黒い沈黙の行先   作:シロネム

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Κιβωτός Championship <下>

 

「お待たせしました! それでは五将戦再開していきましょう!」

 

 

インターバルが空け、会場へと戻ってきた一行。

 

ゲマトリアの乱入もあってか、5分しか休憩できなかったものの、全員の決意を一つにするには十分な時間だった。

 

 

――ゲームが好きじゃない相手に、負けたくない!

 

 

「次は誰が行く?」

 

「私とお姉ちゃんは負けちゃってるから、あとは4人だけど……」

 

"そうだね、ここは……"

 

「……アリス、覚えられたか?」

 

「バッチリです! 魔王軍の行動パターンは把握しました!」

 

"おー! それじゃあ、アリスちゃん頑張って!"

 

「はい! 五将アリス、行きます!」

 

 

 

「クックック、続けての試合になりますが……マエストロ、行けますか?」

 

「承知した。ここは私が努めよう」

 

「マエストロ、あなたなら大丈夫だとは思いますが、負けないでくださいね」

 

「そういうこった!」

 

 

 

「さぁ! 両者とも選手が出揃いました! チームUZQueenからはAlice(アリス)が参戦だー!!」

 

 

Alice(アリス)!」Alice(アリス)!」Alice(アリス)!」

 

 

 

凄まじい熱気が支配する会場。ローランにとっては初めての経験だったが……、

 

 

――会場の雰囲気を、とても気に入っていた。

 

 

「……いいな。このイベントって感じの雰囲気。……都市では滅多に味わえなかったから新鮮で……楽しいな」

 

"滅多にってことは、都市にも似たようなものはあったの?"

 

「あー、まぁ……こんなに大勢の人が集まることはなかったがな」

 

 

裏路地でも、区によっては年中騒いでる所もあったからなぁ……。

 

 

「続いてチームגימטריה(ゲマトリア)から、先ほど素晴らしい戦いを魅せてくれたMaestro(マエストロ)の参戦だー!!」

 

 

Maestro(マエストロ)!」Maestro(マエストロ)!」Maestro(マエストロ)!」

 

 

Maestro(マエストロ)!」

 

 

「さぁ、皆の者。どうかこの私に万雷の喝采を!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

アリスとマエストロの試合は、先鋒次鋒戦と異なり、観客を唖然とさせる試合だった。

 

同一キャラによるミラーマッチと言っても過言ではない試合。

 

二人とも全く同じ動きする為、一向に拮抗状態のまま進まず、第1ラウンドは両者共に同HPによる引き分けで終わった。

 

 

 

「おぉ! テクストによる恩恵も使わず、前大会優勝者の動きを遜色ないレベルで真似る能力……。

 

……人間に憧れ、人間を学習し、得られた知識から完璧な模倣を行う。

 

……さしずめ、

 

 

 

 

――ピノキオと言った所か……。実に素晴らしい!」

 

 

「……? よく分かりませんが、次のラウンドはアリスが勝ちます!」

 

 

 

続けて行われた第2ラウンド。1ラウンド目と同じように拮抗状態が続いたものの、

 

 

――残り時間数秒と言う所で、アリスが動いた

 

 

 

「今です!」

 

 

 

ユズの動きを再現する中で、気づいた弱点。……ユズ本人も気づいてはいたものの、最後まで治すことのできなかった癖。

 

ミメシスしたテクストの力のせいで、そのまま引き継いでしまった悪癖。

 

一瞬の隙を見計らって放たれた、アリスのオリジナルな一撃が、マエストロの操作するキャラクターを壁際まで吹き飛ばした。

 

 

「おおっと! ここで試合終了だー! 前ラウンドと同じタイムアウト! 今回、残りHPが多かったのは……、

 

チームUZQueen! 第3試合、五将戦を制したのはAlice(アリス)だー!

 

 

「「「「「「ワァァァァァァァ!!!!」」」」」」

 

 

 

五将:〇Alice VS ✕Maestro

 

 

 

「クックック、まさかテクストの穴を突いてくるとは……。やはりアインが造り上げた傑作は、伊達ではありませんね」

 

「然り。……慢心していたとは言え、この私が敗北するとは」

 

「彼の者の芸術品が、私の作品を凌駕する瞬間に立ち会えたのです。……黒服の誘いに乗って、大会に参加した意味がありましたね」

 

「そういうこった!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

アリスの勝利から勢いが止まらないチームUZQueen。続く中堅戦も、

 

 

中堅:〇Teacher VS‪ ‪✕Décalcomanie

 

 

先生による即死コンボが炸裂し、勝利をもぎ取っていた。

 

 

「決まったー! 本日3度目の、Teacher(ティーチャー)による即死コンボだぁ! 今まで誰も気づけなかったコンボに、会場からも驚きの声があがっております!

 

かくいう私も、このようなコンボを見るのは初めてで、驚きが隠しきれません!」

 

 

決してプレイが上手いわけではない。ユズの教育もあってか、人並みよりは優れているかもしれないが……、

 

先生が決勝戦まで戦って来れたのは、開発すら想定していなかった即死コンボのおかげだろう。

 

 

「先生、これがあなたの力ですか……。流石、全ての概念を書き換えるだけのことはありますね」

 

"……概念を書き換える?"

 

「本来であればこの戦いは、私の勝利で終わっていたはず。……私が想定したテクストを超えるとは、恐れ入りました」

 

「そういうこった!」

 

 

 

この勢いのまま、副将戦へと移るチームUZQueen。ここで勝利を収めれば、優勝への道が開かれたのだが……、

 

 

 

 

――そう上手くは進まなかった。

 

 

 

副将:✕UZQueen VS ‪〇Décalcomanie

 

 

 

「おおっと! 前大会優勝者のUZQueen、まさかの敗退! 初参加でありながら、副将戦を勝利したのはチームגימטריה(ゲマトリア)Décalcomanie(デカルコマニー)だ!」

 

 

Décalcomanie(デカルコマニー)!」「Décalcomanie(デカルコマニー)!」「Décalcomanie(デカルコマニー)!」

 

 

 

「この結果により、チームגימטריה(ゲマトリア)は優勝への切符を入手! 一方、チームUZQueenは優勝への切符を手放してしまいましたー!」

 

 

 

「うぅ……みんな、……ごめんね……」

 

「い、いやいや! ユズのせいじゃないって!」

 

「そうだよ! 私とお姉ちゃんだって負けてるんだから……」

 

「そうです! ユズはあと1歩のところまで健闘したんですから!」

 

"ユズちゃん、お疲れ様"

 

「……あぁ、よく頑張ったよ」

 

 

会場の空気に充てられて、本来のポテンシャルを発揮出来なかったか……。

 

 

 

「さて! 残すところあと1戦! 優勝への道を踏み出したチームגימטריה(ゲマトリア)! 今の心境は!?」

 

「クックック、……えぇ、とても楽しいですね。次の試合が待ち遠しいです」

 

「おおっと強気なアピールだー! 初参加とは思えない意気込みに、会場の熱気も増しているのを感じます!」

 

 

גימטריה(ゲマトリア)!」「גימטריה(ゲマトリア)!」「גימטריה(ゲマトリア)!」

 

 

 

最高潮へと達する会場のボルテージ。チームגימטריה(ゲマトリア)が勝利すれば優勝、チームUZQueenが勝利した場合、延長戦へと持ち込まれる……。

 

 

「長らく続いたこの大会も、終わりを迎えようとしています……。……決勝戦第6試合、大将戦を努める熱い奴らは! こいつらだ!

 

――チームגימטריה(ゲマトリア)! Black Suit(ブラックスーツ)!」

 

 

Black Suit(ブラックスーツ)!」「Black Suit(ブラックスーツ)!」「Black Suit(ブラックスーツ)!」

 

 

 

「対して! もう後がないぞ……。この試合で延長戦へと持ち込めるのか!

 

――チームUZQueen! Silence(サイレンス)!」

 

 

Silence(サイレンス)!」「Silence(サイレンス)!」「Silence(サイレンス)!」

 

 

 

「クックック、あなたが大将ですか、代理人」

 

「まぁな。……ユズの方が良かったと思うんだが」

 

「あなたは確か、ゲームについてあまり詳しくはないと……、ミレニアムプライスで仰ってましたね」

 

「聞いてたのか……」

 

「クックック、……特色フィクサーの実力、見させていただきますよ」

 

「……やっぱり、都市についても把握していたか。……まぁ、やれるだけのことはやるよ」

 

 

 

「それでは大将戦! Ready Fight!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

事の顛末をお話ししよう。まず、先に第1ラウンドを制したのは……

 

 

 

――ローランだった。

 

 

「……クックック、まさか反応速度だけで、全ての攻撃を防御されるとは……」

 

「まぁ、……都市で行ってきた戦闘よりは、動きが遅いからな」

 

 

 

――ジャストガード――

 

 

相手の攻撃に合わせて完璧なタイミングで防御すれば、1ダメージも喰らうことなく防げる高等テクニック。

 

……当然、ローランがこんな技術を知っている訳なかったのだが、

 

 

 

 

――ゲーム開発部で操作方法を教わった瞬間から、完璧なタイミングでのジャストガードが出来るようになっていた。

 

 

 

「俺としては、予備動作に合わせて防御ボタンを押してるだけなんだけどな」

 

「クックック、まさか持ち前の身体能力を、こうも活かされてしまうとは」

 

 

ローランに関しても、決して格ゲーが上手い訳ではない。むしろ、プレイだけ見たら粗末な部類だろう。

 

……だが、フィクサーとして積んできた経験を存分に発揮できるということもあってか、

 

 

 

 

――特訓の段階で、ユズに勝利していたのだ

 

 

 

必殺技や強攻撃を撃つタイミングなど、何一つ把握していないローランが選んだ戦法は、

 

 

――結果として、ゲーマーであればあるほどブチギレ必死の戦法となっていた。

 

 

 

「クックック、これはなかなか……堪えますね……」

 

「……すまん。二日間しか練習してないから、これしか知らないんだ」

 

 

 

相手の攻撃に合わせて適切なタイミングで防御し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()与える。

 

 

この行動をひたすら繰り返し、

タイムアウトによる残存HP差での勝利を狙う。

 

 

 

……戦い方としては理にかなっているが、

 

後ろで応援しているゲーム開発部の表情は曇っていた……

 

 

 

「でたぁ!? 代理人のジャスガ弱攻撃!」

 

「やられる方は、気が狂いそうになるんですよね……」

 

「……あ、あの戦い方は、……相手したくない……です」

 

「アリスも、代理人には勝てませんでした……」

 

"都市の人たちはみんな、見てから防御できるのかな……"

 

 

ローランの戦い方は、対処方法が一つもない初見殺しと言っても過言ではないだろう。

 

……相手側から攻撃しなければ、ローランも対応することはない分、放置していれば時間切れで引き分けとなるのだが……、

 

これを実行した場合、1ラウンド目を取っているローランの勝利となってしまう。

 

 

……つまるところ、ローランのプレイスタイルに気づけず、1ラウンド目を取られた時点で黒服の敗北は決定していたのだ。

 

 

「決まったーー! Silence(サイレンス)の連続ジャストガード! 必殺技の28連撃を全て捌き切った時は、流石の私も言葉を失ってしまいましたよ!

 

チートじゃないのかって? ご安心ください! 操作しているアケコン含め、全て運営スタッフの元厳重なチェックが行われております!

 

つまり! 信じられないかもしれませんが、連続ジャストガードは理論上可能と言うことです!」

 

 

 

「いやぁ、人力TASは伊達じゃないね!」

 

「理論上可能は、一般人には不可能なんですよ……」

 

「……ぜ、全キャラの攻撃予備動作を……暗記すれば……」

 

「さすがは裏ボスです!」

 

 

 

タイムアウトまで繰り返されるジャストガードと弱攻撃。その結末は……

 

 

 

「決勝戦第6試合……大将戦を制したのは、チームUZQueenだ!!」

 

 

 

大将:‪〇Silence VS ✕Black Suit

 

 

 

「UZQueen!」「UZQueen!」「UZQueen!」

 

 

「この結果により! 試合は第7試合、延長戦へと移行いたしま……」

 

「いえ、辞退致します」

 

 

「「「「え……?」」」」

 

 

「す……はい? 今なんと……」

 

「我々チームגימטריה(ゲマトリア)は辞退すると言ったのです。優勝賞品は惜しいですが、それ以上に得られたものがありますので」

 

「良いのだな、黒服」

 

「青輝石を誰よりも欲しがっていたのは貴方だった筈」

 

「クックック、構いませんとも。それに……このまま延長戦に移ったところで、我々では代理人への対処方法が思いつきませんので」

 

「そういうこった!」

 

 

 

「……えー、チームגימטריה(ゲマトリア)から辞退の申し出がありましたので、

 

 

――優勝は、チームUZQueen! チームUZQueenの優勝です!!」

 

 

「「「「「「ワァァァァァァァ!!!!」」」」」」

 

 

「UZQueen!」「UZQueen!」「UZQueen!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

会場の大歓声に包まれながら、優勝賞品である1,000万クレジットと青輝石1年分を入手したゲーム開発部。

 

……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()され、部費や生活費に充てる為の賞金だけ持ち帰っていた。

 

 

 

――キヴォトスチャンピオンシップから5日後

 

 

 

書類整理を行っていた二人の元を訪れた4人の少女たち

 

 

(ガチャ)

 

 

「うわあぁぁぁん! 先生! お金貸してーーーーー!」

 

"も、モモイちゃん?" 

 

「なんだ、お前らだったのか。……お金貸してって、この間の優勝賞金はどうしたんだ」

 

「代理人さん、それなんですが……」

 

「うぅ……」

 

「魔王ユウカに押収されてしまいました!」

 

"押収? それに、魔王ユウカって……"

 

「……大方、大会に出場したことがバレたんだろうな」

 

「そうなんだよー! ネル先輩が偶々あの大会を見てたみたいで、ユウカに告げ口されちゃってさ!

 

……どうせ無駄遣いするだろうからって、生徒会名義で管理されることになっちゃったの!」

 

「……良かったじゃないか。これで無駄に浪費しないで済むだろ」

 

「ちっとも良くない! うわぁぁぁん、これじゃあ餓死しちゃうよーーーー!」

 

「私も賞金が貰えると思って……新しいゲーミングチェアを買ってしまって、生活費が……」

 

「わ、私も新しいパソコンを……」

 

「……? アリスは今あるゲームで十分ですよ? まだプレイしてないゲームが沢山ありますから!」

 

 

"……" 「……」

 

 

 

先生に泣きつくモモイを他所に、目を合わせたローランと先生は、

 

 

――二人して、溜息をつく羽目となった……。

 

 

"……とりあえず、……アリスちゃん以外は正座しようか?"

 

「……はぁ」

 

 

シャーレに響く説教の声。……床に正座させられたゲーム開発部の3人は、お金の大切さと今後の使い方について、先生に叱られるのであった。

 

 

「こ、こんなはずじゃなかったのにーーー!」

 

 

 

 

 

――Κιβωτός Championship <完>

 

 

 

 

 





如何でしたでしょうか?

こんな感じの幕間を、本編の合間に投稿していこうと思います。


オリジナルのストーリーは書いてて楽しいですけど、話の構成が難しいですね!


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