黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~報告~ 試験結果

 

――放課後

 

 

ほとんどの生徒が帰宅した頃、ティーパーティーのナギサに呼び出されたローランと先生。

 

2人は第1次特別学力試験の結果や、補習授業部の様子について報告していた。

 

 

 

「なるほど……。……最初の試験は、上手く行かなかったのですね」

 

「まぁ、そうだな」

 

「そうですか……。……ですがまだ、あと2回残っていますので……」

 

"ねぇ、ナギサちゃん。……聞きたいことがあるんだけど"

 

「なんでしょう? ……まぁ、凡その検討は付いていますが」

 

"3回とも不合格になったら、補習授業部のみんなはどうなるの?"

 

「……。……小耳に挟まれたのでしょうか? 出処は……ヒフミさん、ですかね」

 

「……ということは、ヒフミには伝えていたんだな」

 

「……。……これは、鎌をかけられたのでしょうか? ……お見事です」

 

「いや、実際ヒフミが零しただけだから、間違ってはいなんだがな」

 

「……そうですか。……質問にお答えしますと、簡単なお話です。試験で不合格を繰り返す、落第を逃れそうにない、助け合うこともできない……

 

……だとすれば皆さん一緒に、退学していただくしかありません」

 

「……一人でも合格しなかった場合、全員退学っておかしくないか?」

 

「いいえ、おかしくなどありませんよ。

 

 

――このゴミ箱は、裏切り者を処分するのに最も適した形をしていますから」

 

"……裏切り者?"

 

「……順番に説明しましょうか。……トリニティの裏切り者。……その狙いはおそらく、エデン条約締結の阻止。この言葉が持つ重さを理解していただくには……エデン条約とは何か、という説明が必要ですね」

 

 

 

ナギサから語られるエデン条約。……トリニティとゲヘナの間に結ばれる不可侵条約。ゲヘナとトリニティの中心メンバーが全員出席することによって設立される、中立的な機構。

 

 

 

――エデン条約機構(Eden Treaty Organization)

 

 

 

ETOと呼ばれるであろう団体が、トリニティとゲヘナの間で紛争が起きた時に介入し、その紛争を解決する。

 

そうすることによって、両学園間での全面戦争が起きなくなると言ったものだった。

 

 

 

「一種の同盟みたいなものか」

 

「その解釈が近いですね。……トリニティとゲヘナの長きにわたる敵対関係は、お互いに大きな負荷になっています。

 

エデン条約はその無意味な消耗を防ぐための、恐らく唯一の方法であり、キヴォトスにおける力のバランスを保つための方法でもあります」

 

「……」

 

「……この念願の条約が締結される直前まで来た、このタイミングで……これを妨害しようとする者たちがいるという情報を耳にしてしまいました」

 

「……それは信用できる情報なのか?」

 

「えぇ、まぁ……その妨害者が誰なのかは分かりませんでしたが……。……そこで、次善の策として用意したのが補習授業部です」

 

「……」

 

「……裏切者はそこにいます。ですが、誰なのかは分かりません。……そうなれば、やることは一つですよね?」

 

「……怪しい奴を、まとめて処分しようとしたのか」

 

「理解が早くて助かります。……そして……ごめんなさい。……こんな、血生臭いことにシャーレを巻き込んでしまいました。私のことは、罵って頂いても構いません」

 

「……」

 

"……でも、本当にシャーレを利用する気だったら、こうして今話してくれてないよね"

 

「……そう、ですね。……言っても信じてもらえるかなと思っていましたが、仰る通りです。こうなったらお話は早いですね」

 

「……俺たちに、裏切り者を探して欲しいと?」

 

「……はい。補習授業部に居る裏切り者を……平和を破壊しようとするテロリストを見つけ出して頂きたいのです。

 

……私たちだけではなく、キヴォトス全体の平和を、自分たちの利益と天秤にかけようとしているのです」

 

"……"

 

「裏切り者を探し出すことが、キヴォトスの平和に直結します。……いかがでしょう、連邦捜査部シャーレとしてご理解いただけますと、幸いなのですが」

 

"……私たちは私たちのやり方で、その問題に対処させてもらうね"

 

「……そうですか」

 

「……なぁ、桐藤。協力するのは構わないが、一つだけ聞かせてくれ」

 

「……なんでしょう?」

 

「この話し合いが始まってから、ずっと疑問に思っていたんだが……、どうしてお前は……」

 

 

 

――裏切者は補習授業部にしかいないと、思い込んでいるんだ?

 

 

 

「……それは、どういう」

 

「いやまぁ、桐藤の考えていることも分かるが……、……視野が狭すぎる。……もっと多角的に疑った方がいい。……それに」

 

"……もしかしたら、生徒じゃない人が関わってるかもしれないしね"

 

「生徒じゃない人……?」

 

"……"

 

「……先生の言うとおりだ。疑うのであれば、トリニティの生徒だけじゃなく、もっと別の……」

 

 

 

(TELLLL……TELLLL……)

 

 

 

"……電話? ……代理人、もしかして"

 

 

「……あぁ。……桐藤、話の途中で悪いが俺は抜けさせてもらう。……先約があってな。……この後、」

 

 

 

――シスターフッドと約束があるんだ

 

 

 

「……はい? い、今なんと……」

 

「先生、校門前に護衛を手配しておくから、先にシャーレに戻っておいてくれ」

 

"……分かった。代理人も気を付けてね"

 

「あぁ。じゃあまたな桐藤。……もしも火急の用があるなら、大聖堂に来てくれ」

 

「ま、待ってください! どうしてあなたが、シスターフッドと知り合って……」

 

"ナギサちゃん。……代理人がそうって訳じゃないけど、……生徒ばかり疑っちゃダメだよ?"

 

 

……先生もつい最近まで知らなかったけど、キヴォトスにはもっと悪い大人が存在するからね……

 

 

「大人……ですか……」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――大聖堂

 

 

ほとんどの生徒が帰宅し、静かになった大聖堂の前で、各々の武器を整備する集団がいた。

 

 

 

「あ、代理人さん。お疲れ様です」

 

「……お疲れ。……えっと、確か伊落だったか?」

 

「マリーで大丈夫ですよ、代理人さん」

 

「お疲れ様です、代理人。来てくださったんですね」

 

「歌住と約束してたからな。……あー」

 

「シスターヒナタですよ、代理人様。……序に言いますと、私もサクラコで構いません」

 

「わ、私もヒナタで良いですからね!」

 

「あー、……よろしくな、二人とも」

 

「はい、よろしくお願いします。……と言いましても、本日はAチームの指導をお願いしたく思っているので、私たちが教わるわけではないのですが」

 

「そうなのか?」

 

 

 

――シスターフッド所属、実働部隊Aチーム

 

 

 

総勢6名で構成されたチーム。

 

全員がアサルトライフルと刀で武装した、遠近対応可能なオールラウンダーで構成された部隊。

 

個性豊かなデザインのアサルトライフルと比べ、装(・)飾(・)の(・)な(・)い(・)黒(・)い(・)刀(・)を装備した一団は、……トリニティ内でも噂になるほど謎の多き集団であった。

 

 

 

「あたしがAチームの隊長です。よろしくお願いします!」

 

「よろしく。……その刀、少し見せてもらっていいか?」

 

「勿論大丈夫です! どうぞ!」

 

 

 

腰に付けられた紐から外し、ローランへと刀を差しだした隊長。受け取ったローランは一通り眺めた後、

 

……抜き取った刀身を見て驚いた。

 

 

 

「黄金色の刀……? これの素材って……」

 

「そちらの刀は全て、M社から買収した月光石が素材です。……エリュシオンが誘致した都市の工房で作られてます」

 

 

「……それを知ってるのは、サクラコだけか?」

 

「いえ、トリニティ地区担当は全員把握しているかと」

 

「そうか……」

 

 

「えっと、この刀がどうかしましたか!?」

 

「いや、……少し気になってな」

 

 

抜き身の刀身を鞘に納め、隊長に返却したローランは……

 

 

「参考になるか分からないが……」

 

 

手袋から、一振りの刀(ムク工房)を取り出した。

 

 

 

「それじゃあ、訓練を始めるぞ」

 

「「「「「「はい! よろしくお願いします!!」」」」」」

 

「……と言っても、今まで誰かに戦い方を教えたことなんてなくてな……」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ。……だから、戦い方は身体で覚えてくれ」

 

 

「「「「「「はい?」」」」」」

 

 

「怪我に関しては、幾らでも治せるから……」

 

 

 

 

 

――死なないように、頑張れ

 

 

 

 






ローランブートキャンプ……
チャールズ事務所元1級フィクサーって考えれば、

都市ならお金払ってでも受けたい人が出て来る……かな?



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