陰陽姉妹が家だと陽陰姉妹になるんですがどちらが素ですか?   作:橘田 露草

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いよにちわっ!くーさんこと露草と申します。
先週はめちゃくちゃ忙しく勝手ながらお休みをいただきましたm(_ _)m
そしてストックもそんなに無いため以前書いてどこに入れようか迷っていた短話でお茶を濁させていただきます、いただきました!

いよよい第…今回は付録的なアレなのでナンバリング無しw
投稿します。


第◯×話 ある少女の話〜日種編〜

きっかけは覚えていないぐらいだから多分すごくくだらないことだったんだと思う。プレゼントを先に妹に渡したとか、ケーキが妹の方が大きかったからとか。そんな些細な出来事で少女は誕生日会をしてくれた父と兄とそして双子の妹への怒りで家を飛び出した。

 

公園のお気に入りのかくれんぼスポットに隠れると、途端に後悔が押し寄せてきた。雨に冷え切った体が震え、涙も勝手に溢れてくる。

そんな少女に近づいてきたのは、大好きな兄ではなく。

 

「やっと見つけたよ、日種」

「……せんぱい?」

 

傘を片手に息を切らしていたのは───幼馴染で兄の親友の佐藤葉一だった。

 

「隣、失礼するね」

 

傘を閉じると、彼はタコの形をした遊具のトンネルに入ってくる。そして上着を脱ぐと少女に渡してきた。

 

「はいよ、貸したる」

 

そういうと背を向ける彼。びっしょり濡れて張り付いた服は体温を奪うばかりで、彼が貸してくれた服はありがたかった。だが一応、釘をさしておく。

 

「着替えるから見ないでよっ!」

「あのなぁ、そういう言葉はもうちょい大人のお姉さんになってから言ってくれ…」

 

失礼なこと言う幼馴染だ。写真の中の母親はスタイルがよかったからきっとアタシも中学生になった頃にはバーンでドーンな感じになっているはずだ。少女は未来の自分に夢を見ながら、シャツとタンクトップを脱ぐ。なぜか脱いだ服を彼に見られるのが恥ずかしくて自分の陰に隠した。

 

彼から借りた服は9月に着るにしては厚手で裸の上から着ても十分暖かかった。体が暖まったら今度は空腹感が襲って来た。具体的には、"ぐぅ〜"という効果音と共に。

 

「ぶふっ!?い、いい音鳴るなぁ」

「わ、笑わないでよっ!」

「悪い悪い」

 

いまだ背を向けている彼だが笑っているのはわかる。顔が真っ赤になったのを自覚しながら少女が怒ると謝る彼。

 

そう言えば料理も全く食べないで来てしまった。料理が苦手な父と兄だから出前やスーパーで買ったものがほとんどだったが、それでも食べずに家出してしまったことを後悔する。

 

「腹減ったなら家送ろうか?」

「やだっ!絶対帰らないもんっ!」

 

提案をする彼だが少女の意志は固い。飛び出してきた立場で帰りづらいのもあるが何か自分の中で引っかかったもののせいで意地を張ってしまう。

 

「そっか…ん、日種ちょっと待ってて」

 

そう言うと彼はトンネルの外に出て行く。傘を差すと公園の出口に行ってしまった。途端に暗い公園で1人なのを自覚してしまう。

 

「ふ、ふんっ!アタシは絶対帰らないもんっ!」

 

虚勢を張るが、隣で確かに感じていた熱が無くなり不安に襲われる。不意に言葉が出てくる。

 

「……ぃちゃん」

「ん?呼んだ?」

「わきゃあ!?」

 

虚空に放ったはずの小さな呟きへ返事があり思わず変な声が出てしまう。そこにいたのは彼だった。右手にビニール袋を下げている。

 

「日種、肉まんとあんまんどっちがいい?ピザまんもあるぞ?」

「……んっ!」

「あっ、おい!袋ごと持って行くなよ!」

 

結局袋一杯にあった肉まんのほとんどを食べた少女。満腹と雨に打たれた疲れで眠くなった少女は、ポツリと呟く。

 

「……怒らないの?」

「うん?」

「パパとおにぃから聞いてるんでしょ?アタシが勝手に怒って家を飛び出したって」

「ん、まあそうじゃなきゃ僕がここにいるわけないしね」

 

やはり事情は聞いていたらしい。だが彼は優しい笑顔で少女を見るばかりで、怒っているわけじゃなさそうだった。

 

「……パパとおにぃにひどいこと言った」

「うん」

「……メイの誕生日を台無しにした」

「そっか」

「……なのになんで怒らないの?」

 

下を向き今にも泣き出しそうな少女の頭に乗せられたのは彼の手だった。二、三回優しく撫でると。

 

「怒らないよ」

「…え?」

「1番きみを怒っているのはきみ自身でしょ。なら僕は"きみは悪くない、悪いのは周りだ"って全肯定してやるさ」

「……なぁにそれ」

 

それはあまりに身勝手で、そしてバカみたいで、とてもとても優しい言葉だった。

 

「日種様が言うことは正しいっ!日種様万歳!ってね」

「……何の宗教だよぉ、やめてっ!」

 

少女は涙を流す。だがそれはさっきまでの悲しい気持ちの涙ではなく。

その答えを幼い少女は知らなかった。

 

 

「もしもし……ああ、うん疲れて寝落ちしたよ……はいはい、分かってるよ」

 

電話を切ると彼は、眠る少女を背負って公園を出る。

 

「……ちゃん」

「ん?」

「……葉一お兄ちゃん」

「ああ、言い忘れていた。お誕生日おめでとう日種」

 

そこには嬉しそうな笑顔で眠る少女の姿があった。

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