黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~勝負~ Nerd VS BlackSilence

 

「あとは逃げるだけだけど……」

 

「代理人さんが、逃がしてくれるわけないよね……」

 

「ボス戦からは逃げられなかった……というやつですね!」

 

 

「まぁ、そうだな」

 

 

俺としてもやらないといけないことがあるしな……。

 

 

「ていうか、なんで代理人は敵対してるわけ!? そこまでして、私たちと戦う理由なんてないじゃん!」

 

"それは……"

 

「……モモイ。理由ならあるぞ」

 

「代理人さん……?」

 

「シャーレとして、ゲーム開発部だけ贔屓するわけにはいかない。……っていうのが、先生の考えでな。俺としても、その意見を尊重しようと思ったのが理由の一つだ」

 

「それは……、……確かに、先生には助けてもらったけど」

 

「……一つ? もしかして、他にも理由が……」

 

「……あぁ。これは俺個人に出された依頼なんだが……、

 

 

――AL-1S

 

 

お前の力を試させてもらう」

 

 

「AL-1Sって……」

 

「……アリスの力を、試す……?」

 

「私の……力……?」

 

「……アカネ。早瀬と共にアスナの治療をしてやってくれ」

 

「……承知しました」

 

「代理人……一人でゲーム開発部の相手をするのは……」

 

「問題ない」

 

 

一人の方が動きやすいし……、図書館の恩恵も得られるからな。

 

 

「……アリス、そう難しく考えるな。この間見せてもらった、ゲームのボス戦? だとでも思えばいいんだ。

 

…………確か、

 

 

――さあ わがウデの中で息絶えるがよい!

 

 

……だったか?」

 

 

「……!! これは、紛れもなくボス戦ですね!」

 

「あーーーー! アリスが乗せられちゃった……!」

 

「……でも、変な理由より分かりやすくていいかも」

 

"代理人……。……やるよ、みんな"

 

「はい! 光の球はありませんが、……代わりに光の剣で、勇者アリスが代理人を倒して見せます!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

戦闘開始から30分が経過。

 

 

 

飛んでくる銃弾をデュランダルで斬り払い、スーパーノヴァのビーム砲は、モモイに急接近し盾にすることで撃たせない。

 

 

「……」

 

 

記憶 - ハナ協会

 

 ――卦脚――

 

 

 

音を置き去りにする程の速度で接近し、力を込めた左脚で蹴り飛ばしたローランだったが……、

 

 

――その攻撃は、予測していた先生の指示によって躱されてしまった。

 

 

「……ほんと、いい指揮をしてるよ」

 

 

 

 

 

"……見えなかった"

 

 

シッテムの箱に表示された情報を信じて、指示は出したけど……、……アロナの情報がなかったら、やられてた……。

 

 

「ちょっと、強すぎなんだけど!?」

 

「あ、アリスの攻撃が……」

 

「どうした? ……攻撃したいなら、こいつ等ごと攻撃したらいいじゃないか」

 

 

(ザンッ)

 

 

スーパーノヴァの射線上にモモイを置き、デュランダルを振り下ろす。

 

 

「うひゃ! ……し、死ぬかと思った」

 

「……その体勢で避けれるのか。……確かに、運動能力は悪くないな」

 

「な、仲間に攻撃するなんてことは……」

 

 

まぁ、そうだよな……。

 

 

「アリス……。……撃つだけが使い方じゃないって、エンジニア部で見せたはずだが?」

 

 

このままじゃ、折角充電したレールガンも発射できずに終わるが……、

 

 

 

――どうする、先生。

 

 

 

"…………アリスちゃん! 天(・)井(・)を(・)撃(・)っ(・)て(・)!"

 

 

「……? ……分かりました!

 

 

――光よ!!」

 

 

 

 

(ドカアアァァン!)

 

 

 

 

ローランの頭上目掛けて発射されたビーム砲は、天井を貫き、大量の瓦礫を落下させた。

 

 

「……なるほど、その選択は正解だな」

 

 

バックステップで距離を取るローランに対し、ミドリに引っ張り上げられ、何とか瓦礫を回避することに成功したモモイ。

 

 

"二人とも、今のうちにリロードを"

 

 

「……うん!」

 

「了解……」

 

「……」

 

 

いい連携だ。……アスナが言ってた双子パワーってのも、あながち間違ってないのか?

 

 

 

……けど、

 

 

「距離を取らせたのは失敗だったな。……先生」

 

 

"……っ、それは!"

 

 

デュランダルを手袋に収納し、代わりに一冊の本を取り出すローラン。

 

 

「……本?」

 

「もしかして、舐めプされてる!?」

 

「……」

 

 

 

あの本はまずい……! アビドスとエンジニア部で見ただけだけど……、

 

 

――もしも、あの動作がE.G.Oを使うのに必要だとしたら……

 

 

 

"みんな、すぐに攻撃して! ……代理人にあの本を使わせないで!"

 

 

「……え?」

 

「先生? 本を使わせないって、一体どういう……」

 

 

 

 

「――もう遅い」

 

 

 

手袋から取り出した本を開き、ページを1枚破り取るローラン。

 

破り取られたページは光り輝き、ローランの姿を変化させた。

 

 

「……なにあれ……コスプレ?」

 

「……白(・)い(・)、(・)ド(・)レ(・)ス(・)?」

 

"……遅かった……"

 

 

 

白と水色を基調としたドレスに、雪の結晶のような形をした両翼。

 

 

 

氷で造られた水色の剣を逆手に構えたローランは、

 

 

 

 

 

――その剣を、地面に突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

――霜の欠片(雪の女王)――

 

 

 

 

 

 

地面に剣を突き刺した瞬間、校舎内部が一斉に凍り付く。ローランが使ったE.G.Oの力は……

 

 

――地面から壁まで、一面氷に覆われた世界を創り出した。

 

 

「……ひっ、冷たっ……」

 

「あ、足が……凍って……」

 

 

 

 

凍傷・深度 3

 

 

 

脹脛まで氷漬けにされた二人の脚は、色を失い皮膚が壊死していた。

 

……すぐにでも治療しなければ、

 

 

 

 

――もう二度と、元の脚には戻らないだろう……。

 

 

 

 

「モモイ! ミドリ!」

 

"私とアリスちゃんだけ……狙(・)わ(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)……?"

 

 

「正解だ。……これで1対1だな、アリス」

 

 

E.G.Oを解除し、デュランダルを取り出したローラン。

 

 

「アリス。……早く倒さないと、仲間が死ぬぞ」

 

「……ッ!!」

 

"待って! アリスちゃん、無策に動いたらっ……!"

 

 

「……やっぱり、感情は人間と同じぐらいか」

 

 

 

(ガキンッ!)

 

 

充電途中のスーパーノヴァで殴り掛かったアリス。

 

エンジニア部でのローランの動きを思い出したアリスは……、

 

 

――記憶にある動きと、全く同じ動きを再現していた。

 

 

「……俺の動きか。……まさか、完璧に模倣できるとはな」

 

「アリスは……! ……負けません! ……代理人を倒して、モモイとミドリを助けるんです!」

 

 

デュランダルを構えるローランに対し、スーパーノヴァで襲い掛かるアリス。

 

 

振り降ろし、薙ぎ払い、殴り上げ

 

 

エンジニア部で見た動きを再現するアリスだったが、

 

 

「……遅(・)い(・)。俺と同程度の筋力と、全く同じ動きに関しては称賛するが、

 

 

……それでも、遅い」

 

 

(ザンッ!)

 

 

デュランダルを使い、スーパーノヴァの側面を受け流していたローランは、

 

 

……一瞬の隙をついて、スーパーノヴァをアリスの手元から弾き飛ばした。

 

 

「あっ、アリスの……光の剣が……」

 

「……悪くない動きだった。

 

 

…………後は、耐久力を確認しておくか」

 

 

 

デュランダルを手袋に収納し、刀(ムク工房)を取り出したローラン。

 

 

 

「……終わりにしよう、アリス」

 

 

 

刀を腰に携え、鯉口を切る。

 

その体制のまま腰を落としたローランは、

 

 

 

 

 

……アリスの身体を斬り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

記憶 - シ協会

 

 ――ムク工房 + 死の境界――

 

 

 

 

 

 

 

瞬きする暇すら与えず、一瞬で刻まれる

 

 

死

 

 

 

 

……その様子を視界に収めることすらなく、ローランが刀を納刀した瞬間……

 

 

 

 

「「……アリス!!」」

 

"アリスちゃん……!"

 

 

 

 

 

――天童アリスの右腕が、斬り飛ばされた。

 

 

 

 

「……両腕とも斬るつもりだったんだがな」

 

「くっ……、流石は、裏ボスですね……!」

 

「……出血は見られないな。……その様子だと、痛覚もないのか?」

 

「アリスは、まだ負けてません……! 腕が一本、部位破壊されただけです……!」

 

「いや、十分致命傷だろ……」

 

 

刀を手袋に収納したローランは、代わりに黒い携帯電話を取り出した。

 

 

「……明星。……これだけやれば、戦闘データは十分だよな?」

 

「え、えぇ……。見させて貰いましたけど……、…………やり過ぎです」

 

 

 

 

"だ、大丈夫!? アリスちゃん!"

 

「はい! アリスはまだ戦えます!」

 

「……いや、もう十分だ。俺としての目的も達成できたしな」

 

"目的……、もしかして……組織関係?"

 

「あぁ、想像通りだ。……それに、

 

 

――早瀬。……これだけやったんだ。

 

……罰としては、もう十分じゃないか?」

 

 

「そうですね…………

 

 

……って! やり過ぎです! ちょっと二人とも大丈夫!?」

 

 

 

「ユ、ユウカ……」

 

「さ、さむ……い……」

 

 

 

「……忘れてた。……ちょっと待ってろ、

 

――今、治してやるから」

 

 

そう言うとローランは、一丁の拳銃を取り出した。

 

 

 

"それって、エンジニア部が作ってた……"

 

 

 

T社のロゴである砂時計にTの文字が刻まれた、独特な装飾の施されている、黄金色の拳銃。

 

……あの後、エンジニア部から1億クレジットと引き換えに手に入れた、

 

 

 

――T社の依頼品。

 

 

 

「痛いかもしれないが、我慢しろよ」

 

 

「「えっ?」」

 

 

 

(パンッ!)

 

(パンッ!)

 

 

 

取り出した黄金色の拳銃を、モモイとミドリに発砲したローラン。……銃弾が二人の身体に命中した瞬間、

 

 

――氷が、溶け始めた

 

 

 

……いや、この表現は適切じゃないだろう。

 

 

脚を凍らせていた氷は、ま(・)る(・)で(・)最(・)初(・)か(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)かのように消えて行き、戦闘の余波でボロボロになっていた服は元の綺麗な状態へと復元、

 

 

……撃ち出した銃弾も、どういう訳かマガジンに補給されていた。

 

 

 

……この現象を言葉に表すのなら、

 

 

 

 

――時間が巻き戻った

 

 

 

そう表すのが、適切だろう。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

さて、事の顛末を纏めよう。

 

あの後、ゲーム開発部3人とアスナの時間を巻き戻し、戦闘による負傷を初(・)め(・)か(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)事(・)にしたローラン。

 

 

 

二度と生徒会を襲撃しないこと

 

ミレニアムプライスで結果を残すこと

 

1週間の謹慎

 

 

 

この三つを条件に、無罪放免とされたゲーム開発部。

 

 

 

「……俺が言うのもなんだが、見逃して良かったのか?」

 

「まぁ、……はい。……良くはないですけど、殺されかけた子たちに追い打ちをかけるのも……」

 

「……そうか」

 

「それに、リオ会長とノア…………生徒会の二人から、今回の件については目を瞑るようにと言われてしまったので……。

 

……まぁ、部活としてちゃんと成果さえ残して貰えれば、私としても文句はありませんから」

 

「……俺の個人的な依頼に付き合わせたこともあるし、謝礼金なら払うぞ」

 

「いえ、そこまでは……。……あの子たちに壊された校舎や備品も、代理人に治して頂きましたので」

 

「……あー」

 

 

施設の破壊に関しては、殆ど俺の仕業だが……、……まぁ、言わなくていいか。

 

 

「……それにしても、時間を巻き戻す拳銃なんて……本当に魔法の道具みたいですね」

 

「真相はもっと残酷だけどな」

 

 

誰かから、奪い取った時間を対価にしてる訳だからな……。……理屈は理解できたが、こんなモノを造らせてたなんて……。

 

 

「……ほんと、翼ってのは禄でもないな」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――ゲーム開発部

 

 

……大規模な襲撃の末、何も得ることが出来ず、1週間の謹慎を言い渡された4人。

 

 

「結局、鏡は手に入らなかったね……」

 

「これじゃあ、折角手に入れたG.Bibleが……」

 

「……」

 

「……ごめんね、みんな……」

 

 

"……落ち込むのはまだ早いよ。……そろそろ、代理人が"

 

 

 

(ガチャ!)

 

 

 

「ハ~イ、ゲーム開発部のちびっ子たち! マキちゃんからプレゼントのお届けだよ!」

 

「待たせたな」

 

 

 

「マキ? それに、代理人も……」

 

「代理人さん……」

 

「プレゼント?」

 

「……」

 

「ほらほら、何落ちこんでるの! 折角、このマキちゃんが……

 

 

 

――G.Bibleのパスワードを解析して来てあげたっていうのに」

 

 

「「……え?」」

 

「パスワード……」

 

「一体どうやったのですか?」

 

 

「……? どうやった……って、鏡を使ってだけど?」

 

「鏡って……結局、生徒会に没収されたままだったんじゃ」

 

「……あれ? 代理人言ってなかったの?」

 

「……あぁ。先生にしか伝えてない」

 

 

そう言うとローランは、手袋から一台のゲーム機を取り出した。

 

 

「それ、私のゲームガールズアドバンスSP!? なんで代理人が持ってるの!?」

 

「もしかして、代理人さん……」

 

「戦闘中に盗ませてもらった。……ヴェリタスに預けておけば良いのに、ポケットになんて入れてるから盗られるんだぞ」

 

「いやいやいや!? ……え? どうやって盗ったの!?」

 

「全く気付かなかった……」

 

「……今回の件は、俺の個人的な依頼も含んでた訳だからな。……そのお詫びって訳じゃないが、差押品保管所から鏡は拝借しておいた」

 

「急に『取り返して来た』なんて言うからビックリしたよ! ……まぁ、そのおかげで解析が完了した訳だけどね」

 

 

 

【G.Bible.exe……実行準備完了】

 

 

 

「「……」」

 

 

「……代理人! ……裏切ってなかったんだね!」

 

「いや、そもそも裏切るも何も無いんだが……」

 

「代理人さん……。……G.Bibleが、私たちの手に……」

 

「これは、パンパカパーン! 裏ボスの代理人が仲間になった! ってことですね?」

 

「まぁ、それでいいよ。

 

 

……ゲーム開発部、早瀬との約束は覚えているよな」

 

 

「約束?」

 

「ミレニアムプライス……」

 

「……」

 

「あぁ。……必要な物は用意したんだ。これを使って、ミレニアムプライスまでに作品を作り上げろ。もしできなかった場合……」

 

"できなかった場合は、そうだね……。

 

……その時は、シャーレとして今後一切の協力は出来ないかな"

 

 

 

 

先生と決めた方針。

 

最低限、部活としての体裁を保てないなら、

 

 

 

――連邦捜査部シャーレとして……協力は出来ない。

 

 

 

……これでも、かなり譲歩した方だとは思うがな。

 

 






――ヘイロー。

キヴォトスに存在する、女生徒の頭上に存在する光輪。

光(・)輪(・)を(・)所(・)持(・)す(・)る(・)子(・)供(・)を(・)天(・)使(・)と(・)定(・)義(・)し(・)、祝福を齎すもの。

……天使の手によって齎せる祝福という解釈(テクスト)を施すことにより、害ある攻撃でありなががら、特異点に対する耐性を無効化する拳銃。


天使から奪い取った時間を対価とし、

天使によって作られた作品を介することにより、

人に限らず、無機物や天使にも効果を発揮する……、



――意識を残したまま、相手の時間だけを巻き戻す拳銃。




本来はキヴォトスの生徒を殺すために開発された拳銃だったが、

その技術は、協力者によって持ち込まれた、


ヘイローを殺す銃弾によって、


……価値を失くしていた。






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