努力をしない者には選択の機会すら与えられない。
「黛。晩飯は食ったか?」
「いえ、まだだけど」
街中に降りて舗装された道路を走行する中、リッカは後部に乗る薫子にそう投げ掛けた。
「じゃあ、コンビニでも寄って晩飯でも買うか」
「え、良いの?」
「端金だ。気にすんな」
そんな形で話が纏まり大通りから逸れて見るからに治安が悪そうな場所へと入っていく。
「あ、あの〜。明らかにワケアリっぽそうな場所に入って来たんだけど」
「どうなっても知らんぞって言っただろうが。グラウンド・ワンと一言に言っても治安の良し悪しはピンキリだからな。再開発も済んでねぇ場所も幾らでもあるっての」
割れた道路、倒れた塀、へし折れた電柱が視界を通り過ぎて行く中、バイクはある建物の駐車場へと入って行った。
「あの、さ……」
「ん? 何だ?」
壁に掛けられているのは多種多様の銃火器。整備科故に、種類は分かるのだが此処までの量は見た事が無い。他にも防弾チョッキや各種弾も置かれている。それ以外にも石炭も置かれているし明らかにデンジャーなマーク付きの一斗缶も置かれていた。そんな明らかにヤバそうな様子を前に薫子は戦々恐々となっていた。
「此処、本当にコンビニ……?」
「アポカリプスは何でも揃えるってのがウリのコンビニだからな。訳アリの物が欲しけりゃ別の所を物色するしか無ぇが」
「いや、それ以前に此処も充分ワケアリにしか見えないのだけど⁉︎」
「店の前だぞ。変に騒いだら営業妨害だとして通報されるぞ?」
「……もう、私の常識は粉微塵にされる運命なのね」
「いらっしゃいませ〜。チューインガムからミサイルまで。コンビニ、アポカリプスへようこそ〜」
店員の挨拶を流し聞き、並んでいる商品を物色する。銃火器や弾薬と言った敵を殺す為の物騒な道具が並んでいる中、ちゃんとコンビニらしく飲料水とか冷凍食品や菓子パンと言った物も並んでいる。双方の世界観が違い過ぎて同じ世界なのか疑問符が出そうだが生憎、訂正してくれる人物は此処には居ない。
「晩飯はサンドイッチで良いか? ゴミ処分する時は少ない方が良いからな」
「ええ、同じ奴で頼むわね」
銃火器が大量に並んでいるコンビニなど、委員会側ではまず見られない物騒過ぎる光景だ。爆弾の類も置かれているんじゃ無いのかと思う。いや、普通にありそうな気がする。
「……さて、弾薬はと」
「弾って一言で言っても種類があるもんね」
次に銃火器や弾薬が並んでいるコーナーにて物色する。口径が合っていないと使えないから、良く吟味しなければならない。
「こ、こんにちは〜。賞味期限切れのサンドイッチを貰いに来ました〜」
「こ、今回はカップ麺があると嬉しいです」
その時、別の客が来たらしい。声からして若い……それこそ高校生くらいの年齢だろうか?
「……賞味期限が切れた商品は販売出来ません。タダで差し上げる事も出来ません」
客では無く物乞いだった。
「そして、先月分のツケがまだでしょう? その件で店長が凄くすごーく怒っていましたよ? 窃盗罪で訴えたら勝てますよ」
更にはツケを貯めている様だ。
「だから、こうして店長が居ないタイミングを狙って来たんです‼︎ 小言は良いから恵んでください‼︎ もうお金が無いんです‼︎」
「ぐすん……。毎回毎回、すみません」
「泣いても喚いてもダメなものはダメです。ちゃんと真面目に働いて最低でもツケの分を支払ってください」
「嫌です‼︎ 秋は……働かずに一生怠けて生活したいんです‼︎ 働くなんて以ての外です‼︎」
「次、やったら私もクビにすると言われていますので」
魂の叫びを普通に聞き流す店員。クレーマーと言うには明らかに性質が悪い貧困者に対しても普通に切り捨てる姿勢は見事だ。
「廣瀬さん……。遂に最後のコンビニにまでもが私達を見捨ててしまいました……」
「なんで⁉︎ 可愛い美少女のお願いを聞いてあげるのはヒミコさんの業界ではご褒美と言っていたじゃないですか⁉︎」
「廣瀬さんもヒミコもRランクの可愛さですもん。SR以上にはどうしようも無い壁があります」
「……何、アレ?」
「働く意志を持たずに遊び呆けた奴の末路だよ」
レジ前での寸劇を見てリッカは簡潔にそう締め括った。
「セリーナさんや。コイツの会計頼む」
「あ、はい〜。少々お待ちくださいね〜」
門前払いを食らって途方に暮れている2人を尻目にリッカはレジに向かって会計を済ませる。サンドイッチ2袋に散弾銃で使う弾丸2種を購入する。
「あ、あの〜……折角ですし、奢ってくれませんか〜?」
「働け、ニート」
その様子を横から見ていた少女の片割れは図々しい態度でそう懇願するがバッサリ叩き切った。ある意味、当たり前だった。
「酷い‼︎ こんなに可愛い美少女が必死に哀願しているのに普通に突っ撥ねるなんて‼︎ 人として終わっています‼︎ このヒトデナシ‼︎」
「働きもしない癖に物乞いをするホームレスみたいな人が言う言葉じゃありませんよ?」
会計精算を終わらせた時、店員のセリーナがトドメの台詞を突き付ける。この場において彼女達を味方する者は1人も居ない。
「うう、世界とはこんなにも残酷なんですかぁ……もっと、もっと秋達に優しくしてくれても良いじゃないですかぁ?」
「泣いてもダメです」
「セリーナさんや、店長が帰って来たみたいだな。丁度、歩いて来る様子が見えた」
「ピィ⁉︎ひ、廣瀬さん、逃げましょう‼︎ 見つかったら、日の光が当たらない地下施設での強制労働が待ってます……‼︎ 死ぬまで働かされ続けるんです……‼︎」
「あ、秋はこんな事で諦めたりはしませんから‼︎ 絶対に不労所得で生活する事を‼︎」
何とも言えない台詞を残して2人の少女は脱兎の如く逃げて行った。
「……リッカさん、ありがとうございます。彼女達、シツコイ上に図々しいので対処に苦労していました」
「何、副社長もあの2人に関してはブラックリスト入りさせているからな。それより予想よりも店長と言う言葉が効いた様だ」
無論、店長帰還は嘘である。嘘であっても本人達は見つかればタダでは済まない事を理解していた様である。
「ほれ、サンドイッチ」
「あ、ありがと。遠目から見ていたけどあの子達って知っているの?」
「あの2人はああ見えても管理局公認のカウンターだ。……と言っても管理局公認なんだがその補助金だけで食い繋ぐ頼りないニート集団」
サンドイッチを口に含みながら先程の者達の事を話す。
「何処の世界でもニートに対して世間の目は冷たいわね〜」
「他にも社員でもないのに、社内パーティに潜り込んでタダ飯に与ろうとして副社長に半殺しにされていたな」
「……半殺して」
「アレはキレてもしゃーないって。さて、買出しも済んだから帰るとするかね」
ゴミをゴミ箱に捨てる。要件が終わったので後は帰るだけである。
「え?もう帰るの?」
「だから、言っただろ。買出し程度、面白いモノは無いぞと」
「た、確かにそうだけど〜……こう言う夜間外出なんてした事無かったから」
「……要するに朝家出て夕方には帰るってサイクルかい」
「普通はそれが当たり前なんだけどね」
『廣瀬 秋』
コスト2のディフェンダー。
『働いたら負け』と言う信念を持つニートカウンター。
究極スキル使用で体力が回復出来る。
働かずに食べていきたいと言う並々ならぬ執念を持っており、その信念は筋金入りだが、運が悪いのか大事件の渦中に知らずの内に飛び込んで行ってしまっている。
不労所得やタダ飯で生活したいとは言っているが管理局公認のカウンターの補助金だけを頼りに生活しており、仕事もしないので何時も金欠かつ何とも頼りない存在になってしまった。
『クロボシ・ヒミコ』
コスト3のサポーター。
ひたすらに敵の攻撃速度や移動速度を下げまくるサポーター。
廣瀬秋とは同じチームアップの為に何時も一緒に登場する。つまり、散々な目に遭うと言う事。カウンターではあるのだが、侵食体を前にすると震えて何も出来ない為、傭兵業界に進出は無理な模様。
それ故にネガティブな思考であり、死を目前にした様な弱音を吐いてしまっている。
コンビニ『アポカリプス』に廣瀬秋と一緒に賞味期限切れの食糧を貰おう(然も店長が居ないタイミングで)とするも門前払いを食らって餓死を覚悟した事もある。
セリーナ・クルー
『チューインガムからミサイルまで』が標榜(⁉︎)のコンビニ『アポカリプス』の見習いアルバイト。
ゲーム内ショップである補給所や課金パックの販売を担当するNPCキャラ。補給所等で彼女をタッチすれば反応を返してくれるが、色んな意味で不安になる台詞しか言わないし、色々察せられるが社会生活能力がかなり低く、店長から存在すら忘れられていた事もあった。
そして、何故クビにならないのか不思議に思われている。
コンビニとは言うが如何なる要望に応えるとの事で多種多様の銃火器を取り揃えるわ、剰え期間限定品と称して『核燃料』すら普通に売っている事が判明する。海の家として出張した時には潜水艦すらも調達出来ると断言した程。
実際のゲーム内での補給所のラインナップでは各種消耗品が販売されているのだが、確率は低いが『採用契約書(ガチャ)』や『機密採用契約書(覚醒ガチャ)』が売られている時もある。
オペレーターとしてはストライカー、サポーター、レンジャーの順で出撃させると、敵全体のバフを無効化かつバフを獲得出来ない状態にする。