「キラ〜♡」
「ちょっと姉さん。くすぐったいって。シドも見てないで助けてよ」
クレアが誘拐される事件から既に5日経っていた。元々、帰ってきた次の日には姉さんは王都に出発するはずだったのだが、なぜか姉さんは1週間出発の予定を先延ばしにして毎日のように僕達に構ってきていた。
正直しつこいとは思う。だけど、その反面嬉しく感じるのは気のせいだろうか?
そんなこんなで今はキラが姉さんに拘束されていた。
「じゃあ、頑張ってね〜」
僕は早いとこ部屋から退散しようとするが……
「何言ってるの? 次はシドの番よ」
「えっ……?」
僕が最後に見たのは、キラの憎たらしい顔だった。
* * *
しばらくして、いつの間にかお互い姉さんの拘束が解けていた。肝心の姉さんは部屋から消えていた。
稽古でもやりに行ったのかな?
「はぁ~、まったく。甘えん坊の姉を持つと苦労するよ」
と、口では言ってはいるものの、キラはまんざらでもない顔をしていた。
「ねぇ、キラ?」
「なんだよ?」
「なんであんなに姉さんのブラコンっぷりが加速してんのさ」
「知らないよ。って言いたいところだけど、やっぱりバレてるんじゃないの? 俺達のこと」
誘拐事件云々があった時に、僕達はシャドウガーデンのシャドウ、ステラとして救出に乗り込んだわけなんだけど、救出した際に、なぜかクレアはシャドウとステラのことをシド、キラと何度も呼んでいた。
どうしようかなぁ。周りに最初から正体がバレてるのは陰の実力者的にNGだ。かといって、姉さんをシャドウガーデンに引き込むのもNG。前みたいなお遊び感覚だったら引き込んでたかもしれないけど、教団の話が真実って分かった以上は危険が伴うしね。
それにこの5日間に分かったことだけど、僕は姉さんのこともどうでも良くない大事なものに入っていたみたい。流石にアルファ達ほどではないけど。
「やっぱり聞いてみるしかないのかなぁ……」
「それしかないだろうな……」
僕達は二人して目を見合わせる。そして……
「「じゃんけん、ぽい!!」」
「よっしゃ! 俺の勝ち!」
「ま、負けた……」
僕はチョキを出し、キラはグーを出した。それはすなわち敗北を意味する。僕は自分で姉さんから聞き出さないといけない現実から目を逸らしたくなった。
「ベータあたりにメイドとして潜入させて聞き出せないかな?」
「おい! ずるいぞ。お前が負けたんだからお前自身で聞いてこいよ!」
「誰に何を聞くって?」
そうだよね〜。流石にこんなことにベータを付き合わせるのも……今、なんて……?
僕達はゆっくり声がした扉の方に顔を向ける。そこには絹のような黒髪は背中で切りそろえられ、気の強そうな赤い目を持つ少女が……姉さんがいた。
「ね、姉さん? 一体いつから……」
キラが姉さんに問う。
「そうね……『なんであんなに姉さんのブラコンっぷりが加速してんのさ』あたりからかしら」
ほぼ最初からじゃないですか、やだ〜。ん? 待てよ? 最初から話を聞いていたのであれば僕が聞く必要ないのでは?
「で? シド? お姉ちゃんに何を聞こうとしてたの?」
姉さんは鬼だった。
「姉さん、最初から聞いてたんじゃないの?」
「聞いてなーい。聞こえなーい」
「……」
本当に僕はこんな人のことを大切に思っているのだろうか。
だが、このままだといつまで経っても話が進まないのでさっさと聞くことにした。
「姉さんは僕とキラのこと、どこまで知ってるの?」
この抽象的な質問、仮に誘拐事件の時のことは覚えておらず、名前を呼んでいたのはたまたまだった場合の保険みたいなものだった。まぁ、そんな保険はすぐ壊されたのだが……
「シャドウとステラ」
「ぐはっ!?」
「シャドウガーデンと七陰?」
「ぐふぁっ!?」
「だ、大丈夫? キラ」
「だ、大丈夫だよ。姉さん……」
「キラ〜!?!?」
さっきからキラが吐血し、倒れ込む演技をしている。
なにそれ! モブっぽい! あとで教えてもらおう。それよりも、今は姉さんに大体のことがバレてしまっているということの方をどうにかしないと。教団のことがバレてないだけマシだけど。
「それで姉さん。その秘密……どうする気なの」
正直、姉さんがどうするかで僕達の運命は変わると言っても過言ではない。
「どうもしないわ」
僕達が考えていた返答とはまったくもって違った返答が帰ってきて、拍子抜けした。
「え?」
「だって、シド達がどんな秘密を抱えていたって私の弟なことには変わらないし、私のことを何度も助けてくれたでしょ。だから私は、それ以上何も聞かないわよ。何かとんでもないことでもしでかさない限り」
「「姉さん……」」
僕達は感動した。キラにいたっては少し涙が出てるし。
「ね、姉さんが成長した〜」
「ちょっと!? 何よ、成長したって!?」
「はは」
* * *
僕達は改めて姉さんに秘密を守ってもらうことを確認し、そのまま残り2日という短い期間を過ごした。その間にもいろいろなことがあった。姉さんが遠慮はいらないと勘違いしたのか、最初の5日間よりもっとブラコンが加速していた。勝手にお風呂に入ってこようとしたり、寝てるところを添い寝してこようとしてきたりしたのだ。そのせいでアルファ達のところにこの1週間は一度も顔を出せなかった。
流石にまずくない??
そうして、姉さんの出発の日がきた。
「姉さん、元気でね」
「姉さん、頑張ってね」
「ありがとう。シド? キラ? 約束忘れてたりしないわよね」
約束っていうのはキラが提案した話だった。一方的に秘密にしてもらうのも悪いということで、姉さんのお願いをできる範囲で一つ、叶えてあげるという提案。
姉さんが決めたお願いというのは、いたってシンプルなものだった。王都の学園に入学したらまず一番最初に姉さんに会いに行くこと。こんな約束でいいのかとは思ったが、ブラコンの姉さんにとってはこれが一番効果的だとも思ったので、それ以上は何も言わなかった。
「覚えてるよ」
「大丈夫。一番最初に会いに行くから」
「そう……よかった。じゃあ、行ってきます」
そう言って姉さんは王都に出発した。
昨日は投稿できなくて申し訳ありませんでした。クレア可愛い。今日は二話分投稿しようと思ってるので20時に九話目を投稿したいと思います。クレア可愛い。
てことで、クレア可愛い。今回はクレアが可愛いお話でした。クレア可愛い。
クレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛いクレア可愛い……はっ!! 危ない危ない。この作品を書き始めた影響か分からないですけど、クレアがだんだん推しになりつつあるんですよね。
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