すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第一章 ディアボロス教団編
第二話 悪魔憑き


 この世界で初めて魔力を目にしてから10年程経った。

 魔力は本当に凄いと思う。この世界での魔力は人間の限界を軽く超えた動きができる。あれだけシドが魔力魔力とうるさくなるわけだ。

 あ、言い忘れていたがシドは今世での影野実の名前でシド・カゲノー。ちなみに俺の今世での名前はキラ・カゲノー。

 察しのいい人であればお気づきであろう。そう、俺とシドは兄弟で双子になってしまった。正直最悪だが、いや本当にマジで最悪だが、あのイかれた奴を止めれるのも俺ぐらいだろうから諦めている。

 

「キラ!! よそ見してるんじゃないわよ!!」

 

 黄昏ていたところを横から思いっきり剣で打ってきた。俺はそれを剣の峰で受け止める。剣を打ってきたこの女性はクレア・カゲノー。俺とシドの姉に当たる人物だ。

 俺達の産まれたこのカゲノー家は、魔剣士と呼ばれる魔力で身体を強化して戦う騎士を代々輩出する家系なため、最近はよく家の訓練として戦うことがある。

 訓練……あ、そうだった。今は手合わせをしてる最中だった。

 

「ごめん、お姉ちゃん。ぼーっとしてた」

 

 俺はクレアの剣を思いっきり弾いて体勢を崩し、首元まで剣先を持っていったところで寸止めする。

 

「………っ!? 参ったわ。キラは本当に強いわね」

「ありがとう」

「次はシド!! やるわよ!」

 

 シドの夢は陰の実力者。陰ながら物語に介入し、実力を見せつけていくような存在。それを叶えるためには実際の実力を隠していかないといけない。シドはそれを俺にも強要してきた。『陰の実力者プレイに付き合ってよ』と。まぁ、別にそれぐらいはよかったんだ。

 シドに実力を隠すように強要されてから2,3年程経ったある日、クレアが俺とシドを連れて森に盗賊退治に出かけたことがあった。まだ子供でしっかりとした実力を付けられていないクレアはすぐに盗賊に敗北してしまった。その時は俺とシドがクレアが気絶した後に盗賊達を一掃したのだが、後日、クレアが俺の部屋まで来て、本当はあの時意識があったことを告白してきた。

 俺とシドの本当の実力がバレてしまったのだ。俺のことはどうでもいいが、道連れにされたとはいえ仮にも親友の夢を潰すのは夢見が悪いということで、シドの実力だけは黙っておいてもらえるように頑張って説得した。それ以来、俺は実力を隠さずに、シドはモブAとして実力を隠し続けることになったのだった。

 

「ふぇぇ、お姉ちゃん強いよぉ……」

 

 ……何も知らないとはいえ、実力がバレてる相手に渾身のモブ演技を演じてる姿を見るのもそろそろ恥ずかしくなってきたな。

 

* * *

 

 そんな日々を過ごしている俺達だったが、日中は他にも貴族としての勉強なんかもあって自由な時間は少ない。

 そのため、俺とシドの秘密の修行はいつも夜遅くに行なっている。だが、夜遅くとなるとどうしても睡眠時間が削られてしまう。前世だったら授業中に余裕で寝てたりしたのだが、今世ではそうはいかない。どうしようかとしばらく悩んでいるとシドが魔力による超回復と瞑想を組み合わせた独自の睡眠法を教えてくれた。

 やはり、前世の時点から魔力を追い続けた奴だけのことはある。魔力の操作だったり、細かいことはこいつに聞くのが一番だ。信用はできないが……

 そんなこんなで俺とシドは二人とも超ショートスリーパー化していた。

 そういえば、最近盗賊が廃村に住み着いたと噂を耳にした。そのため、今日の修行は年に一度の一大イベントってぐらいなかなか出会えない盗賊を狩れる日となった。

 俺達は少し修行をした後にその噂の廃村がある方向に歩きはじめた。

 

「おい、シド。今日は盗賊狩りなんだよな?」

「ん? そうだよ」

「俺の分は残しておけよ?」

「分かってるって!」

「お前、そう言って前回全部掻っ攫っていったじゃねえか!?」

「まあまあ、今回は大丈夫だよ。スライムボディスーツの実践投入日だしね」

 

 この世界の魔力は一般的に身体や武器を強化するために使う。だが魔力を扱うとき、そこにはどうしてもロスが産まれてしまう。

 例えば普通の鉄の剣に魔力を100流しても実際には10程度しか伝わらない。そうなると、約9割の魔力が無駄になってしまう。魔力を流しやすいミスリルの剣でも100流して50しか伝わらないぐらいロスが多くなってしまうのだ。

 そこでシドはスライムに注目した。スライムは魔力を使って形を変え、動き回る魔法生物。調べたところスライムの魔力伝導率は驚きの99%もあったらしい。そこまであればほぼ100%みたいなもんだ。

 しかも液体なので自由に形態を変えられる。

 そうしてシドはスライムゼリーの研究を進めた。研究が進み、ついに完成したのが先程話題にも出たスライムボディスーツである。

 鎧と違って軽く音も鳴らず快適で、むしろ身体の動きを補助してくれる。

 

「まあ、それならいいんだが」

 

 俺はもう半ば諦めていた。どうせこの後は残りの一人になるまで一掃されて俺の獲物が一匹だけなるとかそういうオチだ。

 

「あとさ、スライムボディスーツっていう名前は少し長くね? スライムスーツでよくないか」

「それいいね、採用」

 

* * *

 

 本当にそういうオチだったのは一周回って受け入れるしかないのだろうか。

 最後の一人もあんまり楽しめなかったし。てか、スライムスーツの性能試せたのシドだけじゃねえか。俺も試したかったよ、ちくしょう!

 

「ちょっとそこで何変なことしてんの? キラ、一回こっち来て」

 

 ほとんどの獲物を奪っておいて悪気もなしに俺のことを呼びにきたシド。

 こいつ、一回殴っていいか?

 

「なんだよ?」

「これ、どう思う?」

 

 盗賊が住み着いてた廃村の中には檻があった。その中には無惨にも身体の隅々まで腐りかけている肉塊が転がっていた。

 

「悪魔憑きか」

 

 檻の中にあった肉塊は悪魔憑きと呼ばれるものだった。

 なぜ盗賊がこんなものをとか考えることは山ほどあるが、それよりも気になる点が一つ。

 この波長は……

 

「「魔力暴走……」」

 

 俺とシドは昔、魔力暴走を意図的に起こして痛い目を見たことがある。コツさえ掴めば肉体に魔力を馴染ませてさらなるパワーアップが望めそうだったのだが、流石に危険すぎたので断念した。

 

「ねぇ、キラ? この肉塊使えると思わない?」

 

 俺はシドの悪巧みを考えてそうな顔を見た瞬間、また嫌な予感がした。

 こいつはこの悪魔憑きを使って実験をし、またろくでもないことをしでかすのだろうと思った。だけど、僕もシドと同じで魔力暴走を克服する必要があるのは事実だった。

 

「はぁ……やるからには治してやれよ? 実験台止まりで終わらせるのは許さんからな」

「分かってるって♪」

 

 そう言ってシドは悪魔憑きに手を伸ばし、魔力を流し始めた。

 

 

 やっと分かった。親にペットを飼いたいとねだるような子供を持った親の気持ちが。




最近、執筆のモチベがありすぎてこのシリーズはしばらく1日に一作品出せると思います。
てことで、今回は盗賊が住み着いた廃村で悪魔憑きを見つけたお話でした。
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