すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第三十二話 そんな格好をしながら押し付けてくる方が悪い

「よくできていると思わない?」

 

 二枚の手配書を見ながら、私はそう言った。

 

「王国の怨敵シャドウとステラ。無差別殺人、監禁、放火、強盗……なんて悪い人達なのかしら、ふふっ」

「アルファ様……」

「ああ、ごめんなさい。報告の最中だったわね。続きをお願い、ガンマ」

「はい。アルファ様はミツゴシ商会に来られる道中、天にも昇る勢いの魔力の光を見られましたでしょうか?」

「えぇ。あんなふうにキラの魔力の光を見るのは久しぶりのことね」

 

 シドと違って、キラは滅多に本気を出したりしないから彼の本気の一撃を拝めるなんて機会もほとんどなかった。

 最後に見たのはいつだっただろうか?

 

「それがどうしたの?」

「その……少し前のことなのですが………キラ様が、発作を起こしました」

 

 ………え? ほ……っさ? ッ!?

 発作、その言葉を頭の中で理解した時には私は思わず座っていた椅子を後ろに思いっきり倒しながら乱雑に立ち上がった。

 机に置いた二枚の手配書は振動で滑り落ち、ひらひらと暖炉の方に飛んでいってそのまま燃えてしまう。

 

「キラは!! キラは、大丈夫なの!?」

「アルファ様、落ち着いてください! キラ様は大丈夫です。今は秘密を知ったシェリー・バーネットと一緒にミツゴシ商会のキラ様のお部屋でお休みになられています」

 

 ……シェリー・バーネットと一緒にっていう点は少し気になるけど、今はいいわ。

 

「とりあえず無事ならよかったわ……取り乱して悪かったわね」

「い、いえ、私も報告を受けた時はアルファ様を同じぐらい取り乱しましたので………続けます。発作を起こしたキラ様は発作と同時に魔力も暴走しました。ですが、すぐに冷静さを取り戻したようで、そのまま暴走した魔力を天に向かって一気に放出させました」

「それがあの光だったってことね」

「はい。キラ様の魔力の光が消えた頃、キラ様はしばらく床を見つめていたそうです。その後、シェリー・バーネットの元におぼつかない足取りで向かったと報告を受けております」

「……………」

「……アルファ様、私達がキラ様の発作に関して直近で会議した時にいたった結論は覚えていますでしょうか?」

「覚えているわ」

 

 本人は隠しているようだったけれど、キラの発作に関しては私達七陰やニューだったりの同じ人を愛している家族には割と昔からバレていた。

 最初はシドに聞いてみたりしたのだが、『僕からは教えられない』の一点ばりだった。だから、キラには秘密でキラの発作についての会議を昔から繰り返し行なっていたのだ。

 そして、直近で一番最新の会議で出たのが家族関係のトラウマという答え。

 ただ、確証はなかった。カゲノー家での生い立ちや過ごし方、調べれるものはすべて調べたつもりだがトラウマに関するものは何も出てこなかった。この答え自体、キラが発作を起こしている状況から推測したに過ぎない答えだった。

 

「実は報告には続きがありまして、シェリー・バーネットと合流したキラ様は彼女を押し倒し抱きしめ、泣きながら謝っていたそうです………」

「……押し倒して抱きしめたっていう点はどうやってスルーしたらいいのかしら………とにかく、キラの発作が家族関係のトラウマであるという推測がまた信憑性を増したということね」

 

 キラ………

 

「……とりあえず話は分かったわ。ガンマ、他に報告はないかしら?」

「はい。今のところは以上になります」

「それなら私はキラの部屋に行ってくるわね」

 

 今はキラに無性に会いたい。

 

* * *

 

 部屋の前まで行っての扉をノックする。すると、部屋の中から可愛らしい声が聞こえた。

 部屋の中に入るとベットに横たわっているキラとそのそばにピンク髪の少女が座っていた。

 

「あなたは……」

「私はアルファよ。いろいろ聞きたいこともあると思うけど、少し待ってちょうだい」

 

 話しながらキラの寝顔を覗く。キラの表情は先程まで発作を起こしていたとはとても思えないほど穏やかなもので、規則正しい寝息を立てていた。

 そんなキラを見て、私は心の中でため息を吐いた。

 

「……ひとまず安心したわ」

 

 私達の心配とは裏腹に気持ちよさそうに寝るキラに少し怒りを覚えつつも、キラの頬を軽く撫でる。すると、キラは自身の顔を犬みたいに甘えるようにして私の手に擦り寄せてきた。

 ………可愛い。

 

「あ、あの……」

「どうしたの、シェリーさん?」

「あれ。私、名前言いましたっけ?」

「あなたの名前を知らない人はなかなかいないと思うけど。あなたの名前は報告にも上がっているわ」

「そ、そうなんですね」

「それで?」

「あ、そうです。そのアルファさんはキラくんの発作について何か知っているんですか? ここまで私とキラくんを運んでくれたニューさんにも聞いてみたのですが何も知らないと言ってたので………」

「私達も秘密裏で調査はしているけれど、詳しい話は分からないわ……」

「そうですか……」

 

 シェリー・バーネットは少し残念そうに俯く。けれど、彼女はすぐに気持ちを切り替えたようで私に向かって衝撃的なことを言った。

 

「アルファさん! 私をシャドウガーデンに入れてくれませんか!?」

「………申し訳ないけど、シャドウガーデンはそんな職場の面接みたいな形式で入れるような組織じゃないの」

「それでも、お願いします! 私、キラくんのそばで役に立ちたいんです!」

 

 シェリー・バーネットは頭を上げ下げ繰り返し、必死に頼み込んできた。

 

「この組織にはキラやシドのことを好きで愛している人が私も含めて多数いるの。キラ達はそんな私達をまとめて愛してくれるって言ってたわ」

「す、凄い……」

「私達は別にそれでもいいと思ったわ。彼らなら私達のことをちゃんと平等に愛してくれると思ったから。アレクシアさんもきっとそうなんでしょうね」

 

 そういえばアレクシアさんと全然話せる機会がないわね。いい加減ちゃんとお話したいんだけど……

 同じ王族で彼女の姉のアイリス王女に顔を見られている私は簡単にはアレクシアさんに接触できないし………いっそのこと、堂々とミツゴシに招待しようかしら。

 

「それであなたはどうなの?」

「別にいいと思います。家族の形は、人それぞれですから………」

 

 ちょっと意地悪な質問をしてしまったと思っていたけれど、こんなすぐに答えられるとは思わなかった。

 家族関係が歪だった彼女にとっては大した問題ではなかったみたい。

 

「いいわ」

「え、本当ですか!?」

「えぇ、そもそもあなたのことは入れるつもりだったわ。もしあなたの方から入れてほしいと言ってきた場合は名前を変えさせず、シェリーとして組織に入れてあげてほしいってキラが言ってたの。本当にあなたの方から言ってくるとは思わなかったけれど……」

 

 こうなることを予期してたってことかしら。私はいつになったらあなた達に追いつけるのかしらね………

 

「とりあえず、詳しいことは会議室でお話ししましょうか。そこでキラの発作についても今分かっていることを話すわ。ここだとキラを起こしてしまうから」

「は、はい……え、いいんですか? 私にもその話をして」

「いいに決まってるでしょう。キラが認めた以上、あなたもすでに家族なのよ」

「あ、ありがとうございます。それじゃあ、キラ君……行ってきますね」

 

 そう言って、シェリーさんはキラの頭を撫でた。

 

「私も……キラ、行ってくるわね」

 

 キラの顔から手をゆっくりと離す。すると、キラの顔は穏やかな表情から不安げな表情へと変わっていった。

 

「ごめんなさいね。この後イータが来るみたいだから、着いたらすぐに部屋に行かせるわ。だから少し待っててちょうだいね。愛しているわ」

 

 そう言うとキラはまた穏やかな表情に戻る。

 ふふ、子供みたい……

 子供みたいに表情が豊かなキラがとても可愛らしいと心の中でそう思いながら、私達は部屋を出た。

 

* * *

 

「……うっ………ん……?」

「あ、起きた」

 

 目を覚ますとそこには桑の実色をした寝癖で跳ねている長い髪と瞳を持つエルフの美少女がおっとりとした表情でこちらを見つめながら、俺のことを抱き枕のようにして寝ていた。

 

「イータ……重い………」

「……ひどい」

 

 なぜ俺の上でイータが寝ているのだろうか……てか、やめてくれ。またニューが嫉妬しちゃってめんどくさいことになる。

 目を覚ました俺は今の現状に少し混乱しつつも昨日のことを思い出す。

 昨日は確か、シドに無理やり作らされたあの厨二くさい究極奥義を放った後にシェリーと合流したはず。それから………

 ……………最悪だ。

 

「死にたい……」

「……ダメ」

 

 イータの抱き締める力が強くなった。

 

「ごめん、ごめん。そんな簡単に死なないから」

 

 中途半端に強くなっちゃったし……今更ね………

 

「それで、イータ? 俺、自分の部屋に自力で帰ってきた記憶ないんだけど……なんか知ってる?」

「知ってる。キラがシェリー・バーネットに抱きついたまま離さなくなってた。それをニューがここまで運んだって、アルファ様が言ってた」

「てことは、シェリーもここにいるってことか」

「シェリー・バーネットは会議室でアルファ様とお話し中。私の助手になるって、言ってた」

 

 意識のないうちにシェリーはシャドウガーデンのメンバーにシェリーとして迎えられていたことに俺は心の底から安堵する。

 シェリーという名前は母親であるルクレイアが愛を込めて与えた、シェリーにとってのたった一つだけの母親の形見だ。それを捨てさせるようなことは俺はしたくなかった。

 アルファに事前に伝えておいて正解だったな。

 安心したら喉が乾いてきた。

 俺はイータごと少し体を起こしてからベットの隣にある水の入ったコップを手に取り、口に含む。そんなタイミングでイータが俺の胸に手を当てながら爆弾発言をした。

 

「キラ……発作、大丈夫?」

「ブフゥゥゥゥ!!!!」

 

 思いっきり吹いた。

 

「………キラ、濡れた」

「ご、ごめん! 早く着替え……///」

 

 先程まで寝ぼけていたから気づいていなかったが、今のイータの格好はとてもまずかった。

 イータはどっから引っ張ってきたのか、俺のひとまわりは大きな白のTシャツのみとかいうとんでもない薄着だった。

 その唯一イータの素肌を隠していたTシャツは水に濡れ、あらゆるところが透け始めている。

 ……イータはブラをしていないようだ。なんなら下も履いているか怪しい。

 

「……うん? どうしたの、キラ………ああ、キラ、そういうことがしたかったんだ。もっと早く、言ってくれたらよかったのに……」

「違う、違うから///!! 早くぅ……!?」

 

 終わった。

 イータの方を見ないようにと、自室の扉の方に目を向けるとそこには少し怒っているように見えるアルファと手のひらで赤く染まった顔を隠しつつも指と指の間から覗き見しているシェリーがいた。

 俺が一体何をしたっていうんだ! いや、数え切れないレベルの愚行をいっぱいやってきたわ。

 

「あ、あのアルファさん? 一体いつから………?」

「……そうね。『死にたい……』辺りからかしら」

 

 ほとんど最初からじゃねえか。

 

「イータ、着替えてきなさい」

「えぇ、いいところだったのに……それに発作のことだって、まだ聞けてない………」

 

 ………その話、掘り返されると困るんだけどな。

 部屋はイータを除いて気まずい空気感に包みこまれた。

 

「………アルファ達は知ってたの?」

「……えぇ、とっくの昔に」

「そっか」

「最初の頃、シドにも聞いたの」

「シドはなんて?」

「答えてくれなかったわ。『僕からは教えられない』って。だから私達はあなたには秘密で調査してたの」

「……何か分かった?」

「何も分からなかった……唯一分かったのはあなたが発作を起こす時、それは決まって家族関係にまつわる話のみだってことだけだった」

 

 そこまで分かってるなら十分だよ……

 やっぱり人間は自分にとって都合の悪いことを言われている時は何も言えないらしい。俺はしばらくの間、無言を貫いた。

 しばらく経って、先程までずっと無言でアルファの後ろに立っていたシェリーが突然口を開いた。

 

「……キラ君」

「シェリー?」

「実は私、シド君の提案であの時こっそり聞いてたんです。キラ君が私のことを一生守り続けるって」

 

 え、聞かれてたの。シドのやつめ、これが罰ゲームってことか。

 

「それを聞いてたってことは……」

「大丈夫です。お義父様のことは自分の中で折り合いをつけました」

 

 ……本当に強い子だと思う。それこそ、俺なんかに守られる必要なんてないぐらいには………

 

「キラ君、好きです。キラ君が私のことを守り続けてくれる限り、私もずっとキラ君のそばにいます……だからぁ……だからぁああぁぁ………」

 

 シェリーは嗚咽混じりに泣きながらこっちに近づいてくる。アルファはそんな彼女の頭を優しく撫でながら俺の方を見てきた。

 アルファは慈愛に満ちた聖母のような顔をしていた。

 しばらくの間、シェリーの啜り泣きが環境音として流れる。シェリーが落ち着いてきた頃、再びアルファが口を開いた。

 

「キラ、あなたが家族というものにどんなトラウマを抱いてどんな苦しみを味わっているか想像もつかないけれど」

 

 シェリーが俺の手を強く握ってくる。

 

「私達はあなたのことを愛してる。あなたのことをずっと信じて待ってる」

 

 イータが俺の背に手を回し、強く抱き締めはじめた。

 

「だから、いつか……あなたの抱えているもの、私達にも教えてね」

 

 アルファが横から俺の頭を引き寄せて抱き締めた。

 

「アルファ……イータも、シェリーも、ありがとう。いつか、必ずみんなに言うから……それまで待っててくれ」

 

 発作の、トラウマのことについて、俺はまだ彼女達に教えることはできない。けど……いつか克服した時、みんなに頑張ったって伝えれるようになったらいいなと少し思えた。

 こういう考えができてるだけ、俺はちょっとでも成長できたんだと思う。

 道連れという形とはいえ、この世界に連れてきてくれた実に感謝しないとな。

 

「そういえば、イータ? さっきからずっと顔を赤くしてるけど、大丈夫か?」 

 

 水に濡れてからの間、イータはずっと顔を赤くしていたのを思い出した。

 

「まさか、水に濡れたまま放置してたから風邪でも引いたんじゃ……」

「キラ……」

「ん?」

「伝えにくかったから言わなかった。だけど、言う……さっきから……その………硬い、のが……私の………お尻、に……当たってる………」

 

 

「………死にたい///」

 

 

 ………………本当に最悪だ。




今年ももう終わりですね。来年は流石にもっと投稿頻度を増やしていきたいと思いますが、書くスピードがどうにも……ね?
てことで、今回で学園編も終わりです。次から聖域編に移っていきます。
この辺からR15気味になる回がいくつか増えますが、怪しいラインってだけで実際にR作品になったりはしません(多分)。
それはそれとしてズボラなイータは彼シャツのみとかアホ似合うと思うんですよ!
なので、誰か彼シャツの前のボタンが外れていてはだけてるイータのイラストを書いてください。
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