すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第二十三話 純粋無垢な少女とのフラグが立ちました

「話は分かったわ」

 

 私はあの後、部屋にやってきたアイリス姉様に制服に付いていた血をシドから受け取った瓜二つの制服を使って上手く誤魔化し、昨日するべきだった報告を行なっていた。

 

「通り魔事件はシャドウガーデンではなく、それを騙る教団の仕業ということね」

「シャドウはそう言っていました」

「シャドウね……。結局、彼らの実態はつかめないまま」

 

 姉様は少し目を伏せて何かを考えている様子。

 

「私も先の王都同時襲撃事件でアルファと名乗るシャドウガーデンの一人と遭遇した」

 

 アルファ……いずれ、ちゃんと顔を合わせてお話をしないといけない人。

 

「他の報告からもシャドウガーデンという組織が極めて高い戦闘力を持っていることが分かりましたが、それ以上は何も……」

「シャドウはディアボロス教団と敵対していました」

「やはり手掛かりはそこか……アーティファクトの解読で何か掴めるかもしれない」

 

 姉様はため息を吐いた。

 私は姉様に一つだけ、前から聞いておきたかったことを聞くことにした。

 

「姉様……姉様の敵はシャドウガーデンとディアボロス教団、どちらですか?」

 

 姉様は変わらず真剣な表情のまま答えた。

 

「両方よ。この国で勝手なことは許さない」

「姉様……シャドウとは戦ってはいけません」

 

 私はソファに座っている私の横に置かれたシドのシャツをギュッと握りしめた。

 

「アレクシア、あなたまだそんなことを言っているの……」

「ね、姉様はシャドウを知らないからそんなことを言えるのです。あの、王都の夜を染めた一撃を姉様も見たはずです!」

「あれはアーティファクトの暴走ということで結論が出たはずよ」

「ふ、ふざけないでください! あれはシッ……!………いえ……そうですね。すいません。取り乱しました」

 

 口から出そうになった言葉をグッと堪える。そして怪しまれない程度に平静を装った。

 キラに聞いたシドの今までの努力をアーティファクトの暴走って決めつけられるのが、たとえ実の姉であろうと許せなかった。それゆえに余計なことを喋りそうになってしまったと少しは反省している。けれど納得はしていなかった。

 だから、私は決めた。シドのためにももっと強くなろうって。

 シドのことだから今後も上手く正体と実力を隠し続けるのだと思う。それなら私が強くなって、シドの代わりに私がシャドウの実力を、シドの努力を、彼らは敵ではないのだと世に示してみせる。そうしたら姉様がシドと戦うこともなくなる。

 そしてディアボロス教団の件が終わったら、こんなにも強い人が私の恋人なんだって自慢してみせる。

 

 覚悟しなさいよ、ポチ!!

 

* * *

 

 もう既に彼の考えるモブ道とは大きく踏み外した男は教室に入るや否や、教室の隅にいる俺の後ろに隠れていたモブ二人に鋭い眼光を浴びせた。多少は殺意も入ってると思う。

 

「よ、よう。朝は災難だったな。昼飯でも奢ってやるよ。米だけ」

「お、おはようございます。朝は大変でしたね。僕もお昼ご飯奢りますよ。水だけ」

「ああ、おはよう。君達は後で話があるから」

 

 隠れるのを諦めたヒョロとジャガはシドの方にごまをすりに行ったが見事に撃沈した。ひぃっと恐怖に満ちたような顔をする二人。

 あいつら、シドの奴に一体何されたんだよ。てか、その程度で許してもらえるわけないだろ。ジャガにいたってはなんだよ。水はセルフサービスだぞ。

 シドは膝から床に崩れ落ちる二人を見向きもせず、俺の隣に座った。

 

「よう、災難だった割にはいい顔してるな。一国の王女と同衾したモブ君?」

「そっちこそいいことあったみたいだね? ガンマとなにかあった?」

 

 お見通しってことか。

 

「ああ、こんな俺でも愛してくれるってそう言ってた」

「そう……なら、よかったんじゃない?」

「まぁな、俺も結局のところはお前と同じだったみたいだ」

「ふっ、今更気づいたの?」

 

 大した会話をせずともお互い言いたいことが分かる。やっぱり俺とお前は似たもの同士だ。顔や声、性格だったりとかそんな生半可なものじゃない。もっと深くて根本的な部分が俺達は似ていたんだ。

 思わず笑ってしまった。いつの間にか俺の笑いにつられてシドも笑っていた。

 

「なに笑ってるんですか二人とも!!」

「そうだぞ。気を引き締めろよ! 昼休みはチョコレートプレゼント大作戦だからな」

 

 すっかり調子を取り戻したヒョロとジャガは俺達のところまで戻ってきてそう言った。

 いや、お前らさっきまで絶望に満ち溢れてた顔してたじゃねえか。どんだけナンパするのを楽しみにしてたんだよ。

 

「チョコレートプレゼント大作戦ねぇ……一応、持ってきてはいるけど……」

 

 興奮気味のヒョロとジャガを無視して、シドの方にお前はどうなんだ?と目線を向ける。

 

「僕はパス。もうアレクシアに渡しちゃったし」

 

 だ、だよね〜……はぁ………

 

「まぁ、とにかく昼休みな。お前らもう席つけよ。そろそろ授業始まるぞ」

 

 誰に渡すべきかとか考えるのは昼休みの俺に任せることにした。

 

* * *

 

 そして、今は昼休み。も後半に突入した頃。

 今現在、俺はぼっちで図書館にいた。

 というのも、チョコを渡して女子生徒にモテようとかいうふざけた作戦を考えた馬鹿二人は見事に撃沈し、大柄の男に連れていかれた。骨だけで済むといいな。

 

「どうしようかな、これ」

 

 自身の手元には受け手を失ったチョコしかなく、そのチョコを見ると好きな女の子に告白ができない惨めな男子高校生の気分にさせられた。

 はぁ……帰るか………

 

「あ、あの……あなたがシドくんのご兄弟の人ですか?」

「え? あ、はい。そうですが、あなたは?」

 

 帰ろうと思った矢先、顔が見えないぐらいたくさんの本を積み上げて持った女子生徒が話してきた。

 その女子生徒は自己紹介をするためか、俺の隣の席に持っていたたくさんの本を置きはじめる。しばらくすると桃色の髪を持つとても可愛らしい顔が見えた。

 

「私はシェリー・バーネットです」

 

 バーネットっていうとルスラン副学園長の娘さんか。

 

「俺はキラ・カゲノーです。それで用件の方は?」

「あ、ごめんなさい。特に用はないんです。ただ、とてもシドくんに雰囲気が似ていて、シドくんからもご兄弟がいると伺っていましたから」

 

 あいつがねぇ……? ネームドと極力関わらない方向から身近な人間のまさかの正体が!?っていう方向にシフトチェンジでもしたのだろうか?

 

「お知り合いだったんですか。シドがお世話になっております。そうだ、よろしければこれをどうぞ」

「これは?」

「チョコです。元々は知り合いに付き合わされて女の子にあげるために買わされた代物なんです。だけど、チョコを渡すあてもなかったのでシドがお世話になっているお礼と思っていただければ」

「こんな高価な物を私に……いいんですか? 私、別に可愛くないですけど……」

「ん? シェリー先輩は可愛いじゃないですか」

「え、え///!?」

 

 突然、シェリー先輩の顔全体が彼女の桃色の髪に負けないぐらい赤く火照り始めた。

 ……いや、俺は別に鈍感主人公でもなんでもないから照れてるのは分かるけど、こんな照れる? 彼女の容姿からして割と言われ慣れてると思っていたのだけど、意外とシャイなのかな。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 彼女は俺の視線に耐えきられなくなったのか、赤くなった顔を隠すように床にへたり込んだ。

 

「だ、大丈夫です///」

「大丈夫ならいいんですけど……行くところがあるのでそろそろ行きますね。また何かあったらいつでも話に来てください。それじゃあ」

 

 何か、フラグのような何かが立ちそうだと感じとった俺はそれだけ言って、すぐさまその場から去った。

 駄目なタイプのフラグじゃないといいけど……

 

* * *

 

 夕陽の差し込む研究室に桃色の髪の可愛らしい少女がいた。

 彼女は先程から頬を赤く火照らせ、顔を手で覆いながらも指の隙間から机の上に置いてある箱の中に入ったチョコレートを注視するといった行動をずっと繰り返していた。

 

「シェリー、どうしたんだい?」

 

 そんな彼女を見かねたのか、白髪混じりの髪をオールバックにしている初老の男性、ルスラン副学園長が声をかけた。

 

「お義父様」

「そのチョコレートはどうしたんだい?」

「最近、知り合った男の子のご兄弟の方からいただいたんです。女の子に渡すために買わされたけど、あてがなかったからと言っていたので、流れで……」

「ほう。それはきっと一目惚れというやつだね」

 

 ルスランは自身の口髭を触りながらそう言った。

 

「えっ? た、確かに私のことを可愛いと言ってくれましたけど/// で、でも、彼はお世話になっているお礼だとも言っていました」

「彼は照れているのだよ。それは朝から並んでも手に入らない幻のチョコだ。そんな貴重な代物をただのお礼として人に贈るとは到底思えない。きっと彼は君のために無理をしたのだろう」

「私のために……///」

 

 シェリーの少し落ち着きを取り戻していた顔の熱が、再び燃え上がるように赤く染め上げはじめた。

 

「返事はどうするんだい? きっと君の答えを待っているよ」

「で、でも、私は……」

「研究だけじゃなく、人との付き合い方も学んだ方がいい。学園とはそういう場所だ」

「……はい」

 

 俯くシェリーにルスランは優しく微笑んだ。

 

「それで、アーティファクトの件は順調かい?」

「まだ、始めたばかりなので」

「……それもそうだね。っ……ゲホッ、ゴホッ、し、失礼……」

「お義父様! 大丈夫ですか?」

 

 シェリーは突然咳き込みはじめたルスランに背を優しくさすった。

 

「だ、大丈夫だよ。最近は調子が良かったのだけどね」

「お義父様……」

「そう心配しないでおくれ、シェリー。あぁ、私はいい娘を持った」

 

 ルスランは桃色の髪をぐちゃぐちゃにしない程度にシェリーの頭を撫でる。シェリーはそんなルスランの行動に多少戸惑いを見せつつも、撫でていたルスランの手を取り自身の頬に添えた。

 

「私こそ、お義父様が私を養子に迎えてくれなかったら。お義父様、ありがとうございます」

 

 シェリーの今の行動は子が親に甘える姿そのものだった。

 

「君のお母さんは優秀な研究者だった。頑張りなさい」

「はい、お義父様」

「それとチョコレートも食べて、ちゃんと返事してあげるんだよ」

 

 それだけ言うとルスランは研究室を後にした。

 

「チョコ……私のために……///」

 

 残されたシェリーは頬を赤く染めながらもチョコを口に入れる。

 

「甘い………」

 

 今のシェリーにはアーティファクトのことなんかとっくに頭になく、チョコを渡してきた男の子に抱く正体不明の感情でいっぱいになっていた。




大変長らくお待たせいたしました。そして作品を楽しみに待ってくれていた方、申し訳ございませんでした。
自身の文章力でスランプもクソもないのですが一時期書いていても納得しない部分が多くこれだけの時間待たせてしまったことを深く反省していきます。
一応何作品、何話か書き溜めしていたのでしばらくは投稿が途切れることはありません。一週間に二話から三話ジャンル問わず投稿していきますのでよろしくお願いします。
投稿するのが陰実の二次創作作品だけではないことも言っておきます。ご容赦くださいませ。
てことで、今回はシェリーとの出会い編になります。フラグが建ったのはキラの方でしたね。まぁ、だいぶ前にシドとシェリーはアレクシアとのデート中に出会っているのでフラグは建ちそうになかったですけど……
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