黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~勇者~ 頼れるパーティーメンバー

 

要塞都市エリドゥ・中央タワー入口

 

 

誰一人として中に入れないよう、指示を受けたC&Cとエイミが入口を塞ぐ中……突如として目の前に現れた2人の生徒に、彼女達は驚きを隠せなかった。

 

 

 

(ヒュンッ)

 

 

 

「セイアさん、到着しました。こちらがヒマリさんから指定された座標です」

 

「あぁ、ありがとうセリナ。……さて、ヒマリからある程度の事情は聞いているが……君達はミレニアムのC&Cと、ヒマリの助手で間違いないかい?」

 

 

 

瞬間移動のように何も無いところから現れた2人の生徒に、言葉を失っていた一同だったが……常識離れしたE.G.Oなどを散々見せられた結果、立ち直るのにそう時間は掛からなかった。

 

 

 

「あぁ、C&Cのリーダー美甘ネルだ。お前らがヒマリの話にあった協力者、らしいな」

 

「その制服は……トリニティの生徒ですか」

 

「……代理人が使っていた瞬間移動みたいなものか?」

 

「あれ~? 君って確か、トリニティのティーパーティーに居た人だよね?」

 

「……部長の人脈がよく分かんない」

 

 

 

ミレニアムの問題なのに、どうしてトリニティが……それもティーパーティーのメンバーがこんな場所に居るのかと、疑問に思ったが――

 

 

 

「その様子を見るに、君達は組織について教えられていないみたいだね。私達は……そうだね。一言で表すのなら、学園間の垣根を越えた同志……と言ったところだろうか?」

 

「仲の良いお友達みたいなものですね。お友達であるヒマリさんとノアさんがお困りのようでしたので、お手伝いに来ました」

 

 

 

――友達が困っていたから助けに来た

 

 

 

と言う、明らかにそれだけで済むレベルの話ではない言い訳をされてしまった一同。色々と言いたいことはあったが、少なくとも敵では無いということだけは、共有できた。

 

その後、軽い自己紹介を済ませ、自分達が協力者であることを示したセイアとセリナは、目の前に無数に存在する紫色の機械へと向き直った。

 

 

 

「セイアさんの予知通りでしたね」

 

「私のはもう、予知ではないよ。あくまで突出した感……第六感とでも言おうか。その感が働いたに過ぎないさ」

 

 

 

などと話しつつ、自身の愛銃であるハンドガンを構え、引き金を引くセイア。明らかにハンドガンの射程ではない距離からの発砲であったため、本当に手助けになるのかと……実戦経験を心配した一同だったが、数度の発砲を得て、ある違和感に気がついた。

 

 

 

「弾丸が発射されていない? ……いや、確かに発砲自体はされているが――」

 

「にわかに信じ難いですが……引き金を引く度に敵が倒れています」

 

「目に見えない銃弾?」

 

「……あ、わかった! 君の瞬間移動? で、銃弾を飛ばしてるんでしょ!」

 

 

 

セイアが引き金を引く度に、Divi:Sionが輝きを失い倒れていく。そんな不思議な光景の原理に、真っ先に気がついたのはアスナであった。

 

 

 

「正解だ。これだけの情報で、よく分かったものだ」

 

「あの機械の内部に、銃弾の威力を保ったまま跳躍させています。どれだけ外部装甲が硬くても、距離が離れていようとも……銃弾そのものを内部に跳躍させれば、内側から破壊できますので」

 

 

 

よく気付けたね……と、軽く話しては居るが、一同はその謎すぎる原理と危険性に顔が青ざめていた。これはつまり、彼女達はやろうと思えば――

 

 

 

――自分達の身体の中に銃弾を飛ばすことが出来る

 

 

 

と言うことになる。……どれだけ神秘を込めて身体を守ろうとも、内側から内臓をズタズタにされたら……いや、それどころか直接心臓を撃ち抜かれたら……一溜りもないだろう。

 

 

 

「さてと、それでは防衛戦を始めようじゃないか。セリナ、君が座標を演算している間、傷一つ付けさせないと約束しよう。体力的にも精神的にも、辛くなったら言ってくれたまえ。その時は、私のE.G.Oで疲労を取り除こう」

 

「分かりました! でも、この程度の消耗であれば、特に問題ないですね!」

 

 

 

セイアの掛け声を合図に防衛戦……と言う名の蹂躙が始まった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「ヒマリ先輩!?」

 

「どうしてここに……?」

 

「うふふっ。なんだかんだありまして~とでも言いましょうか?」

 

「……」

 

「冗談です。……そうですね、私も組織の一員だからと言っておきましょうか。状況についてはノアから全て聞いていましたので」

 

「……」

 

「さて、これがKey……無名の司祭のオーパーツを稼働させるためのトリガーAI……だと思っていたのですが、どうやら実情はもう少し複雑みたいですね」

 

「そうみたいですね。彼女の出自には図書館が関わっているとお聞きしましたので」

 

 

 

そう言い、ローランへと視線を向けるヒマリとノア。何故ローランがリオの味方をするのかと疑問に思っていたが、アリスが……Keyが図書館と関係があるとなれば、その理由も理解できるだろう。

 

 

 

「まぁ、内容については後で教えてやる。それよりも今はコイツをどうにかしないとだろ? ……何か手段があるならいいが、特に無いようなら――」

 

「落ち着いてください、代理人。この天才清楚系病弱美少女ハッカーが、この程度の事態を予想していないとでも思いましたか?」

 

「……ならいいが」

 

「えぇ、対処法は簡単です。Keyの起動で、データベースの深部に隔離されてしまったアリスを起こすのです。そうすれば、この事態を止めることができるでしょう」

 

 

 

アリスの精神世界へとダイブし、深層世界に眠るアリスを連れ戻す。これが最も簡単な対処法だとヒマリは言うが……

 

 

 

「そんなこと……本当にできるの?」

 

「アリスを、連れ戻せるってことですか!?」

 

「できますとも。リオ、ダイブ設備ぐらいありますよね?」

 

「……えぇ、あるわ。でもそんな事、出来るわけない。仮にできたとしても、下手すれば二度と戻ってこれなくなってしまうのよ。……そもそも、そんなこと一体誰がやるというの」

 

「現状、アリスを連れ戻せるのはゲーム開発部しかおりません。危険は伴いますが……それ以外に方法はありません」

 

 

……

 

 

「……やります。アリスちゃんを連れ戻せるなら」

 

「そう言うと思っておりました。それでは、私が今からアリスの精神を分析して隙間を作ります。皆さんはアリスの精神世界に入って、彼女を連れ戻してきてください」

 

 

 

その言葉にうなずく3人。彼女たちに続くように、先生もダイブ装置を手に取り装着する。

 

 

 

"私も一緒に行くよ。何かあったら大変だし、そんな危険かもしれないことを、生徒達だけに任せる訳にはいかないからね"

 

「さすが、それでこそ先生です。それでは、始めましょう」

 

 

 

アリスにつながれた装置を操作し、ダイブ装置を起動。装着した4人をアリスの精神世界へと送り込むヒマリ。

 

 

 

「……解決する手段があるなら、俺が手を出す必要もないか」

 

「い、今がチャンス……」

 

「黒崎。余計な事をしないと約束できるなら、お前の借金の半分をなかったことにしてや――」

 

「はい! 大人しくしていますね! 債権を偽造した私が悪かったです!」

 

 

 

E.G.Oを解除し、その場に座り込むコユキ。その様子を見てアリウススクワッドの4人も警戒を解くのであった。

 

 

 

「さてさて、皆さんが戻ってくるまで暇になってしまいましたね」

 

「……ヒマリ。……あなた達のいる組織とは、どういったものなの?」

 

「……残念ながら教えることはできません。別にあなたに意地悪をしたい訳ではないんですよ。ただ――」

 

 

 

――翼という企業が、キヴォトスに存在することに違和感を覚えない限り

 

 

 

「教えることはできません。……組織についてどうしても知りたいのなら、正常なキヴォトスの様子に早く気が付いてください。無名の司祭……そのカギについて一早く気づけたあなたなら、少しの気づきで違和感を抱けるはずです」

 

「……分かったわ」

 

「よろしい。……それで、代理人。Keyの意識がない今のうちに教えてくれませんか? 彼女と図書館がどう関係しているのかを」

 

「……先生たちが無事に戻ってきたら教えてやる。絶対に戻ってこられるという確証がない以上、油断する訳にもいかないからな」

 

 

 

デュランダルを取り出し、いつでも動けるように備えるローラン。その様子を見ていたヤンも同じく、Keyへと警戒心を向けた。

 

 

 

「……お二人とも、万が一を危惧するのは分かりますが、もう少し先生たちを信頼してもよろしいのでは?」

 

「……まぁ、何かあってからでは遅いですからね」

 

「同感だ」

 

「もう……」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

それから1時間程経過しただろうか? 暇すぎて寝落ちしかけているコユキや、今のうちに軽く休息を取っているアリウススクワッドを横目に、警戒を続けていたローランとヤンは……

 

 

 

アリスの指がピクリと動いたのを、見逃さなかった

 

 

 

「起きましたね。上手くいっていると良いのですが」

 

「お前ら構えろ。もしもアリスの意識が戻っていなかったら……」

 

 

 

それぞれが武器を構える中、ハッキングによって占領されていたモニターが元に戻り……モニターに映し出されていた光景から、Divi:Sionの姿が消えていく。機能を停止した……というより、まるで元から存在しなかったかのように、光となって溶けていく。

 

 

 

「どうやら、その心配はいらないみたいですよ」

 

「えぇ、彼女たちがKeyからアリスを取り返したのでしょう」

 

 

 

"ただいま。無事に戻ってきたよ"

 

 

 

いつの間にか意識を取り戻した彼女たちが、アリスの傍へと駆け寄っている。先生も特に問題なく目を覚まし、彼女たちの様子を伺っていた。

 

 

 

「……本当に、こんなことが可能だなんて」

 

"……うん、出来るよ"

 

「しかし、私の計算では……こんな……、どうやって……」

 

"あの子たちに、不可能はないんだよ。……だって、あの子たちは"

 

 

 

 

 

 

――勇者とそのパーティーメンバーだからね

 

 

 

 

 

 

「「「アリス(ちゃん)!!!」」」

 

「……はい! 勇者アリス、ただいま帰還です!」

 

 

 

勇者は仲間の力を借りて、現実へと帰還した。共に喜びを分かち合い、周りの皆がその光景を微笑ましそうに見つめている。

 

 

 

「……あれ? そういえば、アリスの勇者の剣は――」

 

「――それなら、ここにあるぞ」

 

 

 

ローランもデュランダルを手袋へと収納し、代わりに回収していたスーパーノヴァを取り出す。

 

 

 

「勇者の剣! 代理人が預かっていてくれたのですね!」

 

「あぁ。流石にこの重さの武器を持てる奴なんて、他にいないからな」

 

 

 

そう言いながら、近づいてきたアリスへとスーパーノヴァを――

 

 

 

「ところで、さっきのKeyって奴はもう表に出てこないのか?」

 

「はい! 勇者であるアリスが倒したので、もう乗っ取られることはありません! 今はアリスの中で大人しくしています!」

 

「というと、意識自体は残っているのか?」

 

「アリスが倒したので、今はアリスの配下です! アリスの中で反省中です!」

 

 

 

――手渡さなかった

 

 

 

「……? 代理人?」

 

「アリス。無事に戻ってきて何よりだが、預かっていた勇者の剣をタダで返す訳にはいかない。代わりに俺からのクエストを一つ達成したら返してやる」

 

「――! クエストですか!? 代理人からは初クエストですね! 一体どんな内容ですか?」

 

「と言っても、そんなに難しい内容じゃないぞ。アリス、お前には――」

 

 

 

楽しそうに話すアリスを後目に、手袋へとスーパーノヴァを仕舞い込んだローランは――

 

 

 

 

 

 

――取り出した一枚の招待状を、開封した

 

 

 

 

 

 

「――俺達の接待を受けてもらう」

 

 

 

 

 

 

ローランがそう言った直後、ローランとアリスの背後……先ほどまで何もなかった空間に、突如として扉が出現し――

 

 

 

 

 

 

――その向こう側から、二人の人物が現れた

 

 

 

 

 

 

「分かりやすい合図だったわね。……迎えに来たわ」

 

「ご苦労だったな、ローラン」

 

 

 

 

 

 




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