今話より、最終編スタートです!
ローランがアリス達を連れ図書館へと帰還していたころ……キヴォトスでは異変が起きていた。
「キヴォトス全域で、超高濃度エネルギー体がいくつか観測されました」
「えーと、場所はアビドス砂漠、D.U.近郊の廃墟化した遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市と――」
――あと、サンクトゥムタワーのど真ん中
「サンクトゥムタワーの真ん中、と言いますと……」
「そう……私たちが今いる場所。ここの真上」
「それを聞いて、外部カメラの映像を確認してみたのですが……異常は見当たりませんでした」
「……」
連邦生徒会会議室。その場所に召集された連邦生徒会のメンバーは、アユムとモモカからの報告を聞き、頭を悩ませていた。観測することのできない、エネルギー反応。それはつまり、存在しないことと同義であるが……機械の故障を疑うには早計過ぎる。
「……実際に確認するしかありませんね」
「リン先輩……?」
「各自治区の生徒会代表を緊急招集します。連邦生徒会長代行の権限により、緊急プロトコルを発動――」
――キヴォトス非常対策委員会を発足します
「そ、そこまでする? ただの機械の故障かもしれないよ?」
「……それならそれでいいのです。杞憂で済みますから」
「あの……リン先輩。本当に、大丈夫でしょうか……? 最近、リン先輩が代行の権限を乱用しているという声が……あちこちから入ってきています」
「……そうですか」
火のない所に煙は立たない。事実がどうであれ、噂というのは独り歩きするものであり……見過ごすことのできない障害となりえる。……なりえるが、
「……私の立場一つで問題を解決できるなら、構いません。取り返しのつかない事態になってからでは遅いのです。……判断の遅さが、連邦生徒会長の失踪に繋がったのですから」
「……」
「……そっか。……まぁ、そこまで言うなら協力するけど、財務室長の説得は頑張ってね」
行動を移すなら、早いに越したことはない。……その後、連邦生徒会の各メンバーを説得したリンは、正式に非常対策委員会を設立するのであった。
★★★★★
「「先生、お迎えに上がりました」」
先程、連邦生徒会より発令された召集令。キヴォトス非常対策委員会の設立にあたって、シャーレの先生も参加して欲しいとの要請が、リン行政官よりモモトークを通じて送られていた。
サンクトゥムタワーまで送迎するとも書かれていたが――
"えっと、ヴァルキューレの生徒だよね? それじゃあ、よろしくね"
シャーレへと立ち入ったヴァルキューレの生徒に、
"どうしてヴァルキューレの生徒が迎えに来たんだろう?"
と疑問に思ったものの、リンちゃんの指示だろうと考えた先生は、そのままシャーレを後にするのであった。
『……アロナ先輩。なんか、おかしくないっすか?』
『アマノちゃん? 何か気になることでもありましたか?』
『……いくら代行からの指示とはいえ、普通は連邦生徒会が迎えに来ませんか? 同じD.U地区ですし、ヴァルキューレに依頼するよりも早いですよね?』
『えーっと、緊急事態だから人手が足りない……とかじゃないですか?』
『……だと良いんすけど』
疑念を拭えないアマノは、いつでも先生を守れるようにと刀の手入れを進めた。
「どうぞ、こちらへ」
「足元にお気をつけてお乗り下さい」
"うん、ありがとう"
ヴァルキューレが保有するヘリコプターへと乗り込んだ先生は、各自治区の生徒会から届くモモトークへと返信していく。みんな、非常対策委員会の設立に対して疑問が尽きないようだ。
"って言われても、私もよく分かってないんだけどね"
先生とて、連邦生徒会から招かれた身だ。詳しい内容については、あまり把握していなかった。……それでも、生徒達を不安にさせないようモモトークに返信していた先生は――
"……あれ? この方角って、サンクトゥムタワーじゃないよね?"
――違和感に気がついた
『先生! やっぱり、この人達は――!』
"うん、分かってる。……君たち、ヴァルキューレの生徒じゃないよね? ……どこのどなたかな?"
おかしいとは思っていた。連邦生徒会ではなくヴァルキューレが迎えに来た時点で、もっと追求しておくべきだった。
「そこまで不信感を抱きながらも着いてくるとは、余程の阿呆なのか?」
「シャーレの先生も大した事ないな」
ヴァルキューレの生徒……のように見えていたホログラムが掻き消え、見覚えのあるロゴが刻まれた機械が姿を現した。
"……まさか、カイザーだったとはね"
「抵抗は無駄だ。……最も、ヘイローの無いお前に抗う術など無いがな」
「大人しくしていれば、すぐ楽にしてやる」
アサルトライフルの銃口を先生の額へと押付け、引き金に指を乗せる。アロナのバリアによって、銃弾が命中しない事は分かっているが……エデン条約の際に撃たれた記憶が、先生の目を瞑らせた。
「じゃあな、シャーレの先せ――」
「させないっすよ!」
(ザンッ)
引き金が引かれるよりも早く、シッテムの箱から飛び出したアマノは、自身の獲物である月光刀を振り抜き……カイザーの機械兵を真っ二つに斬り飛ばした。
「大丈夫っすか!? 先生!」
"……うん。私は大丈夫。ありがとう、アマノちゃん"
「無事で何よりっす。……とりあえず、このヘリから飛び降りるんで――」
――ちゃんと捕まってて下さいね!
"……はい? ……あ、アマノちゃ――っ!?"
(ヒュン)
一瞬の浮遊感。先生を抱き上げたアマノは、急いでヘリから飛び出した。先生を拉致するような奴らが操縦していたヘリだ。爆薬でも仕掛けられていたら堪ったものじゃない、と考えたアマノによる降下は……一般人である先生に多大な恐怖感を与えていた。
"……っ、ぁ、アマ、ノ、ちゃん!"
「喋ると舌嚙むっすよ先生! 着地するんで、衝撃に備えるっす!」
すぐ傍にあるビルへと月光刀を突き刺し、衝撃を殺しながら降下するアマノ。元来、E.G.Oを用いらずに幻想体を鎮圧する為にと、作られた武器ということもあってか、まるでバターでも斬るかのように簡単に突き刺さった月光刀。
ビルの壁面を切断しながら速度を落としたアマノは、ビルに対して垂直になるよう足を着け、降下の勢いを完全に殺すのであった。
「はい、到着っす! ここは……ぱっと見、子ウサギタウンの付近っすかね?」
"……っ"
「……先生? 大丈夫っすか? おーい、先生?」
"……し、死ぬかと思った"
「そんな大げさだなぁ。アロナ先輩が衝撃を吸収してくれてるから、そこまで怖くなかった筈っすけど」
"……衝撃、モロに伝わってきたんだけど。……体の節々が、悲鳴を上げてるよ……?"
「……うん! 無事で良かったっすね!」
"……に、二度とやらないでね?"
生まれたての小鹿のように震える脚で、何とか地面に降り立った先生は……アマノへと詰め寄り警告……懇願するのであった。
――5分後
ようやく落ち着いたのか、周囲を見渡した先生は……自分の現在位置をシッテムの箱で確認し、サンクトゥムタワーを目指して歩き始めた。
"思ったより、遠くに来ちゃったね。カイザーは、私をどこに連れて行こうとしてたのかな?"
「さぁ……? おそらく、ブラックマーケットかアビドスじゃないっすか? 確かカイザーの基地がありましたよね?」
まだカイザーの機械兵が潜んでいるかもしれないと考えたアマノは、シッテムの箱へと帰還せず、先生の横を歩いていた。
"……ここからだと、結構距離があるね"
「仕方ないっすよ、ヘリで移動してきたんすから。なんでしたら、この辺に生徒の一人や二人ぐらい居るんじゃないっすか? もし連絡が取れそうなら、護衛として一緒に来てもらった方が良いと思うっすよ」
"護衛……かぁ。……そういう意味では、この辺りにスペシャリストがいるよ。ちょっと連絡してみるね"
スマホを操作し、近くに居るであろう生徒に連絡を取る先生。約10分程経った頃、二人の背後から声が掛けられた。
「お待たせしました、先生。RABBIT小隊各員、現時刻を持って指揮権を先生へと譲渡します」
「久しいな、シャーレの先生。代理は居ないのか?」
「RABBIT2、現着」
「久しぶりじゃーん、先生」
「お、お久しぶりです……」
……
「なるほど、SRTの生徒ですか。確かに護衛のスペシャリストっすね」
「? あなたは?」
「私っすか? 私は、先生の……専属補佐、みたいなものっすね。一色アマノっす。まぁよろしく頼むっすよ」
シャーレの文字が刻まれた、白い服装に身を包む彼女。見たところ銃を所持しておらず、代わりに二振りの刀を手にしているという……キヴォトス基準で考えれば頭のおかしい彼女だが、RABBIT小隊は面々は、その佇まいや気配から只者ではないと感じていた。
「先生、彼女は……」
"大丈夫。E.G.Oや都市についても把握しているよ。……というか、私より詳しいんじゃないかな"
「まぁ、そうっすね。と言っても、私は旧L社のE.G.Oを使ってただけで、発現はしてないっすけどね。都市についても、そこまで詳しい訳じゃないっすよ?」
"E.G.Oが無くても、十分頼りになるよ"
「なら良かったっす!」
嬉しそうな笑みを浮かべ、道を進むアマノ。彼女に続くように、一同はシャーレへと足を進めるのであった。
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