都市や図書館のことについて、話せるだけ話したローランは、対策委員会の面々と共にブラックマーケットへと、足を運んでいた。
(ガヤガヤ)
「ここがブラックマーケット……」
「わぁ☆すっごい賑わってますね?」
「ん、本当に。小さな市場を想像していたけど、街一つぐらいの規模だなんて」
「うへぇ~、普段私たちはアビドスばっかりにいるからね~。学区外は結構変な場所が多いんだよ~」
「ホシノ先輩、ここに来たことあるの?」
「いんや~、私も初めてだね~。でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさ~」
「にしても、本当にでかいわね」
「露店も出てるみたいだし、結構賑わってそうだな」
「だね~。ちょーデカい水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!」
「水族館?」
「えっと、お魚を展示している場所ですね☆」
「うへぇ、魚……、お刺身……」
"いやいや、お魚を見る場所であって、食べる場所じゃないでしょ……”
「皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起こるかわからないんですよ」
(ダダダダダダッ)
銃声? 結構遠いな……。連射銃か……、一度使ってみたいんだよな……。
★★★★★
「待て!!」
「う、うわぁあああ! まずっ、まずいですー!! つ、ついてこないでくださいー!!」
「そうはいくか!」
「あれ、あの制服は……?」
「わわわっ、そこどいてくださいー!!」
(ドンッ)
「……シロコ、大丈夫か?」
「い、いたた……ご、ごめんなさい!」
「ん、平気。……大丈夫? ……な訳ないか、追われてるみたいだし」
「そ……それが……」
「何だお前らは? どけ! アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」
「あ、あうう……。わ、私のほうは特に用はないのですけど……」
「……」
分かりやすい不良だな……。……へぇ、面白そうな武器だ。…………頂くか。
「……! 思い出しました。その制服……キヴォトスいちのマンモス校の一つ、トリニティ総合学園ですね!」
「そう! そしてキヴォトスで一番金を持っている学校でもある! だから拉致って身代金をたんまり頂こうってわけさ!」
「拉致って交渉! なかなかの財テクだろ? くくくっ」
「……確かに悪くないな」
「代理人!?」
「だが、交渉するにもどれだけの価値があるか分からないんだし、部位ごとに体をバラして売ったほうが、金になると思うんだが?」
「……ひっ」
「ちょっと、何言ってるの代理人!?」
「代理人~☆?」
「マジか、お前……」
「さすがのあたしらも、その発想はなかったぞ……」
ローランの発言にチンピラも驚いたのか、張り巡らしていた気を散らしてしまった。
「……甘いな。……先生」
"うん……。……ホシノちゃん、シロコちゃん"
「ん、了解」
「はいはい~」
「ん?」
(ダンッ、ダンッ)
(ダダダダダッ)
チンピラの隙を突き、ホシノのショットガンとシロコのアサルトライフルが火を噴く。……意識外からの攻撃ということもあってか、チンピラたちは成す術もなく倒れ伏してしまった。
「うぎゃあっ!」
「油断しちゃダメだよ~? ……まぁ、代理人の話も、かなり怖かったけどさぁ~」
「ん、流石に冗談。……本当にそう思うなら、もうやってる」
「まぁ……、気を逸らすにはいい話だろ? ……悪いな、変な話して」
「い、いえ……、だ、大丈夫です……」
幾らブラックマーケットでも、この手の話に耐性はないみたいだな。……あっちではよくあることなんだが。
★★★★★
「あ、ありがとうございました。皆さんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした……」
「いいっていいって~。困った時はお互い様だよね~」
「ん、無事で良かった」
「もう……。急にあんな話するからビックリしたじゃない!」
「ほんとですよ~☆」
「……」
"……? 代理人? 何やってるの?"
「これは、十六夜が使ってるのと同じ形状か……。重量はあるが、連続で弾丸を撃ちだせる機関銃……。……貰っておくか」
「ちょっとちょっと! 何やってんのよ!」
「ん? あぁ、ちょっと武器が気になってな」
「? そんなに珍しいですか☆?」
「あっちじゃ、弾丸自体に税金が掛かってるせいで、連射銃なんて使うやつは居なかったからな」
手袋は……。……いや、向こうの奴らがキヴォトスに来てるのだとしたら、生徒にバレたところで今更か。
「……よし、待たせたな」
「えっ……? いま、武器が……」
「服はどうする? どこかその辺で売り払うか?」
「はい!? 売らないけど!?」
「ん、いい考え。気絶してるし、今がチャンス」
「チャンスじゃないですよ! マーケットガードが向かってきてるので、すぐにその場を離れてください!」
「マーケットガード?」
「治安維持組織みたいなもの! ほら、離れるよ」
「ん、急ごう先生」
「ほらほら、代理人も行くよ~」
「急ぎましょう☆」
★★★★★
ブラックマーケットの外れ。一同は、人通りの少ない場所に移動していた。
「た、助かりました……。こっそり抜け出してきたので、何か問題を起こしたら……あうぅ、……想像しただけでも……」
「えっと~、ヒフミちゃんだっけ? それにしても、トリニティのお嬢様が、何でこんな危ない場所に来たの~?」
「あ、あはは……それはですね……。……実は、探し物がありまして……」
「ん……、戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「科学武器とかですか?」
「えっ!? い、いえ……えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
「ペロロ?」
「限定グッズ?」
「はい! これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!」
「……あー」
何だこれ……。口に無理矢理アイスを捻じ込まれて殺害されてる……鳥?
「……こういうのが人気なのか?」
「人気も人気! 限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ!」
「お、おう。……そうなのか?」
「ね? 可愛いでしょう?」
「……」
「わぁ☆モモフレンズですね! 私も大好きです! ペロロちゃん可愛いですよねぇ☆ 私はミスター・ニコライが好きなんですよ☆」
「分かります! ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて」
「……いやぁ、何の話だか、おじさんにはさっぱりだなぁ~」
「ホシノ先輩はこういうファンシー系に全く興味ないでしょ」
「ふむ、最近の若い奴にはついていけん」
「小鳥遊、それ俺と先生のセリフな」
"まだ若いんだから……。……ね?"
「う、うへ? あ、圧が強いよ先生~」
★★★★★
「……というわけで、グッズを買いに来たのですが、先ほどの人たちに絡まれて……。……そういえば、アビドスの皆さんは、なぜこちらへ?」
「私たちも似たようなもんだよ~。探し物があるんだ~」
「そう、今は生産されていなくて手に入れにくいものなんだけど、ここにあるって話を聞いて」
「そうなんですか、似たような感じですね」
「皆さん大変です! 四方から武装した人たちが向かってきています!」
「何っ!?」
「あいつらだ!!」
「よくもうちの仲間をやってくれたな! 痛い目に遭わせてやるぜ!」
「先ほど撃退したチンピラの仲間のようです! 完全に敵対モードです!」
「ん、望むところ」
「全く、なんでこんなのばっかり絡んでくるんだろう……」
「とにかく応戦しましょう、皆さん!」
「……折角だし試してみるか。……小鳥遊、ちょっと先生の護衛を頼む」
「……? いいけど、代理人はどうするの~?」
「さっき手に入れた銃を試してみたくてな。……よっと」
不良から巻き上げた機関銃を取り出す。……何の装飾も施されていない、武骨な機関銃。他の生徒たちからは忌避されがちだが……、
――ローランが扱う分には何一つ問題がなかった。
「……はい!? えっ、今どこから取り出したんですか……!?」
青い残響(遠距離攻撃無効)以外を相手にするなら、軽機関銃って都市でも万能だと思うんだ。
上級フィクサーの殆どが、銃弾を斬り払ってくるけど……。
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