黒い沈黙の行先   作:シロネム

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※独自解釈を多量に含みます


~過去~ Lobotomy → Elysion

 

――トリニティ総合学園・大聖堂

 

 

シスターフッドが本拠地としている建造物。生徒たちの懺悔やカウンセリングなどの用途に用いられる建物であり、その歴史は前身であるユスティナ聖徒会の時代から続いている。

 

銀の弾丸や黄金の装身具などの販売を行っており、一説では大聖堂の地下にある施設でこれらの物品が作製されているのだとか……。

 

 

「……邪魔するぞ」

 

 

大きな両扉を開け、中に入ったローラン。多数のステンドグラスで彩られた、色彩豊かな内装。

 

至る所に黄金色の刺繡が縫い付けられた長椅子が多数設置されており、煌びやかな室内は見る者によっては魅了されることだろう。

 

 

 

ローランの視界の先、聖卓の前に一人の少女が佇んでいた。

 

 

 

「……お待ちしておりました。……連邦捜査部シャーレの代理人様」

 

「……お前が、歌住で良いのか?」

 

「はい。……改めまして、歌住サクラコと申します。この度は招待に応じて頂き、ありがとうございます」

 

「……あぁ。……早速だが、幾つか聞かせて貰いたいことがある」

 

「えぇ、どうぞ。答えられる内容については、私の方からお答えいたします。……代わりに、私のお願いを一つ聞いて頂けないでしょうか」

 

「……分かった。……情報に関する対価は支払うよ」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ早速だが……第2幻想体管理室室長って言うのはどういう意味だ?」

 

「……と言いますと?」

 

「まるで幻想体の管理をしているかのような言い方だが……」

 

「えっと、その通りなのですが…………そうですね。……幻想体に関してのお話の前に、まずは私たちエリュシオンとシスターフッド、それから……

 

――ロボトミー社の関係について、お話ししてもよろしいですか?」

 

「……! ……予想はしていたが、やはりL社もキヴォトスに来ていたのか」

 

「……はい。……とは言え、他の翼と違って既に折れているのですが」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。…………それでは、お話しさせて頂きますね。

 

……とても長いお話になると思いますので、どうぞお掛けになってお聞きください」

 

「……分かった」

 

 

 

代理人様は、ユスティナ聖徒会と言う組織をご存じでしょうか? ユスティナ聖徒会とは、私たちシスターフッドの前身となる組織であり……、

 

――ロボトミー社と契約を結んでいた組織でもあります。

 

 

トリニティにおけるユスティナ聖徒会の立場は、戒律を守護する者という立場でした。元々複数の分派に分かれていた学園を、一つに纏め、今のトリニティ総合学園へと統合した会議。

 

 

通称、第1回公会議

 

 

それによって定められた幾つもの戒律。その戒律の違反者を取り締まり、厳正なる学園運営を実現するために創られた組織が、

 

 

 

ユスティナ聖徒会です。

 

 

 

違反者を取り締まり、弾圧や尋問、挙句の果てには拷問なども行ってきたユスティナ聖徒会には、それを実行するための圧倒的な力が必要になりました。

 

……力がなければ違反者を取り締まることなど出来ませんから、当然と言えば当然なのですが、

 

 

――その為に目を付けたのが、都市の翼であるロボトミー社だったのです。

 

 

 

 

ユスティナ聖徒会が翼と結んだ契約。……言葉にするのも嫌になるほど悪辣で、救いようの無い契約内容は……

 

 

 

……戒律の違反者を対価に、幻想体に関する情報と抽出したE.G.Oを取引するといった内容でした。

 

 

 

「……人身売買ってことか」

 

「…………はい。……尋問や拷問を行い、必要な情報を聞き出した後、ロボトミー社に身柄を売り払う。

 

その対価としてロボトミー社でしか生産することの出来ない、……幻想体のE.G.Oを入手していたのです」

 

 

 

戒律の違反者とは言え、ヘイローを持つキヴォトスの生徒です。

 

……ロボトミー社に取っては貴重で頑丈な労働力であり、都市には存在しないヘイローという概念を知る機会ということもあってか、……契約は速やかに締結されました。

 

 

契約に伴って提供された、アリウス分派の身柄も大きな理由の一つでしょう……。

 

 

 

「アリウス分派?」

 

「第1回公会議で、学園の統合に最後まで反対し続けた分派です。……ユスティナ聖徒会は、あろうことかアリウス分派を弾圧し身柄を拘束。

 

……その生徒達を、手付金としてロボトミー社に売り払っていたのです」

 

 

 

生徒の身柄を売り払い、E.G.Oという圧倒的な力を手に入れる。……そのE.G.Oを使い、戒律の違反者を捕縛し売却する。

 

このような悪循環が繰り返され続けた結果、ユスティナ聖徒会は

 

 

 

――キヴォトス共通の敵として、我々エリュシオンに殲滅されました

 

 

 

「……だから、幻想体について知っていたのか?」

 

「……勿論、それだけが理由ではありません」

 

 

 

連邦生徒会長が所有する、異端な力もあってか、ユスティナ聖徒会の殲滅は、誰一人犠牲者を出すことなく完遂しました。

 

……当時はまだ、エリュシオンという名前ではなく、メンバーも今よりずっと少なかったのですが、

 

――それ以上に、連邦生徒会長の所持する力が異常だったのです。

 

 

 

「……特異点か。別世界の都市に干渉できる時点で、只者ではないと思っていたが……E.G.Oを凌駕する程とはな」

 

「……都市では、異端の力をそのように呼ばれるのですね」

 

 

 

このような事もあってか、私たちは翼という企業を最重要危険事項に認定し、対抗する手段として連邦生徒会長を主体とした組織、エリュシオンを立ち上げたのです。

 

エリュシオンを立ち上げた私たちが一番最初に行ったのは、ロボトミー社との取引でした。

 

ユスティナ聖徒会が没落した以上、ロボトミー社がキヴォトスの生徒に手を出す恐れもあったので、

 

 

――連邦生徒会長自ら赴き、ロボトミー社の最高責任者と取引を行ったのです。

 

 

連邦生徒会長曰く、……キヴォトス由来のオーパーツや、デカグラマトン(神名十文字)に関する情報、連邦生徒会長の所持する異端な力……特異点と言いましたか? その内の一つを対価に、

 

 

 

 

――ロボトミー社を買い取ったとか。

 

 

 

「翼を買い取った……? ……よくもまぁそんなことが出来たというか……、L社もL社でよく売り払おうと思ったな……」

 

「私たちも最初に聴かされた時は冗談かと思ったのですが、……本当にL社を買い取ったみたいでして……」

 

「……一体どんな特異点を対価に出せば、翼の購入に至れるんだ……? ……いやまぁ、あくまで支社だから可能なのかもしれないが……」

 

 

支社とはいえ、L社を売り払ったなんて……アンジェラが聞いたら驚くだろうな……。

 

…………いや、というか、……なんで支社の人間が、L社の売買を許可できたんだ?

 

いくら都市と関係ないとはいえ、本社の最高責任者でもなければ支社の売買なんて……

 

 

……

 

 

……L社の最高責任者って、アンジェラだよな?

 

 

 

「それに関しては、あくまでエリュシオン内で囁かれる噂ですが……。……当時の連邦生徒会長は、L社を購入する対価として」

 

 

 

――神という概念の再定義化

 

 

 

「という力を、最高責任者に売り払ったそうです。……あくまで噂なので、実情は本人にしか知りえないなのですが」

 

「神という概念の再定義化ねぇ……。……因みになんだが、L社の最高責任者の名前って聴いてたりするか?」

 

「……? えぇ、伺ってますが……」

 

「なんて名前だ? アンジェラやカルメンって名前だったりしないか?」

 

「いえ、あくまで支社の最高責任者なので、その二人ではないかと。……アンジェラ様に至っては、図書館に居られますよね?」

 

「……図書館のことも把握していたか」

 

「……気分を害されたらすみません。……当時、連邦生徒会長が取引した最高責任者の名前は……」

 

 

 

――アイン

 

 

 

「だと、彼女は仰ってました」

 

「アイン……。……それって、前に黒服が言っていた……」

 

「どのような人物かまでは伺っておりませんが、……生徒の人身売買を行っていた時点で、碌な人間ではないかと」

 

「……まぁ、翼の責任者にまともな奴なんていないよな。

 

…………話を戻して悪いんだが、対価に支払ったというデカグラマトンの情報ってのは何なんだ?」

 

「……すみません。……それに関しては、私たちも存じていないのです。連邦生徒会長に聞いても教えて頂けなかったので……」

 

「……そうか」

 

 

 

ロボトミー社を買い取った私たちは、彼らの管轄にあった幻想体についての管理を引き継ぐことになりました。

 

……幸い、管理マニュアルのようなものが作成されていたので、犠牲者を出すようなことはなかったのですが、……醜悪な見た目や精神への多大な負荷から精神障害を患う生徒が出てきてしまいました。

 

この状況を改善しようと、様々な手段や処置を検討した結果、

 

 

 

――幻想体管理室という下位組織が結成されました

 

 

 

「……シスターフッドとはユスティナ聖徒会の後身組織であり、……エリュシオンにおける幻想体の管理役なのです」

 

「……なるほどな。だからあの修道女達は、幻想体やE.G.Oについて知っていたのか」

 

「……機密事項だから口外しないようにと、伝えておいたのですが」

 

「……それに関してはあいつ等の前でE.G.Oを使った俺のせいでもあるから、あんまり責めないでやってくれ」

 

「代理人様がそう仰るなら。…………はい? ……今、E.G.Oを使ったと言いましたか?」

 

「あぁ、言ったぞ。……色々と制限はあるが、図書館の本に幽閉されている幻想体の力を、ある程度自由に使えるんだ」

 

「それは……、とても頼もしいですね」

 

「……事情に関しては概ね把握したよ。……色々と大変だったんだな」

 

「……いえ、これも私たちの役目ですから。……それに、最初は不気味でしたが、幻想体というのも……ある程度接していると可愛く思えるものでしたので」

 

「そ、そうか……? ……まぁ、被害が出てないなら良いんだが……」

 

「……以上が、私たちに関してなのですが……他にお聞きしたいことはありますか?」

 

「いや……予想以上に収穫があったから、これ以上聞きたいことはないな。

 

……約束どおり、さっき言ってたお願いって言うのを聞くよ」

 

「ありがとうございます。……と言っても、やって頂きたいことは至って単純なのですが」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。……我々シスターフッドの生徒たちを、鍛え上げて欲しいというのが、お願いです」

 

「き、鍛え上げる……?」

 

「はい。……先ほどもご覧頂いたと思いますが、この学園にはトリニティの夜と呼ばれる悪夢のような時間が存在します」

 

「……裏路地の夜と同じような、アレか」

 

「その裏路地の夜については存じませんが……、先代のティーパーティーが設けたこの制度によって、トリニティは争いの絶えない学園へと成り替わってしまいました」

 

「……よくもまぁ、こんな制度を思いついたというか……、その反応的に裏路地の夜とは関係なさそうなのに、時間まで一緒とはな……」

 

「……我々でも暴徒の鎮圧を行ってきたのですが、弾薬などの補給も間に合って居ない現状でして」

 

「……それで近接戦闘を行っていたのか。……この世界に来てから見る機会のなかった武器を使っていたから驚いたが、そういう理由だったのか」

 

「あ、いえ。それも勿論理由の一つではあるのですが、……銃弾による防護はあっても刃物による出血には、ヘイローの防護が効きにくいので使わせていたのです」

 

「……思ったより理にかなった理由だったな。……なんとなく話が読めたが、つまり近接戦闘能力の向上を目的としているんだな?」

 

「仰る通りです。都市のフィクサーであった貴方なら、私たちの特訓に適していると思いお願いさせて頂きました」

 

「……まぁ、キヴォトスの生徒よりは優れていると思うが。

 

……分かった。……約束だし、引き受けるよ」

 

「ありがとうございます。それでは、詳しい日程と内容を……」

 

 

 

気づけば話し始めてから数時間が経過しており、一般の生徒達が登校してくる時間となっていた為、

 

……シスターフッドの特訓計画を練った二人は、一度解散することとなった。

 

 

 

「それでは、代理人様。本日はお付き合い頂きありがとうございました」

 

「こっちこそ、色々と知れて助かったよ」

 

 

 

 

 






ロボトミー社とエリュシオンはこの様な関係となります。
最高責任者のアインって、一体誰なんですかね……。


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