……ところで黒い沈黙の手袋って、どうやって収納してるんですかね?
私の解釈だと、手の甲に触れたものを収納するって感じなんですけど……。
……皆さんどう思います?
「はひー、息苦しい……。もう脱いでいいよね?」
「そうだね~。追手の気配もないし良いんじゃない?」
「……代理人は大丈夫でしょうか☆?」
"さっき連絡があったよ。合流地点に向かってるって"
「……ん、あそこ」
「あれ、ほんとだ。おーい代理人~」
「……お、いたいた。遅くなって悪かったな」
全員無事みたいだな。……まぁ、通報も阻止できたし大丈夫だとは思っていたが。
「首尾はどうですか☆?」
「いや、それは俺のセリフなんだが……。……シロコ、回収は出来たか?」
「シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」
「う、うん……バッグの中に」
(カチャッ)
「……へ? なんじゃこりゃ!? カバンの中に……札束が……!?」
「うええええええっ!? シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」
「……なるほどな」
……地下金庫の中身が保管記録より少ないとは思っていたが……、シロコの鞄に詰めてたのか。
「ち、違う……目当ての書類はちゃんとある。……このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで……」
「どれどれ……うへぇ~。軽く一億はあるね。本当に五分で一億稼いじゃったよ~」
「やったじゃない! 何ぼーっとしてるの! 運ぶわよ!」
「……」
「ちょ、ちょっと待ってください! そのお金、使うつもりですか!?」
「……そうだけど、なんで? 借金を返さなきゃ!」
「そんなことしたら……本当に犯罪だよ、セリカちゃん!!」
「は、犯罪だから何!? このお金はそもそも、私たちが稼いだお金なんだよ!? それがあの闇銀行に流れていたんだから!」
「……」
「私はセリカちゃんの意見に賛成です☆ 犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をしたほうが良いと思います」
「ほらね! これさえあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」
「うへぇ~、それはそうだけど……。……シロコちゃんはどう思う?」
「ん……。……自分の意見を述べるまでもない。ホシノ先輩が反対するだろうから」
「へ!?」
「さすがシロコちゃん。私のこと分かってるね~」
「……」
「私たちに必要なのは書類だけ。お金じゃない」
「でも……」
「セリカちゃん。こんな方法に慣れちゃうと、きっとまた平気で同じ事をするようになっちゃうよ」
「……」
「うへぇ~、おじさんとしては、カワイイ後輩が悪い大人になっちゃうのはイヤだな~。……それで学校を守って、何の意味があるのさ」
「……」
「こんな方法を取るぐらいなら、最初からノノミちゃんのカードに頼ってたよ~」
「……私もそう提案しましたが、ホシノちゃんに反対されてしまいまして☆」
「……このバッグは置いていくよ。頂くのは必要な書類だけね。これは委員長としての命令だよ~」
「うわあああっ!! もどかしい! 意味わかんない! こんな大金を捨ててく!? 変なところで真面目なんだから!!」
「ん、委員長命令なら仕方ない」
「私はアビドスさんの事情をよく知りませんが……、……このお金を持っていると、何か他のトラブルに巻き込まれるかもしれません。……災いの種、みたいなものでしょうから」
「あは……仕方ないですよね☆ このバッグ、私が適当に処分を……」
「それなら、俺が貰っておくよ」
「代理人!?」
「……どういうつもり? 代理人」
「俺は既に悪い大人だからな。犯罪者の金を使うことに躊躇いなんて一切無い」
「……」
「この金は、シャーレの運営費として使わせてもらう。……犯罪者に回収されても面倒だし、先生が生徒の為に使うなら問題はないだろ?」
"……まぁ、悪いことに使われるぐらいなら、私たちで各学園の為に使ったほうが良いよね"
「そうすれば、銀行を襲ったのもアビドスじゃなくて、シャーレって事で処理できるからな」
「代理人……☆」
……それに、今頃銀行の方は大騒ぎだろうしな
★★★★★
アビドスの一行は、ヒフミとともに校舎へと戻り、全員で書類の確認を行っていた。
(バン!!)
「なっ何これ!? 一体どういうことなのっ!?」
「……!!」
「ん、集金記録は、間違いなく私たちから持っていた金額と一致してる」
「……でも、そのすぐ後にカタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万円提供』って記録が……」
「ということは……それって……」
「ヘルメット団の雇い主は、カイザーローンって事……?」
「……」
「……」
「……」
「……ど、どういうことですか!? 理解できません! 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……」
「……目的は金じゃないんだろうな」
あの金庫の中身を考えると、金なんて腐るほどあるだろうから、目的は恐らく……。
「代理人? それ、どういう意味?」
「おじさんたちに教えてくれるかな~?」
「……はぁ。……あくまで俺の推測になるが」
「……」
「カイザーローンが欲しいのは、……お前たち生徒か、この土地だと思うぞ」
「「「「「……!?」」」」」」
「あの銀行に保管してあった金額を考えると、アビドスから利息を巻き上げる必要もないだろうしな」
「ちょ、ちょっと待ってください! ……どうして銀行の資産を把握しているんですか?」
「……あー」
……そう言えば、監視カメラを潰したことしか言ってなかったな。
★★★★★
「はぁ!? 銀行の金庫を空にした!?」
「それに職員を全員無力化したって……、……こ、殺してないですよね?」
「……」
「ちょっと!?」
「……代理人~?」
「……あの銀行にいたのは全員機械だったからな。……首は刎ねたが、今頃カイザーローンが修理してるんじゃないか?」
「「「「「……」」」」」
「……まぁ、それは一旦置いておくとしてだ。……これを見てくれ」
周囲の視線は見なかったことにし、ローランはテーブルの上に地下金庫の保管記録を広げた。
「これがあの銀行にあった資産だ。……これだけの金が、あの銀行一つに保管されてたんだ。……今更アビドスの利息を回収することに、躍起になる必要なんてないだろ?」
「……」
「実態については後で先生と調べてみるが、……とりあえず言えることは、カイザーローン単独の動きじゃないだろうな」
「……そうですね。銀行単独でやるには大掛かりすぎるといいますか……」
「ん、不自然。……多分、カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない……」
「……はい。……そう見るのが妥当ですね」
向こうで解決した時も、……事務所の仕業だと思ったら、結局は協会が絡んだ事件だったしな。
★★★★★
「みなさん、色々とありがとうございました」
「変なことに巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん」
「あ、あはは……」
「今度遊びに行くから、その時はよろしく~」
「はいっ、もちろんです! ……まだ詳しいことは明らかになっていませんが、この集金記録はカイザーコーポレーションが犯罪者や反社会勢力と、何かしら関連があるという事実上の証拠になり得ます」
「確かに、十分証拠になるだろうな」
「トリニティに戻り次第、ティーパーティへと報告します! ……それと、アビドスさんの現在の状況についても」
「……まー、ティーパーティーはもう知ってると思うけどね~」
「は、はいっ!?」
「あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよね~。……みんな、遊んでばかりじゃないだろうしさ~」
「そ、そんな……知っているのに、みなさんのことを……」
「うん、ヒフミちゃんは純真で良い子だね~。……でも世の中、そんなに甘くないからさ。……ね、代理人」
「……まぁ、お前には直接言ってたな。……
「……」
「それそれ~。……ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、そっちに知らせたところで、これといった打開策が出るわけじゃないんだよね」
「そ、そうですか……?」
「……納得しづらい~? ……それじゃあ、仮に協力を得られたとして、ティーパーティーは問題解決後にどうすると思う?」
「え……?」
「……はい、代理人。答えをどうぞ」
「……アビドスに大きな借りを作らせるな。…………まぁそれ以前に、もし俺がそのティーパーティーだったら、協力するフリをして両者とも壊滅させるけどな。……そうすれば、両方の土地が手に入って犯罪も減るわけだし」
"代理人、それは言い過ぎじゃないかな……"
「怖っ! ……そんな事考えてたの!?」
「ん、物騒……」
「代理人……」
「……おじさんも、そこまでは考えてなかったな~。……精々、借りを作らせられるぐらいにしか思ってなかったよ~」
「……あー、……聞かなかったことにしてくれ」
「…………そう、ですね。……確かに、その可能性も無くはありません。……あうぅ、政治って難しいです……」
「……でも、ホシノちゃん。悲観的に考えすぎなのではないでしょうか☆?……本当に助けてくれるかもしれませんし」
「うへぇ~、確かにその可能性もあるかもね」
「でしたら……」
「でも、『万が一』ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよ~?」
「……」
「……」
「……」
「では……えっと……、本当に……一日で色んな出来事がありましたね」
「そうだね、すごく楽しかった」
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
「あ、あはは……。……私も楽しかったです」
「いやぁ~、ファウストちゃんにはお世話になったね~」
「そ、その呼び方はやめてください!」
「よっ、覆面水着団のリーダーさん☆」
「みなさん……ヒフミさんが困ってるじゃないですか」
「と、とにかく……これからも、大変だとは思いますが頑張ってくださいね。……応援してます」
「うん、ありがとう」
「またね、ヒフミ」
「はい! みなさん、またお会いしましょう!」
アビドスを去っていくヒフミ。その背中を送った一行は、明日に備えて解散することとなった。
都市産は発想が黒いなぁ。
……まぁ、都市自体が真っ黒だからしょうがないんですけど!
……どこの協会だよ! カイザーローンみたいなことしてるの!
……W社もワープ列車でクズみたいな商売してたけど。
評価・感想お待ちしております。