すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第二十七話 ハート・ブレイクは今後禁止で

 姉さんに襲撃されてから5日たったある日、本日の授業は早めに終わり、残すは生徒会選挙関係の話を聞くだけとなった。

 

「そういや3年って今どこ行ってんだ?」

「3年生は確か、課外授業でしたっけ」

「そういえばこの学園の課外授業って何やるんだ?」

「さぁ?」

 

 隣のキラの問いに、僕はあくびをしながら答えた。

 オチのない話をヒョロ、ジャガ、キラ、僕の四人で適当に雑談していると教室の扉が開き、二人の女子生徒が入ってきた。

 そのうちの一人は昔、僕が助けたローズ先輩だった。もう一人はいかにもモブって感じの女子生徒。

 

「失礼します。本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございます。生徒会の選挙について説明に参りました」

 

 ローズ先輩はそう言って隣の女子生徒の方に目線を送り、それに気づいた女子生徒は選挙内容の概要を説明し始めた。

 まぁ特に僕に関係のある話じゃないし、適当に聞き流すことにしよう。キラも横で寝てるしね。

 ぼーっとあくびしながら聞き流しているとふと、ローズ先輩と目があった気がした。

 まぁそれ以降は特に何もなく、そんなこんなで退屈な時間は過ぎていった。

 

「おい、シド」

「ん?」

「分かるか?」

「もちろん」

 

 突如として襲ってきた違和感にキラも気づいて目を覚ました。

 突然、魔力が練れなくなったのだ。魔力の流れを何かが阻害している感じ。それに加えて、何者かが教室に近づいてくる気配を感じた。

 

「「来る……」」

 

 僕はなんとなく言ってみただけだけど、キラと僕がハモったその瞬間。

 凄まじい轟音を響かせながら、教室の扉が吹き飛ばし抜剣した黒ずくめの男達が乗り込んできた。

 

「全員動くな! 我々はシャドウガーデン、この学園を占拠する!」

「おい! ふざけんなお前ら! ぶち殺………んんん!? むぐっ……んの!!」

 

 ちょっと!? キラ、落ち着けって!

 僕は怒りのままに暴れようとするキラを必死に抑えつけていた。

 学園がテロリストに襲撃されるというシュチュエーションに多少昂揚感を抱きつつ、大切なシャドウガーデンの名を騙っていることにムカついてもいる。

 でも今、こうなったキラをほっとくわけにはいかない。

 今、僕まで怒りに身を任せて理性を失いかけている今のキラを離してしまえばこの辺り一帯は更地になるし、正体を隠して続けてきた今までの努力が水の泡になってしまう。

 

「そのまま席を立つな、全員手を上げろ」

「ここがどういう場所か分かってないようですね」

 

 僕がキラを抑えている間に主人公候補のローズ先輩は腰の細剣に手をかけ、テロリスト達と対峙していた。

 

「魔剣士学園を占拠する? 正気の沙汰とは思えません」

「武器を捨てろ」

「お断りします」

 

 そう言ってローズ先輩は細剣を抜く。

 

「ふん、見せしめにはちょうどいいか」

 

 それに対し、黒ずくめの男も剣を構えた。

 お互い剣に魔力を流し始めるが……ローズ先輩はこの空間で魔力が使えないことに気がついていなかった。

 

「……っは!? 魔力が?」

 

 細剣に纏っていた彼女特有の黄金の魔力が突如消え、ローズ先輩は動揺を隠せないでいた。

 

「ふふふ、気づいたところで遅い!」

 

 黒ずくめの男はローズ先輩に向かって剣を振り下ろそうとした。

 まずい、まずい、まずい! 今の彼女に魔力が込められた剣を防ぐ術はない。

 僕は抑えてたキラの拘束を解いて、椅子を蹴り飛ばし駆け出した。

 ここで主人公枠を失うわけにはいかない。とはいえ、どうやって助ける? 助け方によっては僕の望むモブ道からも、陰の実力者のあり方からも大きく外れてしまう。

 ………そうだ。この際、モブを演じきってやろう。一番最初にテロリストに意味もなく斬られるのもモブの役目だ。そうと決まれば!

 

「やめろおぉぉぉおおあああぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

 

 魂の咆哮と共に、僕は二人の間に割り込んだ。

 

* * *

 

「やめろおぉぉぉおおあああぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

 

 目の前が真っ白になった。

 私の魔力を纏った剣は力を失い、私はただ相手の剣に斬られるのを待つだけとなってしまった。

 死んだと思った。だが、死は私の元に訪れることはなかった。

 

「……そ………んな………」

 

 どさっという音をたて、少年の体が血を大量に流しながら床に倒れる。本当に死が訪れたのは彼だと分かるには十分すぎる光景だった。

 教室内に誰かの悲鳴が響いた。

 私はそんな中、血で制服が汚れるのもお構いなしに少年の体を抱き抱える。

 

「え……シド君?」

 

 その少年は、私を二度も助けてくれた少年はシド・カゲノー君だった。

 

「バカ。どうしてまた私なんかを助けてくれたんですか………」

 

 本当にどうして……あなたには私なんかより守るべき人達がいるんじゃないんですか。

 シド君はまだ息があるのか、口を開き何かを言おうとしていた。血を吐きながらも彼は小さい声で私に何か伝えようとしている。

 私はシド君の口の近くに耳を近づけた。

 

「なんですか、シド君……」

「あ……あ………な……たがっ、ゲホッ、ゴホッ! ま……も………る、ん……だ…………ガク」

 

 目から止まぬことのない涙が頬を伝い、流れ落ちていく。

 彼は私を庇い、死んでもなお私にみんなを守れと言った。こんな黒ずくめのテロリスト達に負けるなと言った。

 

「ありがとう……」

 

 あなたの思いは無駄にはしません。あなたの剣に追いつけるように、私はこんなところで負けてられない。

 

「いい見せしめになったな」

「くっ………」

 

 だけど、今はまだその時じゃない。

 

「今から大講堂に移動する。そいつのようになりたくなかったら大人しくついてこい」

 

 それからというもの、黒ずくめの男達は生徒達を拘束し、続々と大講堂連れ出していった。

 シド君が斬られ命を落としたのを見たためか、反抗しようとする者は誰もいなかった。

 誰か一人欠けているような気がしたが、シド君の死があまりにも衝撃があったからか、今の私にはそこまで頭が回らなかった。

 

* * *

 

 誰もいなくなった教室で血を流して死んだはずの死体が突如動き始めた。

 死体は右手拳を天井に向かって大きく掲げ、その後自身の胸元に思いっきり叩きつけた。直後、右手拳から青紫の魔力が広がる。

 死体はそれを繰り返し、やがて心臓の活動が再開したのか。死体であったはずのそれは息を吹き返し、体を起こした。

 

「ゲホッ、ゴホ、ゴホッ! 動いた! いや〜、これこそがモブ式奥義十分間の臨死体験、ハート・ブレイク! 心停止から微細な魔力で脳血流を保ち、長時間の心停止状態を後遺症なく生き返ることができる僕の無数にある奥義の中の一つ。一か八かだったけどできるもんだね」

 

 生き返ったシドは自身の心肺蘇生術が成功したことに興奮して周りが見えていないのか、隣の机の上であぐらをかきながら睨みつけている俺に気づいていないようだ。

 

「それにしても、咄嗟とはいえモブらしい斬られムーブはできなかったなぁ。まぁ、その代わりにローズ先輩が主人公への道に一歩踏み出すためのきっかけとなったと考えれば別にいいか……いや〜それに……して………も……………」

 

 あ、気づいた。

 

「何か言うことはあるか?」

「ひ、ひぃ! ご、ごめんなさい!!」

 

 お前が怯えるレベルって、どんだけ今の俺の顔は怖い顔してんだよ。はぁ、ため息が出る。

 

「もういいよ。一応、俺もお前が馬鹿みたいなことやってくれたおかげでだいぶ冷静になれたし、その……ありがとな」

「え? あ、うん。どうも」

「まぁ、俺が許してもアルファ達やアレクシアが許すかな?」

 

 そう言うとシドは何か思い出したかのように顔を青ざめさせて震え始めた。

 お前、やっぱり忘れてたろ。ベータがあんなに泣きながら言ってくれてたのに……もう知らん。

 てか、別にいいじゃねえか。自分のことを好いてくれてる女の子がが自分のために泣きながら怒ってくれるんだから。

 いや、泣かせ過ぎは本当によくないけど。

 

「……そんなことは一旦置いといて、とりあえずどうする?」

「ん……そうだね。バレない程度に応急処置したら屋上に向かうことにしよう。僕達が出るのは夜になってからじゃないと」

「はいはい、そうだったな」

 

 シドの応急処置が終わるのを待ち、それから俺達はお互い軽口を叩きながら屋上に向かった。

 

「そうだ。どうせなら夜になるまで的当てゲームでもするか?」

「いいね。罰ゲームは何賭ける?」

「罰ゲームつけるのかよ……そうだな………」

 

 的当てなら負ける気がしないし、それなら……

 

「じゃあ……自分のことを好いてくれてる女の子に………愛の告白をする、にでもするか」

 

 

「へ?」




そういえばそろそろカゲマス2周年来ますね。
まぁ、そんなことよりもトンファー持ってるデルタが可愛すぎて流石に欲しいんですけど……
限定七陰は皆さん誰と交換します?
自分はゼータもイータも持ってないんでどっちか欲しいですね。
てことで、今回は学園がテロリストに襲撃される回でした。息をするかのようにシドがまた無茶をしたのでどっかでまたアレクシア辺りの説教回が入ります。
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