黒い沈黙の行先   作:シロネム

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たいっっっっへんお待たせしました。
今後も不定期での更新になるとは思いますが、引き続きお楽しみいただければ幸いです。


評価、感想ありがとうございます!



~守護~ 来訪者達の自治区防衛戦

虚妄のサンクトゥム出現と共に現れた、無数の異形。突如として現れた脅威に対処するべく、各自治区で防衛戦が張られていた。

 

 

 

――山海経

 

 

「敵がやってきたのだ!」

 

「こちらは梅花園にお任せを! ココナちゃんは市民の避難誘導をお願いします!」

 

「う、うん! 分かった! シュン姉さん」

 

 

 

シャーレからの緊急声明を受けた生徒たちが、皆主導となって自治区の防衛にあたっていた。組織ごとの隔たりなど気にせず、今はただ目の前に迫る脅威へ一丸となって対処する。

 

 

 

「玄武商会も負けていられないね」

 

「一撃で片を付けます!」

 

「……ふむ。これはまた妙な存在であるな」

 

 

……

 

 

「……えーっと、できれば手伝ってほしいんだけど」

 

「……師匠。お茶なら後で淹れてあげるから、今は働いてください」

 

「はっは、興味深い存在に目を取られていただけさ。ルミ君とレイジョ君にはお世話になっているからね。儂も手を貸そう」

 

 

 

背負っていた大剣を抜き放ち、炎を纏わせ切り払う。玄武商会と共に現れた不思議な大人に、言葉を失う面々だったが……

 

 

 

「それにしても……ユナ君以外の子に師匠と呼ばれるとは、不思議な縁もあったものだね」

 

「その人が誰かは知りませんが、師匠は師匠です。おかげで私も、より強くなりましたので!」

 

 

 

レイジョと共に前線に立ち、目の前の脅威を倒していることから、少なくとも頼りになる戦力であることは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

――レッドウィンター

 

 

 

「はい、みなさん! 避難所はこちらの旧校舎になります!」

 

「……旧校舎! 温泉があると聞いていたのですが……」

 

「はい、温泉もあります! 番台さんが爆発を食い止めて下さったおかげで、温泉郷は今も運営できておりますので!」

 

 

227号特別クラスの生徒を筆頭に、旧校舎(227号温泉郷)へと避難を開始するレッドウィンターの生徒たち。ゲヘナ学園の温泉開発部と共に作り上げた温泉郷は今現在も経営されており、227号特別クラスの監察官兼番台のおかげで、現状最も安全な場所となっていた。

 

 

「ここが噂の温泉郷かぁ。モミジ、ここでゆっくり過ごして、次のコミセンの新刊構想を練るんだよ。ふふっ」

 

「メル先輩……これがカンヅメってやつですね! 分かりました!」

 

 

 

山奥という立地に加え、圧倒的な力を持つ番台によって運営される温泉郷は、元々観光名所になっていたこともあってか、このような突然の来客にも慣れていた。

 

 

 

「ノドカ、チェリノ会長見なかった?」

 

「いや、こっちには来てないと思う。番台さんは見た?」

 

「……いや、見てないな」

 

「……そう言えば、監察官はここにいていいの?」

 

「……問題ない」

 

「……ほんとに? シャーレからの救援要請が各自治区に出てるけど、お友達の代理人を助けに行かなくていいの?」

 

「ちょっと、シグレ……」

 

「……二度言わせるな。今のローランならこの程度、自力で解決できる」

 

「ふーん……。監察官からそう言われるってことは、とんでもなく強いんだね」

 

「……あぁ。……それにアイツは、俺がこの世界に来ている事を知らないだろうからな」

 

「……そっか。……もし気が変わったら、遠慮なく行っていいからね。()()()()E().()G().()O()()()()()()()()()だろうし、組織も最大限手を貸すよ。……監察官も、偶にはやりたいことをやっていいと思うからね」

 

「番台さんが不在の間は、わ、私たちが温泉郷を守ります!」

 

「……その時は、頼らせてもらう」

 

 

 

遠くから近づいてくる無数の異形を、手にした槍で薙ぎ払い……番台は大きく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

――ゲヘナ

 

 

 

「私たちの番ですね。皆さん準備はできましたか?」

 

「はい。いつでも行けます」

 

 

アコの呼びかけに返答する風紀委員会。自分たちの自治区を守るために立ち上がった彼女たちは、各地に分散し、襲い掛かる無数の異形へと対処しようとしていた。

 

 

 

「ところで、行政官。ヒナ委員長はどちらに?」

 

「ヒナ委員長は、風紀委員会の代表としてサンクトゥム攻略戦に参加中です」

 

「そうですか。……であれば、イオリは委員長の補佐でしょうか?」

 

「……? いえ、ヒナ委員長は風紀委員の代表として、お一人で参加していますが……」

 

「「……」」

 

 

二人のやり取りを耳にし、辺りを見渡す風紀委員たちだったが、彼女たちの視界にイオリの姿は映らなかった。

 

 

 

「こ、こんな非常時に一体何をやっているんですか!?」

 

「……あの、行政官。……もしかしたらイオリではなく、イオリさんになっているのでは?」

 

「……。……その可能性は、ありますね」

 

 

 

イオリの中にもう一人、別の人物の意識が存在することを知っていた二人は、度重なる入れ替わりと行動から、彼女の中の人物が予想以上に自由気ままな性格であることを把握しており……このように振り回されることも1回や2回の話ではなかった。

 

 

 

 

 

 

――トリニティ

 

 

 

「もう、君一人でいいんじゃないかな?」

 

「セイアさん、言い過ぎです。……私もそのように思わなくはないですが」

 

「え-、二人とも酷い! 私だって頑張ってるんだよ?」

 

「お、お二人とも? さすがに過剰評価すぎます。……相手が遺跡の怪物よりも弱かった、ただそれだけです」

 

「遺跡って?」

 

「あの異形を都市の怪物と比べられるとは、いやはや君の妹は優秀だね、ナギサ」

 

「やめてください! セイアさんも事情を知っていますよね!? というか、私より都市について詳しいのは分かっていますからね!」

 

「ねぇ、遺跡って何のこと? その都市?のこととか、私に刺してきた(E.G.O)のこととか、私も知りたいんだけど!」

 

「……さて、なんのことやら。杖は……ミレニアムで購入した最新の装備さ。こんなものに興味を持たなくとも、君の強靭な肉体があれば目の前の異形など敵にすらならないだろう?」

 

「……絶対、嘘じゃんね」

 

 

 

トリニティに迫りくる異形を迎え撃つため、正義実現委員会の応援やL118牽引式榴弾砲など、様々な準備をしていたティーパーティーだったが、

 

 

 

「白の便利……君の妹に助けを求めたらどうだい?」

 

 

 

というセイアの一言で招集された白の便利屋こと、桐藤シロの持つ巨大な砲台から放たれた高出力の極光によって、トリニティに進行していた異形は跡形もなく消し飛ばされていた。

 

 

 

「次、北東方向。座標は――」

 

「分かりました」

 

 

 

セイアの言葉を遮るように放たれた極光が、彼女たちから見て北東の方向を焼き払う。

 

 

 

「自走砲より酷いじゃんね。ナギちゃんの妹、物騒すぎない?」

 

「ですから、私の妹では……。……いえ、ミカさんはご存じないのでしたね」

 

「……えっ、どういうこと? シロちゃんってナギちゃんの妹なんじゃ……」

 

「……はい、妹ですよ」

 

「はぁ……。セイアさん、あなたのせいで余計な面倒が――」

 

「人のせいにするのはよさないかい、ナギサ。……それにしても、座標を伝えるまでもなかったね。……やっぱり、君一人でいいんじゃないかな?」

 

 

 

指示された方角へまるで固定砲台のように極光を放つ白の便利屋。広範囲殲滅が必要な場面において、彼女ほどの適任者もそういないだろう。

 

 

 

 

 

 

――ミレニアム

 

 

 

「さぁ、試運転といこう! コトリ、カメラの準備はいいかい?」

 

「もちろんです! ()()()使()()()()()()()()()()()()()()の準備はできてます!」

 

「こっちも、視界の確保は済んでいるよ」

 

 

 

ミレニアム自治区へと親交を進める異形の大群。迫りくる化け物どもを前に、我先にと前へ飛び出したエンジニア部。部長のウタハが持ち込んだリュックサック、その中から取り出された赤い苗木を見て、同行していたヒマリとノアは顔を引きつらせていた。

 

 

 

「あの、エンジニア部の皆さん? その試作品はもしや……」

 

「……はい、はい。……分かりました。こんな非常時に申し訳ありません。第2幻想体管理室の皆さんは、そのまま警戒態勢を続けてください。今後の指示に関しては室長であるサクラコさんから通達があると思われます

 

「ノアさん?」

 

……ヒマリさん、トリニティからの収容違反は確認されていないみたいです。……エンジニア部が用意したアレは、見た目が似ているだけの別物です

 

……それにしては似すぎているといいますか……どうして彼女たちの作る作品は、どれも幻想体に似ているのでしょうか?

 

……分かりません。定期的な確認も含め、都市からの干渉に関しては念入りに調べていますが、その兆候は一切なく……以前接触を図ってきたT社からの影響も考えられましたが、その線も薄く……天文学的な確率だとは思いますが、偶然に通ってしまっただけかと

 

そ、そうですか……

 

 

 

そんな二人の様子をよそに、取り出した赤い苗木を地面へと埋めたウタハ。そんな彼女に続くように、コトリは無数のドローンを飛ばし、赤い苗木を取り囲む。万が一の事故対策として、一緒に連れてきたキュートちゃんを赤い苗木の後ろに座らせたヒビキは、準備ができたとウタハに声をかけた。

 

 

 

「さぁ、起動したまえ熾天使ちゃん! 目の前の敵は、君のことを視ていないようだよ!」

 

 

 

ウタハの掛け声をトリガーとして起動した赤い苗木は、驚くべき速度で急成長を遂げていき、樹木のように赤い枝を伸ばしていく。無数の赤い枝、瞳のような形をした黄色い木の実。際限なく伸びていく枝木は止まることを知らず、目の前まで迫っていた異形の集団を――

 

 

 

――一匹残らず、刺し貫いていた

 

 






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