すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

29 / 33
第二十九話 昔からずっと

「え? あれ、なんで私ここに……」

「シェリー先輩はキラがここまで連れてきてくれたんだよ」

「シドく………シドくん!? ち、血が出て!?」

「あぁ、これなら大丈夫だよ。奇跡的に一命を取り留めただけだから」

「そ、そうなんですか……それならよかったです………」

 

 流石にちょろすぎる……

 シェリーがレックスに襲われてたところを助けたあの後、俺はレックスをシェリーが目を閉じてる間に瞬殺した。その後は残党に見つからないように最大限シェリーの体にかかる負荷を取り除きながら副学園長室に高速で移動してきた。

 シドが行き場所も伝えてないのに既に副学園長室にいたのは流石にビビったけど。

 そんなこんなでシェリーを無事副学園長室に届けた俺は二人の漫才を見ながら心の中でツッコミをしつつ、今後のことについて考えていた。

 

「あっ!?」

 

 突然シェリーは何か思いついたのか、副学園長室の机の引き出しをあさりだした。

 しばらくするとシェリーはいつぞやのたくさんの本を持っていた時みたいに比較的大きな資料を抱えて持ってきた。

 

「ありました!」

「「なにこれ」」

 

 資料の中には複雑な数式だったり、よく分からない文章だったりがずらーっと並べられている。

 俺達は別にそこまで頭が悪いわけではないのだが、この資料に書かれているものは専門的な話すぎて理解ができない。

 頭がはてなマークで埋め尽くされた俺とシドの疑問を投げかける声がハモった。

 

「これは強欲の瞳というアーティファクトです」

「この禍々しいデザインの球体がそうなんですか?」

「はい。そしてこれが魔力を阻害している原因です。強欲の瞳は周囲の魔力を吸収して一時的に溜め込むことができます。その結果としてその周辺は魔力の錬成が困難になるのです」

「黒ずくめの人達は普通に魔力を使ってたけど」

「吸収させたくない魔力の波長は記憶させることができるんです。そうでなくては使用者本人の魔力まで吸収してしまいますから」

 

 なるほど。

 

「他にも感知しきれない微細な魔力や要領を得ない強大な魔力は吸収できないと思います。そんな魔力は王国最強とも言われるアイリス様にも扱えないので現実味はありませんが……それと………」

「まだ何かあるんですか?」

「これだけなら扱いが難しいだけのアーティファクトなんですが、強欲の瞳は魔力を溜め込むだけ溜め込んだ後、一気に解放してしまうようなんです。つまり……」

 

 現在、学園に在学する多くの魔剣士学生達はテロリスト達によって大講堂に集められている。魔力を吸収するタイプのアーティファクトである強欲の瞳にとって今の大講堂は食事に困らない極上の場所だ。

 強欲の瞳は大講堂にある。

 そして、そんな場所で強欲の瞳の魔力許容量を超えて一気に魔力を解放してしまえば……

 

「学園が吹き飛ぶ」

「はい。その危険性を考えて、学会では公表せず強欲の瞳を国で保管してもらったはずなのですが……」

「同じ物がもう一つあったか、盗まれたのか。どちらにせよ、対処方法を考えないとだね」

「あ、それなんですがこれを見てください」

 

 シェリーはそう言うとポケットから大きめなペンダントを取り出した。

 

「このアーティファクトは強欲の瞳の制御装置なんです」

 

 あぁ、だからこれを持ったシェリーのことをテロリスト達に追いかけ回していたのか。何かが起きる前にシェリーに気づけてよかった。

 

「これを解読してようやく分かりました。本来、強欲の瞳はこの制御装置を使って魔力を長期保存するためのアーティファクトだったんです」

「長期保存……つまり今からやるべきことは強欲の瞳がもたらす魔力の解放をその制御装置で止めるってことですね」

「そうです、キラくん!! ですが、それには一つ問題がありまして……」

 

 あぁ、確かにどうやって止めるか聞いてなかったな。

 

「止め方については起動した制御装置を地下の隠し通路から大講堂に近づいて強欲の瞳がある地点に近づけるだけでいいのですが……まだ制御装置の解読が………」

「今……なんて、言った?」

「え? シドくん?」

「今、なんて言った?」

「え、制御装置の解読が……」

「違う。その前」

「え、えぇ? ち、地下の隠し通路?」

「そう! そこ!!」

 

 突然シドが大きな声をあげて興奮するもんだから、体をビクッと震わせたシェリーは怯えて涙目になりながら俺のそばまで寄ってきた。

 

「き、きらくぅん……」

「……可愛いな。小動物みたい」

 

 俺がそう言うとシェリーは最初、腰に腕を絡ませてきょとんと上目遣いで俺の方を見てきた。

 その後すぐ、俺の言葉を処理するのに脳が追いついたシェリーは顔を赤くし爆発させ、変な鳴き声で鳴いた。

 

「……キャゥン///!?」

 

* * *

 

「はぁ……なんで俺が………」

 

 あの後、頬を赤らめたシェリーは興奮したシドを止めるために………この表現の仕方はいろいろとまずいな。

 と、とりあえずシェリーは壁に並んだ本棚の中から一冊の本を奥に押し込んだ。すると、その本棚は横にゴゴゴゴゴ……と振動しながら移動し、奥に地下への階段が現れた。

 

『それで、制御装置の解読がどうしたの?』

『あ、そうです。今すぐにでも制御装置の解読を行ないたいのですが……逃げる際に必要な道具を研究室に置いてきてしまって………』

 

 というわけで、それをシドに取りに行かせようと思ったのだが……隠し通路に子供のように再度興奮したシドには誰の声も届かなく、シドを護衛として残してしょうがなく俺が道具を取りに行くことになったのだ。

 

「ん?」

 

 指定の場所にある研究室と思われる教室まで近づくと教室の中にある気配を感じた。

 教室の中を覗くとそこには屈強な体を持ち髭を生やした男の死体とまだ微かに息はあるが意識を失っている青髪の青年、その目の前に立つニューがいた。

 ニューの手にはスライムで作られた小型のナイフが握られている。

 

「ニュー、なにしてんの?」

「ステラ様……」

「今はキラでいいよ」

 

 ちらっとニューの目の前で倒れる青髪の青年の方を見る。

 

「そいつ、どうするつもりだった?」

「………この人、許嫁だったんです」

「っ!?………」

 

 聞くんじゃなかったと少し後悔する。

 

「私個人としては、生かす理由も殺す理由もありません」

「そうか」

「……遅くなりましたが報告いたします」

 

 それ以降、ニューの許嫁の話が出ることはなかった。

 

「現在シャドウガーデンは学園の周囲に潜伏し待機しております。ご指示があればいつでも動けます」

「今この学園は魔力制限の結界が張られているが、その辺はどうなってる?」

「はい、魔力が制限された状況下での戦闘にはリスクが伴います。普段通りに動けるのは七陰の皆様ぐらいですが、現在王都にいるのはガンマ様だけです。それで、あの……ガンマ様は………」

「うん、無理。まぁ、今回は俺もシドも出るから大丈夫だ。ガンマには全体の指揮だけ執るようにと報告を」

「は、はい、かしこまりました。それと他の構成員や私も同様にスライムスーツの長時間の維持も難しく、普段の半分ほどの力しか出せませんので……」

 

 え? そりゃそうか。忘れてはいたけど、俺達ならまだしも彼女達じゃスライムスーツの維持も難しいよな………

 

「ん? スライムスーツの下って……」

「裸です」

 

 なにその同人誌展開!?

 

「……結界の中にいる構成員には俺が合図を出すまで、結界の外にいるように伝えておいてくれ。俺はちょっとやることがあるから……」

 

 気まずい話はよそに置いておいて、俺はシェリーの解読に必要な道具を探すことにした。

 メモに書いてあるミスリルのピンセットに地竜の骨の粉末、灰の魔石等の道具を部屋の脇に置いてあったかごに入れていく。

 

「あの、一体何に使うのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「うん? 別にいいけど、これはシェリーがアーティファクトを解読するのに必要なんだ」

「シェリー……あのシェリー・バーネットですか。あの王国一の頭脳と名高く、最近になってキラ様に目をかけてもらうようになったあの………」

 

 突然低くなったニューの声色に少しビビる。

 後ろでぶつぶつ言うニューに怖くなり、後ろを向くか葛藤していると突然後ろからお腹辺りに腕を回され抱きつかれた。

 

「ニュ、ニュー?」

「………です…………」

「え?」

「怖いんです……私。ただでさえ、七陰の皆様なんて強敵すぎる恋敵がいるのにさらに増えたりしたら……私、捨てられるんじゃないかって」

 

 捨てるなんてあり得ない。

 偏ったりせず平等に彼女達全員を愛して幸せにするというシドの宣言を聞いてから、俺はそんな馬鹿げた理想を俺なりのやり方で叶えていこうとあの時、シドが誓ったように俺も誓ったのだ。

 だから、捨てるなんて絶対にあり得ない。

 

「ニュー、俺は……」

「分かっています。キラ様達は私のことを捨てたりなんかしません。でも、分かってはいるんですがどうしても怖くって……もう少しこのままでもよろしいでしょうか?」

「………ニュー、嘘だろ」

 

 寂しがっているであろうニューを心配して後ろを覗いた時、少しだけニューの口角が上がっているのが見えた。

 

「バレてしまいましたか……残念です。スライムスーツの下が裸であることに気づいたキラ様が少し照れておられたので……そういうシチュエーションがお好きなのかと………」

「………さ、仕事仕事」

 

 だから胸を押し付けてきたのか。

 別にニューが今着ている服装がスライムスーツじゃなくて制服であることにガッカリなんて断じてしてない。

 

 本当にしてない。

 

* * *

 

「よし、これで全部だ」

 

 そう言ってキラ様はかごに必要な全ての道具を入れて部屋を出る。私もキラ様についていくように部屋を出た。

 

「ニュー、日没にはアーティファクトの解読が終わってると思うから」

「では、我々もそれに合わせて動けるように準備します」

「ああ、よろしく頼む」

 

 キラ様は後ろを振り向き、私を背にしてこの長い廊下を歩き始める。

 私はキラ様を見届けた後、まずはガンマ様に報告しに行こうと考えていると突然キラ様が私の方に引き返して早足で帰ってきた。

 何か忘れ物でもしたのでしょうか? 

 

「ニュー、言い忘れてたことがあるんだ」

 

 キラ様はなぜか右腕で口元を隠すようにして喋る。その理由はすぐに分かった。

 

「一応言っとくけど、今のニューにはシャドウガーデンの仲間達やシドに……俺もいるからな。絶対に寂しくさせないから………」

 

 きっと今の私は豆鉄砲を食らったような顔をしているだろう。

 昔から私のことをずっと気にかけてたくせにこっちのアピールには全然反応しなかったあのキラ様が最近ずっとデレてきているのだ。

 デートに誘ってくれて、可愛らしい伊達メガネを買ってくれたあの日もそうだった。

 だから、そんな顔になってしまうのも無理はない。

 

「……嫉妬してくれたんですか?」

「あ、え、はっ///!?」

「だって、そういうことですよね? キラ様、私に許嫁がいたことに嫉妬してくれたのでしょう?」

「な、何言って!? ちょ、俺の顔をそんなまじまじと見るな///」

 

 キラ様は顔を隠すように両腕を顔の前でクロスさせる。

 私はその腕をすぐに取ってキラ様のことを押し倒した。キラ様の左手にあった道具の入ったかごが床に落ち、中身が散らばる。

 けれど、そんなことは今の私にはどうでもよかった。

 キラ様の赤く羞恥心にまみれたお顔を見たい、そんな欲望と欲求にまみれた考え……今の私を突き動かすのはただそれだけだった。

 

「お、おい、やめろ///!?」

「隠さないでくださいよ、キラ様/// 私だって恥ずかしいんですから///」

「じゃあなおさらやめろよ///!?」

 

 制限されてる中での最大限の魔力と力を込め腕をどかそうとした。

 いつものキラ様であれば少し抵抗すれば私のことなど簡単に組み伏せられるはずなのに、今のキラ様には恥ずかしがっているのか力が少しも入っていないようだった。

 激しい攻防の中、キラ様の手が私の髪に当たりお団子に纏めていた髪は崩れて解けていく。そんな攻防もしばらくすると多少は落ち着いた。

 キラ様はついに諦めたのか、ゆっくりとクロスさせた腕を解いていく。

 隠されていたお顔はとても赤く火照っており、肝心のキラ様はというとよっぽど恥ずかしかったのかそっぽを向いた。普段のかっこよさからは感じられないほどの可愛らしさを感じる。

 

「キラ様……///」

「……だから、見せたくなかったんだよ/// あー、恥ずかし………///」

 

 ………か、か、か、可愛いぃぃぃいいいぃぃい!!!!!

 

「……可愛いですよ///?」

 

 キラ様はそんなことを言われると思っていなかったのか、目を見開く。

 それからこちらの方を何か言いたげな目で見た後、ため息を吐きながら床に散らばった道具を再度かごの中に入れ始めた。

 そんなため息吐かないでください。これは仕方ないことなんです。

 私を救ってくれたあの日からずっとあなたのことが好きで………あれ? 今更ですが私、キラ様に昔からアピールはし続けてきましたけど、好意を直接伝えたことってないのでは……?

 

「よし、これで全部か? ニュー……今度こそ、俺は行くからな?」

 

 考えている間にキラ様の作業が終わってしまっていた。

 このままキラ様に好意を伝えなかったら私は絶対に後悔する。ただの直感なのか、それとも女の感なのか、とにかくそう感じたのは確かだった。

 

「はい………あ、ちょっと待ってください」

「おい、そろそろ行かないと間に合わ………」

「好き、好きです/// ずっと昔から好きでした、キラ様///」

「え……え、今? え、え///? ニュ、ニュー///?」

「なんですか///? い、愛しの旦那様///?」

「………ちょっとぉ///!? 振り切りすぎだって!! このままじゃキャラ崩壊まっしぐらだよ!」

 

 だってそうでもしないとキラ様、反応してくれないじゃないですか。何度も言いますが、これは仕方ないことなんです。

 それにこっちだって恥ずかしいんですからおあいこですよ、おあいこ。

 

「それともう一つまだ言いたいことが……」

「まだあるのか……」

「そ、その……先程の私に許嫁がいたことにキラ様が嫉妬してくれたことが私、凄く嬉しかったですよ?」

「……男の嫉妬なんて見苦しいだけだろ」

「他の人はどうだか知りませんが私は嬉しかったです」

「そ、そう……なんだ………」

 

 素直な気持ちを率直に伝えられたからか、キラ様は少したじろいだ。

 この場が少し居心地が悪くなってきたのか、単に恥ずかしいだけなのか……キラ様は首をポリポリと搔く。

 

「それに私だって嫉妬することはあるんですよ?」

「え? ニューが?」

「えぇ、例えば………この前のキラ様とガンマ様との添い寝、だったり」

「んぐっ………それは……」

「ガンマ様との添い寝自体は別にいいんです。ただ、私もキラ様と添い寝したかったなって。だから、キラ様……今度私とも添い寝してください。約束ですよ///?」

「……分かったよ」

 

 そんな約束をして、この場は解散になった。

 流石にこれ以上の時間の無駄遣いはこの後の作戦に支障をきたすので、名残惜しいがキラ様の姿が見えなくなるまで見届けた後、髪を結び直しガンマ様の元に急ぐ。

 それにしても最後の添い寝の約束については半分ヤケで言ったことだったため、まさか了承をもらえるとは思わなかった。

 

「ふふっ、楽しみですね」

 

 この後の私はキラ様との添い寝を想像し、上がることの止まない口角を必死に抑えながらガンマ様に作戦の経過報告するのだった。

 余談ですが、この後なぜかすぐにバレて嫉妬したガンマ様に制服を剥かれそうになりました。




カゲマスのクリスマスイベント。イプシロンもやばいし、イプシロンにくっつくデルタもイータも可愛すぎて悶え死ぬかと思いました。
それはそうとして石がないこの現状……
てことで、今回は前回言った通りの大量お砂糖甘々回になりました。
案の定キャラ崩壊はしてるし、本当にこれでいいのかとも思いつつ書いたんで批判コメという名の言葉のナイフはいつもより深く刺さっちゃいます。
それと余談なのですが最近、というより本日からpixivプレミアムに入ったのでもう少しきっちりとした投稿頻度になると思います。
投稿を忘れて遅い時間になった時にいつも先延ばしにしがちだったので予約投稿さんに救ってもらうことにしました。
いいね・ブックマーク・コメントお願いします!
特にコメントでの感想はマジで励みになるんでお願いします!! どしどし待ってます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。