黒い沈黙の行先   作:シロネム

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裏・Time Track社 2

 

 

 

その後、都市についての情報交換を済ませ、便利屋68の面々にも分かるよう解説したローラン。

 

夢の内容について補足する度に、顔色が悪くなっていく便利屋68の面々を他所に、ローランは本題へと移るのであった。

 

 

「改めてだが、陸八魔。お前たちに依頼したい事がある」

 

「……そう言えば、依頼内容の確認がまだだったわね」

 

「……先に、俺たちの目的を話しておく」

 

「……」

 

 

あの話を聞いた後に、依頼することじゃない気もするが……、

 

 

 

「――今夜、俺たちは翼を地に堕とす。……今の陸八魔なら、その意味が分かると思うが」

 

 

……

 

 

「…………はい? ……え、聞き間違いかしら。……も、もう一回言ってくださる?」

 

 

 

 

「Time Track社を潰す。その為に、便利屋68には事前の偵察を頼みたい」

 

 

「…………」

 

 

まぁ、都市の経験を積んでるなら、翼の脅威なんて分かりきってるよな。

 

 

「そのTime Track社に潜入してこいっていうのが、お兄さんの依頼~?」

 

「目的は情報? それとも物資?」

 

「えっと……」

 

 

今必要なのは情報だな。T社の製品も確保できれば、制圧において優位にはなるが……。

 

 

「情報だ。T社代表の所在と、会社の中の様子を偵察して来てもらいたい」

 

「情報ね、おっけー!」

 

「分かった。報酬についてだけど……」

 

 

「……」

 

「あ、あの……、……アル様?」

 

 

 

「無理無理無理! え、翼!? それも、T社を潰すって本気なの!?!?!?」

 

 

 

「……まぁ、そういう反応になるよな」

 

 

やっぱり無理があったか? 何も正面から戦えって訳じゃないんだが……。

 

 

「え? アルちゃん、断っちゃうの? 折角ここまで来たのに?」

 

「社長……?」

 

「アル様?」

 

「いやえっと、勿論受けるつもりではいたのだけど、……翼はちょっと話が違うっていうか、相手が悪いっていうか……」

 

「……陸八魔。……別に社員を殺して来いってわけじゃないんだ。内部情報を偵察してきて欲しいだけで……」

 

 

……そういえば、チャールズ事務所所属って言ってたよな? ……誰と行動してたんだ?

 

 

「……ねぇ、報酬っていくらぐらいなの」

 

「アルちゃんの反応的に、相当やばい相手ってことだよね~?」

 

「……そうだな。報酬については、得られた情報次第だが、……少なくとも1億は約束する。……これじゃ足りないか?」

 

 

正直、翼を相手にどこまでの情報が盗れるか分からないが、間違いなく金で買えるレベルの代物じゃないだろうからな。

 

 

「1億!? ねぇアルちゃん、1億だって!」

 

「待ってムツキ。……それだけ危険ってことだよね、代理人」

 

「……あぁ。……下手したら、死ぬよりも酷い目に合うかもしれない」

 

「死ぬよりもって……、一体どんなことが……」

 

「……これはあくまで、俺が持ってるT社製品の話だが。……意識だけを加速させて、廃人になるまで精神を擦り減らされるとか」

 

 

オリヴィエから奪ったコレも、処分方法を考えとかないとな……。

 

 

「廃人にって……、それに意識だけを加速させるって、どういうこと?」

 

「……代理人の言う通りよ。T社は時間に関する特異点を所有しているの。……時間を意のままに操れるといっても、過言ではないわ」

 

「……知ってたか」

 

「……夢で少しね。T社の社員として働いていたこともあるのよ。……色はなかったけれど」

 

「なるほどな……」

 

 

……これは、交渉決裂か。それだけの危険性を把握されているなら、受けてはくれないよな……。

 

……仕方ないか。あまり消耗はしたくなかったが、俺が直接乗り込んで……

 

 

「……代理人。……依頼内容は、情報収集で良いのよね」

 

「あ、あぁ。それで構わないが……」

 

「……」

 

「アルちゃん……? ……マジ?」

 

「社長……まさか……」

 

「アル様? 無理はしない方が……」

 

 

「……その依頼、便利屋68が受けるわ。……ただし、突入するのは私だけよ」

 

 

咥えていた煙管から、朱色の煙を吹き出すアル。

 

 

「……まぁ、朱色の雷としての能力を知らないから、俺は何も言えないが……、大丈夫なのか?」

 

「……えぇ、あなたと同じよ元隊長。私も、単独行動の方がしやすいの。……それに、みんなを危険な目には遭わせられないわ」

 

「アルちゃん……」

 

「ムツキ、カヨコ、ハルカ。……みんなには、私のサポートをお願いするわ。私一人じゃ、翼を相手になんてできないでしょうから」

 

 

朱色の雷か。……雷。……特異点か遺跡の力でも手に入れたのか?

 

 

「……うん。それじゃあ、アルちゃんが失敗しないように、全力でサポートしてあげないとね!」

 

「社長は目を離すと、変なことをやらかすから」

 

「ぜ、全力で援護します!」

 

「ちょっと! やらかさないわよ!? わ、私だって都市で生きてきた経験があるんだから!?」

 

 

……大丈夫だよな?

 

 

 

★★★★★

 

 

 

打ち合わせを終え、準備を進めた便利屋68。T社から少し離れた位置に、臨時拠点を構えた彼女たちは、アル社長の突入に備え待機していた。

 

 

「社長、ほんとに一人で行く気?」

 

「アルちゃ~ん、私たちもついていくよ~?」

 

「いえ、大丈夫よ。……ハルカ、車の手配は?」

 

「問題ありません! アル様!」

 

「流石ね、ありがとう」

 

「アルちゃん、武器はどうするつもり? いつものソレだと、大きすぎると思うけど……」

 

「……そうね。……護身用にカヨコの拳銃でも借りておこうかしら」

 

「……社長。言っておくけど、威力は出ないからね」

 

 

(カチャ)

 

 

「えぇ、分かってるわ。ありがとう、カヨコ。

 

……あ、弾は必要ないわ」

 

「???」

 

 

カヨコから借り受けたデモンズロアの弾倉を抜き、込められている銃弾を全て抜き取ったアル社長。自身の周囲を漂う雷を、掌の上に収束させた彼女は……、

 

 

――集めた雷を、銃弾の形に変化させていた。

 

 

「……夢で覚えた技術も、問題なく使えるみたいね」

 

「ほぇ~、何それ! どうやったの?」

 

 

どうやったって言われても……。……困ったわね。……私も、そこまで原理がわかっている訳じゃないのだけれど。……この方法も、殺される寸前に偶然閃いただけなのよね。

 

 

「説明が難しいのだけど……。銃弾に神秘を込めるのと同じような感じで、銃弾の形に纏めたのよ」

 

「……理屈は、何となく分かるけど……それ、銃弾として使えるの?」

 

「えぇ。拳銃の形に収めてるだけで、原理としては指で弾いてるのと変わらないのよ。……ただ、私の場合は少し特殊なのだけど」

 

「特殊?」

 

――W社っていう、都市にある翼から手に入れた指輪の力も使ってるのよ。私の神秘が雷と共鳴してるのは、この指輪のおかげね」

 

 

まさか、夢で入手した品物を、次の夢に持ち越せるとは思っていなかったわ。……整理要員時代に手に入れた指輪が、ここまで私の人生を左右してくれるなんてね。

 

 

……というか今考えたら、頭に狙われるかもしれないからって、()()()()()()()()()L()()()E().()G().()O()も、取っておけばよかったかしら……?

 

 

「その指輪、ずっと気にはなってたんだよね~。人差し指に嵌めてるから、そういう意味じゃないって言うのは分かってたけどさ~」

 

「そういう意味……?」

 

 

……

 

 

「アル様、もしかして……」

 

 

「……ち、違うわよ!? これは誰かに貰ったとか、そういう意味じゃないから!?」

 

 

全く、突然ビックリするようなことを言い出すんだから……。

 

 

「潜入となると身軽にしておきたいし、……持ち込む武装はこの拳銃と、短剣だけでいいかしら」

 

「それ、あの時のやつ?」

 

「えぇ、赤の便利屋から回収したものよ。都市の工房で作られているだけあって、物凄い頑丈なのよね」

 

「……聞けば聞くほど、都市って場所がとんでもない場所に聞こえるね」

 

「実際、禄でもない所よ。あんな所に行くぐらいなら、ゲヘナに帰った方が何百倍もマシだわ」

 

「そ、そんなに酷い所なのですね……」

 

 

本当に酷いところよ。都市に比べたら、キヴォトスがどれだけ平和な……、

 

 

 

……アレ?

 

 

 

……そういえば、今まで気づきもしなかったのだけど、

 

 

 

――なんで都市の翼が、キヴォトスに存在するのかしら?

 

 

 






―W社の指輪―

陸八魔アルの左手人差し指に装備された、水色の指輪。

一見すると何の装飾も施されていないその指輪だが、……内部に仕込まれた針を通して、装着者の人体に微弱な電流を流し込む装置が組み込まれている。

W社に務める整理要員には、強制的に装着する義務が生じており、

この指輪を通して発生した電流を武器に充電することで、武器本来の力を発揮させる戦術を得意としている。

……だが、彼女の場合は少々特殊で、

Warp列車で過ごした724,284日もの月日が、彼女の身体に流れる電流を、神秘と誤認識させていたのだった。

――――――――――



という、勝手な整理要員の設定を付け足させて頂きました。



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