インフィニット・カウンターズ   作:夢現図書館

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 決まって面倒な時に面倒な事が並行してやって来る。


闖入者

 

 

 

「あ、リッカさん……」

 

「よう。夜竹、だったか?」

 

 空いていた席の隣は8組代表になった夜竹 さやかだった。以前、教えを希いに来たが断った手前、本人からすると気不味い気分になるだろう……。

 

「随分とまぁ、盛況なモンだな。高々、模擬戦とやらで」

 

「そりゃあねぇ。噂の男性操縦者の一角とイングランドの代表候補生との試合だよ〜? 気になるなって言われる方が無理があるよ」

 

 後ろの席に座っている同級生からそんな言葉が投げられる。そう言うモノなのかと言いたい。

 

「だが、イングランドの代表候補生だったか。下手に自分の首を絞める真似をしたな。勝っても負けても、ロクな末路を迎えない事を承知した上なのか……」

 

——その事に考えが浮かばないのであればとんだアホだと言わざるを得んな。

 

「え?」

 

 リッカのその言葉に8組の生徒達は思わず聞き返した。どうやら予想外の言葉に加えてリッカが意外にも口が動いている事にも驚いているみたいだ。

 

「えっと、どうして? 勝っても負けても……って」

 

「代表候補生って肩書は君らが考えている程に安いモノでは無い。

 代表は言うまでもなく1人しか存在し得ないが、その『候補』ともなれば多数存在していて然るべきだ。

 そのイングランドの代表候補生、セシリア・オルコットだったか。そのオルコットはイングランドの代表候補生の1人に過ぎず、他にも多数の候補生……更にはその候補生の候補がその座を奪わんと鎬を削っている」

 

「それじゃあ?」

 

「まだ分からんか。この模擬戦の注目度は見た限り高いだろう。ズブの素人連中までもが此処まで注目して集まっている、ともなればそれより上層の人間。政府関連の連中も当人の知らない内に見ていても不思議ではあるまい。片方が絶賛注目度MAXの男性操縦者ならば尚更」

 

「リッカ君って語り出すと長いね……」

 

「えーと、噛み砕いて言ってくれないかな?」

 

 説明が口説くて分からない為に簡潔に求めた。ならば応えてやろう。

 

「セシリア・オルコットは負けたら『素人に負けた』と言う為体を演じた為に国から代表候補生の資格は無いと烙印を押され、勝てても勝ち方によっては批難を浴びるだろう。

 例を挙げれば辛勝であれば素人に梃子摺ったとして叩かれ、圧勝であれば当然の事なんだが……発端が発端が理由でセシリア・オルコットにとっては何の利益も無い『戦い損』って奴になる」

 

——モネカの情報によりゃあ、随分とまぁ酷い売り言葉に買い言葉の喧嘩が発端らしい。餓鬼同士の喧嘩ならば適当に流せば良いのだが、かくも『有名人』ともなれば、面倒極まりない程の騒ぎになるのは必然、か。笑えん展開だ。

 

「と言う事は、イングランド代表候補生はこの後どうなるの?」

 

 この後、つまり試合の後と言う意味である。

 

「……イングランド政府がどんな対応を取るかは推測でしか無いが……下手すりゃ、本人の抹殺も視野に入る」

 

——ガキの喧嘩だと大目に見るかどうか……。内容を聞きゃあ、軽く人権問題に首突っ込んでいるしな。

 

「「「……」」」

 

 抹殺と言う物騒なワードが飛び出た為に一同は黙りこくった。誰も彼もが専用機を欲しがるがその代償は想像以上に重たいモノだ。その重圧に耐えられなければ手を伸ばすべきでは無い。……大き過ぎる力は身を滅ぼす猛毒だからだ。

 

「……っ? 珍しいな。師匠からのメッセージメールとは」

 

 空気を沈澱化させたタイミングでメッセージが届く、送り主はリッカの師匠ことヒルデからだった。

 

「え?師匠⁉︎ リッカ君に師匠がいるの⁉︎」

 

「どんな人なんだろう……?」

 

 話題はすぐに移り変わった。謎多き2人目のプライベートに関わる話題ならば花の女子高生ならば食い付くしか無い。

 

「ただの暴君だ。えーと?」

 

 

 

『チビが良い加減、喧しいから、さっさと面倒を見ろ馬鹿弟子。貴様もガキの頃、似た様な真似をして来ただろうが。 

 キズナに言って貴様の所に行かせた。精々、死なない様に鍛えておけ。

dyヒルデ』

 

 

 

 そんな物騒なメールが飛ばされて来た。チビ……と言えば、新人小隊員であるノエルしか思い当たらない。

 

「マジか……」

 

 師匠にこう言われてはもはや引き返せない。恐らくパイセンも1枚噛んでいる可能性があった。どうやら、本当に弟子をとる羽目になったようだ。

 

「リッカ君、どんな内容だったの?」

 

「応援メッセージって奴?」

 

「応援?師匠がそんな優しい言葉なんて使わねぇよ。……気苦労が増えた……。あのチビをIS学園に捩じ込む気かよ」

 

「え? どう言う事?」

 

 事情を知らない8組面々が気になって聞いて来たが、リッカは現実逃避気味に視線をズラしてアリーナの方へ意識を向けた。

 その頃には模擬戦は佳境に入っており、白い機体を駆る織斑 一夏が見事な自滅をして試合が終了するタイミングであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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