「あぁぁぁああああぁぁ!!!! もう!!」
「ん? なんか聞こえたな」
俺は試合を終えた後、人気のない教室棟を通って自身のいつもの教室に向かっていた。今日は学校内の大型イベントということもあり授業はないのだが、世界の鉱石の詳細が事細かく載っている参考書を昨日教室に忘れてしまったので取りに行ってたところだったのだ。
その途中、見覚えのある桃色髪の少女に声をかけられた。
「あ、あの……」
「あ、シェリー先輩。こんにちは」
「こ、こんにちは。試合見てました。剣術の試合とかいつもは見ないんですけど、とてもお強いんですね! すごくかっこよかったです///」
「ん……ありがとうございます」
あれ、いつの間にかフラグ立ってる。それも複雑な方の。
「あの、これ」
シェリー先輩はおずおずと小さな包みを差し出した。
「これは?」
「クッキーを焼きました。チョコのお返しに……」
「ああ、別にいいのに。ありがとうございます。もしよろしければ、今食べてもいいですか?」
「はい。ど、どうぞ」
「それじゃあ、遠慮なく」
シェリー先輩の焼いたクッキーを一つ口に運ぶ。
クッキーはスタンダードな丸の形をしており、クッキーを噛み砕くと素材の素朴な風味とほのかな甘さを感じた。
「美味しい」
「そうですか!? よかった……」
これは何枚でもいけるな。コーヒーと一緒に飲みたくなる。
「あの、それとなんですけど……」
「ん? はい」
「も、もしよろしければお友達からお願いします///」
「……いいですけど」
あれ? 友達………か……ら? あ、これシェリー先輩何か勘違いしてるな!? すぐに訂正しないと……
「やった! お義父様、友達になれました」
シェリー先輩がそう言うと、彼女の視線の先から長身で白髪交じりの髪をオールバックにまとめた男性、ルスラン副学園長が歩いてきた。
あ、終わった。保護者が出てきた。今更、シェリー先輩の勘違いですなんて言えない。
「キラ・カゲノー君だったね」
「どうも」
「試合見たよ。君、強いね。全盛期の私にも匹敵する強さだ。君と一戦交わえないのを悔しく思うよ」
ルスラン副学園長はそう言う。彼はかつてはブシン祭で優勝経験もある剣豪だったそうだ。
「ありがとうございます」
なんだが……なぜだろう。シェリー先輩に言われた時より嬉しくない。
ルスラン副学園長はシェリー先輩の肩に手を添えた。
「この子は研究一筋でねぇ、今も騎士団の依頼を受けてアーティファクトの研究に没頭している。そのせいか友達がろくにいなくてね」
「お義父様!」
はははと笑いながらルスラン副学園長はシェリー先輩の頭を撫でる。
「今はこうしているが、いろいろあったんだ。できれば仲良くしてやってくれ」
「……それは、どのあなたが言ってますか?」
「………一人の父としてのお願いだ」
アレクシアから聞いたルスラン副学園長の不気味さ。確かに感じられるがそれらの雰囲気はシェリー先輩のことを語る時、彼女の身を案じるような話をしている時だけは消えていた。
確かにこの人は何かを企んでいる。もしかしたらという可能性もある。だけど、この人の娘を思う気持ちは間違いじゃないのかもしれない。
俺がそう信じたいだけなのかもしれないが……
「……分かりました」
もし、間違いでこの人がシェリー先輩を不幸にもたらすようなことをしでかしているのならば……俺は迷いなく彼を斬ることだろう。
「では後は若い二人に任せるとしよう」
そう言うとルスラン副学園長は俺の肩を叩いて去っていった。
「あの、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
まぁ、彼女達の領域に踏み込んだのは俺の方だし、乗りかかった船だ。このままよろしくされますか。
* * *
あの後は散々だった。
教室に乱入してきたクレア義姉さんに私が泣いているところを見られてしまい、シドが泣かせたと勘違いしたのかそんな子に育てた覚えないわよとかいろいろ言ってシドのことを締め上げ始めた。そしてそれを必死に止めようとする私とその状況に困惑するローズ王女という奇怪な図ができあがってしまったのだ。
なんとかクレア義姉さんの誤解を解いてその状況をどうにかした後、自室に戻ってきたのだけれど……
「そしたら、キラさん美味しいって言ってくださって!」
「は、はぁ……」
実はその後、いろいろなことを知って疲労を蓄積した頭を休ませるためにコーヒーとお菓子を嗜んでいたら、自室の扉をノックする音がした。
訪問者は最近知り合ったばかりのシェリー先輩で、てっきりアーティファクトの件で訪ねてきたのかと思ったら違かった。彼女はキラとの惚気話を話してきたのだ。
あの兄弟はなんであんなにモテるのかしらね……まぁ、私も堕とされた一人なのだけど。
「それでシェリー先輩、用件の方は一体?」
「その、実はですね、アレクシアさんにご相談がありまして……アレクシアさんはシドさんとお付き合いされているじゃないですか?」
「はい? まぁ、そうですけど」
「なので、アレクシアさんにお聞きしたくって。キラさんとお友達になったのはいいんですけど、よく考えたらキラさんの好きなもの何も知らないなって……でも私、キラさんに直接聞くのは少し恥ずかしくって………」
そういうのって私が聞くのはちょっと違う気がするけれど……それよりも。
「あの、不躾なことを聞くんですけど……シェリー先輩ってキラのことが好きなんですか?」
しばらく沈黙して私の方をあほみたいな顔で見ていたシェリー先輩は顔を徐々に赤らめていき、最終的に火を吹いたみたいに真っ赤になっていた。
「大丈夫ですか?」
私の心配する声に返事することなく、シェリー先輩は顔を俯き無言で何か考え始めた。
しばらくしてようやく、シェリー先輩は恋する乙女の顔をしながら言った。
「わ、私って……キラさんのことが、す、好きだったんですね///」
気づいてなかったんだ。
「す、すいません。もう帰ります」
「お、お気をつけて……」
「お時間ありがとうございました。コーヒーもご馳走様でした///」
シェリー先輩はそれだけ言うとそそくさと自室の扉を開けて帰っていった。
「はぁ、まったく。今日は情報量が多すぎるわよ。シドォ〜………」
私はそのまま着替えることなくベットにダイブした。
結局休ませることのできなかった頭でこの場にいない恋人のことを考えながら、私はベットで眠るように意識を離した。
今日は珍しく昼から投稿しました。pixivやハーメルンとかの二次創作SSってどう言う時間に投稿するのがベストなんですかね?
pixivもプレミアム入らなくても予約投稿できるようにしてほしい。
てことで、今回はシェリーとキラが試合後に会うお話でした。原作ではシドがクッキーを貰ったりでしたが、このシリーズはキラにシェリーフラグが立っているので、キラにクッキーをあげていましたね。
シドやアレクシアみたいな付き合っている組と既に友達ということもあってか、シェリーはちゃんと恋の自覚をしました。
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