黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~終局~ M区 時計じかけの花のパヴァーヌ編

 

Keyから語られるアインの目的。その為に造られたという彼女と、その為にキヴォトスで何を行ってきたのかを聞かされた3人は、彼女の話に頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 

――1日目――

 

「つまり……本の世界(キヴォトス)にいるアインの目的は、存在するかも分からない観測者の認識を書き換えることなのね」

 

「あの人は、上位存在を殺すというのか。……確かに、そのような存在が居るのならば……カルメンの死を――それどころか、研究所の結末を変えることも可能ではあるだろう」

 

「言ってることの半分も理解できなかったんだが……つまり、なんだ? 居るかも分からない神に会いに行くってことか?」

 

 

 

Keyから語られたアインの最終目的。自分が存在する物語の作者を見つけ出し、修正を求めるというもの。次元を超え、星々をも超えるアインの計画――

 

 

 

――月面計画(Project Moon)とはよく言ったものだ

 

 

 

「私は……私たちは、彼女が目指すべき星を――次元を見つける為に作られました。星々の座標を測定し、星辰の位置を観測する者。光の無い世界を特定し、新たな光を齎す為に造られました」

 

「光を齎す……。……まさか、この本の世界(キヴォトス)に光の種を蒔いたのは――」

 

「アインです。以来、キヴォトスは正常な動作を停止しました。翼と呼ばれる組織が……()()()()()()()()()、幻想体と呼ばれる怪物が現れ、それに対抗するための組織が作られ……楽園はその姿を歪めました」

 

「あの人は一体どこから光を……いや、それ以前に――白夜を起こすには莫大なエネルギーが必要な筈だ」

 

「詳細までは存じません。その時はまだ、私は造られていなかったので。彼女に付き従う無名の司祭が関係していると思いますが、具体的な内容までは――」

 

 

 

Keyのおかげで、アインの目的もKeyが造られた理由も理解できたが……ローランはともかく、アンジェラとホクマーは、彼女の話の中で一つ……どうしても気になる点があった。

 

 

 

「ずっと気になっていたのだけれど、この本の世界(キヴォトス)のアインって……女性なの?」

 

「奇遇だなアンジェラ。私もずっとそこが気になっていた。君はどうしてあの人を彼女と呼称する?」

 

「……?」

 

 

 

――アインは女性では?

 

 

 

「私と同じか……それよりも幼い姿をした少女ですが?」

 

「「…………」」

 

「……? どうした、お前ら?」

 

 

 

絶句するアンジェラとホクマー。た、確かに、アインは複数の姿(あまたの可能性)を持っていたが……幼い少女の姿だとは思っていなかった。アインの趣味なのか分からないが……

 

 

 

「やめましょう、ホクマー。これ以上考えると自我が崩壊する恐れがあるわ」

 

「……あぁ。この話はここまでにしよう」

 

 

 

一度話を切り上げるため、適当な本から飲み物を取り出したアンジェラは……飲み物を3人へとふるまう。……その後、情報の対価としてアンジェラたちの知るアインという人物についての情報を、Keyへと話すのであった。

 

 

 

 

 

 

――2日目――

 

「王女と私を分離……ですか」

 

「図書館の力を使えば可能よ。私の予備機体(L社時代の体)を用いてあなたを司書補(エージェント)として登録したのち、アリスとそっくりの姿に変化(カスタマイズ)させるわ」

 

「……まぁ、お前もアリスと直接話したいことがあるんじゃないか? アリスも、昨日の俺たちとの会話を聞いていただろうし」

 

「違う世界とは言え、あの人の作品だ。……丁重に扱うと約束しよう」

 

 

 

思わぬ提案に考え込むKey。確かに、王女とは別の個体として行動できるのであれば、万が一の際に直接彼女を守ることができ、鍵としての役割も果たせはするが……

 

 

 

「……分かりました。私としても願ってもないことです。王女と分離できるのであれば、王女の意識を無理やり奪うことなく……私自身の手で守れますので」

 

「……よほど、アリスのことが気に入っているんだな」

 

「当然です。私は王女を導く鍵。彼女を守るのは……私に備え付けれた本能のようなものです」

 

「……まぁいいか。んじゃ、アンジェラ。やってくれ」

 

「分かったわ」

 

 

 

現在の体をアリスに、彼女の中にある二つ目の殻(Key)を司書補として登録し、その外見をアリスと瓜二つになるよう調整する。慣れない作業に丸一日かかったが、その結果として――

 

 

 

「ぱんぱかぱーん! ケイが仲間になりました!」

 

「け、ケイ? 王女よ、私の名前は――」

 

「ケイはケイです! キィだと呼びにくいですし、私はアリスです! 王女ではありません!」

 

「……。……分かりました。今後はアリスと呼びます」

 

「はい!」

 

「……最初はどうなるかと思ったが、意外と仲良さそうだな」

 

「ケイの事情についても……内容は全然分からなかったけど、理解できました! ケイは魔王ではなく、魔王になるよう作られたのだと理解しました!」

 

「……」

 

「……二人が納得しているのなら、私から言うことはないわ。アインについての情報をまとめるから、その間は好きにしなさい」

 

 

 

(パチンッ)

 

 

 

アンジェラが指を鳴らすと、彼女の姿が宗教の階から消えた。

 

 

 

「好きにしろ……と言われまして、私は何をすれば――」

 

「……とりあえず、アレだ。アリス、これでクエストは達成だ。スーパーノヴァは返しておくぞ」

 

 

 

手袋からスーパーノヴァを取り出し、アリスへと手渡すローラン。クエスト達成と聞いて笑顔を浮かべたアリスは、手渡されたスーパーノヴァを背負った。

 

 

 

「クエストクリアです! そうと決まれば代理人、アリスはモモイたちの元に帰りたいのですが……」

 

「まぁ、待て。折角だからもう少し図書館を見て回らないか? ケイも、その身体に慣れる必要があるだろうし……知りたいこともあるだろ?」

 

「……そう、ですね。都市と呼ばれるこの世界についても、興味がないといえば噓になります。調べて良いというのであれば、調べさせていただきます」

 

「――では、その間に私は君のための武器を作ろう。あの人の作品が破壊されるなど、あってはならないことだ」

 

「……ほんと、お前はアインのことが好きだよな」

 

「好きではない、尊敬しているのだ。……私だけは、あの人を信じていましたから」

 

 

 

そう言ったのち、ホクマーは宗教の階を後にし……哲学の階へと足を進めた。

 

 

 

「あいつ等……俺に押し付けたな? ……まぁいい。んじゃ、歴史の階から案内してやる」

 

 

 

アリスとケイを引き連れ、ローランは図書館内を巡るのであった。

 

 

 

 

 

 

――3日目――

 

「「可愛い~!」」

 

 

 

歴史の階へと足を運んだローラン達を出迎えたのは、指定司書であるマルクトと偶然訪れていたホドだった。

 

 

 

「マルクトはともかく……ホドも来ていたのか」

 

「うん。本の整理の為にマルクトの所に来たんだけど」

 

「ローラン! この子達って本の中に居た子?」

 

「あぁ。……こっちがアリスでこっちがケイだ。目の色とヘイローっていう頭の上の輪っかの色で判別してくれ」

 

 

 

性格こそ違うものの、見た目は全く同じアリスとケイ。見る人によっては見分けがつかない事もあるだろう。

 

一通りの挨拶を済ませたアリスは2人にキヴォトスの様子を語り、ケイは都市の歴史に関する本を読み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

――4日目――

 

「私に、ですか?」

 

「あぁ。君は自分の武器を持っていないだろう。……受け取りたまえ。これは、私とビナーで作り上げた傑作だ」

 

 

 

ホクマーから手渡された1冊の本。真っ黒な装丁にL社のロゴが刻まれたその本は、かなり分厚く、ギリギリ片手で持てるかどうかといったところだ。

 

 

 

「これは?」

 

「この本には記憶を元に抽出した、L社で管理していた幻想体のE.G.Oが納められている。必要に応じて使うといい」

 

「……!」

 

 

 

ただでさえ強力なE.G.Oが何種類も納められていると言う本は、扱い用によっては自治区を……キヴォトスを破壊し尽くす事も可能だろう。

 

 

 

「……いいのですか? こんなモノを私に渡して。話通りならこの本にはL社の特異点が……アインにも対抗出来るであろう力があると思うのですが」

 

「構わない。あの人の……先生の作品に送る私からのプレゼントだ。この本を使って、あの人を見つけ出してくれたまえ」

 

「……分かりました。……アインを見つけたら、殺す前に図書館に連れてくると約束します」

 

 

 

渡された本を大切に抱え、ホクマーへと一礼をするのだった。

 

 

 

 

 

 

――5日目――

 

「……で? なんで私は、また接待をさせられているんだ?」

 

「……1番経験を積めるから?」

 

「お前が自分の階でやればいいだろう」

 

「まぁそう言わずに。……見込みは悪くないだろ?」

 

「……あのホシノとか言う子供よりは劣るが……確かに見所はある。それに、L社のE.G.Oを使えるのは想定外だった」

 

「ホクマーが作ったあの本な。俺も初めて見たよ」

 

「正確には、ホクマーとビナーの合作だと言っていました」

 

「……アイツも1枚噛んでやがったか」

 

 

 

タバコの吸殻を本の山へと放り投げ、大剣を構えるゲブラー。彼女の元を訪れたローランは、アリスとケイ、2人を相手に接待をするようゲブラーに頼み……彼女達の特訓が始まった。

 

 

 

「ケイ! 後衛はアリスに任せてください!」

 

「分かりました。私が前衛を努めます」

 

 

 

ホクマーから貰った本を開き、接近戦に適しているであろうE.G.Oを選び、ページを破りとる。破り取られたページはケイを包み込み、その姿を変質させた。

 

 

 

 

 

 

 

―― 鮮血(赤い靴) ――

 

 

 

 

 

 

深紅の外套を纏い、まるでハイヒールの形の様に欠けた、赤い手斧を装備したケイ。一瞬の内に姿を変えたケイの様子に、本人自身も驚いていた。

 

 

 

「これが、幻想体のE.G.O……」

 

「見覚えがあるな。……赤い靴か」

 

「代理人の本みたいですね! 一瞬の内にジョブチェンジが可能なんて! 羨ましいです!」

 

「いや、流石にこれは……アインって奴が造ったとは言え、図書館とは関係のない子供に渡して良かったのか?」

 

「それを言うなら、お前も元部外者だろ。アンジェラが許可してるなら、私らが口を挟む問題じゃない」

 

「……なぁ、ケイ。アンジェラはこの事を知っているんだよな?」

 

「……いえ、知らないと思います。ホクマーに渡された時、アンジェラには伝えなくて良いと言われましたので」

 

「「……」」

 

 

 

L社の技術の集大成と言っても過言では無い幻想体のE.G.Oを、勝手に貸し出したと言うホクマーとビナーに呆れて言葉が出ない二人。この事をアンジェラが知れば、間違い無く怒るだろうが――

 

 

 

「私は何も聞かなかった。……アイツの驚く顔が楽しみだな。お前も余計な事は言うなよ」

 

「マジかよ……」

 

 

 

――アンジェラに報告などせず、黙認するのであった

 

 

 

 

 

 

―6・7日目――

 

ゲブラーの元で接待を繰り返し、彼女から都市でも生きて行けると保証された二人は、再び図書館の入口へと足を運んだ。

 

 

 

「んじゃ、キヴォトスに戻るぞ。ケイに関しては、シャーレに所属する生徒として登録するからな」

 

「分かりました。……アリスの傍に居られるのなら、所属は何処でも構いません。代理人、貴方には借りもありますし、必要に応じて手を貸します。貴方と共に行動するのが、アインへと辿り着く為の最適解な気がしますので」

 

「分かった。俺としても、戦力が増えるのはありがたい。翼の特異点に対抗出来る以上、頼りにさせてもらう」

 

「その時は、アリスも手を貸します! ゲブラーとの特訓を積んだ今のアリスは、上位ランカー系勇者です!」

 

 

 

お互い手を繋ぎ、笑顔で頷く二人。そんな様子を見ながらローランは、キヴォトスに戻る手段である招待状を――

 

 

 

「……そう言えば、向こうは今どうなってるんだ?」

 

 

 

アンジェラから向こう世界へ行くタイミングを図る為にと、渡されていた本を開いたローランは――

 

 

 

「……は? ……先生が、行方不明?」

 

「「!?」」

 

 

 

 

 

 

――状況を把握する為に、渡された本を読み返すのだった

 

 

 

 

 

 

~vol.2.2 M区 ゲーム開発部編 完~




これにて、 時計じかけの花のパヴァーヌ編、完結となります!

次回からは最終章へと突入いたします。
(カルバノグの兎については、2章のみメインとして扱います)



次回執筆予定は、最終章予告編となります。



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