黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~青炎~ 月雪ミヤコ

 

 

RABBIT小隊と合流し、子ウサギタウンを進む先生。シャーレへと向かう道すがら、先生は人気の少なさに違和感を感じていた。

 

 

 

"……? ……ここって、こんなに人通りが少なかったっけ? 活気がないって言うか……"

 

「……いえ、以前まではそのような事はありませんでした。ただ、私達のいる子ウサギ公園も含め……この辺り一帯は都市開発と言う名目で、カイザーコーポレーションが行き来するようになり――」

 

「それ以来、みんなカイザーに脅えてるって話だ」

 

「まぁ、やってる事は恐喝と同じだもんね~」

 

「わ、私達にも、公園から立ち退くよう言ってきて……」

 

「連邦生徒会からの正式な許可が降りていると言っていたが、先生は何か知って……いや、その反応を見るに知らないみたいだな」

 

 

 

無論、知るはずが無い。シャーレが都市開発に絡んでいる訳でもなく、連邦生徒会の子からも、そのような話を聞いた事はなかった。

 

 

 

「先生。多分っすけど……いや、当たって欲しくない予感なんすけど……」

 

"アマノちゃん?"

 

「……恐らく、連邦生徒会の中に、カイザーと関係を持ってる奴がいると思うっす。組織とも関係のある連邦生徒会そのものが、カイザーの手に落ちるとは思えないので――」

 

 

 

――カイザーコーポレーションに、個人的に手を貸してる奴が居るはずっす

 

 

 

「それも恐らく、連邦生徒会の上役の中に居る。……まぁ、私の当たって欲しくない想像っすけどね!」

 

"……いや。……多分、アマノちゃんの予想は当たってると思うよ"

 

 

 

何故、カイザーがあのタイミングで迎えに来たのか。どうして、リンちゃんがシャーレに迎えを出したことを知っていたのか。……内通者が居ると考えれば、辻褄が合う。

 

そして恐らく……リンちゃんも内通者には気づいていないだろう。

 

 

 

"落ち着いたら1度、連邦生徒会の内部を確認してみよっか"

 

「了解っす!」

 

 

 

などと話しつつ、シャーレへと向かっていた一同は……まるで検問のように道を塞いでいるカイザーコーポレーションの機械兵に、銃口を向けられた。

 

 

 

「止まれ! 俺達の仲間を殺ったのはお前らだな」

 

「カイザーに手を出して、無事で居られると思うなよ!!」

 

 

 

辺りに潜んでいたのか、先生達を取り囲むかのように現れた機械兵達。ざっと数えただけでも10体は居るだろう。

 

 

 

「……仕方ない。私が片付けるから、お前達は――」

 

「いえ、ここは私にやらせてください。シャオさんは先生をお願いします」

 

「……無理はするなよ。お前が暴走しそうになったら、力づくで止めるからな」

 

「にひひ、存分に暴れちゃっていいよ~」

 

「み、ミヤコちゃん。が、頑張ってね」

 

 

 

彼女を信頼しての発言が、彼女の覚悟を確固たるものにする。……以前使用した時は、何もかもが中途半端で……大切な仲間達を傷つけそうになったが……

 

 

 

「私だって、成長しましたから。――総員、整列!」

 

 

 

ミヤコの掛け声を合図に、何処からとも無く現れた白い子ワニが列をなす。まるで初めからそこに居たかのように……周りにいる機械兵達の意識外(ウサギ穴)から現れた4匹の白い子ワニ。

 

 

 

"これが、ミヤコちゃんのE.G.O……?"

 

「あぁ。……代理の奴は罰鳥を思い出すとか言って、嫌そうな顔をしていたがな」

 

"ちっちゃいワニだ……可愛い。……でも、なんでワニ?"

 

「先生、ミヤコのアレはワニじゃなくてサメらしいぞ」

 

"そうなの!? ワニにしか見えないけど……"

 

「白いワニって珍しいよね~。……ていうか、このワニを水族館か何処かに売れば、結構なお金になったんじゃない?」

 

「だ、ダメ……。ミヤコちゃんに怒られちゃう」

 

 

 

抱き上げられそうなサイズの白い子ワニ。ミヤコの足元から現れ、綺麗に整列する子ワニは、威嚇するかのように機械兵達を睨んでいた。

 

 

 

「迂闊に触れるなよ、先生。全身の皮を剥ぎ取られるぞ」

 

"……はい? ……き、聞き間違いかな??"

 

「いや、姉御の言う通りだぞ先生。あの白いワニは凶暴なんだ」

 

「あの悪い大人も、全身を齧られてたしね~」

 

「あ、危ない……よ」

 

「ミヤコのE.G.Oは、ねじれたフィリップの皮膚をも噛みちぎっていたからな。一般人の先生がもし噛まれたら――」

 

"……"

 

 

 

その先は言わなくても分かるだろう。……自分がワニに食べられるという嫌な想像をした先生は、心配そうに姿の変わったミヤコを見つめた。

 

青い炎で燃え盛る外套に身を包み、自身の武器であるサブマシンガンを構えるミヤコ。彼女が1歩歩く度に、青い炎が迸る。

 

 

 

……あの日、

 

 

 

……あの公園で、

 

 

 

自分達を燃やす炎(フィリップ)と、自分達を守る炎(シャオ)の間で……もう誰も失わない為にと……

 

 

 

もう二度と、何も奪われない為にと――

 

 

 

 

 

 

――美しい声を焼き尽くすことで手に入れた力

 

 

 

 

 

 

「目標確認」

 

 

 

目的の為ならば、自分達の天敵(兎の天敵)の力も利用する。使えるもの全てを使って……

 

 

 

 

 

 

ALLIGATOR(アリゲーター)小隊各員。私の……私達の敵を喰い尽くせ」

 

 

 

 

 

 

――不条理な世界を焼き払おう

 

 

 

 

 

 

私達を救ってくれた、師匠(シャオ)のように――

 

 

 

 

 

 

「!? どこから現れた!?」

 

「なんだこの……ワニ?」

 

 

 

突然現れた真っ白な子ワニに驚きを隠せないカイザー機械兵たち。自分たちへと襲い掛かろうとする子ワニへと、一人の機械兵が銃撃した瞬間――

 

 

 

「――私の部隊員を、攻撃しましたね?」

 

 

 

子ワニを攻撃した機械兵の足元から青い炎が吹き荒れ、姿を包み込み……

 

 

 

……炎が開けたその場所には、焼け落ちた灰しか残っていなかった。

 

 

 

――攻撃した対象を問答無用で焼き尽くす青い炎

 

 

 

代理人が罰鳥に似ていると言っていた理由が、鎮圧経験のあるアマノにはすぐに理解できた。理解でき……絶対に関わりたくないと顔を顰めるのであった。

 

放っておけば子ワニに喰いちぎられ、反撃すれば焼き尽くされる。突発的な戦況に順応など出来るはずもなく……カイザーの機械兵たちはミヤコのE.G.Oに手も足も出なかった。

 

 

 

「状況終了。お疲れさまでした」

 

 

 

子ワニを回収し、肩に乗せたミヤコの周りには……喰い荒らされた機械の残骸と、焼け残った灰だけが散らばっていた。

 

 

 

"……す、凄いね。ミヤコちゃん”

 

「今回は暴走しなかったみたいだな」

 

「前は私達も食べられそうになったからね~」

 

「ミヤコちゃんのワニさんは可愛くて……こ、怖いです」

 

 

 

安堵の表情を浮かべるRABBIT小隊一同。彼女達とは対照的に、ミヤコのE.G.Oのえげつなさに、アマノは一人顔を引きつらせるのであった。

 

 

 

「た、確かに罰鳥に似てるっすけど……アレよりも質が悪いっすよ!?」

 

 

 

ヘイローを持つアマノにとって罰鳥は、手出ししなければ少し痛い程度の攻撃をしてくる小鳥だったが……手出ししなくても、カイザーの機械兵を喰いちぎるような攻撃をしてくる子ワニの対処方は……思いつかなかった。

 

 

 

「先を急ごう。ミヤコ、E.G.Oはそのまま維持し続けろ。状況を見て私と切り替えるぞ」

 

「了解しました。シャーレまでの道は、私が焼き尽くします」

 

 

 

青い炎を両脚に込め、周囲を蹴りつけるミヤコ。彼女の脚先から放たれた青い炎は、道に対しまるで壁を作るかのように燃え盛り……シャーレまでの道を一直線に焼き払う。

 

 

 

「少し熱いですが、これで外敵は近づけないはずです」

 

"これぐらいなら、大丈夫。ありがとう、ミヤコちゃん"

 

「はぇ……。……いやぁ、そのE.G.Oマジで便利っすね!」

 

「……ありがとうございます。精神的に疲れますが……シャーレまでの道は、私が燃やし続けます」

 

 

 

E.G.Oの持続展開がどれだけの負荷になるか、図書館のE.G.Oを使ったアマノには何となく分かった。……だからこそ、それを少しでも抑える手段があるなら渡しておくべきだろう。

 

 

 

「ミヤコさん。これ貸すっすよ。月光石で作られたこの刀なら、持っているだけでも精神への負荷を軽減できるっす」

 

「月光石で作られた刀だと……? ……都市の工房で作られたものか?」

 

「あー、どこで作られたかは知らないんすよね。組織から与えられたものなので。……幻想体を鎮圧する際に、必ず帯刀するようにと渡されたものなんすよ」

 

「……そうか。……ミヤコ、受け取っておけ。刀の素材が月光石なら、E.G.Oの負荷も軽減できる筈だ」

 

「分かりました。ありがとうございます、お借りしますね」

 

 

 

アマノから受け取った月光刀を腰に携え、一同はシャーレへと続く燃え盛る道を進むのであった。

 

 






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