第九話 モブっぽい告白
あれから2年。この2年間は割といろいろなことがあった。
まず最初に、ディアボロス教団は世界規模の超巨大組織ということで七陰が世界中に散っていった。とはいっても、俺とシドの元に一人ずつ人を付ける当番制が残っているのと拠点を移すまでの数ヶ月間はあの廃村を拠点としていたため、ちょくちょくか帰ってきて顔を出してくれていた。
それはそうとして、俺達の知らないところで家族を危険な目に合わせるわけにはいかないので、俺達の魔力を媒体をするGPSのような物を仕込んでおいたことは、いまだに内緒にしてある。多分、まだバレてないはず。
次に組織の拡大が進んだことだ。悪魔憑きは世界中に無数にいるということを改めて痛感するレベルになるぐらいには組織の人数も増えていった。
それによって、あの廃村を拠点にしておくのは手狭すぎるという結論になり、拠点を移すことになったのだが、まさかシドが龍を倒すイベントに遭遇していたとは思いもよらなかった。
いいなぁ、俺も龍と一度戦ってみたいよ。
俺はちょうどその時、別の任務で遠く離れた場所まで行っていたので家を留守にしていたのだ。なので詳しくは知らないが、古都アレクサンドリアという有名な伝説の地を森の奥に隠し続けていた霧の龍を倒して、霧の龍の加護と拠点を手に入れたらしい。
大体こんな話だったはずだ。一度アレクサンドリアに行ったことはあるが、あそこは凄かったなぁ。
そしてあっという間に2年が過ぎ、俺とシドは15歳になり、俺達は姉さんのいる王都のミドガル魔剣士学園に入学した。
入学当初なんて凄かった。王都に来てからまず最初に、学園の特待生と上級貴族だけが入れる崖の中の寮にいる姉さんに会いに行ったのだが、出会って3秒で思いっきり抱きつかれた。俺達のことを姉さんは日頃から周りに自慢していたのもあるのだろう。そのせいであの有名なブラコンの弟とか呼ばれる始末だ。
どんな自慢の仕方してるんだよ……まぁ、悪い気はしないけど……
ちなみに俺はシドと同じぐらいの実力に調整してから入学した。入学後は実力を隠したりなんてする気はめんどくさいのでさらさらないが、クラスだったりはシドと一緒の方がいろいろと都合がいい。
もちろん、姉さんを説得するのには滅茶苦茶苦労した。
そうして、入学から2ヶ月ほど経ったある日の朝。
「おい! シド、キラ、急げって!」
「あ、待ってよぉ〜!!」
遅刻しそうになっていた。
眠い目を擦りながら脚を動かして、列車に乗り込む。列車の中は既にたくさんの学生で埋め尽くされていた。
「くそぉ、俺らも上の連中みたいに崖の中の寮に入れてくれりゃあいいのによ」
「お姫様住んでるような場所に僕らみたいな木っ端貴族の居場所はありませんって」
この二人はヒョロとジャガ。二人ともシドがモブっぽいってことで選んだモブ友達ってところだ。
シドは友達を作れたのに作れなかったような人間で、俺はそもそも友達という存在がいなかった人間……うっ……涙が……
「それより昨日のテストでビリだった奴が罰ゲームの約束、覚えてるよな?」
「約束は守ってもらいますよ?」
「分かってるけどぉ……」
「頑張れよ〜」
シドは入学をしてからの今まで、順調にモブとしての生活を過ごしていた。そんなシドは満点なんて余裕のテストをあえて、ヒョロとジャガの点数より点数を下げて罰ゲームを受けれるように調整したのだ。罰ゲームの内容はメジャーの中のメジャー、学園のアイドルに告白してこっ酷くフラれるというものだ。
「お、着いたみたいだぞ」
列車が学園の前に到着し、列車からは人が雪崩れるように降りていく。
しばらく進んでいくと左の方で人だかりができていた。公開告白のようだった。男はまあまあイケメンでそこそこモテそうな奴。女の方は白銀の髪を肩で切りそろえ、切れ長の赤く綺麗な瞳を持ち、顔立ちの整ったクール系の美人。彼女は学園のアイドルであり、一国の王女のアレクシア・ミドガルだった。
美人だとは思うけど、アルファ達のせいでその辺の美人とか見ても何も感じなくなっちゃったんだよぁ〜。それにしても、シドはあれに告白するのか。
男はたくさんの人が見ている中、アレクシアに告白をした。返事は……
「興味ないわ」
とバッサリいかれた。公開告白が公開処刑になってしまった。
めげるなよ。名も知らない男よ。
「流石王女です。卒業したら政略結婚確定とはいえ……」
「遊び相手には悪くないだろうに。」
ヒョロは今更罰ゲームの相手にアレクシアを設定したことに怖気づいたのか、少し震えた口調でこう言った。
「な、なあ。今更怖気づいたとか言うなよ?」
「大丈夫! 告白の仕方は夜なべして考えてきたんだ」
こいつの夜なべしてまで考えてきた告白っていうのはモブっぽい告白のことだろ……お前が万が一にも告白を成功させてしまったら、アルファ達と姉さんを宥めるのはのは俺になるってこと分かってんのか? こいつは自分がどれだけが愛されてるのか、一回思い知った方がいいと思う。
俺は自信満々な顔をしているシドに向かって、保険の一言。
「ないとは思うけど、絶対に振られろよ?」
「何言ってるの? 当たり前じゃん」
はぁ、本当に心配だ。
* * *
時間は飛び、空は夕焼け色になっていた。
シドは告白相手のアレクシアを学園の草木が生えている庭のような場所に呼び出していた。俺とヒョロ、ジャガの三人は告白現場の少し離れた場所におり、そこからシドの告白を覗く。
俺まで覗く必要はないのだが、何か嫌な胸騒ぎが消えないため様子を見に来た次第だ。
「ア、ア、ア……アレクシアおうにょ! す、好きです……! ぼ、ぼ、僕と付き合ってくぁさぃ……?」
す、すげえー!! 演技力の塊じゃないか! これがあいつのモブ道か!? 俺はシドのことを少し勘違いしてたみたいだ。やる時はやるじゃねえか! これだったら告白の結果は!?
「分かりました」
「……え?」
「「「……え?」」」
「あなたのような方を待っていたの、よろしくね」
「あ、はい」
それから俺は何も考えられなくなり、先に寮に帰宅。そして、シドの部屋でシドの帰宅を待った。シドはアレクシアを送ってきてから帰ってきたようで、部屋に入ってから俺のことを見るとシドは叫んだ。
「なんでラブコメ主人公ルートに入ってんだよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
「知るかよ……」
ついに今回で王都編に入ることができましたね!
今現在、執筆できてる部分も近づいてきてしまっているので急ぎつつお目汚しにならないような物をお出しできるように頑張ります!
てことで、今回はアレクシアに告白するお話でした。
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