いつかその呪いを絶てるように 作:ジュジュ
第1話 ある呪術師の家系
2010年4月〇日
今日から日記をつけ始める。つい最近まで世話役の人が四六時中張り付いていて、書こうにも書けなかったが10歳になったことでようやく解放された。
内容が内容だけに家の人にもうかつに見せることはできない。毎日書くことはできないだろうが、可能な限り記録していきたい。とりあえず、今まであったことをまとめよう。
俺は転生者だ。そう自覚したのは3歳頃だ。というより、『糸色 弥生(ししき やよい)』という名の3歳の子供に転生した、という方が正しいか。
家の人に聞くと1週間ずっと40度以上の高熱を出していたらしい。恐らく死ぬはずだった子供に転生したんだろう。そう考えたい。
転生者なので勿論前世の記憶はあるが、前世に関する記憶は、なんというか、他人の記憶を映像として見てる感じ、自分の物のような気がしなかった。
いたって平凡な人生で、それなりの大学を出てそれなりの企業に就職して数年たった後、事故で死亡した。これといって特筆すべきことがない。少なくとも前世への拘りや未練というものは俺の中にはなかった。
俺がどんな世界に転生したかというと、呪術廻戦、というジャンプ漫画だった。
気づいたのは5歳ぐらいの頃、父親から、うちの家系は呪術師を生業としている、と聞かされ、実際に呪霊を祓う様を見せられたことだ。正直何が何だか最初はよくわからなかった。
途中まで読んでいた(滅茶苦茶うろ覚えだが…)し、作風は把握している。
呪力を使い、人の負の感情から生まれる呪霊を祓う呪術師達。モブもメインも死ぬときは容赦なく死ぬ。呪術師も一枚岩ではなく、自身の目的のために時には同じ呪術師すら陥れる。呪霊、呪詛師、呪術師とあまりに死因が多すぎる世界だ。
ちなみに俺は渋谷事変終了ぐらいまでしか知らない。あとは死滅回遊を若干ぐらいだろうか。
こんな酷い世界に転生したとわかったその日の夜は眠れなかった。戦いなんてまっぴらごめんだし、痛いのだって嫌だ。正直泣きわめきたい気分だった。控えめに言って転生したのがハズレみたいな世界だ。
こんな世界で呪術師やるとか正直勘弁だが、俺はどうやらこの家の嫡男らしく、それ以外の生き方は許されてない。できたとして家から逃げて海外暮らしするしかないだろう。昔は割と選択肢にあったが、今は無しだ。この世界の家族や周囲の人と接しているうちにそれなりに愛着がわいてしまった。それを放り出して、一人で生きる程、俺は図太くはない。それにこれから起こることを知っている以上見て見ぬふりはできない。
なら、俺がすべきことは強くなることだ。この世界は強くても酷い目に合うが、強くなかったらもっと酷い目にあう。少なくとも呪いに抗えるだけの力をつけるべきだと考えている。幸い俺には才能があるそうで、この家の相伝術式を持っており、呪力量、出力、呪力効率が優秀らしい。
自身が碌でもないない世界に転生したと分かった時から、鍛錬に時間を費やした。父親からの指示で、術式を使った訓練をせず、呪力操作に注力をした。
そのおかげか呪力操作に関しては10歳の時点で1級術師にも負けないレベル、という評価を周囲から貰えた。
ちなみに術式を使わずに訓練をしたのは、術式持ちは術式に依存して呪力操作を行うことが多く、術式が使えない状況だと、戦力の低下が著しい場合がありそれに備えるためだという。
あとは単純に術式の扱いを呪力操作がままならない状態で行うと、自身に害が及ぶ場合があるためらしい。恐らく最近まで四六時中お世話係の人がいたのも、そういった万が一に備えるためだろう。ちなみにお世話係の代わりに今度からボディーガードが付くらしい。嫡男に万が一が起こることを避けるためだ。
ついでに俺が生まれた家についてもまとめておこう。俺の家は糸色(ししき、と読むらしい)家というらしく、呪術界ではそれなりの名家だという。歴史でいえば御三家にも負けず劣らずだというが、規模では負けるらしい。
だがそれでも呪術界では上から数えた方が早い、高い位置にいるらしく、呪術総監部にもしっかりとパイプがある。虎杖悠仁処刑の件だったり、偽夏油のこともあるので上層部とつながっているのは一概にも喜べることではない。
相伝は、『断絶呪法』、という物を断つ(絶つ)ことに特化した術式らしく攻撃にも防御にも使えるバランスの良い術式だ。対象を断ったり、呪力をまとって相手の攻撃を断つ防御など、多くのことができるらしく、これから多くのことを身につけなければいけない。
ちなみに父親は俺を呪術高専に入れるつもりらしい。父も昔は京都高専にいたらしく、呪術高専に行き、正式に等級を得ることは外でも活動しやすくなるので家としてはそれなりに優秀ならば高専に入学させる方針なのだという。
渋谷事変が起こるころには18歳ぐらいなので、自身がフリーだった場合、ほぼあの魔境に突っ込むことになる。五条悟が封印され、特級呪霊と呪術師達が殺し合い、宿儺と魔虚羅との戦闘で渋谷が壊滅し、そして死滅回遊が始まる、あの戦いに。自分だけ生き残ったとしてもその後に殺し合いに投入されるとか中々酷い事件だ。
あと、8年。一体どこまで俺は強くなれるんだろうか。俺は、死にたくはない。が、渋谷がどうなるかを知っている以上それを見過ごすこともできない。だから俺は、精一杯抗ってやる。