黒い沈黙の行先   作:シロネム

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誤字報告・及び評価、感想ありがとうございます。




~終局~ A区 対策委員会編

 

斬る斬る斬る

 

ゲブラーは自在に形を変形させることができる大剣(ミミック)を振う。……振り下ろしや薙ぎ払いという単調な動きだが、尋常じゃない速度と腕力によって振るわれる大剣は、

 

 

――9つの武器を使い分けるローランによって、その威力を相殺されていた。

 

 

「……ッ! あい……変わらず、……重たいな!」

 

「……お前こそ、ほんと器用な奴だな」

 

 

振り下ろしには直剣(デュランダル)で対応し、

 

薙ぎ払いは大槌(老いた少年工房)で逸らす。

 

刺突に対しては、二振りの刃(クリスタルアトリエ)で弾き、

 

突進は2丁拳銃(ロジックアトリエ)で牽制。

 

 

 

ゲブラーの予備動作から、次の行動を予想。

 

……攻撃に対し最適な装備を瞬時に選び抜く思考力と判断力は、彼を黒い沈黙と呼ぶに相応しい能力であった。

 

 

 

「……これが、特色同士の戦い……なの……?」

 

「そうっすね。うちらもあの二人が殺し会ってるのは久しぶりに見たっす」

 

「うちのリーダー、キレてるなぁ」

 

「……これぇ、後片付けは、私たちがやるのでしょうか……」

 

「まぁ、そうなるだろうな」

 

 

二人の殺し合いを端から鑑賞していたホシノと()()()()()は、都市でも滅多にみることのできない特色同士の殺し合いに魅入っていた。

 

 

「……うへぇ~。凄いなぁ~」

 

「……いやいや! ホシノさんも十分凄いっすよ!?」

 

「自身のE.G.Oを発現してるしなぁ」

 

「……うん、強かったですね……」

 

「まぁ、強かっただろうな」

 

 

楽しく鑑賞していた司書補たちだったが、……長引くことが予想できたのか、二人の長期化する戦闘を肴に、芸術の階(ネツァク)から貰ってきた酒を開け、酒盛りを始めてしまった。

 

 

「ほらほら、ホシノさんも飲むっすよ!」

 

「どうせ長引くだろうからなぁ」

 

「……流れ弾には気を付けて、下さい……」

 

「まぁ、一緒に飲もうな」

 

 

グラスを手渡し酒を注ぐ。……フレンドリー過ぎる司書補達に、呆れたような笑みを浮かべながらも、ホシノは注がれたグラスを受け取った。

 

 

「……うへぇ~。……それじゃあ、乾杯~」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

そんな様子に気づくこともなく、二人の戦闘は激化していった。

 

 

「……なぁ! まだ……ッ続けるのか……!」

 

「当然。……丁度、体が温まってきたところだ」

 

「……ッそうかい! 俺はもうお終いに……ッしたいんだけど!」

 

「……温まったと言っただろう? ……安心しろ、すぐに終わる」

 

 

拮抗していた二人だが、ゲブラーが次に取った行動のせいで、

 

 

――拮抗状態が破壊されることとなる。

 

 

 

 

――E.G.O発現――

 

 

 

「…………は!? そこまでやるのか!?」

 

「当然だ。……安心しろ、すぐ楽にしてやる」

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

「あ、リーダーの勝ちっすね」

 

「E.G.Oを使ったらそうなるよなぁ」

 

「……後片付け、しないとですね……」

 

「まぁ、そうなるだろうな」

 

「うへぇ~。……代理人の負けかぁ~」

 

 

 

大剣(ミミック)に力を注ぎ込み、全力で薙ぎ払う。

 

振るわれる大剣(ミミック)に対し、ローランも大剣(ホイールズ・インダストリー)で相殺しようとするが、

 

 

――工房の武器とE.G.Oでは相手が悪かった。

 

 

 

(ザンッ!)

 

 

 

上半身と下半身で二つに斬り分け…………られる寸前で、止められた大剣(ミミック)。……そのまま振り抜かれていたら、ローランの体は真っ二つになっていたことだろう。

 

 

 

「……やめた。子供の前でお前を真っ二つにする程、私も堕ちてはいない」

 

「はぁ……っ、はぁ…………。し、死んだかと思った」

 

「腕は鈍っていないようで安心したぞ」

 

「……そりゃぁ、どうも……」

 

 

 

E.G.Oを解除し、手を差し伸べるゲブラー。戦闘の結果に満足したのか、タバコを1本口に加えた。

 

 

「……まぁ、ホシノに都市の戦闘を見せることができたし、良かったとする……か……?」

 

「…………アイツら」

 

 

 

「やっば! みんな、リーダーが来るっすよ!」

 

「すぐに隠れないとなぁ」

 

「……私、ちょっとコーヒーを、飲みに行ってきますね……」

 

「まぁ、逃げるだろうなぁ」

 

「……うへぇ~?」

 

 

 

「ホシノ……、お前……」

 

「……アイツ等は、後で戦闘訓練だな」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

その後、一日休んでから総記の階に集まったローランとホシノ。

 

 

――長いようで短いような6日間。

 

 

ローランはアンジェラや他の司書達とキヴォトスについて話し、ホシノはゲブラーからE.G.Oの使い方と戦闘技術を授かった。

 

……キヴォトスでは貴重な酒と煙草を補充したローランは、マルクトやホドといった女性司書達に可愛がられるホシノに声を掛けた。

 

 

「そろそろ戻るぞ、ホシノ」

 

「……うへぇ~、もう帰るの~?」

 

「ローラン。もう少しゆっくりしてもいいのでは?」

 

「そうよ! ゲブラーと戦ってばかりだったんだから、もう少しゆっくりしていってもいいじゃない」

 

「……いや、…………そうだな。もう一日ぐらいゆっくりするか」

 

「……いいの? 代理人?」

 

「……まぁ、お前も頑張ったしな。……それに、俺も少しぐらい休みたいからな」

 

「……うへぇ~、……そういえば、代理人は6日間何してたの?」

 

「……れた」

 

「うへ?」

 

「……怒られてた」

 

「え?」

 

「……お前を10億で買ったこととか、ゲブラーに押し付けたことがティファレト(やかましいの)にバレてな。……マルクトやホドも含めて、色んな奴に叱られてた」

 

「いや、アレはローランが悪いから! あの言い方はないでしょ!」

 

「ローラン。連れ帰ったホシノちゃんをゲブラーに押し付けるのも、良くないよ」

 

「……うへぇ~、あの時はびっくりしたよ~」

 

「……悪かったって。……まぁ、そういうことで俺も休みたいし、もう一日休んでから戻るとするか」

 

「やった! それじゃあホシノちゃん、もっとそのキヴォトスについて教えてよ!」

 

「都市とは違う世界のお話。私も楽しみです」

 

 

 

――さて、俺もネツァクと酒盛りでもしてくるかな。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

図書館に来てから一週間。

 

支度を済ませたローランとホシノは、司書達に見送られながら、

 

 

――キヴォトスへと帰還した。

 

 

「……よっと。……やっぱり、ここに繋がってるのか」

 

「うへぇ~。さっきの招待状、連邦生徒会長が用意したの?」

 

「そうなんだよな……。……一体どうやって作ったんだか」

 

「図書館の招待状と似た感じなのかな~?」

 

 

 

――連邦捜査部『シャーレ』

 

 

あの日と同じように、書類整理を行っていた先生は、突然室内に吹き始めた風に懐かしさを感じていた。

 

 

"……お帰り、二人とも"

 

「……あぁ。ただいま、先生」

 

「うへぇ~、先生ただいま~」

 

"1週間楽しかった? ……あれ? ホシノちゃんイメチェンしたの?"

 

「イメチェン?」

 

"ショートヘアーも可愛いね。図書館で整えて貰ったの?"

 

「……うへぇ。……そういうつもりはなかったんだけど…………代理人の知り合いに斬り飛ばされたんだよね」

 

"……はい?"

 

「……は? そうだったのか?」

 

「うへぇ、なんで代理人が把握していないのさ」

 

「……いや、てっきりE.G.Oによる作用だと思っていたんだが……」

 

"……斬り飛ばされたってどういうこと!?"

 

 

 

その後、一週間の出来事を聞いた先生は、図書館の魔境度合いにドン引きしていた。

 

 

 

"えぇ……? ……す、凄いね。私のイメージしてた図書館と全然違ったよ……"

 

「……まぁ、まだ少し不安定だが、取り合えず、E.G.Oの扱いは安定しただろ?」

 

「そうだねぇ~。こんな事もできるようになったよ~」

 

 

 

そう言うと、シャーレ内に薄緑色の風が吹き荒れ……ホシノの姿を覆い隠した。

 

 

……薄緑色の風が吹きやむと、そこには、

 

アビドスの制服の上に、防弾ベストのようなモノを身に着けた服装へと変化したホシノと、

 

 

――どこかで見覚えのある少女の姿をした、散弾銃を構える薄緑色の風の塊があった。

 

 

「……これでいつでも一緒に居られますね。ユメ先輩」

 

「……」

 

 

 

図書館で俺も似たようなことをやってたな……。

 

 

 

"えぇ……!? なにそれ!? どうなってるの!?"

 

 

「……凄いでしょ? 先生」

 

「……まぁ、E.G.Oを使いこなせるようになって何よりだよ」

 

「……やり方はともかく、鍛えてくれたことは感謝してあげる」

 

「……あぁ。……あとは、その子が殺された時の暴走(ねじれ化)だけ抑えられれば、完璧だったんだが」

 

「……ごめん。……私には、出来そうにない」

 

 

落ち込んだ様子のホシノはE.G.Oを解除し、元の服装へと戻った。

 

 

「いや、……任意でE.G.Oを発現出来るようになっただけで十分だぞ。……よく頑張ったな、ホシノ」

 

「……うへぇ~。大変だったんだよ~?」

 

「……いや、うん。……俺も久しぶりに殺しあったから、気持ちはわかるぞ」

 

"な、なんか、色々と凄い経験をしてきたんだねぇ……"

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

借金の問題が解決できたということもあってか、一先ずアビドスへと帰還したホシノ。

 

……彼女を見送ったローランと先生は、今回の一連の出来事を報告書という形で、書類にまとめ上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

~vol.1 A区 対策委員会編 完~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ここまでご拝読頂き、ありがとうございます。


次回からは、掲示板会や予告会、オリジナルイベントなどを挟んだ後、

第2章 時計仕掛けの花のパヴァーヌ編へと移りたいと思います。



まだまだ本作は続きますので、引き続きお楽しみ頂けますと幸いです!



評価・感想お待ちしております!




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