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キヴォトス非常対策委員会を設立した連邦生徒会。各自治区の生徒会に召集令を出したのだが……サンクトゥムタワーを訪れたのは、ゲヘナとトリニティの生徒だけだった。
「他の学園は……」
「確認できません。明確に拒否された所もあれば、そもそも反応すらない学校もありまして……」
「……そうですか。……これが、今の連邦生徒会の信頼度……という訳なのですね」
「リン先輩……」
参加者の少なさに悲観する暇はない。これが今の連邦生徒会の信頼度というのなら、甘んじて受け入れよう。
――それに、なにも悪いことばかりではない
たった二校しか参加していないとは言え、キヴォトス三大マンモス校のうち二つが参加してくれたのだ。規模と影響力だけを考えるのなら、参加してくれたのがこの二校でよかったと言えるだろう。
「悔やんでばかりではいられませんね。……各校の生徒会、及び生徒会に準ずる組織の皆様、この度は招集に応じて頂きありがとうございます」
トリニティからはティーパーティーとシスターフッドが……ゲヘナからは万魔殿が参加したこの会議は――
――うまくいくはずがなかった
同じくマンモス校であるミレニアムが参加していれば、話は変わったかもしれないが……エデン条約を結んだとはいえ、長きに渡る因縁は簡単には解けず……一部の生徒を除き、お互いに牽制しあっていた。
「……以上が、キヴォトス全域に出現した、超高濃度エネルギー体現象の全貌です」
リンから語られた超高濃度エネルギー体に関する情報。出現時間、出現位置……現状把握できるだけの情報を告げ、協力を求めたリンだったが、
「その前に一つ。先生はどちらにいらっしゃるのでしょうか? シャーレも、この非常対策委員会に参加すると伺ったのですが」
「それは……」
先生の不在という予期せぬ事態によって……もはや協力を求められるような状況ではなかった。
「マコト先輩、起きてください。今、みんな先輩に注目してます……」
「キキキッ……寝ているわけではない。生徒会への招集だというのに、関係のない組織まで連れてくるような鳥頭達に呆れていただけだ」
「……はい? いや……なんで急に喧嘩売るんですか? ……マコト先輩のせいで、今にも襲われそうなんですけど……」
「ねぇ~、これいつ終わるの? イブキ、朝ごはん食べてないし、お腹すいた……」
「……ミカさん、急に立ち上がらないでください。淑女として、この程度の雑音は聞き流しませんと」
「……!!!!!!」
「ミカ、落ち着いて座りたまえ。……事前に君から声を奪っておいて正解だったな。それに、救護騎士団を連れてこなかったのも功をなした」
「あの、セイアさん? 声を奪ったというのは……」
「気にしなくていい、ナギサ。今のミカは、あと数時間は喋れないというだけさ」
一触即発。今にも殴り掛かりそうなミカに、口を開けば煽り文句しか飛び出ないマコト。E.G.Oの力によって事前にミカの言葉を奪っていたセイアと、余計な事を言わないようにと必死に取り押さえるイロハによって……まだ辛うじて会議という体裁を保てては居るが……
「質問に答えてください。先生はどちらにいらっしゃるのですか?」
「聞いても無駄だ。どうせ連邦生徒会が匿っているんだろう! つまり、この会は意味がないってことだ!」
「先輩、お願いですから少し黙ってて下さい……」
「……皆さん、お静かにお願いします。先生、及び代理人の行方は……現在我々も捜索中です」
先生と代理人が行方不明。……リンから告げられた言葉に、この場にいる生徒の数名は反応を示し、互いに目配せをしたが……
「これ以上の議論は無意味だ! 相手がシャーレならばまだしも、連邦生徒会と話すことなんぞない。イロハ、イブキ、サツキ! 帰るぞ!」
「えっ? ま、待ってください……!」
マコトの言葉に従い、万魔殿の生徒たちが席立とうとした瞬間――
「――それなら、ここから先は俺が引き継がせてもらう」
会議室に風が吹いた。視界を遮る突風により、会議室に居る全員が驚き目を閉じる。……数秒後、再び目を開けた先には――
1人の大人と2人の生徒が立っていた。
「代理人……?」
以前にも、同じような状況に遭遇したことがある。赴任した直後の先生を手伝っていた時も……同じように何処からともなく風が吹いた。
「パンパカパーン! 勇者アリスもパーティー会議に参加します!」
「遅くなって悪いな、七神。……状況は読ませて貰った。先生が行方不明な以上、シャーレの代表として席に着かせてもらうが構わないな?」
「……はい。元より、代理人の立場はその為のものですので」
キヴォトスの外からやってきた大人。シャーレの代理権限を付与された頼れる存在。
「なら話は早い。七神、サクラコ、セイアは残ってくれ。後のメンバーは自分達の自治区で待機。何が起こるか分からないから、各自警戒だけしててくれ」
「……代理人、いくらなんでも省略しすぎでは? 私たちは図書館から観測していたので状況を把握していますが……」
「問題ない。話が通じる奴だけ残ってくれれば、いくらでも対処できる」
突如として現れた代理人の発言に、戸惑う一同。急に現れて何を言い出すのかと思ったが……そもそも今回の会議に乗り気な生徒など殆どおらず……シャーレの代理人が帰って良いと言うのであればと、呼ばれなかったメンバーは順に席を後に――
「代理人。この面子を残すのであれば、イロハも残らせてくれたまえ。ゲヘナの彼女も関係者だ」
「キキキッ、イロハが私よりもお前の言葉を優先するなど――」
「――分かった。悪いが、イロハって奴も残ってくれ」
「分かりました」
「……は? い、イロハ……?」
組織のメンバーだけご丁寧に呼ばれた以上、間違いなく自分も呼ばれるだろうと身構えていたイロハは……マコトの言葉を無視し、この場に残るのであった。
「マコト先輩、イブキを連れて先に帰っていてください。私は後から戻りますので」
「そう言う訳でだ、二人とも。先に帰っていてくれたまえ。……あぁ、もう喋っていいよ、ミカ」
「……んじゃ、図書館で観測した限りの情報を伝えるが……七神も組織の人間なんだよな?」
「はい。……とは言え、私は翼の対処に忙しかったので、裏路地の事情や図書館についてあまり詳しい訳ではありません」
「リンさんは組織の設立者と言いますか……連邦生徒会長が最初に勧誘した方です」
「旧L社を含め、翼については彼女が1番詳しいだろうね」
「……と言いますか、各学園から招集しなくても、初めから私たちだけを呼び出せば良かったのでは?」
「……それも考えましたが、まだ翼が関係する事象だと断定できた訳ではありませんので。それに、表向きは連邦生徒会からの招集としておけば、皆さんも自由に動けますよね」
キヴォトスに突如現れた企業。非人道的な行いを忌避せず、倫理観に欠けた翼に対抗する為……連邦生徒会長と二人で作り上げた組織。今ほどの規模になる前から動いていた彼女は、翼による事件を隠蔽し、カバーストーリーを流布する事でキヴォトスに混乱を招かないようにと……調整していたのである。
彼女が居なければ、キヴォトスはとっくに崩壊していただろう。
「しかし、無理をしたのは事実です。今回の件が片付く頃には、私は連邦生徒会長代行の任を降ろされているでしょうね」
「そんな……」
「……」
「……あー、俺から1ついいか?」
「代理人?」
「先生の行方不明に関してだが……」
「ラスボスはカイザーです! アリス、本で読んだので知っています!」
「「「「……!」」」」
アリスの発言に驚く4人。先生の行方不明に関しては、翼が関わっていると思っていたが……
「……まぁ、なんだ。アリスが言った通り、先生を拉致した犯人はカイザーコーポレーションだ」
「それだけではありません。代理人と共に図書館から観測させて頂きましたが、カイザーと裏で結託している生徒がいます」
「結託……?」
「生徒の中に、先生に危害を加えようとしようとしたものがいると?」
「……あの。……もしかして、私達に近しい生徒でしょうか?」
「……」
悪徳業者であるカイザーの犯行ならまだ分かる。昔から手に負えない企業ではあったが、ここ最近はゲマトリアや残響楽団とも繋がりを持ったという事もあり、翼の次に警戒していたのだ。
「幸い、先生は今シャオ達ラビット小隊と共にいる。少なくとも、身の安全は保証されていると思っていいだろう。……その上で、カイザーと繋がっている生徒だが……七神」
「はい?」
「今回の事件は、連邦生徒会の生徒による内乱だ。犯人は――」
――連邦生徒会防衛室長、不知火カヤだ
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