魔力を練ることができず、抵抗する術を持てなかった私や他の生徒達、教職員等の学園関係者は全員、黒ずくめのテロリスト達によって学園屈指の広さを誇るこの大講堂に連れてこられた。
シド達はどうしているのだろうか? まぁ、あいつらのことだから抜け出して何かしら企んでいるんだろうとは思う。
大講堂に着くとすぐさま私の元にローズ先輩が悲しげな表情をしながら駆け寄ってきた。
「あ、あの……」
「あら、ローズ先輩じゃないですか。どうしましたか?」
「実は……アレクシアさんにお伝えしないといけないことがありまして………」
そう言うとローズ先輩の表情がよりいっそう曇った。
「……シド君は………私に振るわれるはずだった剣からその身を投げ出し……私を庇って、この世を……去りました…………」
は?
「え? な、なに……言ってる、んですか。あの、あのシドが……死ぬわけ………」
「申し訳ありません。ですが、これが真実です」
ローズ先輩は泣きそうな顔をしながら、顔を下げ謝罪の意を示す。
だけど、彼女は知らない。シドは規格外な存在であるあのシャドウなのだと。そんなシドがただのテロリストの剣如きにやられるとは到底思えない。
だから私は彼が生きているとそう思う。ただ、切られたのは事実なのだろう。そのうえでなんらかの方法で死んだと偽った。そうじゃないとキラがここにいないことの証明ができない。まぁ、キラが一人で動く可能性も十分あるし、私がそう思いたいだけなのかもしれないが……
まぁ、仮にシドが生きていてくれたとして……それが私が怒らなくなる理由にはならない。
「……………殺す」
「待って、一体何をするおつもりですか」
「……大丈夫ですよ、ローズ先輩。今はまだ何もしません……今はまだ」
テロリスト達がシャドウガーデンの名を騙って学園を襲撃した以上、本当のシャドウガーデンは必ず動くはず。
私はひしひしと伝わる怒りを抑えながら、夜まで待つことにした。
* * *
「ちょっとそれ反則じゃない!?」
「何を言うか、これも立派な的当てゲームだ」
お互いの敵を撃つ手は止まず、口だけが動いていた。
だから言ったのに……自分から勝てない勝負をやろうなんて言うわけないだろ。
「どうやったらスライムでそんな解像度の高いスナイパーライフルが作れるの? 僕はおろか、緻密のイプシロンでも無理だよ、それ」
シドは俺の手元を見てそう言った。確かに、シドの手元は弾を指で撃つ小さい弓みたいなのをスライムで作っているが、俺の手元にあるのは漫画やアニメでよく見るスナイパーライフルの形状そのものだ。
俺が流星だった頃のまだ子供だった頃にアニメも原作も両方でハマった青髪の少女が持っていたスナイパーライフルをそのまま再現してある。
「お遊び程度のもんだぞ、これ。実践投入なんて無理無理。子供の頃にお前に内緒で作ってたんだが、この世界に魔力伝導率の高い弾なんてのはなかなかなくて……スライムを使ってもある一定の距離を過ぎると魔力が保てなくなってぺしゃんこになっちゃうし、その距離程度だったらダッシュで近づいて斬るか魔力の斬撃を放った方がいいって落ち着いたんだよ」
そもそも遠距離の相手に使う機会なんてほとんどないし、なにより見た目が世界観に合っていない。
だからこういうお遊びの時ぐらいにしか使う機会がないのだ。この距離ぐらいだったら問題なくスライムが届くから無双し放題。
ちなみに、スコープはレンズをスライムで作ることができないから魔力で敵の位置をサーチして撃っている。
「だとしても、よくこんな魔力が練りずらい状況でその解像度を保てるね?」
「俺はお前と違ってこっちに全集中してるからな。余計なリソースを割かなければギリいける」
「遊びに本気になりすぎだよ……」
そんな長話をよそに置いて、次の標的を探す。
すると、向かいの校舎に隙だらけでキョロキョロと歩いている桃色髪の子が………ってあれ!? シェリー先輩!?
「あっ………」
「いただき! よし、これでなんとかキラのキル数は抜かせたね」
集中力を欠いたせいでスナイパーライフルの原型が保てなくなったうえに勝負まで負けてしまった。
まぁ、もういいか。なんでシェリー先輩が大講堂にいないのかも気になるけど、とりあえず彼女を助けないと。
「はぁ、負けたよ。罰ゲームは後でするから、とりあえず……」
「はいはい、シェリー先輩ね。僕は今見えてる追ってきてる奴を撃ってからそっちに行くから」
「頼んだ」
俺は魔力を足に集中させ思いっきり、屋上から飛び降りた。
* * *
私は今、誰もいないはずの廊下を駆けていた。
ついさっき、私の研究室がシャドウガーデンを名乗る男達に突然襲われた。
その際、私の護衛についてくれていた紅の騎士団のグレンさんとマルコさんが私を逃してくれて、私は解析中だったアーティファクトを持ってそのまま逃げてきた。
見つからないように、見つからないようにってここまで逃げてきたのに……
次の瞬間、廊下側の窓から先程の男がガラスを突き破ってやってきた。
「ふぅ〜、やっと追いついたぜ」
「ど、どうして。あなたがここに。グレンさんとマルコさんはどうしたんですか!」
「あぁ? ああ、あの二人のことか。あいつらは俺が殺した」
私を助けたばかりに……ごめんなさい………あなた達の死は無駄にはしません!
「そんなことより……おいお前、そのアーティファクトを渡しな。大人しく渡せば、命だけは助けてやるよ」
やはりこの人達は私が持っているアーティファクトを狙っている。
それにさっき、グレンさん達が私を逃してくれる前に魔力が使えないみたいなことを言っていた。
その能力は確か、私が昔研究した強欲の瞳というアーティファクトの効果だったはず。でも、強欲の瞳は危険性が高いという理由で国に保管されていたはずなのにどうしてこの人達が……
とにかく理由はわからないけどこの人達は強欲の瞳を持っているんだ。
「絶対に渡しません」
それなら私の持ってるこのアーティファクトはなおさら渡せない。
「はぁ、めんどくせえな……じゃあ、死ねやぁ!!!!」
私に向かって剣をものすごい速度で振るわれた。
私は魔剣士ではないし、ましてや自衛能力も一切持ってない。流石に死を覚悟した。
けど、振るわれたはずの敵の剣は重厚な金属音を鳴らし、私を傷つけることはなかった。
「おい、この子に手を出すのはやめてもらおうか」
どこからかやってきたキラ君は手に持つ剣で私のことを敵の剣から守り、肝心の私はキラ君の空いた腕の方で抱かれていた。
「キラ君///!?」
「おい、てめえ。邪魔すんなよ」
「邪魔すんなよって言われてはい、そうですかって引き下がる馬鹿いるわけないだろ。少しはその足りない脳みそで考えろ、叛逆遊戯のレックス」
その名を呼ばれて、驚いた表情をするレックス。
研究室でもその名を言っていたが正直逃げるのに必死で忘れていた。
「こいつは驚いた。俺はお前みたいな奴に名乗った覚えはないんだけどな」
「別にいいだろ、そんなこと。どうせお前は死ぬことになるんだから」
「ふん、雑魚のくせに威勢だけはいいようだな」
そんなレックスの買い言葉にキラ君は大した反応も見せず、顔を私の方に向けてきた。
「シェリー先輩? いろいろ言いたいことはあります。独り言はやめましょうとか、考え事しながら歩くのはやめましょうとか、足元に注意しましょうとか、そのペタペタうるさいスリッパは脱ぎましょうとか」
キラ君の口から私に対してのお説教と文句が続々出てくるたび、私はうぅ……と萎縮してしまう。
キラ君はある程度私への文句を言い終わると大きなため息を吐いた。
「でも、とりあえず先輩が無事でよかった」
………やっぱり好きなんだ、私。キラ君の腕に抱かれて、無事でよかったって言われるだけで私……今すごい幸せだって思えてる。
顔が熱くなっていくのを感じる。その温かさはとても心地のよいものだった。
「シェリー先輩。俺が先輩の肩を叩くまで手で耳を塞いで、目はしっかり閉じておいてください」
そう言われた私は大人しくキラ君に従う。
キラ君の腕から離れてしまうことにはなったが、さっきまで感じてたいい気分は不思議なことにそのまま続いていた。
キラ君の言う通りに耳を塞いで目を閉じている間、なぜか環境音や雑音等が全く聞こえず、何度も繰り返しキラ君にかけてもらった言葉が頭の中で響き続けていた。
しばらくして、キラ君に肩を叩かれ目を開けるとさっきまでいたはずの廊下に私達はおらず、なぜかお義父様のお部屋の副学園長室に立っていた。
「あ、こんにちは。シェリー先輩」
そしてそこには、剣についた血を拭っているキラ君と大量の血を制服に染み込ませて明らかに重症なシド君がいた。
カゲマスの新しく出たメイドデルタ、あれやばくないですか?
ポニーテールでトンファー持ってて、それに加えて黒のハンドウォーマー……流石に好きすぎる。
てことで、今回はシェリーとの合流回でした。レックス君には興味がなかったのでキラ×シェリーの惚気材料となってもらってから早めに死んでもらいました。
ちなみに、スナイパーライフルの元ネタはPGM へカートⅡです。
持っていた青髪の少女というのはSAO,GGOのシノンですね。
それと次回はシェリーじゃないんですけど、大量お砂糖甘々回なのでキャラ崩壊にご注意ください。こういう回を書こうとすると、キャラ崩壊しすぎてないか毎回心配になるんですよね。
いいね・ブックマーク・コメントお願いします!
特にコメントでの感想はマジで励みになるんでお願いします!! どしどし待ってます!