黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~変動~ AL-1S=アリス

 

その後、ローランたち一行は地下にいた少女を連れ、ゲーム開発部の部室へと帰還した。

 

「ほ、ほんとに連れ帰ってきちゃった……」

 

「し、仕方ないじゃん! そもそもあんな恐ろしいロボットたちがいる場所に、放置するわけにもいかないでしょ」

 

 

 

(モグモグ)

 

 

 

「あぁっ、私のWeeリモコンを口に入れないで! ペッてして! ペッて!」

 

「……やっぱり、放っておくわけにはいかないでしょ」

 

「まぁ、そこに関しては賛同するが」

 

「それはそうだけど……。……今からでも、ヴァルキューレあたりに連絡したほうが良くない?」

 

"シャーレで預かろうか? それこそ、放っておく訳にはいかないしね"

 

「それは……。……私たちのやるべきことが終わった後にね」

 

「やるべきこと?」

 

「さて、とりあえず名前は必要だよね。……アリスって呼ぼうかな」

 

「……本機の名称、アリス。……確認をお願いします」

 

「ちょ、ちょっと待って! それお姉ちゃんが勝手に読んだ名前でしょ!? 本当ならAL-1Sちゃんなんじゃないの?」

 

「そんなに長いと呼びにくいじゃん。どう、アリス? 気に入った?」

 

「……。…………肯定。……本機、アリス」

 

「あはは! ほら、見たか私のネーミングセンス!」

 

「……やっぱり、自我を持ってるんだな」

 

 

まぁ、ここは都市とは違うし、人工知能倫理改正案も施行されてなさそうだが……。

 

 

「うーん、……本人が気に入ってるならいいけど」

 

「さぁ、それじゃあ次のステップに行ってみよっか!」

 

「お姉ちゃん、いったい何を考えてるの……? 子猫を拾ってきたとか、そういうレベルじゃないんだからね!?」

 

「いやいや、……ミドリの方こそ、よく考えてみてよ。……そもそも私たちが危険を冒してまで、G.Bibleを探してた理由は何だったっけ?」

 

「それは……良いゲームを作って、部活を廃部にさせないためでしょ?」

 

「そう、今一番大事な問題はそれ! 良いゲームも作りたいけど、まずは部活の維持が最優先。

 

それで、そのためには二つの条件のうち、どっちかをクリアする必要がある」

 

「……本気でやるつもりなのか? モモイ」

 

「もちろん! まぁ、ミレニアムプライスで受賞を狙うのも良いんだけど、手の内は多い方がいいからね!」

 

「え……。…………まさか、本当に部員にするつもり!?」

 

「……アリス!

 

 

――私たちの仲間になって!

 

 

 

(ガリガリ)

 

 

 

「あぁっ! 私のゲームガールズアドバンスSP食べちゃダメっ!」

 

「ああもう……。だ、大丈夫なのかな……」

 

「……そもそも、生徒として登録できるのか?」

 

"どうなんだろうね?"

 

「うーん……、この子をうちの部員に偽装するなんて……本当に大丈夫?」

 

「大丈夫の意味を確認…………状態が悪くなく問題が発生していない状況……のことと推定、肯定します」

 

「……いやいや、肯定できないって! この口調じゃ絶対疑われるよ!」

 

「そうかなぁ?」

 

「やめておこう!? これは無理だって!」

 

「今やめるって選択肢のほうが無理だよ。何としても、私たちのゲーム開発部を守らなきゃ」

 

「……」

 

「……よし! 取り合えず、ミレニアムの制服に着替えないとね! 予備の制服あったかなぁ」

 

 

まぁ、もう少し様子を見守ってみるか……。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「服装もある程度整ったし、あとは武器と……学生登録をして、学生証を手に入れないと」

 

「出来るのか?」

 

「まぁね! 学生証については、私の方で何とかするよ!」

 

"おぉ、すごい自信だね"

 

「ミドリは、アリスに話し方を教えてあげて!」

 

「は、話し方?」

 

「今のままだとミドリが言った通り、疑われちゃうかもしれないから」

 

「……」

 

「もし、何かの拍子にユウカに

 

『本当にゲーム開発部なのか』って聞かれたとして……」

 

「肯定、あなたの質問に対し、アリスの回答を提示。私はゲーム開発部の部員」

 

「……なんて言っちゃった暁には、全部台無しになりかねない」

 

「いや、声マネ上手いな」

 

「それはそうだけど……。……はぁ、仕方ない。やれるだけやってみるよ」

 

「よし、じゃあ任せた!」

 

 

そう言うと、勢い良く部室を飛び出していくモモイ。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「行ったな」

 

"行っちゃったね"

 

「うーーーん……。……え、えっと、……アリス、ちゃん?」

 

「肯定。本機の名称、アリス」

 

「うん、じゃあアリスちゃんって呼ぶね。……それにしても、話し方って、どうやって習得するんだろ……」

 

「俺に聞かれても分からんぞ?」

 

"私も、分からないかなぁ"

 

「……うーん、子供用の教育プログラムって、ネットに落ちてるかなぁ……」

 

 

 

(キョロキョロ)

 

 

 

「……? 正体不明のものを発見、確認を行います」

 

「ん? あっ、そ、それは……っ!?」

 

「……雑誌か?」

 

「……はい。ちょっと恥ずかしいんですけど、実はその中に、私たちが作ったゲームが載ってるんです。……まぁ、すごい酷評されちゃったんだけどね」

 

「……まぁ、作っただけ凄いんじゃないか?」

 

「あはは……、そう言って頂けると……。…………。

 

……いや、クソゲーランキング1位にはなっちゃったけど、アリスちゃんがどう思うかは分からないし……」

 

「……ミドリ?」

 

「アリスちゃん、私たちのゲーム……やってみない? 会話をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかも」

 

「……? ここまでの言動の意図、完璧に把握しかねます。しかし……、

 

 

……肯定。アリスはゲームをします」

 

「ほ、本当に!? ちょ、ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」

 

「……折角だし、ゲームってのがどういうものか見てみるか」

 

"私も気になるなぁ"

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「よし、準備完了!」

 

「……。…………アリス、ゲームを開始します」

 

 

「タイトルから分かるかもしれないけど、このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの」

 

 

コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた……

 

 

「……?」

 

「えっと、王道とは言っても、色々な要素を混ぜてたりするんだけどね。トレンドそのままでもダメだけど、王道に拘り過ぎても古くなるからってことで」

 

「……。……ボタンを押します」

 

 

コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた……

チュートリアルを開始します

まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください

 

 

「Bボタン……」

 

 

(ドカーーーーン!!)

 

 

「?????」

 

 

<GAME OVER>

 

 

「!?!?」

 

「…………は?」

 

"うわぁ……"

 

 

な、なんだこれ……。

 

 

「あはははははっ! 予想できる展開ほどつまらないものはないよね! 本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」

 

「お姉ちゃん……? 学生証を作りに行くって言ってなかった?」

 

「行ってきたんだけど、遅い時間だったからか誰もいなかったの。また明日行く」

 

「……それはさておき、あらためて見てもこの部分はちょっと酷いと思う」

 

「酷いというか、意味が分からなかったんだが……」

 

「……。……も、もう一度始めます……。」

 

再開……テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

 

「あっ、私それ分かるかも! きっと興味とか期待とか、そういう感情だと思う!」

 

"わぁ、すっごいポジティブ"

 

「どう考えても怒りか困惑だと思うけど……」

 

 

 

 

――ゲームを開始してから2時間が経過

 

 

 

「……電気処理系統、及び意思表示システムに致命的なエラーが発生」

 

「頑張ってアリス、ここさえ乗り越えれば待望のクライマックスだよ!」

 

「うぅ……っ!」

 

「……見てるだけで疲れたんだが」

 

"い、色々とすごいゲームだね……"

 

「……質問。どうして母親がヒロインで、それでいて実は前世の妻で、さらにどうしてその妻の元に、子供のころに別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきているのか………。

……………

……エラー発生、エラー発生!」

 

「が、頑張ってアリスちゃん! クライマックスまでもう少しだから!」

 

「……リブート、プロセスを回復。……ふぅ、これが、ゲーム……」

 

「これがゲームって奴なのか……」

 

"いや、違うからね? あってるけど……、あってるんだけど違うからね?"

 

「……再開します」

 

 

 

(1時間後……)

 

 

 

「こ、ろ、し、て…………」

 

「なんだ……これ……」

 

「……&!)$&8%&……*%#%#……」

 

"あ、アリスちゃん? ……なんか言語野が壊れちゃってない!?"

 

「すごいよアリス! 開発者二人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!」

 

「そ、それもそうだけど……。もしかして、本当にゲームをやればやるほど……、

 

アリスちゃんの喋り方のパターンが、どんどん多彩になってきてる……!?」

 

「……いや、代償が酷過ぎるだろ。……本当に、こんなのが娯楽として流行しているのか?」

 

"うーん……、ちょっとこれは……"

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」

 

「うん、確かにそう……かも?」

 

「ゲームからそのまま覚えたせいで、まだちょっと不自然だけど……」

 

「前よりは全然良いね!」

 

「と、ところでその……。……こういうのを面と向かって聞くのは、緊張するんだけど……」

 

「……?」

 

 

 

 

「「わ、私たちのゲーム、面白かった!?」」

 

 

 

 

「……。…………説明不可。」

 

「え、えぇっ!? なんで!?」

 

「……類似表現を検索。……ロード中」

 

「も、もしかして、悪口を探してる……? そんな事無いよね……?」

 

「……面白さ、……それは、明確に存在……」 

 

「おおっ!」

 

「プレイを進めれば進めるほど……、まるで、別の世界を旅しているような……

 

……夢を見ているような、そんな気分……

 

 

…………もう一度……もう一度、…………」

 

「……」

 

 

 

(ポロッ)

 

 

 

「えぇっ!?」

 

「あ、アリスちゃん!? どうして泣いてるの!?」

 

「決まってるじゃん! それぐらい、私たちのゲームが感動的だったってことでしょ!」

 

「い、いくらなんでもそれは……」

 

「ありがとうアリス! その辺の評論家の言葉なんかより、その涙のほうが100倍うれしいよ! あー、早くユズにも教えてあげたい……!」

 

「ユズ……?」

 

 

 

「……ちゃ、ちゃんと、全部見てた」

 

 

 

(ギギーッ)

 

 

ゲーム開発部部室。その隅に存在したロッカーの中から……、

 

 

「え? ロッカーが勝手に開いて……」

 

「……気配がするとは思っていたが」

 

 

一人の少女が飛び出して来た。

 

 

「きゃああああっ! お、お、お化け!?」

 

「落ち着いて、ミドリ! ゲームガールズアドバンスを投げつけないで!」

 

「……いや、お前らの知り合いじゃないのか?」

 

「……」

 

「……?」

 

「ユズ!」

 

「ユズちゃん!? あれだけ探しても見つからなかったのに! いつからロッカーの中にいたの?」

 

「み、みんなが、廃墟から帰ってきた時から……。……代理人には気づかれていたみたいですけど……」

 

「……まぁ、視線を向けた瞬間動いてたしな……」

 

「だいぶ前じゃん!? というか、代理人さんは気づいてたんですか!?」

 

「むしろ、なんで気づいてなかったんだ……」

 

「あ、アリスは初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長、ユズだよ」

 

「……?」

 

「えっと、あの、その……。あ、あ、あ……」

 

「あ……?」

 

「……ありがとう。ゲームを、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて……

 

……泣いてくれて…………本当に、ありがとう」

 

「?????」

 

「面白いとか、もう一度とか……そういう言葉が、ずっと聞きたかったの」

 

「ユズちゃん……」

 

 

 

……これがゲームか。

 

 

――人工知能とはいえ、作品一つで感情を動かせるとは。

 

 

……確かに、本よりも物語を追体験しやすいという点は、評価できるだろうな……。

 

 






感情を動かす道具……


……閃いた!



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