黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~違反~ 人工知能倫理改正案

 

先生の指揮とローランの援護もあってか、ロボットたちを撃破し、無事に工場へと逃げ込んだ一行。

 

 

「あれ……? あのロボットたち、急に追ってこなくなった……?」

 

「全部倒したんじゃない?」

 

「それはないだろ」

 

"この工場に入ってから、追ってこなくなったね"

 

「うーん、何でか分かんなけど、とにかくラッキ~で良いのかな?」

 

「良くないよ!! うわああああん! もういや! 一体なんでこんなところで、ロボットたちに追われなきゃいけないの!」

 

「お、落ち着いてミドリ。生きてればいつか良い日も来るよ」

 

「今日の話をしてるの! そもそもお姉ちゃんのせいでしょ!!」

 

「諦めろミドリ。……言い出したら聞くタイプじゃないだろうしな」

 

「代理人さぁん……」

 

「とにかく! ……本当にここ、何をするところなんだろ」

 

"連邦生徒会は、あのロボットたちがいるから出入りを制限してたのかな?"

 

「うーん……何か引っかかってるんだよね。……大事なことを見落としてるっていうか、それに……」

 

 

 

 

「接近を確認」

 

 

 

 

「えっ、な、なに?」

 

「……」

 

 

……敵か? 反響してるせいで出所が分からないが……

 

 

「対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません」

 

 

「え、え!? 何で私のこと知ってるの!?」

 

 

……取り合えず、認識だけは阻害しておくか。

 

 

「対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません」

 

「私のことも……一体どういう……?」

 

 

驚いているミドリをよそに、手袋から認識阻害の仮面を取り出し身に着けたローラン。

 

その効果は人のみに限らず……

 

 

「対象の身元を確認します。…………さい、さ、ささ、才羽、……才羽モモイ? 

 

…………資格がありません」

 

 

「はい!?」

 

「認識阻害は機能するみたいだな」

 

「え、え? ……なんで代理人が私の…………って、何その仮面!?」

 

「認識阻害?」

 

「まぁ、便利な仮面だとでも思ってくれ」

 

 

「対象の身元を確認します……

 

 

 

 

 

――アンジェリカ先生」

 

 

 

「…………は?」

 

 

……アンジェリカ? それって、一体どういう……

 

 

"……あはは。……じ、実は私の名前って、……一緒だったんだよね"

 

 

……

 

 

「……そうだったのか」

 

"い、言い出せなくてごめんね?"

 

「いや……。……俺の方こそ、悪かった」

 

 

有り得るのか……そんな偶然……。…………それとも、

 

 

――こうなることが分かってて、俺と先生を誘致したのか……?

 

 

「……」

 

「あれ?」

 

「資格を確認しました、入室権限を付与します」

 

「えぇっ!?」

 

「え、どういうこと!? 先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」

 

"……え? いやいやいや、私にも何が何だか……"

 

「当の先生も戸惑ってるみたいだけど……」

 

「才羽モモイ、才羽モモイ2号、才羽ミドリの3名を、先生の生徒として認定。

 

同行者である生徒にも資格を与えます。……承認しました」

 

「待って待って! 才羽モモイ2号って何!? もしかして代理人のこと!?」

 

「随分と適当だな……。……一度認識した事象を否定できないのか?」

 

「さ、才羽モモイっ、2号……っ、ふふっ……」

 

「ミドリーー! 笑うなぁーー!!」

 

"まぁまぁ、これで扉も開くみたいだし、先に進も……"

 

 

「下部の扉を開放します」

 

 

「……下部の扉? この目の前の扉じゃなくて?」

 

「それより、下部ってもしかして……」

 

「掴まってろよ、先生」

 

"だ、代理人?"

 

 

その声に反応したローランは、咄嗟に先生を脇に抱え、デュランダルを手袋から取り出した。

 

 

「さ、流石に違うでしょ。……どこからどう見ても、ただの床……」

 

 

(ガチャン)

 

 

「ゆ、床が無くなっ……落ちるっ!?」

 

「うわわわっ!」

 

「そんな気はしてたよ……」

 

 

「「きゃああああああっ!」」

 

 

先程まで立っていた床が抜け、底へと落ちていく4人。この展開を予想していたローランは……、

 

 

――取り出していたデュランダルを壁に突き刺し、速度を落としながら降下していった。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「うーん……。……あれっ、お姉ちゃん? 先生!?」

 

「いやー、流石に死ぬかと思った……」

 

「……よっと。……大丈夫か、お前ら?」

 

 

ゆっくりと降下したローランは、先生を脇に抱えたまま二人の目の前に着地した。

 

 

"あ、ありがとうね。代理人"

 

「あーー! ずるい! 気付いてたなら助けてよ!」

 

「代理人さん、助けて欲しかったです……」

 

「いや、お前らは頑丈だし平気だろ」

 

「かなり痛かったんですけど!?」

 

「……大丈夫か? ミドリ」

 

「う、うん。そんなに深くもなかったので」

 

「私の心配もしろーーー! …………って、あれ?」

 

「……お姉ちゃん?」

 

「……ちょ、ちょっと、あれ」

 

 

モモイが指を指した先。……部屋の中央にある機械の椅子に、一人の少女が寝かされていた。

 

 

「……女の子?」

 

「この子……眠ってるのかな? ……って、代理人さんは見ちゃダメです!」

 

 

咄嗟にローランの目を隠したミドリ。……椅子の上に寝かされている少女は、……服を着ていなかった。

 

 

「いや、別に気にしないが。……というか、アレ」

 

「あ、ちょっと……」

 

 

違和感を感じたローランは、寝かされている少女のもとへと近づき、

 

 

――脈を計った。

 

 

「やっぱり、死んでるか。……いや、そもそも人じゃないのか?」

 

「……返事がない、ただの死体のようだ。……って奴だね!」

 

「不謹慎なネタ言わないで! ……代理人さん、人じゃないって言うのは……」

 

「……義体でもなさそうだし、……人の形をしているが、恐らく機械だろうな」

 

「機械?」

 

「確かに、電源が入ってないみたいな感じですけど……」

 

「そう? ……確かに言われてみれば、何だかマネキンっぽいね。どれどれ……」

 

「ちょっと、お姉ちゃん」

 

「すごい、肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ?」

 

「……何かあったか?」

 

「えっと、何か文字が書かれて……

 

……AL-IS……?」

 

「機体名か?」

 

「……アル、イズ……エー、エル、アイ、エス?

 

…………アリス?」

 

「ちょっと待って、これよく見ると全部ローマ字なわけじゃなくて……

 

……AL-1S、じゃない?」

 

「え、そう?」

 

「いったいこの子は……それにこの場所、何なんだろう?」

 

「何かの研究所か、実験場か……?」

 

「この子に聞いた方が早いんじゃない?」

 

「起きて、話してくれるなら良いんだけど……」

 

「……取り合えず、服でも着せるか。……確かシャーレの制服が…………あったな」

 

「ほんとに便利な手袋だね! それどこで買ったの?」

 

「……買ったっていうか、貰ったものだな。……この世界で手に入るかは知らないが」

 

 

そう言うとローランは、手袋から取り出した連邦捜査部の制服を少女へと着させた。

 

 

(ピピッ、ピピピッ)

 

 

「ん?」

 

「な、何この音? 警報音みたいだけど……」

 

「……罠だったか。離れるぞ、お前ら!」

 

 

咄嗟に距離を取り、先生を庇うローラン。デュランダルを少女へと向け、戦闘態勢へと移行した。

 

 

「待って待って! まだ罠って決まった訳じゃないじゃん!」

 

「いやでも……、この子から聞こえたような……」

 

 

 

「状態の変化、および接触許可対象を感知。

 

――休眠状態を解除します」

 

 

 

……そう聞こえた直後、椅子に眠っていた少女は、

 

 

――目を覚ました。

 

 

「……」

 

「う、動いた……!」

 

「状況把握、難航。……会話を試みます。……説明をお願いできますか?」

 

「え、えっ? せ、説明? なんのこと?」

 

「せ、説明が欲しいのはこっちの方! あなたは何者? ここは一体何なの!?」

 

「本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」

 

「ど、どういうこと……? い、いきなり攻撃してきたりしないよね?」

 

「肯定。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意思は発動しません」

 

「……初期状態か。製造直後か、リセットでもされたのか?」

 

「不明」

 

「うわ、すごい。ロボットの市民ならキヴォトスによくいるけど、こんなに私たちに似てるロボットなんて初めて」

 

「うーん……先生、代理人、どうしましょう……?」

 

"そうだね……。接触許可対象ってどういう意味か、教えてくれる?"

 

「回答不可、本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」

 

「深層意識って、何のこと……?」

 

「うーん……。……工場の地下、ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失……」

 

「……少なくとも、都市由来のモノではなさそうだな」

 

"そうなの?"

 

「あぁ。……都市では、人を模した機械を製造することは、頭によって禁止されているんだ」

 

 

……アンジェラみたいな例外が、多数居ても困るが……。

 

 

「……ふふっ、良いこと思いついちゃった」

 

「いや……今の言葉の羅列からは、嫌なことしか思い当たらないんだけど……」

 

「???」

 

 

 

「この子、持って帰ろう! 新しいゲーム開発部の部員として!」

 

 

 

……

 

 

「…………はぁ!? 何言ってるのお姉ちゃん!?」

 

「……」

 

 

……いや、早瀬が認めるとは思えないんだが。

 

 

……

 

 

――人型の人工知能か……。






先生……


……アンジェリカ先生





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