黒い沈黙の行先   作:シロネム

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評価・感想ありがとうございます!

もう3話も続いているT社のお話ですが、


……今暫くお付き合いくださいませ


~決戦~ Time Track社『第3幕』

 

――最上階

 

 

ミレニアム自治区を一望できるその場所は、他の社員の入室を禁止している場所であり、内部の情報を知っているものは本社の人間か、支部の代表だけだという……。

 

一説では、特異点の力を最大限利用した特別な部屋なのだとか。

 

 

 

謎の多い最上階だが、今夜その秘密は明かされることとなる。

 

 

「……この先が最上階か」

 

「館内図によれば、最上階そのものが一つの部屋になってるみたいだな」

 

「私もこの先に入るのは初めてだねぇ」

 

「……」

 

「…………シャオ、E.G.Oを発現させてくれ」

 

「……分かった」

 

 

途端、シャオの足元から溢れ出す炎。……渦の様にうねり出す焔は、彼女の姿を変質させていった。

 

 

――全身を紅い甲冑で覆い、黒い翼を生やした姿。

 

 

――周囲を帯状の焔が漂い、部屋の熱量を上昇させる。

 

 

 

「――竜の焔をもって、お前たちを照らし出そう――」

 

 

 

 

焔に包まれた彼女は、竜の装飾が施された偃月刀を構え直した。

 

 

 

「……図書館での接待を思い出すな」

 

「これが、シャオさんの……」

 

「……本当に、ここに来た甲斐があったよ」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

エレベーターの先、両開きの扉が備え付けられた部屋。鍵の掛けられた扉に大剣(ホイールズ・インダストリー)を振り下ろしたローランだったが、あまりの頑丈さに弾かれてしまった。

 

 

「……ダメか。俺の持つ工房武器の中でも火力がある方なんだがな……」

 

「……代理人。私のショットガンでもダメかも」

 

 

続けざまに2丁の散弾銃を発砲したホシノだったが、傷一つ付くことはなく、……跳弾してくる弾丸を(ユメ先輩)が防ぐ羽目になってしまった。

 

工房の武器では傷一つ付かないような、頑丈な素材で作られた扉だったが……、

 

 

「……どいて居ろ、代理」

 

 

 

――その扉は、シャオのE.G.Oによって焼き払われた

 

 

 

 

――饕餮(とうてつ)――

 

 

 

 

シャオの持つ偃月刀から炎が溢れ出す。……受付で使ったように、偃月刀に纏わせるのかと思われたが、

 

…………溢れ出した炎は偃月刀から分離。……そのまま、竜の姿を形成し、

 

 

――炎を纏ったまま、扉へと突撃した

 

 

「……思ったより脆かったな」

 

 

金属の扉は、あまりの熱量に融解。

 

扉はその役割を無くし、人が通れるスペースが生まれてしまった。

 

 

「お前の火力が高すぎるだけだろ……」

 

「脳筋なお姫様らしいE.G.Oだねぇ……」

 

「……凄い」

 

 

呆気にとられた一行だったが、……頼もしすぎるシャオの背中に続き、最上階へと侵入するのだった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

赤・青・黄・白・紫

 

 

5色に彩られた床。

 

……それぞれが階級を示しており、この空間を自在に歩けるのは代表だけということを現すのに、最も適した空間だろう。

 

――壁一面に敷き詰められた時計

 

机と椅子が一組だけ置かれた、異様すぎるその部屋の中央に、

 

 

 

……一人の人物が立っていた

 

 

 

「……随分と騒がしいお客様だね」

 

 

白い服に身を包み、砂時計が埋め込まれた杖を持つ……人型。

 

 

警備員や徴収職員といった義体ではなく、生身の体を持つ人間。…………しかし、

 

 

 

――唯一、頭部だけが人のものではなく、

 

 

 

――床と同じ5色の色で構成された、()()になっていた

 

 

 

 

「こいつが、代表……」

 

 

「……なに……あれ……」

 

「一体どうやって発声しているんだろうねぇ」

 

時計頭……。……T社の代表らしい姿だな」

 

 

ローランたちが代表の姿に呆気を取られていると、……代表は杖をローラン達へと構えた。

 

 

「……まぁいい。君たちが侵入してきた理由については、

 

 

 

――君たちの死体に聴くとしよう」

 

 

 

 

 

 

……代表のその声が、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……代理人!」

 

「…………ッ!!」

 

 

 

……ほぼ条件反射だった。

 

 

……フィクサーとして培ってきた感だろうか?

 

ホシノの声に反応したローランは、即座に長剣(デュランダル)を取り出し防御態勢を取った。

 

 

「……これは驚いた。……僕の速度に反応できるんだね」

 

 

杖とぶつかり合う長剣(デュランダル)第三宇宙速度と言っても過言ではない速度で繰り出された一撃は……、

 

 

 

――ローランを壁掛け時計へと吹き飛ばした。

 

 

 

「……なんだ、この速度は……」

 

「……恐らく、自身の周りの空間速度を歪めて居るんだろうねぇ」

 

 

上下が入れ替わる砂時計。……様々な経験を積んできた紫の涙だからこそ気づけた異変。

 

 

……杖に備え付けられた装置が、動いている。

 

 

「……っ、ならば!」

 

 

偃月刀を両手で握るシャオ。自身の内から湧き上がる熱を偃月刀に乗せ、

 

 

 

――声を上げる

 

 

 

 

――蒲牢(ほろう)――

 

 

 

まるで竜の咆哮の様な雄叫び。……指方向を持たせた声が、代表へと襲い掛かった。

 

 

 

……だが、

 

 

 

「……無駄だよ」

 

 

 

代表の持つ砂時計が……入れ替わる。

 

 

「…………なに?」

 

 

代表へと襲い掛かる筈の衝撃は、

 

 

 

――元から存在し無かったかのように、搔き消された

 

 

「……まさか」

 

 

突如として襲い掛かる違和感。……放った筈の竜声は、……()()()()()()()かのように感じられた。

 

 

 

「……時間を……巻き戻したのか?」

 

 

「……ご名答。……頭の良い者を相手にするのは疲れるね」

 

 

砂時計が入れ替わる。その様子を確認した代表は、まるで銃を構えるかのように、

 

 

――杖の先端を、シャオへと向けた

 

 

「……でも、これでお別れだね」

 

 

 

 

(バンッ!)

 

 

 

 

杖の先端から放たれた弾丸は、先ほどの代表の速度と比べると余りにも遅く、今のシャオであれば余裕を持って斬り払えるモノだった。

 

 

「……お姫様、それに触れたらダメさね!」

 

 

「…………? ……こ……れ、……は……」

 

 

イオリの警告虚しく、弾丸を斬り払ったシャオ。代表の違和感に気づけなかった彼女が、弾丸を切り払った瞬間……

 

 

――彼女の動きが、停滞した

 

 

 

「――減速弾。僕たちがL社に提供した、試作品から生まれたモノ(銃弾)

 

 

……数日は、まともに動けないだろうね」

 

 

 

――Slower bullet(減速弾)――

 

対象の体感速度を半減させる銃弾。……撃ち込まれた彼女からしてみれば、見ているモノが倍速で動き出す世界。

 

 

 

 

――それはつまり、彼女の戦闘不能を意味していた

 

 

 

W社の処刑弾でもあればよかったんだけどねぇ。……こちらの世界への持ち込みを、拒否されてしまったのが残念だよ」

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

数刻の内に戦闘不能へと追い込まれた2人。……残されたイオリとホシノは、現状の打開策を模索していた。

 

 

「……これは厳しいね、お嬢ちゃん」

 

「……あなただけなら、瞬間移動で逃げれるんじゃないの?」

 

「……恐らく、対策されているだろうさ」

 

 

微笑みを浮かべながら、杖を構える代表。その様子を見たイオリは、大小サイズの異なる刀を両手に構え、

 

 

 

(――ヒュンッ)

 

 

 

……跳んだ

 

 

 

(――ヒュンッ)

 

 

 

――幻影跳躍(幻影乱舞)――

 

 

 

個に対して、連続して行われる空間跳躍。

 

 

 

(――ヒュンッ)

 

 

 

刀を一振りすると同時に空間を跳ぶ。

 

 

 

(――ヒュンッ)

 

 

 

――繰り返された5()0()()もの空間跳躍

 

 

 

……最後の跳躍を終えた彼女は、ホシノの傍へと跳ぶ。

 

 

連続して行われた空間跳躍の反動からか、

 

 

 

……イオリは、

 

 

 

……全身から血を噴き出していた。

 

 

 

「……ゴフッ! …………ゴホッ、すまないねぇ……ッ、お嬢ちゃん……」

 

 

「……イオリさん!」

 

 

刀を落とし、その場に倒れるイオリ。

 

 

「……ゴホッ…………幻想……体に……ゴフッ、ならな……かっただけ、マシか……ねぇ……」

 

 

 

――50回の空間跳躍に伴って、繰り出された無数の斬撃

 

 

 

……流石の代表も想定できなかったのか、頭の時計ごと……細切れにされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――砂時計が入れ替わる――

 

 

 

 

 

 

間違いなく細切れになった代表だったが、

 

 

 

 

……その体が、徐々に徐々に再生され始めた。

 

 

 

 

細切れになった肉塊は混ざり合い、人型を象って行く。

 

砕け散った文字盤は、パーツ同士が身を寄せ合い、……一つの時計へと復元される。

 

 

 

 

 

――数刻もしないうちに……代表は元通りの姿に戻っていた

 

 

 

 

「……まさか、紫の涙がこの世界にいるとはねぇ。……流石の僕も予想できなかったよ」

 

 

 

 






――命の刻限にして、時間の象徴である砂時計――


時間に関する特異点を入手したT社が、真っ先に解決しようとした問題。




寿命と死の追放




絶対的な死という概念を退けることのできたT社だからこそ、


ここまで発展することが出来たのだ。




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