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「……もういいか?」
「あぁ、……十分堪能させてもらったとも」
「うん、満足」
「ですね! 次は是非、その手袋を……」
「待て待て。それはまた今度だ。先にアリスの武器を見繕ってやってくれ」
「おっと、そうだったね」
「アリスー、どんな武器が…………って、アリスは?」
「お姉ちゃん、アリスちゃんならあそこに……」
「あれは……」
(じーっ……)
「これは……?」
「うわ、何だあれ……」
「ふっふっふ……お客さん、お目が高いですね」
「え、えっと……?」
「説明しましょう! この武器は、エンジニア部の下半期の予算、そのうち約70%をかけて作られた……、
……エンジニア部の野心作、
――宇宙戦艦搭載用レールガンです!!!!」
"う、宇宙戦艦???"
「うわぁ、また何かとんでもないことを……」
「前にも、確かコールドスリープしようとして、
『未来でまた会おう』
って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」
「……その『未来直行エクスプレス』なら、今でもよく使っているよ。……まぁ、冷蔵庫としてだ……」
「コールドスリープなら、都市でも使われてたな。……碌な使い方されてなかったけど」
「実現しているのかい!?」
「……? お前らも同じようなものを作ったんだろ?」
「……いや、我々が実現できたのは……冷蔵庫が限界だった。……確かに、食材に関しては、既存の冷蔵庫よりも未来に送ることが可能になったが……」
「使い道の割に、名前が大袈裟!」
「……そうか。まぁ、俺は技術者じゃないから、それに関しては……頑張れとしか言えないんだがな」
「……ごほん! ……話を戻しますと、エンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!」
「宇宙戦艦ねぇ……」
「このレールガンはその第一歩! 大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
「かっこいい……聞いただけでワクワクしてくるね!」
「さすがミレニアムのエンジニア部! 今回は上手く行ってるんだね!?」
「ふっふっふ、もちろんです!
…………と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして……」
「えええっ!? なんで! 期待したのに!」
「いつものことながら技術者たちの足を引っ張るのは、いつの世も創造力や情熱の欠如ではなく、予算なんです……」
「それもあってか、T社の支援金には期待していたのだがね」
「……あー。…………ウタハ、T社の武器を見せろ。……高値で買い取ってやる」
「さすが代理人。……私の言いたいことを理解してくれて嬉しいよ」
"お金は大丈夫なの? ホシノちゃんを10億クレジットで買ったばかりだよね?"
「10億クレジット!?」
「代理人さん、そんなにお金持ってたんですか!?」
「……10億? もしかして、ブラックマーケットの……」
「……お前らも、ブラックマーケットに行くのか?」
「勿論だとも。貴重なパーツや資材は、ブラックマーケットの方が入手しやすかったりするのさ」
「うん、この間も行ってきた」
「……だったら知ってるかもしれないが、……10億クレジットは、ブラックマーケットの中央銀行から奪い取ったものだ」
「……やはり、君だったのか」
「ブラックマーケットは大騒ぎだったよ」
「預金を引き出せなくなった住人達に荒らされた挙句、倒産してましたね!」
「……まぁ、襲われる方が悪い。そもそも、他者から搾り取った犯罪資金なんだ。……むしろ、潰れて良かっただろ」
"従業員が全員破壊されてたせいで、誰が銀行強盗の犯人かも分からなかったみたいだしね~"
★★★★★
「……話を戻すが、金に関しては問題ない。……T社を襲撃したついでに、会社の資金も回収してきたからな」
"また取ってきたの? ……ちなみに、幾らぐらい?"
「……詳細な金額までは数えてないが、……ホシノを10人買ってもお釣りがくるぐらいにはある」
"……そ、それって……100億クレジット……ってこと……?"
「…………それぐらいだ」
直後、持っていた銃を地面に置き……、
――土下座する才羽姉妹。
「ナマ言ってすみませんでした!!!」
「代理人さん……! 私たちも買ってください……!」
「は?」
"待って待って! ……何言ってるの!?"
「だって、100億だよ! 100億! ホシノって人と同じ10億だとしても、……それだけあったら、最新のゲーム機も買えるし、ソフトだってコンプ出来るもん!」
「い、今なら靴だって舐めます……! ……10億の為なら……」
「待て待て待て、買わないからな? ホシノが特別だっただけだからな?」
"代理人、言い方ぁ……"
「一目惚れってことかい? 代理人も隅に置けないねぇ」
「10億……」
「それだけあれば、宇宙戦艦だって夢じゃないですよ!」
「落ち着け! …………一目惚れとかじゃなくて、ホシノは戦力として買っただけだよ」
「戦力?」
「E.G.Oを発現したから、雇っただけだ。……T社の殲滅にも一枚嚙んでくれてるしな」
「……E.G.Oってなに?」
「……あー、……さっき見せた大剣のような、……特別な力を持った、人それぞれ違った固有の武器……みたいなものだ」
「ほぅ……。そんな物が、他にもあるのか……」
「興味深いね……」
その後、ローランが言い放った、
『……E.G.Oを発現し、企業と殺し合えるだけの戦闘技術があるなら……10億で買ってやる』
という言葉によって、この騒動は収まりを得ることとなった。
「……そう言う訳で、予算不足で宇宙戦艦そのものの開発は止まっているのです」
「いや、そんなの計画段階で分かることじゃん! どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃったのさ!?」
「愚問だね、モモイ。
――ビーム砲は、ロマンだからだよ」
「……(コクリ)」
「その通りです! ビーム砲の魅力が分からないなんて、全くこれだからモモイは」
「バカだ! 頭良いのにバカの集団がいる!」
「まぁ、気持ちは分かるけどな」
"カッコいいよね、ビーム砲"
「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は……
――光の剣:スーパーノヴァ!」
「また無駄に大げさな名前を……」
「……! ひ、光の剣……!」
「あ、アリスの目が輝いてる……!?」
「わぁ、うわぁ……!」
「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも」
「……これ、欲しいです」
……
「……え?」
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」
「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど……」
「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ないご相談です!」
「まぁ、それだけの金が掛かってたらそうだよな」
「いえ、金額もそうなのですが」
「……他にも、理由があって」
「理由? もしかして、私のレベルが足りてないから……装着可能レベルを教えてください!」
「いや、悪いがそういった問題ではなくてだね……。……もっと現実的な問題なんだ」
「お金かー……。……代理人……」
「出さないぞ。……一度払ったら、止まらなくなりそうだしな」
「ケチ!」
「先程も言ったが、金額の問題じゃないのさ」
「そうなのか?」
「あぁいや、もちろん制作費の問題もあるのだが、……この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる」
「なんと、基本重量だけで140kg以上です! さらに光学照準器とバッテリーを足したうえで砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます!」
「……意外と軽いな」
「超重いよ!!」
「200kgだろ? ……コレも確か、それぐらいの重さだった筈だが」
そう言うとローランは、手袋から愛用している
歯車が埋め込まれた、武骨で巨大な大剣。……斬るというより、その重量を持って叩き潰すよう設計された大剣は、重量200kgを優に超えた重さを誇っていた。
「何で持ててるの!? ていうか、その手袋って重量制限とかないんだ……」
「何で……、……鍛えたからか? あとは、この服のおかげもあるが……」
「服? それ、ただのスーツじゃないの?」
"そういえば、なんでシャーレの制服を着ないのか、ずっと疑問に思ってたんだよね"
「あー、この服には色々仕込んであってだな。
耐熱、耐寒、防水、絶縁、運動補佐、衝撃吸収、温度調節、自動修復、自動洗浄、音響相殺、自動治療、
…………他は忘れたが、そんな感じの機能がついてるから便利でな。……正直、他の服を着る必要がないんだよ」
「なんかめちゃめちゃ機能付いてる!?」
"そんな便利な服だったの!?"
「……ほんとだ、……燃えない」
「燃やすな燃やすな。猫塚、そのライターどこから出したんだ……」
俺の記憶通りなら、都市で一番高かったのはこの服なんだよな……。
その分、工房の武器数十本分の価値はあるけど。
「……まぁ、代理人は例外として。
……これをカッコいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。……ありがとう。
……持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけど……」
「……? …………!
……汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」
「ん? この子、また喋り方が……」
「た、多分ですが、本当なのかって聞いてるんだと思います」
「もちろん嘘は言っていないが……それはつまり、あれを持ち上げるつもり、ということかい?」
(こくり)
(スッ……)
「この武器を抜く者……
――此の地の覇者になるであろう!」
「ふふふっ、なるほど。意気込みは素晴らしいですね!」
(グッ)
「ふっ……!」
「無理は、しないほうがいい……クレーンでも使わないと持ち上がらな……」
「んんんんんっっ……!」
「……まさか」
「えぇぇっ!?」
(グググググッ――!)
「……も、持ち上がりました!」
……壁から外され、アリスの背中に背負われるスーパーノヴァ。
……それはまさしく、勇者にのみ装備することが許された、
――専用装備なのだろう!
「「「…………!?!?」」」
ローランの服が安物なわけないだろぉ!
多分、ヌオーヴォ生地とか比にならないレベルの、
――何かで作られてるんじゃないですかね……。
アンジェラの細工もありますし、下手な服よりも便利なんだろうなぁ……。
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