皆様、明けましておめでとうございます!
2025年、最初の投稿は番外編――
現時点(~物語~ 観測者の視界まで)でローランがキヴォトスで出会った都市の住民(+先生)と、飲み会を開くお話です!
酒代はシャーレ持ちです。やったね!
本年もよろしくお願い致します~!
※諸事情により、幕間をいくつか削除いたしました。
内容自体は保存してある為、本編完結後に改めて投稿致します。
――1月1日 PM.10:00
D.U地区にある飲食店に集まった、2人の大人達。
「本日、貸切」と書かれた立て看板が置かれた店前で、予定時刻よりも早く到着した先生とローランは、招待客が訪れるのを待っていた。
"今日の飲み代は私持ちだよ! ……まぁ正確には、接待費という名目の経費だけどね"
「よくもまぁ、早瀬から許可が降りたよな」
"それはもう……! もっっっのすごく大変だったよ"
「早瀬にシャーレの運営費の管理を任せてるのも変な話だが、連邦生徒会もよく金を出そうと思ったな。……正直、今日の代金は俺が出すつもりだったんだが」
"うーん……とね、実は……連邦生徒会には断られちゃったんだよね"
「……は?」
"まぁ、大人の飲み会代なんて瞑目が通る訳もなく……今日の代金は組織のみんなが出してくれたんだ。代わりに、今日話した内容を録音するように言われちゃったんだけど……"
「……都市の情報に関する情報料って事か」
"た、多分……?"
「まぁ、他の生徒なら兎も角、エリュシオンの面々なら別に構わないが……。ある程度は把握されているだろうしな」
"み、みんなにも言った方がいいよね?"
「いや、別に言わなくていい。外で飲む以上、監視や盗聴をされる事ぐらいアイツらなら理解しているだろうからな」
いつどこで目が監視しているかも分からない都市で過ごして来たんだ。この平和な世界での録音ぐらい、騒ぐ程の事でもないだろう。
「腹黒小僧の言う通りさね。そんなに気負うことではないよ」
"――っ!? い、いつの間に……"
「やっぱり、1番最初に来るのはお前か。イオリ」
「当然。こんな面白そうな招待状を寄越しておいて、私が遅れてくるとでも思ったのかい?」
連邦捜査部シャーレの先生が書き記し、ローランがこの世界に来ている都市の知り合いに手渡した招待状。
日時と場所が記されたその招待状を手にした大人……(中身は)大人達が順に、指定された飲食店へと足を運んでいた。
"えっと、イオリさん? イオリちゃんの方には……"
「心配せずとも、今日の飲み会については伝えてあるさね。お嬢ちゃんの寝ている間なら好きにして良いと、言っていたから大丈夫さ」
"うーん……先生としては生徒にお酒を飲んで欲しくはないんだけど……まぁ、中身が大人なら大丈夫だよね"
「ほんと、都市では考えられない価値観だよな。水の代わりに酒を飲む子供が山ほど居るってのに」
裏路地によっては水よりも酒の方が安価に手に入ると言うこともあってか、幼少期から酒を口にする子供など数え切れない程いる。短期的な酩酊感による現実逃避の為に常飲する者も居れば、生きる為に水分補給として酒を飲む者もいる。
「……私で最後か? 遅くなって悪かった」
"あ、姉御だ。待ち合わせ時間まではまだあるから大丈夫だよ"
「それに、あと1人来る予定だから気にしなくていいぞ」
……
「……その呼び方はやめてくれ、先生。サキ達に呼ばれるなら兎も角、貴女にまでそう呼ばれるとだな――」
「おや? じゃあリウ1課のお姫様の方が良かったかい?」
「……シャオで良い。他の呼び方はするな」
"う、うん。分かった"
「……っと、話してるうちに最後の1人も来たみたいだな」
ローランの視線の先に目を向ける3人。
元旦の夜と言うこともあってか賑わっている道を掻き分け、待ち合わせ場所であるこの店に向かってくる1人の少女が……
「おい、代理。……まさかとは思うが、あの子供も参加者か?」
"あ、えっとね。あの子も都市から来た――"
「あの遺物は…………なるほど。そういうことかい」
「イオリの方は気づいたみたいだな」
「まぁ、彼女とは面識があるからねぇ。遺跡帰りに何度かすれ違ったさね、覚えているとも」
「アイツが手土産に持ってくる遺物には散々困らされてたけどな」
「……遺跡帰り? ……まさか、あの子供も――」
人混みを避けながら、こちらに近づいてくる少女。
イオリよりもさらに小さな身体で懸命に近づいてくる彼女は、身の丈以上の白い大砲を背負っている事もあってか、周りの人から奇妙な物を見る目で見られていた。
「お待たせしてしまったみたいで、申し訳ございません。この身体だと人混みを避けるのも大変でして……」
"気にしなくて大丈夫だよ、シロちゃん。まだ予約時間までは余裕があるからね"
「そう言って頂けると助かりますわ」
「ほんに久しぶりだねぇ、便利屋。君に頼まれてL社に跳ばしたのが最後だったかな?」
「……はい????」
私服姿とは言え、明らかにゲヘナの生徒の特徴を持つイオリに話しかけられ、一瞬何を言ってるのか理解出来なかったシロだが、イオリが持つ特徴的な刀に気がついたのか――
「貴女…………イオリですか? ……お互い、随分と可愛らしい姿に生まれ変わったようですね」
「私の場合は相乗りしているに過ぎないけどねぇ。この身体の持ち主とは仲良くやっているとも」
「相乗り……。……よく分かりませんが、この世界に居るという事は貴女も死んだのですか? それとも自力で跳んで――」
「前者だよ。私も、このお姫様も、腹黒小僧に殺されたさね」
……
「……話についていけないんだが――」
「そういえば、2人は面識は無いのか?」
「そう……ですね。リウ協会1課、鉄血のシャオの噂は聞いて居ましたが、直接会うのは初めてですね。……あらためまして、桐藤シロと申します。白の便利屋と言えば、伝わりますか?」
「……白の……便利屋。……確か、遺跡探索に重きを置いているフィクサーだったか? 階級までは知らないが、噂話は聞いた事がある」
"あ、それは私も気になるかも。シロちゃんも1級のフィクサーだったの?"
「いえ、正確に言うのであれば、私はフィクサーではありません。あくまで個人で動く便利屋で、ハナ協会に申請も出していないので――」
「実力的には1級以上あると思うけどな。フィクサーとして登録していたなら、間違いなく白の色がついていただろ」
「……いえ、それは無いかと。運良く見逃されていただけで、私の場合、存在するだけで頭の規則に反している可能性がありますので……」
「頭の規則に反しているだと……?」
「そのような存在をハナ協会が認めるとは思えないかと」
「……そう言えば、調律者と対峙したって言ったな」
「……思い出させないでください。自害して事なきを得るので精一杯だったんです」
……
「調律者と、対峙した……?」
「へぇ……便利屋もどうして、面白そうな事をしているじゃないか」
"えっと……話してる内容は全然分かんないんだけど、代理人と同じぐらい強いってこと?"
「あー、そうだな。そんな感じだ」
「図書館の力を自在に使える貴方と殺しあったら、私の身体が持ちませんよ。……都市には帰りたくないので、やめてくださいね」
「いや、やらないから」
楽しそうに話すローランとシロだったが、調律者と対峙したと言うシロの発言に、話を聞いていた2人は気が気でなかった。
唯一、その重大さを理解していない先生だけが楽しそうに話を聞いていたが、
"っと、みんな。予約の時間だから、そろそろお店に入ろっか"
★★★★★
「それでは、どうぞごゆっくり」
事前に頼んでいた料理が一通り並べられたテーブルに着く5人。美食研究会の折り紙付きでもあるこの店は、1度食べたら忘れられない程美味であるという噂が流れているらしい。
"よーし。それじゃあ、乾杯ー!"
「「「「乾杯」」」」
料理を口に運び、酒を飲む。
洗練された一流の料理に満足気に頷き、酒を煽った4人は都市での思い出話に花を咲かせ、先生はその様子をシッテムの箱を通じて録音するのであった。
「それじゃあ、私達も乾杯しますか? いちごミルクしかないですけど」
「いちごミルクしかとはなんですか、しかとは! そんな事を言うアマノちゃんにはあげませんよ!?」
「え、いや……あー、わ、私が悪かったっすから、ね? 乾杯しましょ、アロナ先輩」
シッテムの箱の中での会話に笑みを浮かべ、料理を口に運ぶ。
新鮮なお刺身と赤身魚の唐揚げ、
――あの質問をするまでは
「そういえば、腹黒小僧がお気に入りだって言っていたパン屋、私も訪れてみたけど悪くなかったよ」
「……だろ! ハムハムパンパンのスペシャルサンドイッチ。あれは1度食べたら忘れられない味なんだよなぁ」
「アンジェリカも絶賛してましたね。美味しい物について語るローランは、子供っぽくって見ていて飽きないと」
"……"
「あぁ、あのサンドイッチのチェーン店か。だいたい何処の裏路地に行っても店があるから、何度か立寄らせてもらったが……確かに美味であったな」
都市の話を聞くのは新鮮で楽しくはあるのだが……
「……っと、悪い。こんな話ばかりじゃつまらないよな」
"あ、いや、そんなことは無いよ! ないんだけど……"
「うん?」
"その……アンジェリカって名前を出されると反応しちゃうと言うか……私とは別人だって、分かってはいるんだけど……ね?"
「ふむ……もしかして、先生の名前もアンジェリカなのかい?」
"う、うん"
「……なるほど。見た目だけでなく名前までも同じとは。……腹黒小僧、これは偶然で片付けられる内容では――」
「分かってる。……理由も原因も判明してる」
「……そうかい。あんたが気にしてないなら、構わないんだけどねぇ」
……
「まぁ折角だ。こんな話はやめにして、先生も混ざれる話にするか」
「とは言え、都市の話で先生が混ざれる内容があるか分からないが」
「でしたら、先生。都市について、何か聞いてみたいことはありませんか? ……自負する訳でありませんが、協会所属に便利屋、特色と1級フィクサーが揃っている以上、大体の質問には答えられると思いますよ」
「そうさね。折角の機会だから、なんでも聞いてくれたまえ」
酒が回っているのか、4人全員がうっすらと頬を赤く染めながら、先生へと向き直る。シロが言った様に、この4人が揃って答えられない都市の事など、それこそ翼や頭に関する事ぐらいだろう。
"えっと、それじゃあ……"
――この4人の中で、誰が1番強いの?
「「「「…………」」」」
……普段であれば全員が身を引き、軽く流していただろう。フィクサーの強さとは、何も戦闘能力だけで決まるものでは無い。
暗殺、諜報、探索、戦闘、魅力
多種多様なジャンルを総合して、フィクサーの階級は決まるのだが……当然、そんな事を先生が知る由もなく――
――誰が1番強いのか?
この質問に対する回答として、最も相応しいのは……
「俺だろ」
「私ですね」
「私だな」
「私だろうさね」
「「「「…………」」」」
(ガタッ!!)
全員が一斉に席を立つ。酔いのせいかまともに回っていない頭を回転させ、それぞれが自身の獲物を取り出し、構えた。
"ちょっ、ちょっとみんな!? わ、私の質問が悪かったから、武器をしまって――"
一触即発
そんな空気を感じ取った先生が咄嗟に待ったをかけるも、その声よりも早く動き出した4人。
槍を構え、剣を構え、刀を構え、大砲を構え――
まさに今、殺し合いが始まろうとした瞬間――
「お客様。店内で暴れられては困ります」
"えっ……えぇ……?"
4本の腕で全員の武器を取り上げ、残り9本の腕で全員の後頭部を叩きつけた店主。あまりの速さに何が起きたのか理解出来なかった先生だったが……
――この店主が只者では無いという事だけは、嫌でも理解出来た
「少々悪酔いのし過ぎみたいですね。これ以上は手加減が出来ませんので、申し訳ありませんがお会計をお願い致します」
"う、うん。あ、暴れてごめんなさい……"
「いえいえ、この程度迷惑の内にも含まれませんので。……ただ、お店を破壊されては困りますので、私の方で対処させて頂きました」
"あっ……うん"
「それではお会計を。……先程のお話ですが」
――1番強いのは、私だったみたいですね
偽コラボ
拙作:「食事処・十三腕」とのコラボでした!
都市よりも治安が悪く、治安を維持しようとする組織すらも壊滅させてきた店主による一撃は、4人の混乱耐性を葬り去りました。
4桁の速度で動ける化け物の相手は、この4人でもキツかったみたいですね
……多分、クラス分けするならALEPHクラスの幻想体じゃないかな。被害規模と言うか、殺した数と言うか……
評価、感想お待ちしております
あらためまして、本年もよろしくお願い致します!