黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~虚妄~ 色彩からの侵略者

 

 

静まり返るシャーレオフィス。フランシスの残した言葉に頭を巡らせる先生とローランであったが……

 

 

 

"……よし! 考えるのはあと! とりあえず今は、各自治区の生徒達に協力を仰がないとね!"

 

「……あぁ、そうだな。俺の方でも協力者を募っておくよ」

 

 

 

この緊急事態を前に、ただ立ち尽くしている訳には行かない。連邦生徒会による招集はあまり上手くいかなかったが、先生が戻ってきたとなれば話は別だ。先生からの……シャーレからの緊急要請であれば、動いてくれる生徒も少なくないだろう。

 

 

 

「私達も各自治区に戻って準備を整えましょう。幻想体のE.G.O及び、組織が保有する遺物の使用を許可します」

 

「承知しました。シスターフッド各員、鎮圧準備を進めます」

 

「では、私はミレニアムに向かおうじゃないか。……私の直感が、ミレニアムに迎えと囁いているのでね」

 

「私も一度ゲヘナに戻ります。マコト先輩を放っておくと、ロクなことにならない気がしますので……」

 

 

 

シャーレに集まっていた組織のメンバー達も、この驚異に立ち向かうべく各自準備を進めていくのであった。

 

――数刻して……

 

シャーレから正式に、キヴォトスに居る全生徒に向けて戒厳令が発令された。D.U地区で起きている異常事態にメディアが黙っているわけもなく……クロノススクールの生徒によって、速やかに現状の事態が拡散された。

 

シャーレからの緊急声明を聞き、駆けつけた生徒達。

 

鬼方カヨコ

天雨アコ

早瀬ユウカ

浦和ハナコ

奥空アヤネ

 

先生の呼び掛けに応じた、各学園の伝達役達。各自治区の生徒達によって集められた情報が、彼女達によってシャーレへと伝えられ……現状を打開する鍵となる。

 

各自治区に現れた高エネルギー反応。その場所に天より飛来した6本の柱……いや、塔と形容するのが正しいであろう構造物は、リンによって虚妄のサンクトゥムと名付けられた。

 

 

 

「エンジニア部による観測の結果、虚妄のサンクトゥムはおよそ300時間後に臨界点に達するそうよ」

 

 

 

約2週間

 

それまでに虚妄のサンクトゥムを攻略しなければ、塔に集められた色彩のエネルギーが解き放たれ……キヴォトス全域が反転するだろう。

 

 

 

"攻略も大事だけど、色彩によって反転した生徒の治し方も探さないとね"

 

「先生……」

 

「シロコさんもそうですが、反転の治療法が見つかればミカさんのヘイローも……」

 

「やらなければならない事が山積みですね」

 

「……そう言えば、代理人は何処?」

 

"代理人は助っ人を呼んで来るって"

 

「「「「「助っ人?」」」」」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「……えー、という訳で、本の中の世界が危機に陥っています。このままだとアインに関する情報を集める前に、あの世界が滅びるだろうな」

 

 

 

図書館に再び戻ってきたローランは、指定司書たちにキヴォトスの現状を語っていた。

 

 

 

「出来れば、お前達の手を借りたい。……無論、アンジェラには事後報告でな。お前らも外の世界……あー、都市とはだいぶ異なるが、偶には違う景色がみたいだろ?」

 

「それはみたい……けど……」

 

「ちなみに、ビナーとゲブラーは説得済みです。アイツら……特にビナーは、ある生徒の話をしたら、やたら不気味な笑顔を浮かべながら了承したぞ」

 

「嘘でしょ!? あのビナーが!?」

 

「本当だ。……まぁ、これに関してはアイツも被害者と言うか……一時的とは言え、哲学の階の司書補に紛れ込んでいた陸八魔が悪いな

 

 

 

陸八魔アルの見た悪夢。無数の人格を持って都市の様々な場所で活動していたという記憶。……ある種の臨死体験とも言えるであろう経験は、彼女を急激に成長させた。

 

特色フィクサーとして活動していた人格など、彼女の為になるものもあったが……L社の職員として働いた記憶と、図書館の司書補として働いた記憶が良くなかった。彼女自身は悪夢の一種だと思っているが……彼女と共に過ごした都市の住民達は、彼女の事を覚えている。

 

 

 

――ウサギチームのミョがリクハチマを覚えていたように……ビナーもまた、彼女のことを覚えていた

 

 

 

「ゲブラーも行くんだ……」

 

「あぁ。形は違うが、カルメンの望んだ平和な世界が気になるんだとさ」

 

「そっか……。……それじゃぁ、私も行ってみようかな」

 

「よし、これで4人目。それで? ホドはキヴォトスに行くみたいだが、マルクトはどうするんだ?」

 

「当然、私も行くわよ! 違う世界が気になるっていうのも理由にあるけど……一度、アンジェラを驚かせてみたかったのよね!」

 

「ホクマーも合わせて、これで5人……。図書館を空にするわけにもいかないし、これだけ居れば十分か」

 

 

 

キヴォトスに連れていくメンバーを決めたローランは、アンジェラにバレないように警戒しつつ、招待状を開くのであった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

ローランが助っ人を呼びに行っている頃、虚妄のサンクトゥム攻略に向けての作戦が練られていた。

 

 

 

――第1サンクトゥム 守護者ビナー

アビドス廃校対策委員会と便利屋68による対象の鎮圧

 

――第2サンクトゥム 守護者ケセド

C&Cと正義実現委員会による対象の鎮圧

 

――第3サンクトゥム 守護者シロ&クロ

ゲーム開発部とRABBIT小隊、ゲヘナ風紀委員長による対象の鎮圧

 

――第4サンクトゥム 守護者ヒエロニムス

シスターフッドと救護騎士団、アリウススクワッドによる対象の鎮圧

 

――第5サンクトゥム 守護者ホド

セミナーとヴェリタス、温泉開発部による対象の鎮圧

 

 

 

先生とシャーレに集まったメンバーで決めた攻略編成。各自治区の生徒達による共同戦線。招集されたメンバーは今、対象地域へと足を運び作戦開始に向けて準備を進めていた。

 

 

 

――第1サンクトゥム・アビドス砂漠エリア

 

「第1サンクトゥムの作戦担当、奥空アヤネです。第1部隊、応答願います」

 

「大丈夫よアヤネちゃん。準備は終わってるわ」

 

「うんうん! 待機中です☆」

 

「おじさんも大丈夫だよ~。ユメ先輩も元気そう。……それで、あれが虚妄のサンクトゥムなんだね」

 

「はい。……そして、ビナーを倒さなければ、アレを破壊することができません」

 

「囮役は私が引き受けるわ。ムツキとハルカは、アビドスのみんなと一緒に攻撃して頂戴」

 

「おっけー! 一緒に爆破しちゃったらごめんね~?」

 

「ア、アル様を囮だなんて……お、囮役なら私が――」

 

「問題ないわ! むしろ、爆発の中から華麗に現れてあげるわ!」

 

 

 

W社の指輪を起動し、予備バッテリーの充電を確認するアル。パイプを口に加え、朱色の煙を吹き出したアルは、ニヒルな笑顔を浮かべるのであった。

 

 

 

――第2サンクトゥム・ミレニアム郊外の閉鎖地域

 

「こちら第2サンクトゥムの作戦担当、和泉元エイミ。今から、軍需工場にいるケセドと交戦する予定。当初想定していた問題は、彼のおかげで全部解決した」

 

 

 

本来、ケセドの攻略においては、正面からケセドの生み出す兵器と戦う部隊と、上空からケセド本体に強襲する部隊へと別ける手筈であった。……だが――

 

 

 

「正面は僕一人で十分ですよ。時間は幾らでも稼ぎますので、皆さんは本体を倒してください」

 

 

 

都市からやってきたヤンが、正面からの陽動を一人で引き受けた為、この問題は解消されたのであった。

 

 

 

「……本当に一人で大丈夫?」

 

「問題ありません。僕の戦闘能力については、あなた方もエリドゥで確認していますよね?」

 

「それは……うん。部長も、貴方なら1人でも大丈夫って言ってた」

 

 

 

E.G.Oと言う力については、あまりよく分かってないエイミであったが……ゲーム開発部とC&C、アリスウススクワッドを一人で相手に出来る者など、そう居ないという事だけは理解できる。

 

 

 

「……それじゃあ、ここは任せるね」

 

「はい、お任せ下さい」

 

 

 

E.G.Oを発現させ、指令を読み上げるヤン。本来は戦闘中に相手の行動を縛る為に用いるものだが……

 

 

 

「相手が居ないうちに、作れるだけの指令を紡いでおきましょう」

 

 

 

エリドゥでの戦闘では使用しなかった外法。戦闘開始前にありったけの指令を自分に掛け――

 

 

 

――指令を達成した際の恩恵を、可能な限り自分自身に付与する

 

 

 

移動制限、攻撃制限、回避制限……ありとあらゆる指令を思うがままに発令し、自分自身でその指令を達成していく。そうして数分経つ頃には……ヤンは完全に戦闘準備を終えていた。

 

 

 

――第3サンクトゥム・廃墟化した遊園地

 

「モモイ、ミドリ、ユズ、ケイ! 緊急クエストです! ダンジョン攻略ですよ!」

 

「アリス、しーっ! 重要な作戦みたいだから、声を落として……!」

 

「け、ケイ?」

 

「えっと……アリスちゃん。ケイって言うのは……」

 

「私の事です。貴女方とは1度、あの要塞都市でお会いしてますよね」

 

 

 

ケイの発言に固まる一同。作戦地域に来た時からずっと、アリスが2人居ることに疑問を抱いていた。極度の緊張による幻覚かとも思っていたが……

 

 

 

「あえて気にしないようにしてたけど……やっぱりあの時の悪いアリスじゃん!! なんで分裂してるの!?」

 

「図書館の力です。あと、その呼び方はやめてください。私を呼称する際は、アリスから頂いた名前であるケイと呼びなさい」

 

「図書館の力って何!? 代理人のあの不思議パワー便利すぎでしょ!?」

 

「モモイ、お、落ち着いて……」

 

「お姉ちゃんが1番声大きいんだけど?」

 

 

 

ケイの存在に落ち着きを無くすゲーム開発部。そんな彼女達の様子を微笑ましく見つめる集団があった。

 

 

 

「何やら楽しそうじゃん!」

 

「作戦前だと言うのに、気楽な奴らだな」

 

「あ、あぅ……お待たせしました……」

 

「RABBIT小隊各員、現着しました」

 

「待たせたみたいだな。先生からお前達の面倒を見るよう言われたシャオだ。よろしく頼む」

 

 

 

ゲーム開発部と合流したRABBIT小隊は辺りを見渡し、警戒心を高めた。そんな彼女達に続くように、1人の生徒が廃墟化した遊園地へと足を運んだ。

 

 

 

「……私が最後みたいね。時間通りのはずだけれど、待たせたのなら謝るわ」

 

 

 

ゲヘナ学園風紀委員長、空崎ヒナ。第3サンクトゥム攻略にあたって、招集された彼女は、ゲーム開発部及びRABBIT小隊……都市からやって来た大人についての情報を先生から聞いていた。……聞いてはいたが、実際目にした事で、目の前に居る大人の戦闘能力の高さに驚いた。

 

 

 

「元SRT学園所属の特殊部隊……先生から聴いていたけれど、かなりの実力派みたいね。それに……」

 

「どうした?」

 

「……都市には、代理人や貴女のような人達しか居ないのかしら」

 

 

……

 

 

「……自負する訳では無いが、アイツや私は一般的な都市の住民と比べ、ある程度の力はある方だ。君の所にいる紫の涙もな」

 

「そう……」

 

「ていうか、それはこっちのセリフだ」

 

「噂には聞いてたけど、いやぁ~これは勝てないね」

 

「ゲヘナ学園最強の名は伊達ではありませんね。……心強いです」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

 

 

ゲーム開発部、RABBIT小隊、ゲヘナ学園風紀委員長。第3サンクトゥムを攻略する上で申し分ない戦力。この11人を相手に、無事で済む者などそう居ないだろう。

 

 

 

――第4サンクトゥム・カタコンベ内バシリカ

 

「第4サンクトゥムの作戦担当、浦和ハナコです♡ 皆さん、準備はできましたか?」

 

「……はい。シスターフッド部隊、サンクトゥムのカタコンベ前で待機中です」

 

「救護騎士団、作戦地点にて待機しております」

 

「アリウススクワッド……現着。シャーレの先生の指示により、現時刻を持って指揮下に参加する」

 

「私も居るっすよ! いやぁ、皆さん久しぶりっすね!」

 

 

幻想体から抽出したE.G.Oを身に着けたシスターフッド。空間跳躍によるサポート及び驚異的な身体能力を持つ救護騎士団。翼の実験を終え、E.G.Oを発現させたアリウススクワッド。人の身を捧げ電子上の生命と化した元英雄。

 

新生トリニティ総合学園と言っても過言ではないメンバーによる、共同作戦。戦力だけを見れば、他の作戦部隊よりも1歩抜きんでているだろう。

 

 

 

――第5サンクトゥム・要塞都市エリドゥ近郊

 

「コユキちゃん、仕事の時間ですよ。今回の働き次第では、借金の減額も考えてあげます」

 

「ほんとですか!? 言いましたからね! 言質取りましたからね!」

 

「はいはい。いいから、エリドゥに仕掛けられたセキュリティシステムをハッキングして頂戴」

 

 

虚妄のサンクトゥムの分析、及びホドへ到達するためのインベイドピラーの破壊が求められるが……作戦時間までに、まずはエリドゥに仕掛けられたセキュリティを解除する必要がある。あの事件の後、失踪したリオに代わってエリドゥのセキュリティを解除できるのは、ホワイトハッカー集団であるヴェリタスか――

 

 

 

――黒崎コユキだけだろう

 

 

 

「にははははは! こんなもの、私にかかればちょちょいのちょいですよ!」

 

 

 

数分……いや、数十秒ほどだろうか? ヴェリタスが時間をかけて解析、解除しようとしていたセキュリティシステムを、ものの数秒で解除したコユキは笑顔を浮かべるが……その笑顔は、すぐに影を見せることとなった。

 

 

 

「……えっと、という訳で私の出番はここまででいいですかね? いいですよね!? 今日は絶不調なんです! これ以上、私に出来ることなんてないですからね!?」

 

 

 

――絶不調

 

コユキ本来の神秘、力を使う分には問題ないが……E.G.Oの力を使うとなれば話は別。サイコロを投げれば全て最低値、銃を撃てば暴発、トランプを投げつけようとすれば風に飛ばされ……何をやっても上手くいかず、全ての行動が致命的失敗に終わる。これ以上、コユキの手を借りるのは得策ではないだろう。

 

 

 

「十分ですよ、お疲れさまでしたコユキちゃん」

 

「あとは休んで居て良いわよ」

 

 

 

要塞都市エリドゥのセキュリティシステム解除できた。残る問題は、ホドを地上へ誘導する方法とインベイドピラーの破壊だが……

 

 

 

「ハーハッハッハ! それなら、我々に任せてもらおうじゃないか!」

 

 

 

餅は餅屋。都市開発レベルの大規模破壊を行うのなら、常日頃から温泉を発掘している集団に任せるのが最適だろう。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

”……みんな、準備はいい?"

 

 

 

シャーレのオフィスから伝達係を通じて、遠隔で指示を出す先生。第1から第5サンクトゥムまで、シッテムの箱によるサポートを万全に行うため、リアルタイムで反映される戦況を作戦担当へと伝える。代理人の助っ人は確認できないが、残された猶予期間もあまりない現状……こちらでできる限りの攻略は進めるべきだろう。

 

 

 

"それじゃあ……作戦開始!"

 

 

 





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