インフィニット・カウンターズ   作:夢現図書館

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 ロクでもない世界では自分の身を守るのが精一杯だ。だが、それだけでは長生きは出来ない。仮に戦闘訓練をしても早々に息絶える者が後を絶たない。
 だからこそなのか、カウンターの中には師弟関係を築いている事もある。


好奇心の対価

 

 

 

 

 

 

 

「……要するに朝家出て夕方には帰るってサイクルかい」

 

「普通はそれが当たり前なんだけどね」

 

「残念ながら、此方の世界じゃ普通の生活をしているのは常人くらいなもんでね。カウンターの場合だと普通ってのは」

 

 風を切る音が聞こえた直後、リッカは腕を動かした。右手の人差し指と中指の間には小さな短剣の様なモノが挟まっていた。形状をよく見れば金剛杵を連想させる形状をしている。

 

「え⁉︎」

 

 小さい剣と雖も凶器は凶器。然も位置的に頭を狙っていたと思われる。突然の光景に薫子は目を見開いた。IS学園でも多種多様の武器が扱われ尚且つ使われている。だが、それはISに搭乗してシールドバリアがある事が前提だ。そうではない場合だと部活動くらい。目の前の様な明らかに『殺す』様な光景は初めてだ。

 

「こんなの、雑魚にしか当たらん」

 

 リッカは腕を振るい摘んだソレを投げ捨てる。投げ捨てられた金剛杵は道路に打ち捨てられ転がった後、爆発した。

 

「ッ⁉︎」

 

 爆発物と言うオマケ付き。規模から考えてもし迎撃に失敗しては巻き添えを喰らっても可笑しく無かった。

 

「頭を狙い過ぎるな。ノエル」

 

「ぴぇ⁉︎ ば、バレていたんですかぁ⁉︎」

 

 投擲されて来た方角に視線を向けると物陰から黒い上着を羽織った灰色髪の少女が現れる。幼い顔立ちも相俟って10代前半に思える。

 

「ふぇぇえ。通算、48回目の失敗ですぅ……」

 

「他に手が無いか考えてみな。上手く行くかも知れんぞ」

 

「うへぇ、流石リッカ様。厳しい……」

 

「え、えーと。リッカ君、この子は誰?」

 

「コイツか? 俺の後輩でフェンリル小隊の新人隊員のノエルだ。見ての通りガキンチョだよ」

 

「が、ガキンチョじゃないですっ‼︎ いつの日かはヒルデ小隊長様やシリュウ様、そしてミナ先輩に認めて貰うまで誠意努力中ですッ‼︎」

 

 元気である。

 

「……でも、さっき爆発物を投げ付けて来たわよね……?」

 

「あ、それはリッカ様に弟子入りしたいんですっ‼︎ どんな手段でも構わないから一撃でも当てれたら弟子にしてやるって‼︎」

 

 一撃と言うか、アレだと下手をすれば爆死もあり得る。何とも物騒な世界だ。その条件を出すリッカもリッカだが。

 

「ねぇ、こっちでは何時もこうなの?」

 

「人によるとだけ言わせて貰う。で、俺よりもパイセン、副社長とかに頼んでくれや。一層の事、師匠でも良いだろうに」

 

「全部、断られましたッ‼︎」

 

 その光景はアリアリと思い浮かべれる。パイセンは面倒くさがる。副社長は多忙、……師匠に至っては弟子を取る事にそろそろウンザリしてそう。……今まで取ってきた弟子は問題ある奴ばっかりだったから。

 

「それでも私はフェンリル流を学びたいんですッ‼︎ もうリッカ様しか残っていないんですッ‼︎ フェンリル小隊に所属していた人は‼︎ だから見捨てないで下さい〜ッ‼︎」

 

——フェンリル流て。

 

 ノエルは涙目になって泣き付くと見せ掛けて懐に隠していたヴァジュラの刃で逆袈裟斬り気味に振るうもあっさり躱される。

 

「ええ⁉︎ コレならイケると思ったのに⁉︎」

 

「……態度が分かり易いから、躱すのは簡単だ。で、そもそも何で本社で油を売ってんだ? フェンリル小隊は仕事で出払ってるって聞いていたんだが」

 

「ミナ先輩達との初任務、楽しみ過ぎて寝れずに寝坊して置いていかれちゃいましたッ‼︎」

 

 残念な子だ。

 

「何この残念な子」

 

「心で思っても口に出してやるな」

 

「貴方にだけは言われたくない台詞ねぇ……」

 

「はッ⁉︎ 其方の方は初めましてですよね⁉︎ もしかして、まだお会いした事の無かった他の社員の方ですかッ⁉︎」

 

 ノエルは目に星を浮かべている。リッカは何かと本社に滞在する時間が短く外回りが多い為に交友関係が広いと聞いていた。自分の知らない人が居ても不思議とは思わない。

 

「いや、コイツは完全部外者の民間人だ。ウチの社員でも無けりゃ管理局公認、非公認のカウンターでも無い。正真正銘の表の一般人だ」

 

「其処まで強調しなくても……。えーと、私は黛 薫子よ」

 

「じゃあ、リッカさんの新しいナンパ相手なんですか?」

 

 いきなり爆弾を投げつけられた。

 

「違ぇよ。成り行きで着いてきたタダの命知らずだ」

 

「命知らずて……。今更そんな感じに思えて来たから否定出来ない」

 

「ほぇ? シリュウ様の話だと、リッカ様って複数のタスクフォースのリーダーの方と懇意にしてるって聞きましたよ。然も迫られてるとか‼︎」

 

「パイセン……。また余計なホラ話を純粋無垢な後輩に刷り込みやがって……‼︎」

 

「その話は気になるわね〜。2人目の男性操縦者の女性関係について、その辺詳しく……」

 

「黛。俺が手を下さずとも、お前の存在が世界から抹消されるぞ……。その辺で止めろ」

 

「え? じょ、冗談よね……?」

 

「……ついでに言うなら、今この瞬間にも『視られている』。グラウンド・ワンに到着した時点からな」

 

「「えっ⁉︎」」

 

 その言葉に薫子と何故かノエルも驚いている。

 

「もしかして、言葉の一句一句も聞かれているの?」

 

「だろうな。その程度、朝飯前だ」

 

——頼むから御しといてくれよ。……無理か、無理だな。

 

「ひぇぇえ‼︎ 常に監視されているんですかぁ? 変な事を言ったら消されちゃうんですかぁ⁉︎」

 

「街全体を監視って……。もしかして、その『管理局』が……?」

 

「管理局も其処まで暇じゃねぇよ。監視衛星を寄越さずともバレバレだと言われちまったからな。つーか、俺に監視衛星を用意する馬鹿は居ないとよ」

 

「さ、流石リッカ様……。存在其の物が目立っているんですね……‼︎ ノエルもいつの日か、そんな有名人になりたいです」

 

「なんで誇らしげなのよ。絶対マイナスの意味だし、呆れられているでしょ絶対」

 

「呆れている所悪いが、監視されているのはお前だぞ。黛」

 

「ええ⁉︎ わ、私なの⁉︎」

 

「状況的にそうだろ。仮にも男性操縦者の近くにポッと出の如く現れた『委員会』側の人間。

 裏表問わず権謀術数が犇き合う『管理局』側からしては要注意対象として位置付けられているのは当然だ。ハニトラ要員か或いはスパイ目的か……その様な推測を持って対応するのは至極、自然だろう。

 ……それ以外を考えるのならば、お前がIS学園の生徒だと既にバレていた。だから、動向を探っているって所だろうな」

 

 グラウンド・ワンは所謂、銃社会だ。

 侵食体の存在から民間人でも簡単に銃が手に入るし、貧富の差から凶悪犯罪も起こりやすい。挙げ句の果てに警察よりも傭兵の方が信用性が上だと言う始末だ。コレでもグラウンド・ワンがかなーりマシで、他の『管理局』管轄地域だともっとヤバい場所が幾つかある。

 

「……もしかして、私……かなり危ない橋を渡ってる?」

 

「危ないと言うよりも橋と言うには語弊がある渡り方をしているな。ボロッボロで今にも千切れちまいそうな綱を使った綱渡りと言う意味で」

 

「其処まで、言い切っちゃう⁉︎」

 

「……来る前に言ったよな?『後でどうなっても知らんからな』、と」

 

 確かに言った。それを聞き流す程、薫子も愚かでは無い。

 

「……こう言うパターンになるなんて予想出来ないわよ⁉︎ 長居するのは……危険、よね?」

 

「まぁ、そうだな。少なくとも奴さんからすれば生かしておく理由は無いだろうな」

 

「今すぐにIS学園に帰りましょう‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





『ノエル』

 コスト3のスナイパー。
 貫通効果を持つ通常攻撃で敵を牽制するスナイパー……スナイパー?
 まぁ、スナイパーと名乗るポジションは割とデタラメな面子が多いのでちゃんとした飛び道具を使っているだけマシ。

 特殊スキルで爆発するヴァジュラと同時に事前に投げ付けたヴァジュラを起爆しスタンさせる。また、戦闘不能時にも残されたヴァジュラが起爆する。

 フェンリル小隊の新人隊員。感情の起伏が分かりやすい子犬っぽい印象を受ける少女。フェンリル小隊への憧れから入隊した。
 カウンターの中では数少ない両親が存命だとはっきりと判明している数少ない人物(それ故に面接の時に『帰れ』と言われた)。
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