すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第二十一話 カレーの隠し味

 夜の王都を三つの影が駆けていた。

 シャドウガーデンを名を騙る愚者共は背後を気にしながら、ある建物の屋上で足を止める。

 俺は足を止めたうちの一人を背後から剣でぶった斬った。男の体は真っ二つに裂けるのを見て、そして最後に首を切り落とす。

 

「おい………まさかだとは思うが、逃げ切れるとでも思っていたのか?」

「ッ!?」

 

 もう一人の男はこの状況を瞬時に判断し、体を反転させ駆け出そうとする。が、その脚が動くことはなかった。

 俺が男の脚を切り落としたからだ。

 男は這いずりながらも必死に俺から逃げようとする。こんな状況でも相変わらず無口なまま。やはりこいつらはチルドレン3rdか。

 ディアボロス教団は孤児や貧しい平民の子からわずかでも魔力適性が見つかれば攫い、専門の施設で育てているらしい。そこでは厳しい訓練と洗脳教育、そして薬剤投与が繰り返され、生きて施設を卒業する者は一割に満たないといわれている。チルドレン3rdとは、その中でも出来損ないと呼ばれ、捨て駒として使い捨てられる存在だ。精神が壊れているため情報が漏れることもなく、しかし戦闘力はそこらの騎士を遥かにしのぐ。2ndになるとその精神は安定し、数少ない1stになると世界有数の実力を持つ。

 とにかくこの状況は俺にとってもラッキーだった。

 

「お見事です、ステラ様。これほど早く確保なされるとは」

 

 男が這いずっていく方に立つ建物の屋上にミニワンピースを着ている上品な女性が立っていた。

 

「ニュー」

「はい、ステラ様のニューです」

 

 いつから君は俺のものになったんだよ……

 

「あとはお任せください。情報を引き出します」

「いや、いい。こいつは3rdだ。よって、こいつは俺が処理する」

「……分かりました」

 

 ニューの成長した実力を見てみたい気持ちもなくはないが、今はこの怒りを発散しなくてはならない。ここでどうにかしないと……我慢できなくて、シドの獲物まで取ってしまいそうになるから………

 俺は大して進んでない這いずる男に剣先を地面に擦り付けながら、近づく。

 

 

「さぁ……シヌカクゴハデキタカ?」

 

 

* * *

 

「う〜ん!! すっきりした」

 

 腕を天高く伸ばして体をほぐす。

 ちなみに、あの現場の後処理はニューに任せた。面倒なことを任せてしまったし、ニューからしてみれば仕事なんだろうけど、どこかでお礼しないといけないなと思う。

 そんなことを考えているとお腹からぐぅーと間抜けな音が聞こえてきた。

 

「腹減ったなぁ。そういえば夜飯も食べてないし……あ、ガンマから貰ったチョコ今食べるか」

 

 そう言って、ガンマから貰った紙袋の中身を漁る。そこから俺宛のチョコを取り出し包装紙を破いていくと、チョコと一緒に手紙のような物が入っていた。

 なんだこれと思いつつもチョコを片手で口に運び、もう片方の手で手紙を開いて読む。

 

『キラ様へ』

 

『チョコはお召し上がりになられたでしょうか?』

『お口に合えば幸いです』

 

『突然にはなりますが』

『本日の夜、ご予定がなければでよいのですが』

『よければ一緒に過ごしませんか?』

 

『私の部屋の位置を記しておきます』

 

『ガンマより』

 

 

 

 ……………え?

 

 

 

 手紙を読みながら食べたガンマのチョコは、とても甘かった。

 

* * *

 

 コンコン

 

「ガーンマ♪」

「キラ様!? どうして窓から……」

 

 めんどくさかったのもあるけど、ガンマからのあんなお誘いメッセージを見たら、嬉しくなってそのまま急いで飛んできちゃったんだよな。そんな俺は重度なシスコンなわけで……いや、ガンマは妹じゃないけど………

 

「ま、そんな細かいことは気にしない気にしない。それよりチョコ美味しかったよ!」

「それはよかったです」

「それでさ、晩御飯って食べた?」

「いえ、まだですが……」

「それならチョコのお礼にカレーを作ろうか。昔からみんな好きだったよね、俺のカレー。今日はガンマ以外に誰かいるの?」

 

 シャドウガーデンのメンバーが俺やシド、そして七陰のみの時。七陰のみんなは俺やシドから得た陰の叡智で廃村に日本住宅そっくりの家を建ててしまった。

 共同生活ということで料理も当番制だったのだが、たまに俺が料理を作ることがあった。その時に決まって出すのはカレー。昔からアルファの作るシチューは大好評だったが、それと同じぐらい俺の作るカレーも大好評だった。

 

「いいんですか!? しばらくは王都にいるのは私だけです」

「そっか。まぁ、カレーは一晩寝かせたのも美味しいから二人で食べる分には問題ないかな。というか、他の子達用にも多めに作っておくか」

 

 晩御飯にカレーを作ることにした俺はガンマに案内してもらい、食堂のキッチンまでやって来た。

 

「じゃあ、作っていくか。ガンマは野菜を洗ってくれ、俺は具材を切る」

「分かりました!」

 

 そこからは共同作業。

 皮を剥き洗ってもらった野菜を食べやすい大きさに切る。肉は少し大きめのブロック状にして切り、鍋を用意してからその中に具材を入れて弱火から中火で煮る。あくを取りつつ、15分ほど煮て具材が柔らかくなったことを確認する。確認したらカレールウを入れて煮込むのだが……

 

「ガンマ、チョコを取ってくれないか」

「チョコですか? どうぞ。ですが、何に使うのですか?」

「まぁ見てなって」

 

 そう言ってカレールウと一緒に受け取ったチョコを鍋に入れ、再び弱火で時々かき混ぜながら、とろみがつくまで10分ほど煮込む。

 俺はスプーンで出来上がったカレーを一口分掬い、自分の口の中に運ぶ。

 

「うん、いいね。ガンマも食べてみ」

 

 俺はもう一度スプーンでカレーを一口分掬い、ガンマの口元まで持っていく。ガンマは俺が差し出したスプーンを見て少し頬を赤らめながらも、パクッといった。

 

「ん!! 美味しいです! いつもの味!」

「そうなんだよ。みんなには内緒にしてたんだけど、昔から俺のカレーには隠し味でチョコを入ってたんだ」

「まさか、あんな昔から既にチョコを開発していたとは!? 流石、キラ様です!」

 

 俺はチョコをカカオ豆から作ったことが日本の時に何度かあった。この世界でカカオに似た植物を見つけた時、チョコを作れるんじゃないかと思ってやってみたら、まさかの再現度に自分で作っておきながら驚愕した覚えがある。

 まぁ、チョコの作り方もカカオの話もシドから抽象的にしか聞いてないはずなのにここまで再現できる君達の方が凄いんだけどね。

 

 そんなこんなで俺とガンマはカレーを美味しくいただき、お互い体を流してきてからガンマの部屋に戻った。

 寝る準備を終えてから部屋の明かりを消し、お互い背を向けるようにしてベットの中に入る。

 

「キラ様、起きていますか?」

「起きてるよ、どうしたの?」

 

 ベットに入ってからしばらくして、ガンマから声をかけられた。

 

「今日、キラ様を手紙で呼び出したのは言いたいことがあったからなんです」

「言いたいこと?」

「はい。キラ様……好きです………」

「え、あぁ。俺も好きだぞ」

「そういうのじゃないんです!……キラ様が私のことを昔から妹のように思っていたことも、本当は自分は愛されてないんじゃないかと悩んでいることもみんな知っています」

 

 え、なんで知ってるの? いや、確かに悩んではいるけど……この子達が好きなのはステラであってキラのことはどうでもいいんじゃないかとか、こんなシドの二の次みたいな奴いらないんじゃないかとか、毎晩考えては枕を涙で濡らしているけれども。

 

「だから、私はもう一度伝えます。キラ様が好きです。七陰全員、主様への愛と同じぐらい愛しています。キラ様がいくらご自身のことを卑下されても、その度に私達は愛を伝えます」

「ガンマ……」

「いつかに聞いたキラ様のお言葉、『シドのやつ、昔から人の好意に鈍感すぎるんだよなぁ……はぁ、いい加減気づいてあげろよ。そしたらアルファ達も楽になるのにな』と仰っておりましたのを覚えておられますでしょうか?」

 

 あー、昔に一回あったシド抜きで行なわれたシャドウガーデンの会議の時の話か。

 

「私達から言わせてもらうと、キラ様も大概鈍感です。本日の主様の訪問、私は本当に感動いたしました。あの鈍感な主様が人の好意というものを完全に理解したうえで、その好意を優しく受け止め、私達を主様の愛で包んでくださったこと。長年、七陰の皆が待ち侘びていたことでした。だから、次はキラ様の番です」

 

 その時。

 俺の後ろの方でガサゴソとガンマが体を動かした。そのガンマの方を見るように俺も寝返りを打つ。すると、お互いの目が合った。

 

「俺?」

「はい」

「ほ、本当に俺でいいのか?」

「はい」

「本当に俺なんかでいいのか?」

「俺なんかなんて言わないでください。キラ様だからいいのです」

「ガ……ン……マ………」

「キラ様!? 涙が出て、どうしましょう!?」

 

 涙目で慌てふためくガンマを見て、俺は思わず笑ってしまった。

 

「ふはっ、ガンマも泣いてるよ」

「あ、あれ? ふふっ、本当ですね」

 

 ガンマの笑顔を見たら我慢できなくなってしまった。俺は右手を頭の方に、左手を腰の方に持っていき、ガンマのことを抱き寄せた。

 

「ガンマ……愛してる。ああ……いいね………これ。純粋に愛を伝えるってこんなにもいいものなんだ……」

「そうですね。両思いだとさらに幸せになります……キラ様、愛してます」

 

 その後もしばらくの間、ずっと愛を伝え合いながら抱き合っていた。お互いの意識が夢の世界に落ちるまでの間……ずっと………

 

* * *

 

「ん……キラ様?」

 

 昨日の夜、抱き合いながら寝ていたはずのキラ様の姿がなかった。

 寝ぼけた目を擦りながら部屋全体を見回すと、部屋の机の上に何か置いてあるのが見えた。ベットから体を起こして机の方に近づく。そこには皿の上に置かれたサンドイッチと手紙のような物が置いてあった。

 サンドイッチを頬張る前に手紙を読む。

 

『ガンマへ』

 

『俺はもう学園に行ってくるね』

『机の上に朝食置いておいたから、食べておいてね』

 

『それと、昨日はありがとう。』

『ガンマのお陰で俺のわだかまりも消えたよ』

『俺は本当は愛されてたんだって思うと随分気が楽になった』

『今度からはもう少し素直になってみる』

『とにかく、本当にありがとう』

 

『キラより』

 

『追記』

『実は、昔からチョコ以外にもカレーに隠し味を入れてたんだ。何かわかる?』

『答えは裏面に書いてあるよ』

 

 え、なんでしょう。昨日手伝った時もチョコ以外に目立った食材は入れてませんでしたし……

 いくら考えても分からずじまいだった私は裏面に書かれた答えを見ることにした。手紙を裏返しにして書かれた文字を見る。

 

『それはね、愛情だよ』

 

 顔からボン!と火が出てしまいそうになる。私は悶え苦しむように床に膝をつけてしゃがんだ。

 

 

 キラ様のばか………///

 

 




今回は前回も言った通り、キラとガンマのイチャイチャ回となりました。次の話はシドとアレクシアのイチャイチャ回になります!
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