すれ違いムーブ連発の陰の実力者達を止めたくて!   作:星電輝

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第六話 謎の違和感と最後のお遊び

「はぁ……なんでだよ……」

「ステラ、わがまま言わないの。シャドウからあなたが賭けに負けた話は聞いたわよ」

 

 だって、本当に隠しアジトがあるとは思わないじゃん。しかも、ちゃんとクレアの魔力を感じるからここにいることは確定だし。

 

「で、シャドウは?」

「あの人なら先に行ったわ」

 

 獲物を早く狩りたかったのだろうか。見つける前に迷子になってそうだけどな。はぁ、しょうがない……

 彼女達が求めるシャドウガーデンのトップをしっかりと演じるために声を真面目モードに切り替える。

 

「今から七陰は俺の命令の元、動いてもらう。いいな?」

「ええ」

「それじゃあ、行くぞ!!」

 

* * *

 

 隠しアジトの内部に入ってからしばらく進んだ所に大きな空間があった。そこにも盗賊が数体残っていたのだが、デルタによって速攻で体と頭が弾け飛ばされてしまった。

 ちょっとデルタさん? グロいグロい……やめて。そんな血塗れの笑顔で俺に近づいてこないで。

 

「キラ〜!!」

「デルタ?」

「……っ!? ア、アルファ様……」

 

 俺の名前を呼びながら近づいてくるデルタに対して、鋭い眼光を浴びせるアルファ。

 助かったよ、アルファ。

 

「デルタ、今は任務中よ。キラのことはステラと呼びなさい。あと、そんな血塗れで抱き着こうとしないの」

「ご、ごめんなさい……アルファ様……ステラ……」

「大丈夫だよ、デルタ。帰ったらいっぱいなでなでしてあげるからね」

「本当ですか!? キラ〜!!」

「もう……あなた達はデルタに甘すぎるのよ」

 

 デルタのしゅんとした顔を見たら、罪悪感を感じてしまった。

 まぁ、甘やかしたら結局抱きつかれちゃったんだけど。別にスライムスーツに付いた血は落とせるからいいんだけどね? デルタを見てるとシドが前世で飼っていた犬を思い出すんだよな〜。名前はなんだったか……

 そんなやりとりをしていると大きい空間に繋がっている来た時とは別の道から年齢30代半ばぐらいの男が声を荒げて話しかけてきた。

 

「貴様らは一体何者だ!?」

 

 お、今回のメインディッシュのお出ましか……あれ? そういえばシドは?

 

「我らシャドウガーデン」

「ディアボロス教団の壊滅を目的とする者」

「我々は総てを知っている」

「魔人ディアボロスの復活、英雄の子孫」

「そして、悪魔憑きの真実」

 

 アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、アルファの順で名乗りを上げ、語られるシドの作り話。

 いや、いきなりそんなこと言われても流石の盗賊さんも困惑するって。

 

「ディアボロス教団、その名をその秘密をどこで知ったー!?」

 

 そう言って男は俺に斬りかかってきた。それを俺はうまく受け流すのだが……

 あれ? 思ってた反応と違う。もしかして本当にあったりするのか? シドが思いつきで作ったディアボロス教団が……あっ、ディアボロス教団って名前付けたのは俺だったわ。

 そのまま俺と男は殺さない程度に戦闘を繰り広げる。このまま戦ってこの男を倒してもいいのだが、シドとの約束を破るわけにはいかない。

 男は俺に敵わないと思ったのか、懐から赤い薬みたいな物が入った瓶を取り出し、それを飲み込む。突然、男の肉体が一回り膨張した。肌は浅黒く、筋肉は張り、目が赤く光った。そして、魔力の量が爆発的に増えていた。

 

「おお……!」

 

 男は全力の一太刀をアルファに向かって振るう。それにいち早く気づいた俺が瞬時に男とアルファの間に入り、剣を使って防ぐのだが、先程よりも重い剣、体格差では子供と大人という圧倒的差があった。このまま攻防してるだけなのは不毛だと思い、すぐに俺とアルファは後ろの方に飛び、男と距離を取った。

 

「面白い手品ね。ありがとう、ステラ。大丈夫?」

「あぁ、それにしても……ドーピングか……俺から言わせてみりゃ……ロマンに欠けるな」

 

 とはいえ、男にとっては決死の攻撃だったのだろう。証拠にこの剛剣を受けてから時間は経っているはずだが、まだ右手が少し痺れている。それだけ剣に気持ちがこもっているということだ。

 そんな一太刀を放ってもなお、大した手応えを感じなかったのであろう男は即座に逃げの判断を取った。男は足元にその剛剣を振るい、床に穴を開け逃亡した。

 好都合だ。この後、シドにどうやってバトンタッチしようかなって考えてたとこだったし。

 

「……逃げたわね」

「逃げましたね……追いましょう」

 

 俺は穴に飛び降りようとするベータを止める。

 

「必要ないよ。この先にはシャドウがいるからね」

「シャドウ様……? そういえばシャドウ様が先に行くと言って別行動をしていましたが、まさか……」

「やっぱりステラはシャドウに相棒って言われてるだけあるわね。彼、明後日の方に走り去るんだから、迷ったんじゃないかと心配したんだけど」

「この展開を読んでいた……流石シャドウ様ですね!」

 

 アルファはクスッと柔らかく笑い、ベータ達はその瞳を尊敬に輝かせていた。

 

「おい、ちょっと待て。相棒ってあいつが言ったのか?」

「ええ、そうよ」

 

 やっぱり適当に流すんじゃなかった。今度からは気を付けよう。

 

 

 俺はあいつの相棒じゃなくて保護者だ。

 

 

* * *

 

「迷った」

 

 僕は人気のない地下施設で呟いた。

 先にボスを倒して、もう既に…!? みたいな反応される陰の実力者も中々乙なもんだと思ったのにこのざまだよ。せっかくボスに遭遇した時の演出を練習してきたのに。

 

「やっぱり雑魚狩りに夢中になりすぎたかな?」

 

 それにしても大掛かりな施設だ。今回は廃棄された軍事施設に盗賊団が住み着いた感じかな。

 

「ん?」

 

 地下道の先から誰かが駆けてくる気配を感じた。

 少し遅れて向こうも気づいたようだ。僕と距離を置いて立ち止まった。

 

「先回りされていたか……」

 

 男は筋肉ムキムキでなぜか目が赤く光っている。

 なにそれ、かっこいい。目からビームとか撃てたりするのかな?

 

「が、一人なら容易い」

 

 そう言って赤眼の男は常人では消えたと錯覚するほどの速さで動き、剣を突くようにして僕に突っ込んできた。

 僕は男の剣を片手に持っていた剣の先で止める。来る場所が分かれば速さなんてそれほど脅威ではないし、力だって使い方次第だ。

 それに剣先と剣先がぶつかり合うっていうのは最高にかっこいい演出だからね。

 

「なっ!」

 

 剣先と剣先がぶつかり合った衝撃で周りの石レンガに亀裂が走った。

 

「アルファ以上の凄い魔力だ。でも、残念ながらまったく扱えてない。それに、そう……踏み込みが甘い」

 

 ちなみに、僕は魔力で速さや力を強化してブンブンすれば強いでしょって感じの力任せな適当な戦い方が好きじゃない。いや、フィジカル面を軽視するつもりはないんだ。究極の選択として力か技かどちらかを選べと言われたら僕は迷わず力を選ぶ。力なき技に価値はないと思っているからね。だけど、フィジカル面の強さにだけ身を任せて、細部を軽視し、捨て去り、諦めたかのような不完全で歪な戦い方が大嫌いなのだ。

 フィジカルは天性だけど技術は努力だ。だから僕は、僕が目指す陰の実力者は、決して技量で負けることはない。フィジカルは大切だけど、それに頼りきった醜い戦いは決してしない。これが僕の戦いの美学なのだ。

 

「戦い方に美学のかけらもない」

 

 だから、正直こういうブンブン丸には少しイラっとくる。

 

「教えてあげよう。正しい魔力の使い方ってやつをさぁ」

 

 赤眼の男が僕に向かって斬りかかってくる。攻撃と攻撃の間にある時間は約1秒。それを僕はいとも容易く躱し続ける。

 ここからは授業の時間だ。

 

「Lesson1,使う魔力は最小、脚に集中させ一気に加速する」

 

 赤眼の男の背後に回り込んだ。男は振り向くと同時に剣を頭の上に持っていき、思いっきり振りかぶる。

 

「Lesson2,間合いを掴めば速さも、力もいらない、魔力さえも……」

 

 僕は振りかぶられた剣を左手で横に押し出した。

 

「Lesson3,まだまだこれからだ!!」

 

 僕はまず最初に男の左胸を突き、その次に体を回転させて左から右に薙ぎ払うように斬った。その後も男の体を切断しない程度に斬り刻む。

 赤眼の男は剣を杖代わりに地に突き立て、大量の血を流す。そして男は叫んだ。

 

「なぜ、それほどの強さを持ってして!」

「陰に潜み、陰を狩る。我等はただそのために在る」

「くっ……!? どれほど貴様らが強くとも! 世界の闇は、貴様らが思っているよりも遥かに深い!!」

 

 そんな男の迫真のセリフに僕は不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふっ……ならば潜ろう……どこまでも……」

 

 決まった〜!! これこれ。またやりたいことリストが埋まったよ! それにしてもこのおっさんも演技派だなぁ〜。名脇役として雇いたいぐらいだよ。

 

「容易くほざくなぁ!!」

 

 赤眼の男は懐から赤い薬みたいな物が入った瓶を取り出して、それを飲み込む。その瞬間、男の手に持ってた瓶は割れ、男の周りを魔力が覆った。魔力の渦が晴れるとそこには先程の体格の2,3倍ほどになっており、両目は文字通りの赤眼となっていた男がいた。

 凄いな。僕のしまっていたフィジカルと同じぐらいの大きさだ。キラに二度と出すなって言われてから出したことないけど。

 赤眼の男は獣のような雄叫びをすると同時に僕に向かって先程よりも速い攻撃を行う。僕は後ろに飛んで攻撃を躱し、スライムで攻撃を仕掛けてみる。だが、スライムは男の剛剣によって弾かれた。

 

「軽い、脆い! これが現実だ! 貴様も味わえ己の無力さをっ!!」

 

 しばらく男の剛剣による攻撃は続いたが、それも飽き飽きしてきた。

 

「醜いな」

 

 そう言って僕は手元の剣に青紫の魔力を溜め始める。

 

「な、なんだ!? その膨大な魔力は!?」

「遊びは終わりだ」

 

 僕は男の左肩から右の腰に向けて一太刀入れた。

 男は大量の血を噴き出し、地面に倒れる。

 

「ミリ……ア………」

 

 男はもう既に息を引き取ったようだ。

 

 

 僕は男の首から落ちた金色のブレスレットを特に何も考えずに拾ってポケットに入れた。




今日は出掛けていて疲れて早く寝たいので早めに投稿です。
てことで、今回は誘拐されたクレアを助けるべくシャドウガーデンが乗り込むお話です。
デルタ可愛い、おやすみなさい。
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