黒い沈黙の行先   作:シロネム

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評価・感想ありがとうございます。


T社に関してですが、オリジナル要素を多数含むことをご了承ください









~決戦~ Time Track社『第2幕』

 

T社の正面玄関を吹き飛ばしたローランは、E.G.Oを解除し、その勢いのまま内部へと突入した。

 

 

「やはり、色がないか……」

 

「……」

 

 

目の前に広がる白黒の世界。社内にはスチームパンクの様な、アンティーク調の装飾が施されているものの……、

 

 

……社員は勿論、デスクや装飾に至ってまで、ほぼ全てが白と黒で染められていた。

 

 

「目標は最上階だと言っていたな」

 

「……あぁ。代表を始末したのち、このビルを倒壊させる」

 

「随分と大掛かりだねぇ」

 

「雇い主に許可は得ているからな。……ホシノ、E.G.Oを発現してくれ」

 

「うへぇ~、了解~」

 

 

ホシノがそう言った次の瞬間、世界に色が齎された。

 

色を無くした世界に吹き荒れる、薄緑色の風。ホシノを中心に発生した風は、彼女の姿を変化させ……、

 

 

――暴風は少女の姿へと変貌した。

 

 

「……一緒に行こう? ユメ先輩」

 

 

人を象った風はホシノが装備していた盾を構え、自身の身体と同じ色の散弾銃を装備した。

 

 

「……これが、ホシノのE.G.Oか……」

 

「……へぇ。……過去の思い出という感情を、形としたのかねぇ……。……面白いじゃないか」

 

「行くぞ。……まずは、その辺りの奴から時計を奪い取らないとな」

 

「……時計?」

 

「あぁ。……T社では、社員証代わりに時計が用いられてるみたいなんだ」

 

 

偵察を依頼した俺が言うことじゃないが、……陸八魔たちはよくこれだけの情報を集められたな……。

 

 

「なるほどな。……殺すついでに社員証を奪いつつ、最上階を目指せば良いということか」

 

「あぁ。……ついでに、特異点に関する物や金目の物があれば頂いていく」

 

「……代理人。どっちが悪者か分からなくなりそうなんだけど」

 

「……そうさね。私もお嬢ちゃんへのお土産に、幾らか頂いていこうかねぇ」

 

「代理。……物資は回収してやるから、あとで食料と交換しろ」

 

「……はいはい。先生にも頼んでおくよ」

 

 

 

 

≪Time Track社 受付≫

 

 

受付に立つ義体以外、色が存在しない1階層。様々な職員が職場に向かう為の入り口であり、色を持つ者は上の階層へ、色を持たない者は地下階段を下って行く。

 

社内は明確に身分分けされており、色の無い者は白黒の道を、色を持つ者は自身の色以下の道しか歩いてはいけないといったルールまで定められている。

 

 

……その為、全社員が通行する第1階層は色がなく、上層へと続く階段やエレベーターには、それぞれ色が分けられている……のだが、

 

 

階級を持つ者は、態々色の無い受付を通るようなことはせず、自身の職場へと直接赴ける何かを用いることが多いらしい。

 

 

 

「侵入者発生! 侵入者発生!」

 

 

 

声を荒げる受付職員。

 

周囲にいた色のない職員は、その騒ぎに一瞬目を向けた者の、……すぐに興味を失くしたかのように地下へと降りて行った。

 

 

「……まぁ、関わりたくないよな」

 

「……? 自分の会社が襲われてるのに……」

 

「……色の無い者たちにとっては、全てがどうでもいいのだろう」

 

「むしろ、この環境から解放されることを望んでいそうだねぇ」

 

 

周囲の反応を気にもせず、警備員と同じ色を持つ受付職員は、自身の右腕と同化した銃砲を侵入者へと向けた。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

火蓋を落とされた戦場。騒ぎを聞きつけた警備員や、徴収職員が上層から受付へと駆け付けたこともあってか、

 

 

――戦場は大乱戦となっていた。

 

 

「……ホシノ、前に出すぎだ!」

 

「……ッ! 分かっ……てるよ!」

 

 

体勢を整える暇もなく、次から次へと回復される警備員。それぞれがT社の特異点による産物を所持しており、

 

『致命傷であっても、死ななければ即座に時間を巻き戻し、元の状態に再生する』

 

という力を有していた。

 

 

「キリがないねぇ……。……お嬢ちゃん、隙を見て一息つき給え」

 

「そんな暇……っ! あるわけ……」

 

「……私が替わろう」

 

 

発火機能を備えた偃月刀を右手に持ち、左手に一本の長剣を携えたシャオは、……ホシノと入れ替わるように前線へと飛び出した。

 

 

 

――狻猊(さんげい)――

 

 

 

両手に持った、それぞれ形状の異なる武器を同時に突き出す。……発火機能を使用することで、相手に火傷を負わせるその攻撃は、

 

 

 

――炎によって竜の顎を象っていた。

 

 

 

「時間を巻き戻されるというのなら、発動される前に一撃で殺し尽くすまで」

 

 

 

武器全体を覆う激しい炎は、相手に時間を巻き戻す隙すら与えず、……一撃で警備員を焼き尽くす。

 

 

「……確かに、理にかなっている……なッ!」

 

 

その攻撃に続くように、大剣(ホイールズ・インダストリー)を取り出したローランは、

 

……相手を斬るのではなく、挽肉になるよう叩き潰した。

 

 

「最も、技量で補えば手数が多くとも問題ないけどねぇ……」

 

 

斬る 跳ぶ 斬る 跳ぶ 刺す

 

 

イオリによって繰り出される、回復の隙がない程の高密度な攻撃。一撃ごとに空間を跳び、死角から次の一撃を繰り出す。……反応すらさせない程の超高速戦闘術は、

 

 

――いつの間にか、T社の警備員を細切れにしていた。

 

 

「一撃……。…………ユメ先輩!」

 

 

自身が生み出した(ユメ先輩)から薄緑色の散弾銃を受け取り、両手に1丁ずつ構えるホシノ。……それが合図となったのか、高速で距離を詰めた(ユメ先輩)は、盾を構えたまま突進。

 

 

――そのまま警備員を押し倒した

 

 

「……今!」

 

 

(ダダンッ!!)

 

 

倒れ伏した警備員へと接近し、2丁の散弾銃を頭部に押し付け発砲。……収束された衝撃によって、警備員の頭部は数メートル吹き飛んでいった。

 

 

「……大丈夫そうだな。……上層に進むぞ」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

警備員を倒しながら時計を回収し、先へと進む一行。時間を巻き戻される前に殺すという戦法に変えたおかげか、想定よりも幾分か消耗を抑えることができたのは僥倖だろう。

 

 

「……代理、さっきのE.G.Oは使えないのか?」

 

「……無理だ。アレはあくまで借りてるだけで、俺自身のE.G.Oじゃないからな……。……間髪入れず乱用すると、ねじれになる恐れがある」

 

「……そうか」

 

「……図書館で相手をした時も思ったけど、蒼白の司書も便利なものを作るねぇ」

 

「……実際かなり役に立ってるな」

 

「E.G.Oって借りることも出来るんだ……」

 

「あー、……これがちょっと特殊なだけで、普通は本人にしか扱えないぞ」

 

 

……いや、待てよ。……もしこの本が図書館と同じルールで作られているなら、

 

 

 

――()()()()E().()G().()O()は、譲渡出来るんじゃないか……?

 

 

 

後で試してみるか……。……それよりも、何か特異点に関する物とか見つかったか?」

 

「……あぁ、T社の社章が刻まれた製品は、幾つか回収しておいたぞ」

 

「こちらもお嬢ちゃんへの手土産は十分かねぇ」

 

「私の方も、ユメ先輩が幾つか拾ってきてくれたよ」

 

 

ホシノがそう言うと、(ユメ先輩)は両手に抱えた物を地面へと置いた。

 

 

「……これ……現状保存容器か」

 

 

床に並べられた透明な箱。ローランの予想通り、現状保存容器と呼ばれるこの箱は、中に詰めた物の時間を止め、品質を維持することが可能なT社の製品だ。

 

 

「現状保存容器?」

 

「中に入れた物質の時間を止めておける代物さね」

 

「……都市で売られているのを見たことがあるな」

 

「俺も一つ持ってるが、便利なんだよな」

 

「ただの箱にしか見えないんだけど……」

 

「……ホシノ。一見するとただの箱だが、……この大きさは都市でも貴重な筈だ」

 

「……シャオの言う通り、……おそらく下手な工房武器よりも高いだろうな……」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「……取り合えず回収しておくか。……ホシノ、アビドスに帰ったら高値で買い取るよ」

 

 

……何かと便利だしな。

 

 

「分かった。……って、そのお金って銀行強盗で手に入れたお金じゃないよね……?」

 

「……銀行強盗?」

 

「……金の出所は気にしないでくれ。……あの闇銀行も、結局潰れたらしいしな」

 

 

図書館から戻ってきた後、先生から聞かされたが…………引き出せる金が無くなったせいで、ブラックマーケットの住民たちによって滅ぼされたとか……。

 

 

「……え、潰れたの?」

 

「らしいぞ? ……まぁ、大金庫を空にしたらそうなるよな……」

 

「……それだけの金があるなら、もっと食料を要求しても良さそうだな」

 

「いや待て待て。ほぼ使い切ってるから、ほとんど残ってないぞ」

 

「……そうなのか?」

 

「……10億で私を買ったもんね」

 

「…………代理?」

 

「……違うからな? 戦力としてだからな?」

 

「おや、私たちには報酬はないのかい?」

 

「お前は勝手についてきただけだろうが……」

 

「なるほど。……全て片付いたら、私は追加報酬を請求させて貰う」

 

「……シャオ。…………その製品たちは、高値で買い取るよ」

 

「それでいい。……あの子たちも喜ぶだろうからな」

 

 

……まぁ、手に入れる機会もない訳だし、T社の特異点が備わった製品に金は惜しめないか……。

 

現状保存容器に砂時計、時間保存装置と…………これは、

 

 

 

 

 

――オリヴィエ(親友)が持ってた、暗殺装置か……。

 

 

 






私の勝手なイメージなんですけど……、

T社の内部って、自分と違う色の物に触れたり、違う色の道を歩いただけで殺されるって思ってるんですよね。


一種のヒエラルキーと言いますか……


ZAPされそうと言いますか……



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