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――トリニティ総合学園――
キヴォトスにおける三大学園の一つ。ゲヘナ学園やミレニアムサイエンススクールと並びマンモス校であり、優雅で善良な生徒の集まりで知られている。
ゲーム開発部の依頼を達成してから数週間後……、ローランと先生はトリニティ総合学園の生徒会長、桐藤ナギサから
――ティーパーティーへと招待されていた。
「こんにちは、シャーレのお二方。こうしてお会いするのは初めまして、ですね。ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します」
"ナギサちゃんね。うん、よろしく~"
「あぁ、シャーレの代理人だ。よろしく頼む」
「はい。そしてこちらが、同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」
「よろしくねー☆! ……それにしても、これが噂のシャーレかー。なるほどー、ふーん……うん、私は結構良いと思う!! ナギちゃん的にはどう?」
「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ」
――ティーパーティー
他校における、生徒会のようなもの。3人の生徒会長から構成される集団であり、3人の中から1人がホストと呼ばれる最高意思決定者の役割を務め、その役割をローテーションすることで運営されていた。
"ところで、私たちが呼ばれた理由って?"
「確か、お願いしたいことがあるって書かれていたが……」
「代理人の仰る通りです。シャーレのお二人を招待したのは、少々お願いしたいことがありまして」
「おおっ、ナギちゃんもう本題に入っちゃうんだね!? もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの? ちょっとした小粋な雑談とかは? ほら、ティーパーティーって、基本的には社交界なんだし?」
「……」
「あー、聖園? そこまでにしておいた方が……」
「ううん! これはティーパーティーとしての在り方の問題だからね! ナギちゃんも、そんな綺麗な目で睨んでもダメー! きちんとしないと!」
「ミカさん、そういったことはあなたがホストになった際に追求してください。今は一応私がホストですので、私の方法に従ってくださいな」
「……」
「……」
"め、目が笑ってないよ……"
「あれは怒らせると、手が付けられなくなるタイプだな……」
恐らく、ホドと同じタイプだろうな……。満面の笑みで人を殴れるタイプというか……、怒らせると洒落にならないタイプというか……。
「まぁ、お客様の前でこのような論争を広げるのもまた、望ましい姿ではないことは確かですね。……ミカさんの言う通り、少し話の方向を変えましょうか」
"そういえば、あなたたちがトリニティの生徒会長なんだよね?"
「おお、先生の方から空気を読んでくれた! ほら、ナギちゃん見た!? これが大人の話術だよ! 自然な会話への誘導!」
「……はい。仰る通り、私たちがトリニティ総合学園の生徒会長たちです。生徒会長たちというのは耳慣れない言葉かもしれませんね……最初からご説明しますと、トリニティの生徒会長は代々複数人で担っているものなのです」
「あれ、ナギちゃん無視? もしかして無視かなー? おーい?」
「……」
ナギサによって語られたトリニティ総合学園の歴史。どうやらこの学園がトリニティ総合学園となる前、各分派の代表たちが紛争を解決するためにティーパーティーを開いたことから、この歴史が始まったみたいだ。
「パテル、フィリウス、サンクトゥス……それらの三つの学園の代表を筆頭にティーパーティーを開き、和解への流れ生み出され……」
「え、ひどっ……くすん、私ちょっと傷ついた……」
「……その後から、トリニティの生徒会はティーパーティーという通称で呼ばれるようになり、各派閥の代表たちが順番にホストを……」
「ナギちゃんが本当に無視した……嫌がらせだぁ……ねぇ、ひどくない? 私たち一応十数年来の幼馴染だよ? こんなこと今までに……結構あったかもだけど……
ねぇ~、二人も酷いと思うよね?」
"え!? いや、えっと……"
「いや、酷いのはどちらかというと……」
「ミカさん!!!」
――ガシャン!
我慢の限界に達したのか、手に持っていたティーカップを勢い良く机へと叩き付け、粉々に粉砕した桐藤ナギサ。
「さっきから五月蠅いですね!?」
彼女は滴る紅茶など気にも留めず、……声を荒げた。
「今、私が説明をしているんですよ!?」
「それなのにさっきからずっと!」
「横でぶつぶつぶつぶつと……!」
「どうしても黙れないのでしたら、その小さな口に……」
「ロールケーキをぶち込みますよっ!?」
机の上に置かれた、零れた紅茶が染みたロールケーキを素手で掴み、ミカの顔面目掛けて投げつける……。
驚くほど綺麗なフォームで投げつけられたロールケーキは、その姿を崩すことなく、
――聖園ミカの開かれた小さな口に、ぶち込まれた
「も゛ふっ!? モゴモゴモゴ……!!」
"ひえっ……"
「……驚くほど綺麗なコントロールだな」
「暫くそのロールケーキでも食べてなさい!!」
★★★★★
「……ごほん。……失礼しました先生、代理人」
"い、いや……大丈夫……"
「気にしないでくれ……。桐藤の気持ちも分かる……」
「モゴ!? モゴモゴモゴ……!」
口に刺さったロールケーキを咀嚼しながら、身振り手振りで反応を示す聖園ミカ。
「喧しいミカさんも静かになったことですし、本題に入りましょうか。……私が先生にお願いしたいのは、簡単なことです」
「……このまま進行するのか」
"か、簡単なお願い?"
「えぇ、とても簡単なお願いです。……補習授業部の、顧問になっていただけませんか?」
「補習授業部?」
「えぇ。シャーレのお二人には、落第の危機に陥っている生徒たちを救っていただきたいのです。部という形ではありますが、今回は顧問というより担任の先生と副担任の先生……と言った方が良いかもしれませんね」
"……本当に学校の先生って感じだね"
「……トリニティ総合学園は、昔からキヴォトスにおいて文武両道を掲げる、歴史と伝統が息づく学園です。それなのにあろうことか、よりにもよってこの時期に、成績の振るわない方がなんと4名もいらっしゃいまして……」
「モゴモゴ……んぐっ、そうなんだよねー! 私たちとしてはちょっと困ったタイミングでっていうか……」
「あの量を食べきったのか……」
"タイミング?"
「そうそう! エデン条約の件でちょっと今はバタバタしててね」
「本当は私たちで解決しないといけない問題なのですが、今は人でも時間も不足していまして……」
「その時にちょうど見つけたの! 新聞に載ってたシャーレの活躍っぷりを!」
「新聞? ……取材でもされたのか?」
"私はされてないよ?"
「えー? でも私、新聞で見たよ? 猫探しから宅配便の配達まで! シャーレは何でも解決してくれるんでしょ?」
「何でもは解決できないが……猫探し?」
"……そんなことも、あったね"
「そう言うこともあって、シャーレにお願いしようってなったんだよね!」
「評判も概ね良いものでしたから。……尊敬という言葉が合うかどうかについては、意見が割れているようですが……」
「あー、そうだったね。報告書によって全然違うっていうか……、銀行強盗をしていたとか、生徒を買収したとか、高層ビルを倒壊させたとか……」
"……"
「……」
こ、心当たりしかないんだが……。……というか、どこからその情報を集めてきたんだ。
「とにかく! 今はちょっと忙しいこともあって、ぜひシャーレに、この子たちを引き受けてほしいの!」
「もう少々説明しますと……この補習授業部は常設されているものではなく、特殊な事態に応じて創設し、救済が必要な生徒たちを加入させるものです。
……少々特殊な形ではありますが、急ぎということもあり、シャーレの超法規的な権限をお借りしつつ……といった形で、ですね」
"……そう言うことは、先に教えてほしかったかな"
「……そうだな。シャーレの権限を無暗に乱用されても困る」
「……事後報告になり申し訳ありません。……ですが、これも必要なことだったのです」
"……"
「……いかがでしょう? 助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べていただけませんか?」
"……私にできることであれば、喜んで引き受けるよ。……いいよね、代理人?"
「まぁ、先生が引き受けるならついていくよ。……あくまで俺は、シャーレの代理人であり先生の護衛だからな」
「やったー! 二人ともありがとー!」
「……ふふっ、きっと断らないでしょうとは思っていましたが……ありがとうございます。……では、こちらを」
ナギサから差し出された一冊のファイル。どうやら、補修授業部の生徒名簿のようだが……。
「そちらの方々が対象です」
「つまりトリニティのやっか――」
「その表現は愛が足りませんよ、ミカさん。こう言いましょうか、トリニティにおける愛が必要な生徒たち」
「補習授業部の生徒名簿ってことか。……うん? …………ちょっと待て、こいつって」
「ん? 代理人、気になる子でもいた?」
「いや、気になるっていうか……」
"…………ヒフミちゃん?"
「……詳しい内容についてはまた追ってご連絡いたします。他に気になる点はございませんか?」
「気になる点……。……そう言えば、さっき言ってたエデン条約って何なんだ?」
「……」
「……」
「うーん……それは、何て言えば良いのかなぁ」
「その説明には中々時間がかかってしまいますので、また後日お話ししますね。一応、それなりに内部機密ということもありますし……」
「……分かった」
"……あ、それじゃあもう一つ聞きたいんだけど。……ティーパーティーのもう一人の生徒会長は?"
「……」
「それは……」
「セイアちゃんは今、トリニティにいないの。入院中で……」
「入院中?」
「本来であれば、今のホストはそのセイアさんだったのですが……そういった事情で不在のため、私がホストを務めているところです」
「元々ティーパーティーのホストは、順番でやるものだからね」
"……そっか、早く良くなると良いね。……今聞きたいのはこれぐらいかな"
「承知しました、また何かあれば聞いてください。……お二人のご協力に感謝します、これで一安心です」
「じゃっ、二人ともまたね。また会えるのかどうか分からないけどっ」
「そうですね。特に今は忙しい時期ですし、ティーパーティーの生徒会長がこうしてまたすぐに集まれるとも限りませんから」
生徒名簿を預かり、ティーパーティーを後にしたローランと先生。
トリニティ総合学園の中を歩きながら、……二人は一先ず補習授業部の名簿にあった、見たことのある名前の生徒に会いに行くことにした。
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