――夜
シャーレに戻ってきた先生とローランは、カイザーコーポレーションについて調べていた。
"……やっぱり。アビドスの土地の殆どが、カイザー名義に代わってるね"
「……そんな気はしてたよ」
……子供たちだけで、あの規模の利息を数年間も払い続けられるとは思えない。……恐らくアイツらの前の世代は……
「使われていない土地を、借金の担保にしたんだろうな。……そこに目をつけられて、土地の買収が進められた感じか」
"こんな事になっていたなんて……"
「……なぁ、アロナ」
「はい! アロナちゃんです!」
「お前の力で、現金を複製できたりしないのか?」
「はい!? ……さ、流石のアロナちゃんでも、現金の偽造はちょっと……」
"造幣は良くないと思うなぁ……"
「無理か……。……いや、だったら金塊を複製してカイザーに売りつければ」
"代理人、犯罪はダメだよ"
「そうです、ダメです! いくら温厚なアロナちゃんでも、怒っちゃいますよ!」
「……ダメか」
結構いい案だと思ったんだがな。……というか、この世界の通貨って誰が発行してるんだ?
"話は変わるんだけどさ、……代理人"
「うん?」
"あの……"
「……どうかしたのか、先生?」
"……これ、私が聞いて良いのか分からないんだけど……"
「……やけに勿体ぶるな。そんなに聞きにくいことなのか?」
"私の容姿って……、奥さんに……似てるの?"
「……どうしてそう思ったんだ?」
"……だって、ここで初めて会った時、……私のことをアンジェリカって呼んだから……"
「……あー、そう言えばそうだったな」
……確かに、容姿だけ見ればアンジェリカに似てるが、
「そうだな。……見た目だけなら似てるよ」
"……そっか"
「あー、でも……似てるのは見た目だけだ。……性格も話し方も、アンジェリカとは違う」
"……"
「……それはそれ、これはこれだ。……見間違えたのは謝るから、先生もそんなに気を使わないでくれ。……今でも妻のことは忘れられないが、……だからと言って、先生にアンジェリカを重ねたりはしない」
……先生はアンジェリカほど狂暴じゃないし、アンジェリカも先生ほどお人好しではないからな……。
――同一視はしない。…………していない筈だ。
"……うん、分かった"
「よし……。……カイザーについてもある程度調べ終わったし、一休みするか?」
"……そうだね、一度休憩しようか。アロナちゃんもありがとうね"
「はい! 調べものなら、いつでもこのスーパーアロナちゃんにお任せください!」
★★★★★
アビドス郊外。人気の少ないこの場所に、同じ制服を身に着けた一団が集結していた。
「……ほんとにやるの? アコちゃん」
「当然です。こんな絶好の機会を見逃すわけにはいきません」
「それはそうだけど……」
「……諦めましょうイオリ。アコ行政官は言い出したら止まりませんから……」
「……聞こえてますよチナツさん? とにかく! 早急に準備を進めてください!」
なんで私がこんなことを……。断ったらアコちゃんの機嫌が悪くなるし、このまま行動したら委員長に怒られるし……。
「……? ……イオリ、
「あ、いや……。……これは別に、外し忘れたわけじゃ……」
「それにその武器。……持ってくるのは構いませんが、戦闘で使えるのですか?」
「も、問題ない! 戦闘に支障は生じないから、気にしないで!」
「……そうですか」
そう言うと、チナツと呼ばれた少女は離れていく。……紫色のカラーコンタクトを付け、狙撃銃を肩に担ぎ、腰に刀と細剣、背中に大刀を装備した少女は溜息をついた。
(……そろそろ、私について話したらどうだい? お嬢ちゃん)
「は、話せるわけないだろ! ……頭おかしくなったのかと思われるわ!」
(瞳の色も変化していることだし、今更だと思うけどねぇ……)
「そ、それは……。か、カラコンで誤魔化せてるからいいの! ……この武器達も、実際に使うのは私じゃなくてイオリだからいいの!」
(そうかい……? まぁ、お嬢ちゃんが構わないなら、私から言うことはないけどねぇ)
……まぁ、背中の大刀は重たいし、他の風紀委員から変な目で見られるのは……ちょっと辛いけど。
「……
(あの
「わ、私は別に……。戦闘中サポートしてくれるし、話し相手にもなってくれるから良いんだけど……」
(……おや? ……てっきり私は、お嬢ちゃんの邪魔になっていると思っていたんだが)
「そんなことない! ……正直、イオリにはかなり助けられてる……と思う……。……だからこそ、イオリを私に縛り付けておくのが申し訳なくて」
(……優しいねぇ、お嬢ちゃんは。……お嬢ちゃんは私の頼みを聞いてくれるし、お願いすれば
「でも……。……息子を探すって言ってたじゃないか。……私はゲヘナの風紀委員に所属しているから、自由に動くことも、あなたの息子を探す手伝いも、……してやれない」
(……分かっているとも。確かに、私の目的は息子の居る世界線を探し出すことだが……。……折角、こんな面白いことになっているんだ。……永い永い旅路の、ちょっとした一休みとさせて貰うよ)
「イオリ……」
(……今まで散々酷い世界に浸っていたからねぇ。……私も疲れてしまったのさ。……なに、いざとなれば違う世界へと飛ぶとも。……だから、もうしばらく共存させて頂くよ、お嬢ちゃん)
「……あぁ! これからもよろしく、
と言うわけで、イオリ=紫の涙でした!
ゲヘナ風紀委員のイオリは、戦闘において主に狙撃を担当し、戦闘が長引くと最後方から高速で接近して切りかかってくるヤベー奴です!
ちなみに、紫の涙が表立って戦闘してるのを、他の風紀委員は見たことがありません。(数か月前に憑依されたばかりだからね)
その為、周りの反応は、使いもしないのに近接武器を3本も携帯する様になった、おかしな人となっております。(風評被害)
……可哀そうだね(可愛いね)
評価・感想お待ちしております。