すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第二十二話 ラッキーおうにょ

「へぇ、ここがシドの部屋なのね。なんというか……凄いわね………」

 

 僕は今、アレクシアを自分の部屋に連れ込んでいた。

 というのもアレクシアに帰りたくないと言われたあの後、頬を赤く染めたアレクシアは僕が有無を言う前に無理矢理手を取って強引に歩きはじめてしまった。

 道中、『それならアレクシアの部屋でもいいんじゃないかな』とか言ってみたけど、アレクシア曰く部屋に帰るとアイリス王女に今回の件を報告しないといけないみたいで、そうなると必然的に僕も同席することになってしまう。そんな状況は僕からも願い下げなので、結局僕の部屋に泊まるってことに落ち着いた。

 そのため、朝から手入れをしていた陰の実力者コレクションを全部見られてしまったのだがそこはもう諦めよう。第一、コレクションの半数はアレクシア持ちなわけだし……

 

「ごめん、今片付けるよ」

「手伝うわ」

 

 アレクシアの手も借り、僕の部屋はすぐに元の質素な部屋に戻った。

 部屋の片付けを終え、ベットに二人で腰を掛ける。その時、アレクシアのお腹からぐうぅ〜と間抜けな音が聞こえてきた。

 

「ご、ごめんなさい///」

「いいよ、別に。でも困ったなあ。こんな時間だから寮の食堂は開いてないし」

 

 僕は何か食べれるものはないかと思い、部屋の中を隅々まで探した。すると、机の上にこんな質素な部屋とは似ても似つかない紙袋が……

 あ、そういえばガンマからチョコを貰ったんだった。

 

「チョコならあるけど食べる?」

「いいの? でもチョコレートなんてよく手に入ったわね。高かったんじゃない?」

「そんなことはないよ。タダで手に入ったし」

「タダ? どうして?」

「まぁ、そこは食べながらにでも。何か飲む? 紅茶やコーヒーもあるよ」

「それならコーヒーをいただこうかしら」

 

 紙袋からチョコを取り出し、僕用のものとアレクシア用のもので分ける。それから二人分のコーヒーを淹れ、僕の分にだけミルクを入れてカフェオレにしてから机の上に持っていく。そうしたら再びベットの上に腰を掛け、まずはカフェオレから口の中へと流し込む。

 うん、美味い。

 

「あなたのコーヒー、一体どれだけミルクを入れたのよ。コーヒーに対する冒涜じゃない」

「そういうことを言うのは飲んでからにしてほしいな」

 

 そう言って僕はアレクシアの口元にカフェオレの入ったマグカップを近づけた。アレクシアは僕の顔とカフェオレの入ったマグカップを交互に何度も見る。やがて、アレクシアは諦めたかのように息を吐き、頬を赤らめながらマグカップに口をつけた。

 

「ん! 意外といけるわね!!」

「でしょ?」

「でも、私はやっぱりブラックの方が好きだわ」

 

 それならしょうがない。好みは人それぞれだからね。そういえば、キラもブラック派だったっけ。

 

「それで、どうしてこんな美味しいチョコがタダで手に入ったのよ?」

「あー、それね。アレクシアだから教えるけど、実はミツゴシ商会はシャドウガーデンのフロント企業なんだ。今食べてるチョコなんかも元を辿れば、僕やキラが授けた知識から出来上がったものだしね」

 

 チョコを自分の顔元まで持っていき、くるくると指の腹で転がす。喋り終えたところでチョコを口の中に投げ入れた。

 

「え!? そうだったのね」

 

 アレクシアは自身が持つチョコを見据える。

 

「まぁ、ここまで大企業になっていたのは今日知ったけど……」

「なんで組織のトップが内情を把握できていないのよ……」

 

 しょうがないでしょ。アルファ達が優秀すぎて僕達が気づいた頃にはもう既になるようになってたんだよ。

 

「あら、チョコレート食べ終わっちゃったわね。もう寝ましょうか」

 

 そう言ってアレクシアは寝る準備を始めた。

 ちなみにシャワーは門限を過ぎてるので浴びることができない。そのため、濡れたタオルで軽く体を拭く程度に留まった。その後、部屋着として僕のTシャツとショートパンツをアレクシアに貸し、アレクシアの格好は典型的な彼シャツ姿となった。

 これはよくない……

 

「なにしてるのよ。早くベットに入ってきなさいよ」

 

 アレクシアは先にベットの奥の方に入り片手で毛布を持ち上げ、もう片方の手でベットの空いているゾーンを叩く。

 傍から見たら高圧的な王女様が庶民のベットを奪って占領しているようにしか見えないが……てかその通りなのだが、これが素直になれない彼女なりの甘え方なのだ。

 このおうにょ、誘ってるのかな……

 僕は当分、少なくともディアボロス教団……その核心をつくまではアルファ達にも、アレクシアにも手を出すつもりはない。

 そうは言ってもこんな状況で寝れるわけもなく、明かりを消した部屋は再び静寂に包まれた。

 

* * *

 

「シド……」

 

 部屋の明かりを消してからしばらく経った後、僕は後ろからアレクシアにあすなろ抱きをされていた。

 あれ? 僕達、背中合わせで寝ていたはずだよね? いつこっち向いたの?

 

「どうしたの、アレクシア」

「て……」

「手?」

 

 アレクシアに言われて初めて気づいた。僕の掌には四箇所ほど爪が食い込んだような傷があった。おそらく、アレクシアを助けに入った時に自分で付けた傷だろう。あの時は怒りに身を任せていろいろとやらかした記憶がある。

 

「ありがとう……私のために怒ってくれて………ありがとう……大す……き………」

 

 アレクシアはそれだけ言うと今度こそ眠りについた。アレクシアの寝息が僕の耳元すぐそばで聞こえる。

 

 

 これ……寝れるかなぁ………///?

 

 

* * *

 

「シドくーん」

「シドの奴、なにやってんだ。このままじゃ遅刻しちまうぞ」

「そうですね。キラ君はもう行ってるみたいですし。あ、ヒョロ君。シド君の部屋空いてますよ。もう入っちゃいましょう」

「そうだな。シド、入るぞー。起きろ〜……はっ!?」

「どしたんですか、ヒョロ君……えっ!?」

「なによ……うるさいわね………え………」

 

 ど、どういう状況なのかしら……昨日は確か、シドの部屋に泊まってそのまま………なんでここにこの二人がいるのかしら………

 私はこの状況に戸惑いつつも、シドを起こすために布団の中でシドの体を揺さぶった。

 

「シ、シド……起きて」

「なに……やっと寝れたんだから、もう少し寝かせて………あっ……」

 

 シドと他二名、確かヒョロ君とジャガ君だったかしら……とにかく、三人の目が合う。

 その瞬間、先程まで流れていた気まずい空気はこの二人の負けともとれる捨て台詞によって、どこかに吹き飛んでいった。

 

「シドの馬鹿やろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!」

「言いふらしてやりますうううぅぅぅぅう!! あと遅刻しても知りませんからねえええぇぇぇぇえ!!!!」

 

 ………え、遅刻?

 昨日、部屋を片付けた際に設置しなおした時計に目を運ぶ。

 

「あ、もうこんな時間じゃない!?」

「え? ああ……もういいんじゃないかな。遅刻しても……」

「いいわけないじゃない! ただでさえ昨日するべきだった報告引き伸ばしてるんだから、これ以上遅れたら終わりよ!」

 

 急いで昨日着ていた制服を取り出し、シドから貸してもらったショートパンツを脱いで白色のスカートを……あれ? 私、今なにやってるのかしら。

 上は昨日シドから貸してもらった白色のシンプルなシャツ、下は今下着しか身につけていない。そして、この部屋はシドの部屋。

 私はベットの方に恐る恐る顔を向けた。シドは寝巻きに使っていたシャツを腕をクロスさせ、頭にくぐらせていた。下はまだ寝巻きを履いており、シャツは脱いでいるも同然なので上は肌を露出させている。

 あら、ポチのくせにいい腹筋してるわね……じゃなくて! てか、この状況……傍から見たらそういうことするように見えなくも………じゃなくてぇ!!

 

「いつまでそうしてるの? 早く着替えなよ、遅刻しちゃうよ」

 

 シドは私が不純なことを考えている間に着替え諸々の準備をすべて終わらせていた。そんなシドはなぜかばつが悪そうにしている。

 

「それと……」

「それと?」

「それと目のやり場に困るから、先に寮の門の前で待ってるね///」

 

 それだけ言うとシドは剣と鞄を持って、駆け足で部屋から出ていった。

 

 

 シドのえっち………///

 

 

* * *

 

「「はぁ!? 列車がない!?」」

 

 私達はあの後すぐに合流。最寄りの駅まで走ってきたのだけれど、列車がさっきので朝は終わりだと車掌さんに告げられてしまった。いつもであればこんな早く終わることはないのだけれど、今日は運悪く列車の点検日だったらしく、学園方向に向かう列車はさっきので終わり。次はお昼頃かららしいのでこのままでは遅刻が確定してしまう。

 

「どうしようかしら……」

「うーん……はぁ、しょうがない。見えない速度で走れば問題ないよね……アレクシア、乗って」

「え?」

 

 何を考えたのか、シドは私に背中を見せた状態で軽くしゃがみ込む。おんぶするから乗ってってことなんだろうけれど………

 このままでは遅刻してしまうし、シドが何か思いついたのであればそれに乗るべきなのも分かってはいる。だけれど……その………恥ずかしくて………

 

「………乗らないんだったら、お姫様抱っこするけど」

「乗らせてもらいます///!」

 

 お姫様抱っこをしてもらう勇気は私にはまだないわよ/// いや、私王女なんだけどね!?

 とにかく私は思考を振り払うかのようにシドの背中に抱きつく。そこからシドは私のふくらはぎの方に手を回してから立ち上がった。

 

「で、どうするのよ///」

「今から本気で走る。一応魔力で体全体を覆うから怪我とかしないと思うけど、着いた時に気絶されてたら面倒だから、ちゃんと意識保っててね?」

「えっ? き、きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?!?」

 

 さっきまでいたはずの駅は既に遠くの彼方。シドの魔力で覆われているから大して風の影響を受けない。そのため、ころころ変わる街並みや情景はしっかりと私の目に焼き付いていた。

 

「す、凄い……綺麗………」

「でしょ?」

 

 風の影響を受けないから会話も普通にできるみたい。

 

「どう走ってるの、これ。いくら強くたってこんな速度で走るのは普通無理でしょ」

「簡単な話だよ。足にだけ魔力を集中的に込めて走る、これだけ。アレクシアも魔力操作が上手くなればこれぐらいできるようになるよ」

「ふーん、今度これも教えてね?」

「お安い御用だよ。っと、アレクシア着いたよ」

「もう着いたの!? 流石に早いわね」

 

 周りを見てみると学園の門から少し離れた雑木林の中に私達はいた。

 

「門から少し離れてるけど、見つかったら堪ったもんじゃないし」

「そうね」

 

 私達は少し駆け足になりながらも門へと歩いていく。雑木林を抜けると門とおそらく列車から降りてきたであろう学生達が見えた。遅刻しなかったことに安堵しつつ、門の方にゆっくりと歩いていく。と、ここで二種類の視線を浴びせられてることに気づいた。

 一つは好奇の視線、もう一つはお前達やったなと言わんばかりの不安を煽るような視線。好奇の視線はおそらく私達の同衾を見たあの二人が列車の中で言いふらしたことによって、浴びせられてるんだろうけど。不安を煽るような視線についてはそれが関係しているということ以外検討がつかない。

 

 やがて門を入るためだけに作られていた長い列は終わりを迎え、先程まで学生達のせいで見えなかった門の横に立っている人物が露わになった。

 

「げっ」

「『げっ』とはなんですか、アレクシア」

 

 門の横に立っていた人物は私の姉であるアイリス姉様だった。

 

「で、アレクシア。そ、その横の方は誰なんでしょうか?」

「前にも言ったでしょう。お付き合いしているシド・カゲノー君です」

「どうも」

「ど、どうも。ア、アレクシアは……そ、その……この方と同衾をしていたとある学生二人組から聞いているのですが、本当なのですか?」

「そうですが……何か問題でも?」

「問題ですよ! 不純です!」

「特に姉様が思っているようなことはしてないですよ。それに私だってもう子供じゃないんです。人の恋路にあれこれ言うのはやめてください」

 

 大体、姉様恋愛なんてしたことないでしょう。

 

「うっ……それならいいです。それと、昨日するはずだった報告はどうしたんですか?」

「それは今からです」

「そうですか。では、これからアレクシアの部屋でお話ししましょうか」

「え? 姉様の部屋ではないのですか?」

「それでもいいのですが、その……アレクシアは着替える必要があるかと思いまして………」

 

 そう言われて私は自身の服装を改めて確認する。こう冷静に見ると無茶苦茶だった。

 まず制服には昨日剣で斬られた際にできた穴が盛大に空いており、穴の周りは血で滲んでいる。その中から見えるのは学校指定のシャツとは別の寝巻きなんかで使う軽い素材でできたシャツ。

 あ……上のシャツ着替えるの完全に忘れてた。

 

「その……すいません。私の部屋でお願いします………」

 

 好奇の視線で見られていた理由が同衾してたことだけじゃなかった……

 はぁ、穴はまだしもこの血のことどうやって誤魔化そう……

 

「はい。すいません、シド君。アレクシアを借りていきますね」

「あ、ちょっと待ってもらってもいいですか? 行く前にアレクシアに少し……」

「え、ええ、いいですよ。じゃあ、アレクシア。私は先に行ってますね」

「え、ああ、分かりました。私もすぐ行きます」

 

 姉様は私とシドを置いて先に行った。頭の中は誤魔化すことばかり考えていてろくに話も聞いていなかったけど、おそらく私の部屋で待ってるということだろう。

 

「アレクシア、少しだけ僕のスライム貸してあげる」

 

 そう言ってシドが渡してきたのは私が今来ている制服と瓜二つの……正確には穴の周りに血が滲んでいない制服だった。

 

「魔力を割としっかり練り込んだからしばらくは形になってるはずだけど、不安だから穴の部分をすぐ見せるだけ見せたら、あとはなんかのケースに入れて返しにきてね。それと着てる最中に変に魔力を練ったりしたらダメだからね。僕の魔力にアレクシアの魔力が干渉するようなことはまずないとは思うけど、念のために言っておかないと……制服としての形を保ってられなくなっちゃうから」

「分かったわ。とにかく、これを着て姉様を誤魔化せばいいのね」

「そうだね、穴は扉に引っ掛けちゃったとでも言っておけばいいよ」

「そうね。ありがとう」

「別に……」

 

 照れ隠しなのかプイっと学園の方に体を向け歩きはじめるシド。そんなシドを見て、私はまた昨日と同じように愛しいと思えてしょうがなかった。

 これが本当にあのシャドウなの? 可愛いわね……

 

「シド!」

「なに……」

 

 私に声をかけられ振り向いたシドの唇に……

 

「ん………」

「ん!?………ぷはぁ……ア、アレクシア………?」

「はぁはぁ……え? あ、ああ///」

 

 きっと今、私の顔は赤く染まり上がっているのだろう。どうにか言い訳できないかしら。衝動的にキスしちゃったなんて言えない。

 

「そ、その……」

「う、うん」

「その……大好き………よ///?」

 

 私はその場から逃げ出した。シドが言っていた足に集中的に魔力を込めて走るっていうのがこの時、無意識にできていた気がする。私は先に行っていたはずの姉様を追い抜かして、寮にある私の部屋まで物凄い勢いで駆け込んでいた。

 私は一体、何をしたんだろう………というか、さっきのキスのせいで昨日の夜に寝ぼけながら言ったことまで思い出してしまった。

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ///!!!!」




やっと学校関係の予定が終わった……とはいっても、4月からまたあるんですけどね。まぁ、それは置いといてこれから少しは小説の投稿ペースを上げられると思います。推しの子の方も息詰まっていたとはいえ、流石に進めないと待ってくれている人にも申し訳ないですし。
てことで、今回はシドとアレクシアのイチャイチャ回となっています。かなりラブコメ要素多めになっているので特にシドはキャラ崩壊しすぎていないか不安になる部分はありますが、人の気持ちに触れることに関しては初心者なのでこれぐらいで大丈夫かとも思います。どうですかね? 読んだらコメントいただけると嬉しいです!
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