現在、薄暗い地下道で白銀の髪を持つ女性、アレクシアと並んで歩いていた。いや、水が流れているから下水道だろうか?
いやいや、そんなことはどうでもいいんだよ。どうしてこうなった……
元々、俺はシドに言われるがままに付いて行っただけなんだが、肝心のシドが迷子になってどっか行ってるのはおかしな話だと思う。一応魔力感知で探してみた感じ、この地下道のどこかにはいるみたいなのでひとまずは安心。いったん合流する方向でいこう。
俺とアレクシアは終始無言でこの地下道を歩く。ちなみに、助けに入る際に轢き殺した教団の人間からアレクシアは剣を奪っていた。というわけで、今のアレクシアは剣を持っている。
怪しい格好してるからって助けてくれた人のことをいきなり斬りかかったりはしないと思うけど……しないよね?
「勝手に逃げられては困るな」
「あ、あなた、どうしてここに……」
突然知らない男の声とアレクシアの声が聞こえたため、思考を中断し顔を上げる。そこにいたのはディアボロス教団次期ラウンズ第12席ゼノン・グリフィだった。
「なぜって、ここは私の施設だからだよ。私があの男に投資した。それだけさ」
「よかった。私、あなたのこと頭おかしいんじゃないかってずっと思ってたのよ。やっぱりおかしかったのね」
「そうかな。どうでもいいさ。君の血があれば」
「やはり、お前達の狙いはアレクシアの血か……」
やっと喋れた。この二人、俺のことずっと無視して喋るんだもん。シドに聞いた通りの犬猿の仲だなぁ。
「おや、他にもいたのか。すまないね。気づかなかったよ」
嘘つけ。先程から俺に向かって殺気を放っているのがバレバレだぞ。
「自己紹介をしておくべきかな? 僕は……」
「いや、自己紹介は大丈夫だ。ディアボロス教団の次期ラウンズ第12席ゼノン・グリフィさん」
ゼノンの俺への警戒心がいっそう高まった。
「ほう、君が近頃教団に噛み付いてくる野良犬か」
「正確には俺達……だけどな」
俺は親切にゼノンの言葉を訂正する。
「さぁ、そろそろ本題に戻ろうか。お前達はアレクシアの血を狙っていたわけだが、なぜアイリス王女にしなかった? お前達としてもそちらが本命のはずだろう」
「簡単な話さ。流石にあの王女を相手するのはこちらとしても面倒だからね。アレクシアで我慢することにしたのさ」
教団は何十年も表舞台に現れることなく陰で暗躍してきた。アイリス王女を狙いにするのは教団の名が明るみに出るかもしれないリスクを考えたためか、それとも臆病なだけか……
その時、重々しい金属音が聞こえた。
音の方を見るとアレクシアがブチギレてゼノンに剣を振るっていた。
「あぁ、失礼。君は姉と比べられるのが嫌いだったね」
「ぶっ殺す」
おい、落ち着け。淑女がそんな言葉を使うんじゃない。アレクシアは淑女ってタイプの人間じゃないだろうけど。
アレクシアは何度も何度もゼノンに斬りかかる。だが、ゼノンはその一つ一つの攻撃を寸前で弾き返すばかり、反撃をすることはしなかった。
お互いの剣が衝突するたびに空中で何度も火花を散らした。
「いつもよりはいい。しかし、所詮は凡人の剣だ」
「だったら見てなさい! 私が本当に凡人かどうかぁ!!」
アレクシアは剣に鮮やかな黄色の魔力を込め、剣を振るった。その剣は先程までのような凡人の剣ではなく、また別の何かだった。
アレクシアが振るった剣はゼノンの右腕に傷をつける。攻撃の時、ゼノンは初めて笑顔を崩したのを俺は見逃さなかった。
「姉君を真似た剛剣か。驚いた、こんなものを君が隠しているとは思わなかったよ」
「私を侮ったこと後悔させてあげるわ」
しかし、ゼノンはアレクシアの言葉に笑った。
「では私も、次期ラウンズの剣を見せるとしよう」
ゼノンは剣を構える。
アレクシアは空気が変わったことに気づきながらももう一度魔力を込め、ゼノンに攻撃を打ち込んだ。
次の瞬間、アレクシアの右腕からは剣が消えており、代わりにアレクシアの顔の横にゼノンの剣があった。
ゼノンは剣を引きながら、アレクシアの顔を左手で殴る。アレクシアは体ごと吹き飛ばされ、地下道の水の上に落ちた。
「君は姉のようにはなれない」
俺はアレクシアのそばに寄り、庇うようにゼノンに剣先を向ける。
「大丈夫か?」
俺はアレクシアに聞くが、顔を見るにアレクシアは絶望してどうしようもないというような顔をしていた。
「なぁ、アレクシア。俺の友人から聞いた、お前と同じように凡人の剣を持つ男の話を聞いてくれるか?」
そこまで言うとアレクシアは顔を上げる。
ゼノンもいるけど……まぁ、聞かれてもいいか。どうせこいつは後で死ぬことになるわけだし……
* * *
それはある日のこと。普段はないはずの中学校があった日のこと。
その日の授業は道徳、自分の将来の夢を書いてみようってやつ。
「将来の夢ねぇ~」
俺には今のところ将来の夢と言えるようなものがない。だから、書けって言われても書きようにないから困るのだ。
なのにさぁ……なんで二人一組なんだよ!?
俺は小さくため息を吐く……
「なんでため息してるの?」
小さくため息を吐いたはずなのに気づかれてしまった。
「え、えっと……」
「影野実」
「あ、実君ね。僕は夜野流星」
「よろしく」
「よ、よろしく」
俺はコミュ障なため、中学校が始まってから結構経ってるっていうのにもかかわらず、いまだに気楽に話せるような相手がいない。そのためか、クラスでは浮いており会話もろくにしたことがない。だからクラスの人間とまともに話すのも今回が初めてなのだ。
はぁ……
「それでなんでため息吐いてたの?」
「あ、聞くのね」
「そりゃあ、気になるし」
まぁ秘密にするようなことでもないため、話すことにした。
「今日の授業、将来の夢について書けって言われたでしょ?」
「うん」
「その肝心の将来の夢が今のところ何も思いつかないんだよねって話」
「へぇ~、どうでもいいね」
なんだこいつ。人に聞いておきながら興味なさそうな顔しやがって……あ、はい。面白みのない話したの俺でした。すいません。
だけど、態度が気に食わないのも事実なのでそんなお前はどうなんだと聞いてみることにした。
「実君は将来の夢とかあるの?」
「僕? 言ったって、誰にも理解できないよ」
本当に気に食わない態度だな。
「あのさ、理解できるできないをお前が勝手に決めないでくれるか? そういうの腹立つんだよ。それにさ、少なくとも実君には夢があるってことだろ? いいじゃん。俺はそんな大した夢なんて持ったことないから説得力皆無かもしれないけど、誰にも理解できないような夢なんていくらでもあるよ。それでも貫いて夢の為に努力するなんてかっこいいじゃん」
これは俺の心からの言葉だった。どんな夢でも持たないよりは持ってる方が絶対にいいのだ。
それでも流石に言いすぎたと思い、恐る恐る実の顔を覗く。実の顔は驚きを隠せないというような表情をしていた。
思えば、波瀾万丈の人生を過ごすことが決定してしまったのはこの時からだった。
この後もすぐには実の夢は聞き出すことはできなかった。それでも実に懐かれてしまったようで、いろいろなスポーツだったり、修行と称した山籠りだったりを一緒に付き合わされた。
そしてしばらく、割と信頼関係も構築できた頃、実の夢である陰の実力者の話を聞いた。
最初はそれこそ誰にも理解できないような夢だなと思った。実と初めて出会った時にこれを聞いてたら何言ってんだって心の中で少しは思ったかもしれない。けど、もう既に俺は実がその夢のためにどれだけ努力してきたのかを知ってしまった。実は人の何倍も努力してきて、そのうえ、まだ努力の歩みを止めない。
俺には夢がなかった。だからこそ、そんな努力する凡才の生き様の虜になってしまった。
* * *
「それって……」
「……いいか、アレクシア。凡人の剣は何の才も持たぬ凡人が持つ剣ってだけの話ではない」
「どういうこと?」
「歩みを止めることなく、努力を重ね、やがて究極の領域に達する凡才が持つ剣………それが凡人の剣だ」
話をちょうど終えたその時。
ゼノンの背後の方からコツ、コツと音が響いた。誰かが歩いてくるようだった。
やっと来たか……
その後もコツ、コツという音はこちらの方に近づき、そして、止まった。
「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者……」
そこには漆黒のロングコートを纏った迷子のシャドウちゃんがいた。
そういえば、自分最近カゲマス始めたんですけど初心者ギルドで良ければ入ってくれる人いたりしませんかね? いたら感想と一緒にIDをコメントしてくれるととても嬉しいです! コメントくれた人のIDは承諾しておきますので!
ギルドID 01HMQ0BZK6B8BCEV2ZTSNB6CCQ
てことで、今回は前々から書こうと思ってたシドとキラの日本での絡みを一部書きました。
次回!! ゼノン死す!! デュエルスタンバイ!!
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