すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第十四話 もう泣かないで

 既に街のあらゆる建物が嘘のように切断されて崩壊していく。そんな風景を私は時計塔の上から眺めていた。

 

「始まったわね」

 

 作戦は既に始まってるというのにもかかわらず、私は顔の熱が止まらなかった。シドの部屋で起きたことに、起こした行動に羞恥心を感じていた。だからといって、その行動に後悔をしているわけではない。

 これで彼が自身を傷つけるようなことをしないでくれるといいけれど。

 

「それにしても、デルタ……あの子はいつもやり過ぎよ」

 

 熱を誤魔化すかのようにデルタに対して溜め息を吐き、首を振る。

 やってしまったことは仕方ない。

 私は改めて王都全体を見渡す。予定通りと言ったところか、王都全体はデルタのおかげで慌ただしく動き始めていた。

 

「そろそろ私も動こうかしら」

 

* * *

 

 先程から石レンガで囲まれた部屋に外からと思われる何か強い振動が響いていた。外で何か争いごとが起きているのだろうと簡単に予想がついた。

 

「うるさくて寝てられないわよね」

 

 隣の牢で拘束されている化け物にアレクシアは話しかけた。化け物も顔を上げ、アレクシアの方に顔を向ける。

 

「けど、起きていたほうがいいわ。きっと楽しいから……」

 

 アレクシアがそう言い切ると同時に部屋のドアが乱暴に開く。

 ドアを開けた白衣の男は焦っていた。

 

「畜生! 畜生! や、奴らが、奴らが来やがった! お、おしまいだ! み、皆殺しだっ!!」

「騎士団は無用な殺生をしないわ」

「騎士団なんてどうでもいい! や、奴らは、奴らは皆殺しだ、皆殺しなんだぁ!!」

 

 男の言葉にアレクシアは眉をひそめる。

 騎士団ではないのだとしたら一体何者だろうか。

 

「試作品は作った。これなら出来損ないでも役に立つ」

 

 そう言って白衣の男は針の付いた装置を化け物に押し付ける。

 その針の装置の中に赤い液体、血のようなものが見えた。おそらく誘拐されてから今の今まで盗られ続けたアレクシアの血だろうということはアレクシア本人も想像できた。

 

「やめておいたほうがいいわ。なんだか嫌な予感がするの」

 

 白衣の男はアレクシアの言葉を無視し、化け物に針を指してアレクシアの血を流し込む。

 

「さ、さぁ、見せてみろ、ディアボロスの片鱗をぉ!!」

「わー楽しみね」

 

 すると、化物の体が突然膨張した。筋肉が見る見る発達し、骨格すら成長して伸びてゆく。元々太く長かった右腕は、さらに凶悪に禍々しく肥大し、人の脚ほどもある長い爪が生えていた。左腕は変わらず何かを抱き締めるかのように胴に癒着している。

 そして、白衣の男は死んだ。あの巨大化した化け物に殺されたのだ。

 

「だから言ったのに……」

 

 とはいえ、アレクシア自身も恐怖を隠せずにいた。この状況で次に殺されるのはアレクシアしかいないと考えたからだった。

 それに加え、アレクシアは現在ベットに拘束されたままで逃げることすらできない絶望的な状況。

 

「さて……」

 

 化け物とアレクシアの目があう。その次の瞬間、アレクシアに向かって化け物の右腕が振られた。だが、その右腕はアレクシアを避けてそのまま彼女を拘束する鎖だけを破壊した。

 

「まさか、助けてくれたの……!?」

 

 化け物は苦しそうに雄叫びをあげる。雄叫びをあげている最中に化け物の腕が天井に当たってしまい部屋が崩落し始めた。

 

「っ……!?」

 

 アレクシアはすぐに体を動かそうとするが、数日寝たきりだったせいだろうか、体が思うように動かなかった。

 アレクシアは今度こそ死を覚悟し、目を瞑る。だが、いくら待ってもその時は訪れなかった。

 

「……?」

 

 アレクシアはゆっくりと目を開ける。

 そこには化け物の姿はなく、目の前には先程までアレクシアが寝ていたベットが落石によって押し潰されていた。

 

「大丈夫か?」

 

 いつの間にか、アレクシアの横に黒いロングコートを身に纏った男が立っていた。

 落石の瞬間、男が物凄い速さで部屋の中に入りアレクシアを抱きかかえて脱出。この男はアレクシアのことを落石から守ってくれたのだ。

 アレクシアは直感でこの男が救ってくれたのだろうと感じ取った。

 

「ありがとう。あなたは……?」

 

 アレクシアは無遠慮にも自分の命を救ってくれた男に対して礼を言う。

 

「俺も大丈夫だ……いや、この場合は名前を聞いてるのか」

「聞いてるつもりはなかったのだけれど……まぁ、いいわ。私はアレクシア・ミドガル。あなたの名前は?」

 

 アレクシアは改めて男に名前を聞いた。

 

「俺の名はステラだ」

 

* * *

 

「それが、苦しめるだけだと何故分からない」

 

 気がついた時には私は飛び出していた。

 

「何者だ」

「アルファ」

 

 私に問いを投げかけた彼女は、誰もが褒め称え、天才、鬼才、今や王国最強とまで言われているこの国の王女、アイリス・ミドガルだった。

 彼らの言うネームド? おそらく、広く知られているような人物のことを指すのだろう。

 そんな人物に陰に潜む立場の者として顔を見せてしまうのはあまり褒められたものではない。

 けれど、醜い姿に変えられ酷く傷つけられてきたこの悪魔憑きの少女のことを思うと、自然と体が動いていた。

 飛び出してしまったものはしょうがない。

 それでも最低限のことはしようと私は極力顔を見せないようにしていた。

 

「待て、一体なんのつもりだ。騎士団に敵対するのであれば容赦は……」

「敵対……?」

 

 何を言っているのだろうか、この女は。

 私は少し怒りを覚えつつも誤魔化すように……いや、心の底からアイリスに対して嘲笑う。

 

「何がおかしい」

「敵対……これほど滑稽な言葉があるかしら。何も知らない愚者が敵対などとおこがましい」

「なんだと……!」

「観客は観客らしく舞台を眺めていればいい。我らシャドウガーデンの邪魔をするな」

 

 そう言って私は上空に飛翔する。

 先程から私達に対して、攻撃の意志を見せていた子の攻撃を避けるため。そして、そんな彼女に一太刀浴びせるため。

 

「かわいそうに。痛いでしょう。もう苦しむことはない、悲しむことはない。」

 

 今の私ではここまでの規模の悪魔憑きを治療し、命を救ってあげることはできない。だけど、この苦しみから開放してあげることはできる。

 

「だから、もう泣かないで」

 

 私は青白い魔力を剣に込め、落下しながら剣を振るった。魔力を開放し、青白い魔力の光が悪魔憑きの少女のことを包む。

 悪魔憑きに掛かってしまったことによって作られた腐った肉はどんどん剥がれていき、少女はかつての姿を取り戻した。と、同時に彼女のそばに金色に光るペンダントのような物が落ちる。

 

「そうだったのね」

 

 かつて、シドとキラのお姉さんのクレアが攫われた時に地下施設で相対した男。男の名はオルバ。シドがオルバを倒した際にこれと同じペンダントを持ち帰ってきたことがある。

 救えなくって、遅くなってしまってごめんなさい。

 

「願わくば……来世では安らかな生を」

 

 私はミリアとオルバに謝罪をし、二人が来世で一緒に暮らせることを願い、この場を去った。辺りには魔力を放出した際に発生した白い煙が充満していた。




久しぶりの投稿かもしれない……
最近はタイトルを変えたりとか、文章の細かい所を変えたりといろいろ変えていたのは気づきましたか?
てことで、今回はアルファとアレクシアのお話です。
基本的にヒロイン組が物語の視点になるにはシドに対する一定の好意のラインを越えてからなることができます。シドとキラは別です。
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