「なぁ、今日学園サボってゲーセンでも行かねぇか?」
「僕もそうしたいところだけど、サボったらもっと酷いことになる気がするからパス。第一、この世界にゲーセンなんてないでしょ」
……そうでした。
「はぁ……どうしたものか……」
「最悪、アルファ達に養ってもらおう………」
部下の女の子達に養ってもらう主人ってどうなんだよ。
俺達は今、学園の自分達の教室にいた。本当は学園なんて休んでどこか遠くに逃げたいのだが、状況が分かっていない状況で休むわけにもいかないため、朝は大人しく登校していた。
ちなみにヒョロとジャガは今日休みらしい。アレクシアに罰ゲームをリークしたツケが今になってやってきたのだろうか。シドに聞いた時は悪そうな顔をしていた。
それにしても教室が騒がしいな。まだ授業が始まっていないとはいえ、いつもの何倍……
「おい、シド逃げるぞ」
「え、なんで?」
「いいから!」
俺は教室が騒がしい原因と思われるとんでもないものを見てしまった。
急いで逃げないと酷い目に遭う……いや、もう既に遅かったみたいだ………
「「なんで、逃げるのかしら?」」
俺とシドは声の方に恐る恐る目線だけを向けた。
見つかるのはっや。さっき教室に入ってきたばっかだよね? てか、なんで一緒にいるんだよ……
* * *
「二人ともそんなに仲良かったの?」
「そんなわけないでしょ。誰がこんな泥棒猫と」
「ちょっと!? 義姉様!?」
「誰が義姉様よ!?」
僕とキラ……そして、クレア姉さんとアレクシアは学園の屋上に移動していた。
いつ知り合ったんだろう。
「で、用件は何?」
キラがぶっきらぼうに言う。
時折、キラがこっちを睨んでくるんだけど、どうしたんだろう。ここにいるはずのないアルファの独特な冷たい視線も感じるし……GPS的には、アルファはアレクサンドリアにいるはずなんだけどなぁ………
「用件なら分かってるんじゃないのかしら? シャドウ、ステラ」
「……なんのこと?」
「もういいわよ、シド。彼女、大体のことは知ってるから」
「え、姉さんが教えたのか?」
それから姉さんは僕達に事件が起きてから今日までにあったことを話してくれた。
アレクシアは僕達が去った後、寮の姉さんの部屋に直接乗り込んだそうだ。事件の顛末を聞いた姉さんは案の定ブチギレてたそうなんだけど、アレクシアが命を救ってくれたと説明してくれたおかげで僕達が痛い目を見ることはなくなった。
助かったよ。ありがとう、アレクシア。
そこからアレクシアはシャドウガーデンのことを建前なんてなしで直接聞いてきたらしい。姉さんからしてみれば秘密を隠す約束があるとはいえ、そもそも正体を知っているアレクシアにわざわざ隠す必要はなく、知っていることを包み隠さず話したそうだ。
ちなみに、姉さんはディアボロス教団関連のことを詳しくは知らない。ただ、敵対をしているということだけは伝えてある。
「ねえ、ポチ?」
「何?」
「私は別にこのことを公表したりする気はないわ」
「は? 俺達……シドは街にあんな大穴を開けたんだぞ? 王族がそんな見て見ぬ振りなんかしていいのかよ」
なんで言い直したの? 街を破壊したのは僕でも、指示したのはキラだよね?
「いいのよ。あれに関しては私を助けるためにしてくれたことなんだし、なによりあなた達は人がいないことを確認してから攻撃を行なった。実際、犠牲者は一人も出なかった。まぁ、ゼノン派の騎士団員ほとんどはあなた達の言う教団の人間なんだろうから、そこは割り切るわ。ただ……二つだけお願いがあるの」
「お願い?」
「そう」
アレクシアは目を細めて青い空を見上げた。
「前に私の剣が好きって言ってくれたでしょ。遅くなったけど、ありがとう」
「いいよ、別に」
「あなたのおかげでようやく自分の剣が好きになれたの。そして、あなたの剣が私の目標になった」
直接褒め言葉を言われるのはまだ慣れない。
少し照れてしまい、僕はアレクシアから目を逸らしてしまった。
「ん……まぁでも、好きになれたんならよかったんじゃない」
「えぇ、だからね? 一つ目のお願いであなたには私に剣の指導をしてもらいたいの」
「まぁ、それぐらいだったら」
「そう、よかったわ」
アレクシアは微笑んだ。
その笑顔をするのは多少なりとも控えてほしい。少しドキッとしてしまう。
「それで二つ目は?」
「これまで付き合っているふりをしてきたわけだけど、今回の事件でゼノンが死んでくれたから、もしあなたさえよければもう少しだけこの関係を続けてみないかなって……」
「「は!?」」
アレクシアは両手の指を絡め、頬は赤く火照っており、もじもじした様子で話す。
僕は話されたことを必死に頭の中で紐解いていき、最終的に出した結論は……
「ん……? どういうこと?」
「はぁ……シド、お前さぁ……」
「お姉ちゃん、心配になってきた……シドのことを誰にも渡す気はないけど………」
え、二人とも分かったの?僕、いまだに分からないんだけど。
「そ、その……だから……あなたが好きなのよ/// 前みたいな恋人のふりじゃなくて、ちゃんとお付き合いしたいと思ってるの……///」
「え……」
僕はまだ人の好意には疎いらしい。今回の一件で少しは成長できたと思ったんだけど。
「どうかしら///」
「ア、アレクシ……」
「駄目よ……ぜ、絶対に……彼は………渡さないわ………」
「「ア、アルファ!?」」
何故かここにいるはずのないアルファに僕はあすなろ抱きをされていた。アルファは少し涙声の上擦った声で喋る。
「何よ……」
「なんでここにいるんだよ。お前、アレクサンドリアにいるはずだろ……まさかだとは思うが……」
「そのまさかよ」
なんてこった。僕達が七陰に仕掛けたGPSはとっくのとうにバレていたようだ。
「ねえ、シド? あなた、まさかだとは思うけど、この王女の告白受けるつもりじゃないでしょうね」
そんな悲しそうな顔をしないでよ。僕の思い描く陰の実力者は最後にはハッピーエンドにするって決めてるんだから。それに………それに今更女性が増えても、既に複数人そういう関係と言っても過言ではないんだからもう諦めてる。人間のゴミなんていうツッコミを受け付ける気はないけど。
「はぁ……アレクシア」
「は、はい」
「僕には大切な人達がたくさんいる。姉さんもそうだし、僕が作ったシャドウガーデンの子達。僕のことを慕ってくれているだけの子もいるとは思うけど、僕に愛情を注いでくれる子達もいる。僕がこの子達の将来を握ってると言っても過言ではない。だから僕はこの子達の愛情をできる限り受け止めてるつもり」
「「シド……」」
アルファとクレアが僕の名前を呟く。
「でも、今気づいたんだ。僕にとってはアレクシアもその大切な人達の一人なんだって。だから、こんな最低な浮気野郎と思われても仕方ない僕なんかでよければ……」
「お前……」
キラから……アレクシアと僕を除く人達から蔑む視線を浴びせられる。
その目は演技なんだよね!? そうなんだよね!? 知らない人からしてみれば最低な奴に見えると思うけど、関係者からしてみればいろいろ最適解だと思うんだけど……
「ふふっ……あなたが最低なのなんて今更じゃない?」
「そうかもね」
「それにそんなこと言われるのなんて想定してたわよ。シャドウガーデンのメンバーがあなた達以外みんな女性だと聞いた時からね。想定外だったのは私の告白を受けてくれることよ。だから……その………お、お願いします///」
そして、僕とアレクシアは晴れて本物の恋人関係となった。キラに二度と女たらしの才能があるなんて言えない。
ちなみに、いつかの部屋で着ていた制服の格好をしていたアルファは同じ制服を着ていたベータに連れてかれた。こんなところにいつまでもいられたら、制服を着ているとはいえいつバレるか分かったもんじゃない。アルファもベータも少し泣きそうな顔してたし、早めにシャドウガーデンのみんなにも話をしに行かないといけないなとは思う。
別にアレクシアと恋人関係になったからとはいえ、アルファ達を蔑ろにするつもりはない。というより、この関係を簡単に言ってしまえば僕には彼女が複数人いるって言ってるようなものだ。彼女達には悪いが僕のことを愛してくれてる以上、みんな仲良くしてもらいたい。僕は僕を愛してくれている人達を全員幸せにする覚悟を持って今を生きている。こんなの日本でやってしまえば即アウトだが、ここは異世界。まだどうにでもなる。
肝心の姉さんはこの告白に最初こそは否定的だったものの、最終的に諦めたのか、それとも僕の全員平等に愛情を注ぐとも取れる発言に満足したのか。そこは分からないがアレクシアに『クレア義姉さんと呼びなさい』とだけ告げてその場を去った。
「シド……成長したな………俺はもうどうしたらいいのか分からないよ」
「何が?」
「……なんでもない。じゃあな。今日ぐらい二人で学校サボってデートにでも行ってこれば?」
それに続いて、キラもこの場を去る。今の僕にはキラの言ってることがよく分からなかった。
「てか、僕はまだしもアレクシアがサボるわけにはいかないでしょ」
「わ、私はいいわよ?」
「え」
* * *
あの後、アレクシアと僕もあの場を離れて街の中を歩いていた。理由はいたって単純、キラに言われた通り授業をサボって二人でデートしていたからだった。
前みたいに街を適当にぶらついてアイスを食べる。それだけでも、本当の恋人関係となった今では雰囲気がまるで違っていた。
アレクシアから前と同じようにアイスを口に押し付けられる。前回は圧のようなものを感じたが、今回はそういうのではなく純粋なあーんというやつ。折角なので一口だけもらって残りはアレクシアが食べた。
アイスを食べてるアレクシアの方を向くと頬は赤く火照っており、少し照れているようだった。前にやってきた時はまったくと言ってもいいほど可愛げがなかったのに。
そんなこんなでデートも終盤に差し掛かり、駅に向かって歩いている最中。ピンク髪の少女とぶつかった。少女が持っていた積み上がった本が何冊も地面に転がる。
「ん、おっと……大丈夫?」
「あなたねぇ、前ぐらいちゃんと見て歩きなさいよ。大丈夫ですか?」
「……は、はい」
今思えば、この時が新たな事件の始まりだったのだろうと、そう思った。
しばらく投稿が遅れてすいませんでした。学校が忙しいので不定期投稿にはなります。本当に申し訳ない(メタルマンの畜生博士)
てことで、今回はアレクシアとシドの回でした。死体のない殺人事件は物語の都合上起こしようがなかったので、諦めてアルファ出演です。原作にアルファの嫉妬を明確に描写した回ってあまりないなとも思ったので自分見たさで物語に組み込みました。
次回からは第三章! お楽しみに!!
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