人生は選択の連続だ。
例え、間違っていたとしても前に進まねばならない。
「ノエルですッ‼︎ 師匠の新人弟子ですッ‼︎」
ある日、IS学園に1人の編入生が現れた。
小柄な体格で一見、中学生かその辺りを彷彿させる年齢の犬っぽい印象を受ける少女。IS学園の制服の上に黒い隊服を羽織った姿で現れ、その自己紹介でいきなりそんな事を言い出した。
「え?師匠って……?」
「リッカ様ですッ‼︎ やっと、やーっと‼︎ 弟子にしてくれるって確約してくれまし、ぴぎゃあ⁉︎」
目を光らせながら興奮気味に捲し立てる最中、唐突に飛来したゴム弾がノエルの眉間に命中し、其の儘後ろに倒れて昏倒した。
「「「…………」」」
一連の光景を見て生徒一同は件のリッカの方へと視線を向ける。其処には『不機嫌だ』と態度で示しているリッカの姿が見えた。
「喧しい」
編入生とリッカの関係が凄く気になる生徒達だが、リッカの数少ない情報の中で変に突くとどうなるか分からない為、聞くに聞けない空気の中、午前中は静かに過ぎて行った。
「全く……いきなりな挨拶だな」
「シリュウ様は挨拶はこの様にって教わりましたッ‼︎」
「パイセン、また余計な事を……」
ノエルの存在もあり、昼間は特に爆睡出来なかったリッカ。気苦労がまた1つ増えた所で、昼休みの時間帯となった。
「まぁ、なったモンは仕方無ぇ。師匠からの預かりだしな……死なん程度に鍛えてやる。勿論、手は抜かんから安心しろ」
「本当ですかッ⁉︎ 私、頑張りますッ‼︎」
一応、副社長に確認を入れた所。暫くはリッカの小隊に転属と言う形を取ると言う。まぁ、リッカの小隊は隊員は固定じゃないので其処の点はまだ良い(その場の状況でコロコロ変わる為)
だが、何故IS適性の欠片も無いのにIS学園に捩じ込めたのか凄く気になったのだが、ウンザリ気味な顔で暈された。……心当たりが無い訳では無いので触れない様にした。自分から地雷を破壊しに行く程、馬鹿では無い。
「所で、師匠って呼んで良いですかッ?」
「変に様付けで誤解を招くよりはマシだ。好きにすると良い」
「やったッ‼︎」
表情もコロコロ変わるし、本当に元気だ。……だが、憧れは理解とは相反するモノだ。つまり、今のままでは非常に危ういと言える。
——……全く、如何して何時も面倒臭い事ばかり発生するのやら。……そう言う『運命』なのかも知れんな。無論、上等だがな。
激流に晒されて尚も進まねばならない。停滞した時に死ぬのであれば、その時までやるだけだ。
「所で、何処に向かっているんですか師匠?」
「教室に居たら喧しいからだよ。ただでさえ、お前の頓珍漢な自己紹介の所為で余計に喧しいんだよ」
「ふぇぇ、ずみませぇん……‼︎」
ノエルとリッカの関係を詮索したい生徒達の対応も面倒だ。ただでさえ不要な男性操縦者の肩書の所為で余計な対応も迫られる。いや、本当に面倒くさい。自分は一介の傭兵に過ぎないと言うのに。
「や、やっと見つけた……‼︎」
廊下を歩いていると正面から見覚えのある顔、夜竹 さゆかだったか、8組代表の
「大凡、要件は分かっている上で一応、聞くが何か用かい?」
「……彼女は良くて何故、私はダメなんですか?」
やはり弟子入りの件だろう。
「認めたくは無いがな」
「酷いッ⁉︎」
いきなりそんな事を言われてノエルは口をあんぐり開けた。本当に分かりやすい。
「まぁそれは兎も角、色々な理由はあるが……。彼女はカンパニーでの後輩。上司や俺の師匠への根回しをされちまえばやるしか無いだろう。……仮にも師匠からの預かりだから、死なせる訳には行かないんだよ」
「師匠、本当の理由は?」
「面倒臭ぇ」
「……ぶっちゃけますね」
——いや、本当にそうなんだもん。つーか。
「何故、其処まで求める? 殺したい奴でも居るのか?」
カウンターの業界じゃ殺し殺されは日常茶飯事だ。何処で恨みを買うか分からない。逆もまた然りだ。非公認タスクフォース間や無法地帯、アンダーグラウンドとなれば尚更だ。
「そう言う訳じゃ……」
「そもそも民間人じゃ、
以前にも言ったが、俺は元々教えるのが得意とは声高く言えないからな」
「達?」
「……。1度のみならず2度も、か。こりゃ3度目もありそうだ。……ノエル。今から、訓練始めるぞ」
「い、今からですかッ⁉︎」
「嫌か?」
「い、いえ‼︎ 直々に教えて貰えるのならば、願っても無い話ですッ‼︎」
「……着いて来れる覚悟があるなら、来い。無理なら置き去りにする。それでも構わないと言うのなら来い」
リッカはさやかにそう告げた後、ノエルを連れてその場を立ち去った。
「ほぇぇ、凄く広いですね〜‼︎」
「本当は野外でやりたかったんだが、この際は仕方あるまい。全く……何処まで画一的なんだか、呆れて来るな」
IS学園島には校舎群の他に林と言った自然区画が存在している。現状ではその場所を使いたかったのだが、IS学園では限られたエリア、アリーナでしか訓練と言った戦闘は認められていないとの事。
『何処でも空いている場所でも放棄された場所でも構わんから、使用させてくれ』
そう言う訳でアリーナの使用を申請。昼頃で殆ど昼食の時間帯故にちょうど、空いているアリーナがあった為に其処を使う事にした。
その際に周りで似た様な申請をしに来た生徒達の珍奇な視線が向けられたが取り合う必要は無い為、無視した。
「遮蔽物も何も無いですね〜」
「ま、ISは高速空中戦が主流らしいから地上は不要って話なのだろう。さて、雑談はこの辺にして始めようか」
「はいッ‼︎」
「……と、言いたいが。……来たらしいな」
「…………」
視線を向けた先、其処にはさゆかが立っていた。もはや、何も言うまい。此処に来たと言う事は逐一、確認するのも無粋だ。
「夜竹だったか? 此処まで来たのならば何も言わない。改めて始めるぞ」
「は、はいッ‼︎」
「ノエルもそうだが、先ず戦闘に於いて必要なのは基礎体力だ。それが無ければ話にならん」
「え、ISに乗るから」
「不服か? 嫌なら帰っても構わない。2度目は無いが」
さゆかの反論を捩じ伏せる。2度目は無いと言う脅迫も含まれている。つまりそう言う事である。
「と言う訳で、2人揃って持久走をしろ。楕円形だからな横幅の端から端までやって貰う」
「「え?」」
このバカ広い広さを誇るアリーナの端から端まで走れと言う内容を提示された。ノエルもそうだがさゆかも顔が青褪めた。アリーナはIS同士の戦闘を考慮してかなり広いスペースを誇る。その端から端まで走れと言うのは中々、キツイ。
「最初だからな、軽めに3往復だ。何、全力疾走ではなくゆっくりでも構わない。歩かずに走り続けろ……歩いたら」
リッカはそう言い量子展開でボーイズ対戦車ライフル Mk.I*を展開し片手で担ぐ。
「足を吹っ飛ばすから安心しろ」
ジャキンと言う凶悪な音を聞かせながらリッカはそう宣告する。
「し、師匠⁉︎ ほ、本気ですかぁ⁉︎」
「じ、冗談……ですよね……?」
「つべこべ言わずにやれ」
「「ひゃあい‼︎⁉︎」」
リッカの脅しに近い声音に2人は揃って悲鳴をあげて走り始めた。勿論、撃つ時は弾頭が柔らかめのゴム弾を使うつもりだし、直撃させるつもりも無い。……当人達は、本気だと思い込んでいるみたいで、ゆっくりで構わないと言ったが当人達は全力疾走で走り続け3往復する頃にはグロッキー状態で倒れたと言う。