動だけでも縛って――」

 

「――やめておけ。E.G.Oを広めた奴が、自分の作品に耐性をつけていないと思うか?」

 

「……今、なんて言いました? E.G.Oを、広めた……? …………待ってください、もしかしてあの少女は――」

 

 

 

――図書館が関係しているのですか?

 

 

 

「……? ……まぁ、そんな所だ」

 

 

 

「……なるほど。貴方がリオ会長に手を貸していたのは、そう言う理由ですか」

 

「お前は……」

 

「初めまして、代理人。私は――」

 

「ノア」

 

「あら、ご存じでしたか」

 

「さっきリオに聞いたよ。……まぁ、お前が使っていた特異点を見て気づいたが――」

 

 

 

――お前が二人目なんだろ?

 

 

 

「えぇ、そうです。……もしかして、ヒマリさんから聞いていましたか?」

 

「あぁ。T社を折った時に少しな」

 

「なるほど。その節はお世話になりました」

 

「……まぁ、俺としても翼を放っておけなかったからな」

 

 

 

などと会話を続ける3人だったが、アリスへの警戒は怠らない。特異点を用いたT社の製品が通用せず、彼女に図書館が関わっているとなれば……その危険度は計り知れないだろう。

 

 

 

「……問題が1つ消えたな。図書館は覗いていたみたいだが……組織はL社について、詳しくない」

 

 

 

「やめてアリス! 正気に戻ってよ!」

 

「……私は、アリスではありません。また、王女にそのような名称は不要です。名前は存在の目的と本質を乱します。余計な解釈を付与しないでください」

 

「あ、アリス……?」

 

「私はアリスではありません。――私は光を導く者。星々の座標を測定し、星辰の位置を観測する者。王女を助け、何れ王女が戴冠する玉座をつなぐ鍵です」

 

「か、鍵?」

 

「何を言ってるの……? ねぇ、あなたは誰!? アリスちゃんを返して!」

 

「……」

 

「私に識別名称を定めるのであれば、Key……もしくは――」

 

 

 

――アンゲロスと、お呼びください

 

 

 

"Key……? アンゲロス……?"

 

「……それでは、残りの作業を完遂させましょう。リソースを拡大。……現時刻をもって、プロトコルATRAHASIS稼働。コード名、アトラ・ハシースの箱舟起動プロセスを開始します」

 

"君は一体何を……"

 

「プロセスサポートの為、追従者(Divi:Sion)を呼び出します。……行動開始。創造者の元へと至る道筋を探すのです」

 

 

 

Keyによってハッキングされたエリドゥへと、無数の追従者(Divi:Sion)が出現。ヴェリタスの部室でみた紫色の異質な機械の塊が、モニターへと映し出され……エリドゥの街を破壊し始めた。

 

街を飲み込むかのように破壊し、その残骸を分析。何かを探すかのように調べたのち、街の破壊へと戻り……その作業を繰り返していく。

 

 

 

"リオちゃん……一体これは何が起きてるの? アリスは……"

 

「……私の計画は……無駄だったの……?」

 

"リオ……ちゃん……?"

 

「私は、キヴォトスに終焉がもたらされることを懸念して、この要塞都市エリドゥを建設した。でも……むしろ、そのせいで……この都市が……終焉の、発端に……? 私は、間違っていた――?」

 

 

 

膝から崩れおち、うわ言の様に独り言を呟くリオ。その様子には……既視感があった。……これは、この……まるで見えない誰かと話しているかのような……この様子は……

 

 

 

"……ダメ! リオちゃん! その声に耳を傾けたら――!"

 

 

 

 

 

 

――取り返しのつかない(ねじれてしまう)ことになる

 

 

 

 

 

 

そう危惧した先生が、リオを止めようとするが……その言葉が届くよりも早く……

 

 

 

「それだけは、ダメ」

 

 

 

(ガンッ!)

 

 

高速で接近したアツコがE.G.Oを発現させ、手元に現れた白い十字架でリオの頭を殴り抜いた。いくら神秘による防護があるとはいえ、あまりの衝撃に正気に戻ったのか……リオは痛そうに頭を押さえていた。

 

 

 

「先生。この人は私が何とかするから、あっちをどうにかしてあげて」

 

 

 

アツコの視線の先、無数の機械に繋がれたKeyによって、エリドゥが侵食されていく。

 

 

 

「リソース確保進捗率……73%……89%……」

 

 

 

――99%

 

 

 

「ユウカちゃん、今です。エリドゥの電力を全て落としてください」

 

「分かったわ!」

 

 

 

通信機越しにユウカへと指示を出したノア。その言葉を合図に、要塞都市エリドゥの電力が一つ残らず落とされた。

 

 

 

「……リソース確保失敗。システムシャットダウン」

 

 

 

みんなの付けている通信機へと響くユウカの声。どうやら彼女もエリドゥへと訪れていたらしく……彼女の手によってKeyによるハッキングは止められた。

 

 

 

「みんな、大丈夫!?」

 

「ユウカ……!」

 

「げっ……ゆ、ユウカ先輩!?」

 

「……よ、よかった。大丈夫みたいね……。……と言うか、コユキやノアのその姿と言い……い、色々と聞きたいことがあるのだけれど!?」

 

「フフッ、それについては、また後程教えてあげますね」

 

「……とにかく! 知らない人もいるけれど、リオ会長!? 後で説教ですからね!」

 

 

 

この鬼気迫った状況で普段と変わりない、聞き慣れた声を聴けることがどれだけありがたいか……。緊張が少し解れたゲーム開発部は、改めKeyへと向き直る。

 

 

 

「……リソース確保プロセスエラー。緊急状況発生Divi:Sion電源、プロトコル実行者を保護するためエリドゥ中央タワーに集…………邪魔者? 都市内の残存兵力ゼロ。論理エラー発生。確認の為、画面を表示します」

 

 

 

焦ったかのように声を上げたKeyによって、中央タワーの外の様子がモニターへと映し出される。そこに映っていたのは、街を破壊するDivi:Sionの軍勢を相手に、一歩も引けを取らず……一体ずつ確実に倒していくエンジニア部と――

 

 

 

――改造されたアバンギャルド君の姿だった

 

 

 

脈動する心臓のようなものを胸に付けられ、白い眼玉の様な球体を頭に乗せ……口元に赤い液体の入った瓶を突っ込まれた、悲惨としか言いようのない改造をされたアバンギャルド君の様子に……アツコのおかげで正気に戻ったリオは、再び言葉を失っていた。

 

 

 

「私の……アバンギャルド君が……」

 

 

 

 

 

 

「おっと、こちらにも良い素材が歩いていますね!」

 

「あちこちに不思議なセンスの機械がいっぱいあるね」

 

「恐らく……これが会長の言っていた、廃墟から溢れた脅威なのだろうね。実に珍しい素材じゃないか」

 

「取り放題だね」

 

「宇宙戦艦のパーツとして、代用させて頂きますよ!」

 

「アバンギャルド君のおかげで、試作品のテストもできて一石二鳥だね」

 

「私たちの作品を持って来た甲斐があったとも。……本当は列車のテストもしたかったけれど……」

 

「ウタハ先輩、アレはまだ安全性が確認できてないからダメ」

 

「私たちが轢かれたら洒落になりませんからね!」

 

「……仕方ない。このアヴァンギャルド君Mk.2で我慢しようじゃないか」

 

 

 

などと話しながらDivi:Sionを倒し、その素材を剝ぎ取っていくエンジニア部。剝ぎ取った素材をその場で加工、変形させ……アバンギャルド君の装甲としてはめ込んでいく。

 

 

 

「アヴァンギャルド君を改造して……倒した相手の素材で宇宙戦艦を作る……??? え? 何言ってるの?」

 

"えーっと……ま、まぁ、あの機械の残骸を放置するよりは良い……のかな?"

 

「素材って、ゲームじゃないんだから……」

 

 

 

「理解不能。状況判断不可。命令修正および再実行。追従者は想定外の兵力と戦闘を避け、エリドゥ中央タワーに集結……」

 

 

 

常識の範疇を超えた現状に、Divi:Sionへと新たな指示を出そうとしたKeyだったが、その言葉は――

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんが、その子たちはここまで来られませんよ。タワーの入り口でしたら、エイミとC&C、それから……組織のメンバーで封鎖しておりますので」

 

 

 

 

 

 

――室内に響いたヒマリの声によって、遮られたのだった

 

 

 





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